●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.144 ●▲■
       発行日:2010年9月21日(火)
■お酒・アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com

 

   ------------------< 目 次 >------------------

 ●▲■ お酒書籍の紹介・ウィスキー・ビール編 ●▲■

●その1 「ウイスキー起源への旅」
●その2 「なぜ ザ・プレミアム・モルツは、こんなに、、、」
●おまけ 「洋酒天国」(佐治敬三著、50年前の本)

                     (text = 喜多常夫)

ご紹介アイテム●1▲「エコロボ」ビール用混合ガス供給装置
ご紹介アイテム●2▲ドイツ「SAHM」のビアグラス
ご紹介アイテム●3▲アメリカ「ZAHM」のエアテスター
ご紹介アイテム●4▲「BRZ」LN2滴下つきラボ用ボトル缶充填機

 

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前回の「ワイン編」に続く、
お酒に関する近著の紹介です。

 

●その1 「ウイスキー起源への旅」

  三鍋昌春、著 新潮選書 1,200円 2010年4月発行

いま、何十年振りかのウイスキーブーム。
意図したわけではないだろうけれど、
誠にタイムリーな出版。

スコッチ・ウイスキーの書き手では、
最近、土屋守さんが非常に詳しいけれど、
この著者はサントリーでブレンダーを務めた人。

ウイスキーを造る技術者、実務経験者の視点で見た
さまざまな情報が詰まっていて興味深い。

 「(樹にストレスを加えてよいブドウをつくるように)
   酵母もストレス応答があるのではないか、
   それによってより味わい深いエールが作れるのではないか」

 「スコッチの仕込み水はたいてい色が付いている(!)、
   その成分は腐植質、つまりピートであり有機物である
  (因みに、ウイスキー銘醸地のスペイ川の水も焦げ茶色だそう)」

 「ウイスキーの樽熟成が本格的に始まったのは、
   1853年に樽保管が保税になってから。
   長い保管期間に蒸発するウイスキーに対して、
   税金を払う必要がなくなったから」

 「ルイ12世が自国民と同じ権利をスコットランドに与えた。
   それによりスコットランドにはボルドーワインが輸入され、
   そのワイン商のブレンド手法が、
   スコッチ・ウイスキーのブレンド技術につながっている」

など、ウイスキー素人には、
へえぇ、、、と感心させられるトピックスが
ちりばめられている。

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本論は、
エールビールの蒸留液たるウイスキーの起源の推理。

ウシュク・ベーハー(後のウイスキー)が普及するのは16世紀。
それより1000年も前の4〜7世紀のアイルランドにすでに、
麦のアクアヴィテ(蒸留酒)が存在したのではないか、
という仮説。

タイトルの通り、
筆者の旅の経験を通じた推理が展開される。

 

いくつかのウイスキー蒸留所での実習経験や、
ピート掘りの作業の様子も興味深い。

90年前にスコットランドで学んだ、
竹鶴政孝(山崎蒸溜所初代工場長、その後ニッカを創業)の時代はいざ知らず、
50年前に佐治敬三(サントリー2代目)がスコットランドを旅したときは、
ウイスキー工場は非公開、特に日本人には見せない、
という時代だった。

筆者は、
ヘリオット・ワット大学(英国の醸造・蒸留学のメッカ)で学んだ、
という事情があるにせよ、
時代は変わったものだ、と感じます。

秋の夜長に、
一人ウイスキーを愛でながら読みたい一冊。

 

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余談ながら、、、

ウイスキー酵母の解説の部分に、

 「20世紀初頭にモルト由来でない糖化酵素が禁止された。
   それがウイスキー酵母の開発を促進させた。
   法律制定前はカビなどから抽出した糖化酵素も使っていた。」

という記述がありました。

アドレナリンやタカジアスターゼで有名な高峰譲吉博士が、

 「1890年代にウイスキー会社経営者に請われて渡米し、
   アミロ法(麹)によるバーボンウイスキー工場を建設。
   ところが操業開始前夜に、
   失職を恐れたモルト業者の放火にあって実現しなかった。」

