●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.111 ●▲■
?      発行日:2008年2月25日(月)
■お酒・アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
?? 発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com

 

  ------------------< 目 次 >------------------

●▲■ 続・近作のお酒書籍のご紹介
「後編:ワイン・シャンパンの4冊 + 酒全般の2冊」●▲■

 ●その5「長野県のワイン」  ●その6「等身大のボルドーワイン」
●その7「ボルドーvsブルゴーニュ」●その8「シャンパン 泡の科学」
●その9「うまい酒の科学」  ●その10「酒の履歴」

                    (text = 喜多常夫)

ご紹介アイテム●1▲ 樽の赤ワインにごく少量の酸素を供給
ご紹介アイテム●2▲ 清酒の舟搾りと同じ温故知新:バスケットプレス
ご紹介アイテム●3▲ 畑のポテンシャルを引き出す選果システム

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前回に続き、最近読んで興味深かったお酒の近作書籍のご紹介。

まず、ワイン・シャンパン関係の4冊です。

 

 

●▲■その5「長野県のワイン」山本博著、ワイン王国(¥1,800+税)

ワイナリーだけでなく、
ブドウ畑のこと(醸造は長野では行っていない畑)も書かれている。

その詳細な記録ぶり、文字記録に対する熱意に舌を巻く。
著者の山本さんからは年賀状をいただくのだが、
いつも繊細で洒落たイラストが添えられる。
そんな一見ナイーブにも思える面と、この文字記録に対する熱意、
それにご本業の弁護士が、どう連立するのか不思議である。

前作の「北海道のワイン」でも感じたが、
よくぞこんなに詳しく調べ、また観察したものだと思う。
たとえば、、、
「XXは山梨大XX年卒業、XXを経て今ではXXで醸造技師をしている」
「XXはノンキャリアだが入社してXX年、現在XX歳」
「XXは風貌がビニュロン(ブドウ栽培農家)らしい」
「XXは婿養子、、、XXの妹はカフェをやっている、、、」

こんな調子で長野でワインやブドウ畑に関わる人、
また過去に関わった人が、フルネームで記録されている。
数えたわけではないが、ゆうに百人以上だろう。

もちろん長野のワイン造り・ブドウ栽培の歴史や技術については、
インサイダー情報?と思えるほど、詳しく書いてある。

たとえば、
マンズワイン小諸ワイナリーの契約栽培農家49軒の
栽培品種、契約開始年、面積、仕立て方、農家名の一覧表があったり、
サントリー塩尻ワイナリーの歴代工場長全員の姓名が列記してあったりする。

鍵となる出来事や、人との出会いについては詳しく書いてあり、
「昭和51年2月20日、メルシャンは桔梗ケ原公民館に生産者組合員を集め、、」
「平成13年1月12日、麻井宇介さんを囲む会が静岡のホテルで、、」
など、年月「日」まで特定してあったりもする。

「カベルネの「カ」の字も香りや味がまったくしないものまである」
など、溜飲が下がる辛口批評もある。

山本博さんだから書ける表現で記録されたこの本は、
日本ワインが変革期にある今だから、とても面白い。それに、
50年後100年後の日本のワイン産業史研究に資する
アーカイブ的文献でもある、と思った。

 

次作の「山梨県のワイン」が待ち遠しい。

 

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本書では、
小布施酒造やサンクゼールで「壜内二次醗酵のスパークリング」を、
また、ヴィラデストでは「ブドウ粕取り蒸留酒」を
造っていることに触れている。

余談ながら、
現在全国でこれらに取り組んでいるところのリストを
知っている範囲で掲載しておこう。

 

<<シャンパーニュ式の壜内二次醗酵スパークリング>>
池田町・十勝ワイン(北海道)、高畠ワイン(山形)、
タケダワイン(山形)、ココファーム(栃木)、
機山洋酒(山梨)、勝沼醸造(山梨)、フジッコワイナリー(山梨)、
カーブドッチ(新潟)、小布施酒造(長野)、サンクゼール(長野)、
カタシモワインフード(大阪)、安心院葡萄酒工房(大分)

