●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.143 ●▲■
      発行日:2010年8月2日(月)
■お酒・アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com

 

   ------------------< 目 次 >------------------

    ●▲■ お酒書籍の紹介・ワイン編 ●▲■

●その1 「越後えびかずら維新 川上善兵衛異聞」
●その2 「ワインの歴史」
●その3 「ヴィンテージワイン必携」
●おまけ 「ボローニャ紀行」(井上ひさし)

「技術・ノウハウを持ち出すことは許される」ルール

                      (text = 喜多常夫)

ご紹介アイテム●1▲「輸入ワインに見るノマコルク」
ご紹介アイテム●2▲「スクリューキャップをご採用いただいたワイン」
ご紹介アイテム●3▲「AMCORのワイン・キャップシュール」

 

 

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●その1「越後えびかずら維新
日本ワイン葡萄の父 川上善兵衛 異聞」
小関智弘、著 小学館 1,400円 2010年5月発行

 

「えびかずら」とは「ぶどう」のこと。

メルマガ読者の多くはご存知と思いますが、
川上善兵衛は、大地主で素封家だったその全財産を費やして、
日本ワインの代表品種、マスカット・ベリーAを生み出した人物。

坂口謹一郎さんの紹介で、サントリー創業者の鳥井さんと知り合い、
100年前に「登美の丘ぶどう園」の再興を指導した人でもある。

 

 

ごぜ、という言葉をご存じだろうか?
「鼓」の下に「目」とかいて「瞽」(めしい)という字になるのだが、
「瞽女」と書いて「ごぜ」と読む。

三味線を弾き唄って各地をまわり、
生計を立てる盲目の女旅芸人のこと。
子供を、ごぜに出すことが禁止されて戦後消滅したが、
トラコーマによる失明者が多かった時代、
新潟、北陸、東北などに実に多くの、ごぜさんがいたそう。

道端で姉ごぜに杖で叩かれ責められていたところを、
少年時代の川上善兵衛にかばわれたれた、若いごぜさん。
著者の元に送られてきた、
そのごぜさんの半世紀前の録音が物語の柱になっている。

ごぜさんは、数年後に偶然、
ぶどう栽培に取り組み始めた善兵衛に再会し、
晩年まで、接点をもち続けた。

ひそかな恋心(「懸想−けそう」)を感じていたようで、
善兵衛にぶどう畑を案内されたとき、
手渡された畑の平べったい小石を、
後生大事にいつも着物の下にひそませていたそうだ。

 

このごぜさんは、
鳥井信治郎と善兵衛が出会った酒席にも呼ばれ、
まるで「見たように」その様子を記録している。
信治郎と善兵衛の会話の内容は興味深い。

めしいて見えないはずのごぜさんは、
鳥井信治郎からつがれた赤玉ポートワインをのんで、
「胸のはだけた若い女子の艶っぽいポスター」
(有名な、赤玉ポートワインの大正時代のポスター)
を思い浮かべたそうだ。

 

そんなごぜさんの録音テープが見つかるとは奇跡的だし、
完全ノンフィクションなのか、フィクション混じりなのか、
判然としないところだけれど、
興味深い展開で、さらさらと読める一冊。
(著者は、ノンフィクション大賞を受賞しているライター)

 

再婚相手は、勝海舟に勧められた女性だった、
当時の岩の原のぶどう畑は「石ころだらけ」だった、
桶職人に「口がすぼまった、人の背高の倍の大桶」を作らせた、
(「サントリー100年誌」にこの大桶の写真が掲載されている。
海外のシャトーにはよくある所謂「oak vat」だが、
日本のワイナリーでは今もほとんど見ない。)

など、歴史的・ワイン的に興味深い記述も多い。

 

海外でもぶどう品種交配に人生をささげた人は多いだろうが、
こんな苦労と波乱万丈な人生は、
たぶん、
日本の川上善兵衛さんだけではないかと思った。

 

それにしても、
ごぜ(瞽女)さんの記憶力には驚かされる。
ごぜの記録としても意味ある一冊だと思う。

(酒類関係者向けメルマガなのでご紹介しますが、
山形の出羽桜酒造さんの美術館分館では、
斉藤真一画伯の瞽女の絵を集めておられます。)

 

 

 