というエピソードは知られるところですが、
20世紀初頭の英国の糖化酵素の使用禁止も、
大西洋を越えた高峰の影響だったのでしょうか。

もし麹でつくるウイスキーが世界に広まっていたら、
どうなっていたか。。。

麹で糖化するウイスキーはどんな味なのか、
一度体験してみたいものです。

 

 

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●その2 「なぜ ザ・プレミアム・モルツは、
              こんなに売れるのか?」

  片山修、著 小学館 1,500円 2010年6月発行

 

お酒の本、というよりビジネス書、です。
著者は学習院女子大の客員教授も務める経済評論家。

ご存知の通り、
「市場縮小」と「低価格化」(=「第三のビール」化)の
二重苦が続くビール系飲料市場の中で、
「本当のビール」で「プチ高価格」の
プレミアム・モルツが売れています。

2009年まで6年連続の販売増。
2010年に入っても好調だそうです。

 

その成功の要因は何か?

営業、開発、販売、生産、ブランド、経営の5章にわけて
顔写真・実名入りで関係者を紹介し、
成功の要因を分析した書物。

成功商品はかく作られる、という、
各分野の担当者の熱意と努力が伝わってきます。

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ただ、
プレミアム・モルツ独特、または、
サントリー独特、であるのは、
創業家の「個人的熱意」、そして「熱意の継続」があること。

1960年に2代目佐治敬三が
鳥井信治郎の枕元でビール参入の決意を告げると、
「やってみなはれ」といわれた、
という話はあまりにも有名。

戦前、創業者の鳥井信治郎は、

  1928年に「カスケードビール」(日英醸造(株))を買収
   1929年に「新カスケードビール」ブランドで販売
   1930年に「オラガビール」ブランドを発売
   1934年に撤退(大日本麦酒・麒麟麦酒の共販会社に工場売却)

という数年間のビール経験がある。

1957年には宝酒造がビールに参入して、
大苦戦を強いられていた。(その後撤退)

寡占市場への新規参入がいかに困難かは、
経済学で教わる典型的テーマ。

そんな中で1963年から再参入し、
そして、成功するまで続ける執念。
サントリーのビール事業が黒字を計上したのは、
参入から45年目(!)の2008年だそうです。

小林一三(阪急創業者。商工大臣、国務大臣も歴任)、
高碕達之助(東洋製罐創業者。通産大臣、経済企画庁長官など歴任)
という「阪急宝塚線沿線の大物」と公私の交友があって、
ビール事業には彼らの助言もあったそうですが、
それも「企業的」より「個人的なもの」を感じさせます。

 

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プレミアム・モルツの成功には、
醸造技術、品質、対価格満足度、時代環境、などなど
多くの要素が組み合わさっているけれど、
ヒットのきっかけは、
2005年のモンドセレクション最高金賞受賞。

モンドセレクション効果に驚くとともに、
受賞アピール、マーケティングの巧みさは、
「さすがサントリーさん」。

小生、10年ほど前に某酒造メーカーさんの授賞で、
モンドセレクション授賞式に参加したことがあるのですが、
当時ですでに日本人比率が過半だった。
日本のモンド受賞商品の多さとその成功を見ると、
こちら(ベルギーの会社)のマーケティングも巧み。
「さすがモンドセレクションさん」、ともいえるでしょう。

 

そして、これは個人的感想なのですが、
パッケージデザインの貢献度が大きいと感じます。

缶正面から見てサイドの紺色に縁取られた、
くびれた金色のピルスナーグラスのデザイン。
とても印象的で、高級感もある。

このパッケージデザインは2002年にコンペがあり、
社内の女性デザイナーの案が採用されものだそう。

彼女は1ヶ月間考えていいデザインができなかったけれど、
コンペ期限前日(!)の、
帰宅の電車の中(!!)でパッと閃いた。

帰って夕食を済ませた後、
自宅のパソコンで一気にデザインを完成させたそうです。

 