<<グラッパ式やマール式のブドウ粕蒸留酒>>
カーブドッチ(新潟)、機山洋酒(山梨)、
白百合醸造(山梨)、メルシャン(山梨)、小布施酒造(長野)、
伊豆ワイナリー(静岡)、カタシモワインフード(大阪)、
西山酒造(兵庫)、安心院葡萄酒工房(大分)
(このほか、イタリア製のグラッパ蒸留器を取り寄せて、
ある種の蒸留酒に使っている九州の焼酎メーカーもある。)

共通するのは、ワイン作りに劣らぬ情熱で取り組んでおられること。
「日本のシャンパン」「日本のグラッパ」という本を編めば
(実際はそんなタイトルは使えないが)、面白そうである。

 

 

●▲■その6「等身大のボルドーワイン」安蔵光弘著、醸造産業新聞社(¥2,800+税)

メルシャンの若い醸造家である著者が、
ボルドーのシャトーレイソンでの4年あまりの体験を記述したもの。

「等身大」は、英語なら「Life Size」といいそうだが、
表紙のフランス語タイトルは「Grand Nature」となっていて、
自然や歴史との関わりに視点をおいたものであろうことがわかる。

畑作業、収穫、醸造、貯蔵と順にワイン造りが実に具体的に書かれるほか、
ボルドーの歴史や、ボルドーでの生活の部分も面白い。

 

特に興味深かったのは、改植(ブドウの植え替え)の部分。
収量のおちた樹齢50年超えのカベルネソービニオン、
4.2ヘクタールを引き抜いて、新しい2万8,000本を植えた記録。

土壌分析などを踏まえて慎重に選定した品種に植え替えるのだが、
植え替えて3年はAOC認定にならず、
さらに4-5年はファーストラベルの品質にならない、
したがって合計7-8年は経営に貢献しないそう。

しかし当然ながら、
その後の20-30年間のシャトーの運命を左右する一大事業であって、
通常の企業では考えられないスパンの投資である。

「カベルネをやめてクローン343のメルロにした。
台木には(斜面途中で傾斜が変わり水分含有も変わるので)
上半分はクローン3309、下半分はクローン101-14とした」
など、突っ込んだ情報が書かれている。

クローンに関する解説もわかりやすく書かれていて、
とても勉強になった。

 

実は私は、シャトーレイソンに1991年と2006年の2回行ったことがある。
シャトーの外観は同じだけれど、
15年を経て内部は見違えるほど変わっていた。
ワイン品質もずいぶんよくなっていると感じた。
ボルドーのクリュのランク付けヒエラルキーの壁は厚いのだろうけれど、
将来が楽しみである。

 

後書きには、麻井宇介さんとの関わりが書かれている。
「長野県のワイン」でも思ったが、
日本ワインが大きな変革期を迎えたことは、
人と人との出会いがとても大きく影響している、と感じた。

 

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話が突拍子ない方向になって恐縮だが、
オレンジとレモンが、一本の木に実るのをご存知だろうか。
はじめてみるとビックリするが、
相性が良いようで両方同時に、たわわに実る。

ワイナリーでは、
カリフォルニアのコッポラ(映画監督のF.コッポラのワイナリー)の庭や
スペインのゴンザレスビアス(ティオペペ)の庭にあるので、
ご覧になった方もいるのではないか。

たぶん、オレンジかレモンに、その逆の木を挿し木をしたら、
両方とも実るのだろう。

何を寝言いってるんだ、といわれそうだが、
ブドウも、一本の台木に、
メルロとカベルネとシャルドネの3つを挿し木して同時に育て、
毎年違ったワインを造る、または、
数年たって一番いい品種のみを残すように剪定する、
なんていうのができればなあ、、、
本書のクローンの部分を読んでいて、そんなことを思った。

 

 

●▲■その7「ボルドーVSブルゴーニュ」J.R.ピット著、日本評論社(¥2,800+税)

「ウィンドウズかマックか」「野球かサッカーか」「芋焼酎か麦焼酎か」
そんな議論と似ている。
イタリアやスペインやアメリカのワインもあるわけだが、やはり、
ボルドーとブルゴーニュはワイン世界の2巨頭というべきだろう。

 