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●その2「ワインの歴史」
山本博、著 河出書房新社 2,940円 2010年7月発行

 

300ページ以上、文字サイズもやや小さめで密度は濃い。
メソポタミアから現代までをカバーする幅広さ。
著作に膨大な労力を要したろうことは想像に難くない。

 

時代順に10章の構成。
一般には、「19世紀」、「20世紀」、「現代」の
最後の3章が面白いところだろう。

 「フィロキセラはアメリカの台木で克服した」
というのは誰もが知るところだが、
「そもそも、フィロキセラ、ベト病、ウドンコ病の3つは、
アメリカから輸入されたぶどう樹について
19世紀にラングドックあたりにやってきたらしい」
というのは知りませんでした。

 

一方、人類文明黎明期の章も面白い。

 「ツタンカーメン王の墓の36個のアンフォラのうち、
23個は年号つきのワインだった」、
「ポンペイの遺跡で発掘された31の邸宅のうち、
29はワイン生産者宅だった」、
など、誠に意外である。

 

「旧約・新約聖書とイスラエル」の章に書かれている、
「最後の晩餐で、
『この杯は(中略)私の契約の血である』
というキリストの一言がなければ、
ワインが今日のような世界的なものになっていなかったかも」
という指摘は、言われてみてなるほど思う。

 

古代から現代までこれだけ幅広い記述は、
余人をもって著すこと能(あた)わず。
ワイン界の泰斗、山本さんの面目躍如である。

 

平素我々が通常認識しているワインやワイン産業とは、
せいぜい、
21世紀の最初の10年と、
20世紀の最後のクォーター(1975年以降)。

筆者はその間のワインの変革は次の4つだと説く。
1:ぶどう栽培・ワイン醸造への現代科学の導入
2:流通面の構造改革
3:消費者の変化
4:ワインジャーナリズムの発展

ワインの長い歴史から見ればほんの短期間だが、
この間の4つの大変革は、
それまでの数百年・数千年の進化より大きいかもしれない、
そんな時代にワインに接しているのだということを、
改めて考えさせられた。

 

なお、本文のことでなく恐縮だが、
章ごとに「もっと知りたい人のために」という、
参考文献リストが記載されているが、
これが面白そうで、かつ膨大。

ヘンなことに感心するようだけれど、
過去に日本で出版されたり訳出されたワイン関係書籍が、
これほどあるのか、と驚いた。

ワインを愛し執着する日本人が多い証左だろう。

 

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余談ながら、
本書を読みながら思い出した以前からの疑問。

「パスツールがワインの低温殺菌法を発見」、
というのはこの本にも史実として記載されている。

日本では、清酒式指導の影響(?)で、
今もワイン液温をあげてびん充填するワイナリーが多いが、
欧米ではほとんどが常温充填(パストライズなし)。

(注:清酒の低温殺菌は、
火落ち菌やグルコアミラーゼなどの不活性化が目的、
一方パスツールの主目的は、ワインがすっぱくなること、
すなわち、酢酸変敗対策目的として考案されたそう。)

 

19世紀にパスツールの発明した低温殺菌は、
直後にカリフォルニアのワイナリーで採用されたそうだが、
はたしてヨーロッパのワイン産業で実際に使われたのか?
どの国でいつごろまで使われえていたのか?
ご存知の方がいたら、お教えください。

 

 

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●その3「ヴィンテージワイン必携」
マイケル・ブロードベント、著 山本博、訳 柴田書店 4,800円
日本語版2009年3月 原著2007年

 

もう一冊、山本さんの近著を紹介するとしたら、
「世界のワイン法」(山本、蛯原、高橋、共著)
をあげるべきかもしれないが、
ここでは「ヴィンテージワイン必携」を紹介します。
(前掲の「ワインの歴史」にも引用される本)

 

ロバート・パーカーやヒュ―・ジョンソンなら知っているけれど、
マイケル・ブロードベントという人は知らなかった。

オークションのクリスティーズでワイン部門を設立し、
高級ワインのオークションの責任者を半世紀近く務めた人。

 

18世紀(!)、19世紀、20世紀、そして
21世紀までのヴィンテージワイン9万本以上(!!)を試飲して、
その「すべて」についてテースティング記録をとったそう。

手書きで残したその記録ノートは148冊で、
その中から特に優れたワインの記録を集めたのが本書。

 