改めて缶のデザインを眺めてみると、
「ザ・プレミアム・モルツ」とは書かれておらず、
「ザ・プレミアム」とあって、その下に別の書体で
「モルツ生ビール」と分けて書いてある。

本書にも書かれていますが、
1980年代に前身の「モルツ」ビールがあって、
その実績を踏まえて進化させた「プレミアム」版が、
「プレミアム・モルツ」なわけですね。

成功は一朝一夕にならず。

成功商品の裏には、
実にいろいろな要素があるものだと感じました。

一見、偶然や、一瞬のひらめきのように見えても、
実は大変な努力と執念の賜物であると。

小生、ビジネス書というジャンルは不得手で、
まったく読まないのですが、
本書にはずいぶん勉強させられた思いでした。

 

 

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意図したわけではないけれど、
サントリーさん関係が2冊続きました。
そこで、もう一冊「おまけ」で次の書籍をご紹介。

近著ではまったくなくて、ちょうど50年前の本ですが、
以前から一度読んでみたいと思っていた本。

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●おまけ 「洋酒天国
         世界の酒の探訪記」

  佐治敬三、著 文芸春秋 1960年12月発行当時、270円

 

少し前なら、
東京出張のとき神田神保町の古書店でさがそうか、、、
となるところですが、いまならインターネットがある。
思いついたらその場で購入できます。

うろ覚えの書籍名でもすぐさま見つかり、
アマゾンの古書出品者(山口県の古本屋さん)から買いました。

当時の定価は270円ですが、エクストラがついて、
750円+送料340円=1,090円也で入手。

「洋酒天国」といえば、
60歳台以上の方(私は50歳台。為念)なら
寿屋(現サントリー)が出していた同名の広報誌を
思い浮かべるかもしれないけれど、
この本は当時、寿屋専務だった佐治さんが著したハードカバー本。

蝙蝠傘に山高帽、黒い背広の紳士が闊歩するロンドン、
という「半世紀前らしい」写真(著者が撮影)が本のカバー。

 

東大の坂口謹一郎博士が、
「世界の酒」(今も岩波文庫に収録。個人的愛読書です)の
欧米の旅を行ったのが1950年。

その10年後に似た足跡をたどった旅で、
坂口の「世界の酒」を意識して書かれたことは、
著者自身、あとがきに書いています。

「坂口先生に比べて自慢できるとしたら、
スコットランドのウイスキー蒸留所の見学」
と書かれている通り、
スコッチ・ウイスキーのパートが充実しています。

スコットランドのインバネスにたどりついて、
まずグレンリベットのモルトウイスキーを買い求めたそう。

 「スコットランドもこの辺まで来ないことには手に入らぬ。
   よほどの好事家でなければ買い求める人とてないが、
   私にとっては垂涎の品だ。
   地球の裏側までやってきたのも、これあればこそ」

と書いていますが、当時はまさにそうでしょう。
また、著者が生粋のウイスキー通である証左。

スコットランド訪問の目的は蒸留所見学で、
つてを頼って手を尽くすけれど、どこも断られる。

「ウイスキー起源への旅」のところで書いたとおり、
当時はウイスキー工場は非公開。
日本人、それもウイスキー会社の寿屋などとんでもない、
という状況。

ウイスキー工場を訪問するが門前払い。

そんな中で、苦労して、
ベン・ネビス蒸留所とストラス・ミル蒸留所の
見学に成功する顛末には執念と運の強さを感じます。

「音に聞こえたスペイの川」とは著者の表現ですが、
そのあたりの蒸留所の風景が、
サントリー山ア蒸留所に似ていることに感銘をうけた、
というのも、オーナー経営者らしい。

「猪名(いな)川」(サントリー山ア蒸留所に近い川)と、
「スペイ川」の写真を載せ、
「どちらがスペイ川でしょう」と書いています。

当時のスペイ川は、
濁っていない清流だったのでしょうか。

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他の欧米各国の記述も面白い。

 「パリからシトロエンでエペルネへ」
  (仏、シャンパンハウス訪問)