筆者はソルボンヌ大学(日本で言えば東大)の学長で地理学専攻であるから、
地政学的、歴史的、経済的な比較論が読むべき点だが、
専門外であろう両地域の栽培技術、醸造技術、研究者の比較や
壜形やラベルの歴史的比較まで、
幅広くボルドーVSブルゴーニュを述べている。

ボルドー:ブルジョア、ブルゴーニュ:農民
ボルドー:大規模葡萄畑、ブルゴーニュ:細切れで持つ所有者
ボルドー:ポンピングオーバー、ブルゴーニュ:櫂突き
そんなステレオタイプだけでなく、薀蓄(うんちく)を語る本である。

注記と参考文献だけで50ページあまりも割かれていることからも、
薀蓄量?の多さがわかる。

 

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以前も書いたことがあるが、私はボルドーワイン好きである。
タンニンが性に合っているのだと思う。
ワインを買うときも、本能的に、
ボルドー型の壜(いかり肩の壜。ブルゴーニュは、なで肩)のみを
物色してしまう嫌いがある。

だが、この本を読んで
もう一度ブルゴーニュを試してみようかと思った。
人間、歳とともに嗜好が変わることもあるかもしれないし。

早速何本か買い集めてみたが、、、
まだ飲んでいない。。。

 

 

●▲■その8「シャンパン 泡の科学」G.L. べレール著、白水社(¥1,900+税)

 

醸造とは関係ない。泡に関する物理化学的な解説である。
シャンパンのモエ・シャンドン社の援助を得て、
特殊な高速度カメラのコマ撮りでシャンパンの泡を調べた本。

いつまでも続く、シャンパンのあの独特の連続泡は、
グラスの傷か凹凸を起点にして生まれてくると思っていたが、
実はそうではなく、
布や紙に由来する繊維の「ちり」から生まれるそう。

たいていのちりはセルロースで、極小のパイプ構造。
パイプは細すぎて液が入らず内部がエアポケットになり、
気化した炭酸ガスがどんどん吸い込まれて、
ちり(パイプ)の端から連続的に泡が出るのが写真で解説される。
(次にシャンパンを飲むとき、ちりをたくさん残してみよう!)

もし仮に何のちりも付いていない、完全にきれいなグラスに注ぐと
シャンパンの泡は立たないのだそうである。

栓をあけたとき、シャンパン壜側ではほとんど泡が立たないのは、
壜内にあるちりのパイプ内が、長い熟成期間に液で満たされて
エアポケットがなくなるからなのだそう。

シャンパンの泡はなぜビールの泡に比べて早く上昇するのか、
シャンパンの泡はなぜ一列に並ぶのか、
液面まで上がった泡はどうなるのか、
注いだ直後の泡立ちの泡はどうなっているのか、、、
そんなことが写真と科学的解説で述べられている。面白い。

 

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書評ではないが、
シャンパンについては以前から疑問に思っていることがある。

「壜内二次醗酵のガスは、強制的に炭酸ガスを溶解したものと比べて
泡がきめ細かいし、長持ちする」という解説を時々見かける。

たとえば、シャンパンからガスを一旦完全に抜いてしまって、
そのあと強制的に同量のカーボネーションをした場合、
その泡は、オリジナルのシャンパンと違ったものになるのだろうか?

私は同じだと思うのですが、
誰かそんな実験をして見ませんか?

 

 

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最後に「お酒全般」の2冊を紹介。

 

●▲■その9「うまい酒の科学」酒類総合研究所、ソフトバンククリエイティブ(¥952+税)

昨年12月に出版された、まさに最新刊である。
酒類総合研究所がシリーズで配布していた
「お酒のはなし」「エヌリブ」という情報冊子を再構成したもの。

酒類全般を網羅している。
清酒、焼酎、ビール、ワインはもちろん、
「薬用酒、灰持酒、みりん、粉末酒」など変わったお酒、また
「ジン、ラム、テキーラ、紹興酒」など外国のお酒、
についても、豊富な写真でコンパクトに紹介されていて興味深い。

麹、杜氏、常圧と減圧蒸留、甲州ブドウ、酒と健康、など
各酒類のトピックスもうまく網羅してある。

本書は執筆担当者の記載のない入門書だが、
酒類総研はお酒の人材の宝庫。
民営化(独立行政法人化)になったのだし、
今後、専門技術書や、海外に向けての書籍も期待したい。