内容は以下のような具合。
(文は大幅短縮。かっこ内の歴史に関する記述等は私の勝手な注記)

 

■1789年Ch.ラフィット
(1789年=フランス革命。ワシントンが初代合衆国大統領就任)
1984年に醸造長がリコルク。
色香の失せた老婦人といったところだが、美味。
香り、味ともに甘く、繊細で芳醇。
試飲は2004年。★★★★★★(6つ星)

 

■1889年ロマネ・コンティ
(1889年=明治22年。東京市が誕生、大日本帝国憲法公布)
コルクはオリジナル。初めはかすかだが、
しだいにはっきりと酒齢を感じる。
かなり辛口。良い余韻と新鮮な酸味。
試飲は2004年。★★★★★

 

■1929年Ch.ムートン・ロートシルト
(1929年=大阪に阪急百貨店開店、東京駅に八重洲口開設)
かつて競馬場の「スター」だった。
肉付きが良く、しばしば崩れを見せるが、
大抵は興奮させてくれる。(?)
最後の試飲は2004年。最上で★★★★

 

■1950年Ch.ラルフール
(1950年=坂口謹一郎が「世界の酒」収載の旅をしたころ)
エキスが多く濃縮されているので
とても印象深いことは確かだ。
記念に飲むなら★★★★★、ただ飲むなら★

 

■1989年クリュッグ(シャンパーニュ)
(1989年=ベルリンの壁崩壊の年)
熟成香は、肉とリッチな麦藁で、甘い。
しばらくして、ふわっとカビの香りが現れる。
★★★★ すぐ飲むこと。

 

以上のような1980年代までのワイン
(常人には入手不可能な古く、高価なワイン)
の味を想像するヒント・楽しみを与えてくれるのは、
この本以外にない。

 

一方、我々が実際に飲める可能性が「少しは」ある、
1990年代・2000年代のワインは、
ボルドー、ブルゴーニュ、シャンパンだけでなく、
カリフォルニア(!)、ドイツ、ソーテルヌ、アルザスなど、
膨大な銘柄を収録しているので、
実用的にも役立ちそうな一冊。

 

チーム作業でなく、
一人でこれだけの記録を取ったとは驚異である。
簡潔でイメージのわく言葉で表現されているのが好ましい。

 

それにしても、
ワイン文化、ワインの楽しみは、奥深い。

 

 

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●おまけ 「ボローニャ紀行」
井上ひさし 文芸春秋 505円
文庫版2010年3月発刊(単行本2008年3月)

 

作家、井上ひさしさんの訃報に接した。

井上ひさしさんの著作でワイン関係といえば、
旧作「いとしのブリジット・ボルドー」
(幻ワイン、「1834年のブリジット・ボルドー」発見の顛末。
驚いたことに、70年代に出版されたこの本に、
前掲の「ブロードベント」さんの名前が登場する!)
が傑作で楽しいが、
最近発刊されたものを何か一冊、と思って読んだのが表題作。

 

ボローニャは、イタリア中部の都市。
ヨーロッパ最古の大学、
街中にある「ポルチコ」(屋根付き柱廊)、
斜めになった「ボローニャの塔」などが有名で、観光客も多い。

 

ボローニャ紀行の第一日目、
飛行場につくなり、井上ひさしさんは、
1万ドルと100万円の現金札束(!)がはいった鞄を盗られ、
「イタリアを甘くみたわね」と奥さんにいわれる。

気を取り直してそれから、
ボローニャの独特な文化や社会についての取材、記述があって、
それはそれで面白いのだが、
ここで触れたいのは機械産業について書かれた1節。

 

ボローニャ近郊には包装機械メーカーが約200社もあって、
多くはACMA社とSASIB社から独立した会社。
「パッケージングバレー」と言われているそうだ。

井上ひさしが訪れたIMA社(ティーバッグ機械で世界一)も、
ACMAから独立した会社で、
伊藤園のお茶のティーバッグ機械もここだそう。

ACMAから包装機械の技術・ノウハウを持って別れた企業は、
戦後から現在までで50社以上。

 

独立するときのルールは次の通り。
「技術・ノウハウを持ち出すことは許されるが、
同じ製品を作ってはいけない」

IMA社は、ACMA(チョコレート包装機械)から独立した会社で、
その技術は持ちだしたが、ティーバッグという異分野の仕事をした。

 