 「ボゲラの駅前から車でカネリのワイナリーへ」
  (伊、ピエモンテのワイナリー訪問)

 「リューデスハイムの路地をさまよう」
  (独、ラインガウのワイン)

 「砂漠のようなナパ・バレイ」
  (米、ナパのワイン)

私自身が、これらの場所を訪問した体験、
しかも偶々似たような旅程の体験を持つ者なので、
よけいに引き込まれます。

 

シャンパーニュは坂口も佐治も訪れていますが、
「商売の仕方」に注目しているのが佐治らしい。

 「モエシャンドンは一切広告をしない。(←当時は)
   世界各国からくるVIPをシャトーでもてなし、
   特醸のモエシャンドンとおいしい食事を提供する。
   彼らはそれぞれの国に帰って、
   モエへの賞賛を口伝えで良い顧客層に伝える。
   それが何よりの宣伝である。」

広告・宣伝の手法には、常に関心があったようです。

 

佐治さんは阪大理学部出身の理科系ですが、
文才もたいしたもので、
すらすら読めるし、ウィットもある文でとても面白かった。

 

お酒の各国事情は誠に面白いものです。
誰か「世界の酒、2010年版」を、ものしませんか。

                (text = 喜多常夫)

 

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さて、参考情報の紹介です。

 

●▲■ ご紹介アイテムその1:ROOTSディビジョン ●▲■

「エコロボ」ビール用混合ガス供給装置(3ページ)
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/gas/ECO2_ROBO_ed.1.1.pdf

樽からビールを押し出すとき、
「窒素と炭酸の混合ガス」を使うことで、

  1)炭酸ガス(温暖化ガス)使用量を減らす
   2)オーバーカーボネーションを防ぎビール品質を守る
   3)注ぐときのロスが少なくなる

という、いわば一挙三得。

また、飲み比べをすると8割近い人が
「混合ガスのビールが飲みやすい」と回答。

「エコロボ」は、窒素ガス発生装置を内蔵した、
混合ガス供給装置です。

なお、エコロボの心臓部のガス混合機は、
ギネスビール向け初め、世界でもっとも実績のある、
イギリス「BSLガステクノロジーズ社」製を採用。
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/gas/Gasblender_ed04_2_WOP.pdf

ガス混合機の単体販売もいたします。
独特の混合機構で立ち上がりから正確な混合比を保ちます。

 

●▲■ ご紹介アイテムその2:K2ディビジョン ●▲■

ドイツ「SAHM」のビアグラス(10ページ)
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/package/SAHM_Beerglass.html

 

ビール業界、地ビール業界、
そしてビアホールや居酒屋チェーンの皆様、
きた産業は、ドイツ・ザーム社のビアグラスを販売しています。

ドイツビールでおなじみの、
さまざまな形、薄いガラスの質感、独特の金縁、
のビアグラスを、ロゴ入りでお届けします。

お気軽に営業部宛、ご照会ください。

 

●▲■ ご紹介アイテムその3:ROOTSディビジョン ●▲■

アメリカ「ZAHM」のエアテスター(2ページ)
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/gas/ZN_airtester.html

アメリカ・ザーム(ツァーム)社のエアテスターは、
ビールはじめ、ガス飲料の炭酸ガス含有量や
ヘッドスペースエアを測定する世界標準機。

デジタル測定装置(国産)つきモデルや、
ガスクロ接続用のモデルなど、
さまざまなバリエーションがあります。

スペア部品も在庫しています。


●▲■ ご紹介アイテムその4:ROOTSディビジョン ●▲■

「BRZ」LN2滴下つきラボ用ボトル缶充填機(2ページ)
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/machine/BRZ_JPN_ed01_1.pdf

世界唯一の、
液体窒素滴下装置つき、ボトル缶の充填機。
無ガス飲料用です。

ガス飲料用の「BRX」もあります。

「BRZ」のビデオは下記でご覧いただけます。
http://www.kitasangyo.com/video-library/video-top.htm

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http://www.kitasangyo.com/Archive/mlmg/BN_top.html

2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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