 

 

●▲■その10「酒の履歴」大塚謙一著、技報堂出版(¥2,200+税)

2006年刊行。これも世界のお酒全般を扱った著書であるが、
切り口が面白い。
「神話の酒」、「伝説の酒」、「伝承の酒」、「伝播の酒」など、
文化的分類法でお酒を切り分けて、横断的に紹介している。

例えば、「ウィスキー」は、アイルランド・スコットランドから、
アメリカ、カナダ、日本へ伝わったので「伝播型蒸留酒」、
「焼酎」は、琉球から泡盛が日本に伝来し、
九州各地で独自の多様な発達をしたので「伝来-伝承型蒸留酒」、
といった具合である。

エジプト、ギリシャ、古代インドなど、古代文明の酒、
アフリカの酒、インディオの酒など、知られざる酒、
椰子酒、猿酒、蜜酒、口噛み酒など、変わった原料・製法の酒、
など、さまざまなお酒が登場するのも面白い。

「僧院寺院とお酒」という章では、
修道院とワイン・シャンパン、修道院とビール、日本の寺院酒造、
など、異種・異文化のものがひとつの切り口でまとめてあるのも
興味深い。
ボリュームを倍にして、各項目をもう少し解説してほしい、
と思ったくらいである。

 

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著者にお会いしたとき「本にサインを」とお願いしたら、
表紙裏にボールペンでサラサラと次のように書かれた。

「酒に魅せられて 大塚謙一」

 

確かに、お酒とは単なる産業ではなく、
「魅せられる」だけの、価値、文化、技術、楽しみ、奥深さを持つもの、、、
最近、私も頓(とみ)にそう感じる。

きた産業は酒の王冠・キャップをつくるのが生業だが、
小さなパーツとはいえ、お酒にかかわる仕事であることに感謝している。

 

なお、大塚さんには、
現在、弊社発行の冊子「酒うつわ研究」に寄稿をお願いしている。
近日発行の次号の題材は「樽の熟成」に関するテーマ。
ご期待ください。

                    (text = 喜多常夫)

 

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さて、当社商品のご紹介です。
今回は、ワイン向け設備をご紹介します。

 

●▲■ ご紹介アイテムその1:ROOTSディビジョン ●▲■

樽のマイクロオキシジェネーション装置
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/brewing/barrelmate.pdf

樽に入った赤ワインに、ごく少量の酸素を供給して
自然熟成を促進する装置。
タンニンのストラクチャを引き出したり、色素の固定に。

酸素透過量の落ちた古樽に新樽並みの酸素を送る設定も可能。
古樽の有効活用に。

 

●▲■ ご紹介アイテムその2:ROOTSディビジョン ●▲■

温故知新:バスケットプレス3種

コカール(Coquard)のバスケットプレス(と、斜めプレス)
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/brewing/Coquard.pdf
ディエメ(DIEMME)の新世代バスケットプレス
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/brewing/Vintage.htm
モーリ(Mori)の油圧バスケットプレス
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/brewing/Mori_basket.html

清酒の「舟搾り」と同じで、
縦型バスケットプレスは、クラシックだが温故知新の圧搾機。
セルフ・フィルトレーション効果できわめて高品質のジュースが取れる。
プレミアムワインにご検討ください。

バスケットプレスに関して豊富な経験と情報を持っています。

 

●▲■ ご紹介アイテムその3:ROOTSディビジョン ●▲■

ディエメ(DIEMME)の除梗破砕機と選果システム
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/brewing/Kappa.html
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/brewing/SelectionSpec_ed02_1.pdf

「除梗」能力はワイン品質に大きく影響します。
また「選果」は日本でもすでに10社近くが開始しています。

畑の持つポテンシャルを最大限に引き出すために、
有効な設備です。

この秋に向けて、設備を手配する時期です。
ぜひご検討ください。

 

 

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●▲■バックナンバー閲覧可能!「メルマガ・クロニクル」

http://www.kitasangyo.com/Archive/mlmg/BN_top.html

2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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tel.06-6731-0251 mailto:osaka@kitasangyo.com
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