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ちょっと話はそれるのだけれど、
イタリアには、
びん充填機メーカーがむちゃくちゃにたくさんある。

日本のワイン・地ビール・焼酎分野に、
びん充填機として入っているイタリアのメーカーは、
GAI、BERTOLASSO、CIMEC、SIEM、MBF、FIMERなど10ブランド以上。

実際にはそれ以外に、
SACMI、EUROSTAR、ALFATEC、AVE、PROCOMAC、BC、、、など無慮100社くらい、
いくらなんでもありすぎ、というくらいある。

 

会社は概ねすべて北部イタリアにあるが、
特にカネリ(ミラノとトリノの中間にある)
という小さな町(人口1万人)の近郊に多い。

 

ドイツやフランスではそんなことはない。
日本でもアメリカでもない。

 

当社ではイタリアの充填機をワイン向けに輸入販売しているけれど、
この仕事を始めて以来、
「なぜイタリアにはこんなにたくさんの充填機メーカーがあるのか」、
と不思議に思っていた。

 

井上ひさしのボローニャのエピソードを読んでピンと来たが、
イタリアは「のれん分け」とか、
「スピンアウト独立」を目指す人が多い国なのである。

ただし、充填機の場合のルールは、
「技術・ノウハウを持ち出すことは許される。
しかも、同じ製品を作ることも許される。」

過酷なルールだ。
イタリアではタフでなければ商売できない。

しかし、その条件で多くの会社が現に盛業であるわけだし、
充填機の選択肢が広がる世界のワイン産業にとっては、
悪くないルールではある。

 

余談ながら、日本では、
わが故郷、滋賀県に今も多くある所謂「醸造用品問屋」で、
のれん分けが多く行われているが、
これはどうも「充填機型ルール」のようだ。

                (text = 喜多常夫)

 

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さて、参考情報の紹介です。

 

●▲■ ご紹介アイテムその1:K2ディビジョン ●▲■

 

パッケージ・デザイン・アーカイブ:
「輸入ワインに見るノマコルク」
http://www.kitasangyo.com/Archive/PDA/PDA_15b.pdf

 

ワイン輸入大手が輸入する、
ノマコルクで打栓されたワインの事例。2010年7月撮影。

「キュベ・ミティーク」や「ドメーヌ・カズ」は
「千円前後クラス」でなく、
より上級の「千円以上2千円未満クラス」。

日本のスーパーの輸入ワイン売り場ではスクリューキャップ全盛ですが、
国によって大きく事情は異なります。
アメリカでは合成コルクが全盛。

コルクスクリューでワインを開ける楽しみは、
捨てがたいものです。

ノマコルクをご検討ください。

 

●▲■ ご紹介アイテムその2:K2ディビジョン ●▲■

パッケージ・デザイン・アーカイブ:
「スクリューキャップをご採用いただいたワイン事例」
http://www.kitasangyo.com/Archive/PDA/PDA_205.pdf

 

当社はメタルキャップの製造メーカー。(ISO9001認証取得)
「酒類のブランドカバー率日本一」を自負しています。

ノマコルクをお勧めしたい一方、
スクリューキャップの対応も万全。
「ステルヴァン」(フランスから輸入)の対応も、
お任せください。

「お客様のご要望に沿ったワイン栓を提供」
が当社の基本方針です。

また、ワイン壜、スパークリング壜についてもお任せください。
フランス製、イタリア製などの壜をお届けしています。
http://www.kitasangyo.com/Archive/PDA/PDA_25.pdf

 

 

●▲■ ご紹介アイテムその3:K2ディビジョン ●▲■

「AMCORのワイン・キャップシュール」
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/closure/wine_capsule.pdf

 

ワインの錫シール、アルミシール、
シャンパンびん用のアルミフォイルなど、
キャップシュールについても当社にお任せください。

社内デザイン部門で、
ロゴデザイン作成も対応します。

キャップシュールは、
フランスのAMCOR FLEXIBLES社から輸入しています。

(注:キャップシュールやステルヴァンを製造する、
ALCAN社のパッケージング部門は、
2010年4月7日にAMCOR社に買収されました。)

 

 

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2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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