●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.262 ●▲■
発行日:2020年6月17日(水)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■

発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com

------------------< 目 次 >------------------

●▲■ 100年前・・・「スペイン風邪」、「禁酒法」、「清酒28%減」
●▲■ 100年後の今・・・「外飲み」か「家飲み」かの二者択一に
●▲■ 「悪いことは重なる」・・・海外のSAKEの家飲み比率<15%

ご紹介情報●1▲ HACCPの基本、ホースを床に置かない「醸造所のホース巻き」
ご紹介情報●2▲ ワイン・蒸留酒のための「MOOG樽洗浄機」+「トペット」・
「シーフ」
ご紹介情報●3▲ びん内二次醗酵スパークリング(ワインと日本酒)の設備一覧

                        text = 喜多常夫

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100年前の「スペイン風邪」がテレビや新聞でよく引用され、
すっかり有名になった。
1918年から1920年にかけてパンデミックとなり、
世界で数千万人、日本で39万人が死亡したそうだ。

当時の酒類産業はどうだったのか。

アメリカでは、
スペイン風邪終息の年の1920年に「禁酒法」が施行され、
以後13年間(少なくとも公式には)、
ビールも、ワインも、ウイスキーも、造られなくなった。
たとえば、ビール醸造所数の変化は以下の如し。

■1919年:669か所
■1920年:0か所(100%減!)
出典:
https://www.brewersassociation.org/statistics-and-data/national-beer-stats/

日本はどうだったのかと、
同じ年の清酒の生産量(課税石数)を見ると以下の如し。

■1919年度(大正9年度):588万石
■1920年度(大正10年度):426万石(28%減!)
出典:「酒税関係史料集II」(税務大学校・租税史料室)

アメリカの「禁酒法=100%減」よりはましだが、
日本の「28%減」は大打撃だったろう。
蔵元の数は、10,235場から1年で444場も減った。
23社に1社が淘汰された計算。

「28%減」は日本政府にとっても大打撃だったろう。
当時は、国税のなかで酒税の比率が極めて高く、かつ
酒類の中で清酒が圧倒的シェアだったので、国税収入も激減したはず。
(1920年の清酒の生産量は、焼酎の10倍、ビールの6.5倍)

なお100年前の清酒は、
アル添は存在せず、全て純米酒だった。
ガラスの一升壜はまだ出始めで、多くは樽で流通し、
東京では、江戸時代から続く新川の下り酒問屋が幅を利かせていた時代。
蔵元では、タンクでなく木桶で仕込んでいて、
新技術である速醸酛が全国に広がりだしたころである。

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100年後の今、COVID-19のパンデミックで、
世界の酒類産業は大きな影響を受けている。

国によっては、一時的とはいえ、
ビール製造は不要不急産業なので工場停止(メキシコ)
お酒は生活に不可欠ではないので販売禁止(タイ)
といった政府命令がでた。

日本ではそんなことはありえないが、
ビール、清酒、焼酎、、、ほとんどの酒類で大きな減少になっている。

仮に、清酒が100年前と同じ減り方としたら、
■2019年:260万石(暦年実績、丸めて表示)
■2020年:185万石(▲28%)

うーん、、、さすがにそこまではないだろう、、、
が、2020年暦年で、

■235万石(▲10%)
■220万石(▲15%)
■210万石(▲20%)

、、、といったシナリオは現実的な気がする。
しかも、2021年も厳しい状況が続くだろう。

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イベント需要、贈答需要、お土産需要、JR駅需要、、、
酒DS、酒販小売店、コンビニ販売、ネット販売、、、
居酒屋需要、高級割烹需要、お花見需要、ホームパーティー需要、、、
「夜の街」(copyright東京都?)需要

今まで、実にいろいろあったものが、突然、

「家飲み」か
「外飲み」か

の二者択一になった。

4月・5月と伸びている「第三のビール」と「発泡酒」は、
典型的な「家飲み」のお酒であるのは異論がないだろう。
かつ、「本物ビール」に比べ価格が安いことが効いているのも確かだ。

逆に大きく減っていると伝えられる「本物ビール」は、
「外飲み」比率が「第三のビール」「発泡酒」に比べ、圧倒的に高い。

アメリカでは、クラフトビールが売れない一方で、
減り続けてけていたバドワイザーの「Bud Light」がよく売れているそうだ。

清酒は大容量紙パックが好調のようだけれど
「買い物(外出)頻度を減らすため」、というのは建前で、
「低価格」が効いていると思う。

COVID-19が収まらないうちはもちろん、
COVID-19後のNew Normal(新しい日常)でも
「外飲み」は、減少
「家飲み」は、減らない(または増加?)、しかし低価格化
という変化が起こると考えられる。

清酒、焼酎、ワイン、ビール、ウイスキー、RTD、、、について、
従来の、家飲みvs外飲みの比率はどのくらいなのか。。。
New Normalの、家飲みvs外飲みの比率はどう変化するのか。。。

ウイスキーなどの蒸留酒は結構善戦(家飲み比率アップ?)しているそうだが、
酒類だけでなく、ブランドによっても大きく異なるだろう。

世界的企業も、大手も、中堅も、中小酒造業者も、クラフト醸造所・蒸留所も、
家飲みを活性化する戦略、
家飲みで利益を確保できる商品、を考えねばならない局面である。

(他人事ながら、、、海外の有名蒸留酒には、
世界中の空港免税店が販売の主力であるブランドがあるが、
4月・5月は完全ストップ、今後2年間は極端に減るだろう。
「空港免税店販売」は、実は「家飲み」需要である。
酒類の免税品市場は巨大。どうなるのか注視しておきたい。)

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冒頭、100年前の、アメリカの「禁酒法」と日本の「28%減」の事を書いたが、
ちょうどパンデミックのタイミングでありながら、
スペイン風邪とは別の要因である、というのが通説。

COVID-19は、2020・21年の世界経済に深刻な打撃を与えるのは必至だし、
空前の巨額給付金は、赤字国債となって今後長く、世界各国の重荷になる。
歴史書に、そのように記録されるのは間違いないと思う。

一方、100年前のスペイン風邪は、実は、
世界経済にそれほど打撃を与えなかったそうだ。

スペイン風邪は第1次大戦中に発生し、戦争を終結させる要因ともなった。
戦争特需と、その後の戦後特需がパンデミックのマイナス効果を上回り、
世界で数千万人が死亡したにもかかわらず、世界経済は堅調に推移した。

日本も、第1次大戦から「大正バブル」と言われる空前の好景気となった。
が、1920年3月に「戦後恐慌」が起こって、一気に不景気になる。

1919年度の588万石(大正時代を通じての最高石数)は、
「大正バブル」であったのは間違いない。

1920年度の426万石への激減は、
(スペイン風邪で39万人が死亡した影響がないはずはないと思うが、)
一般には「戦後恐慌」の産物だととらえられている。
この年、多くの銀行や会社が倒産した。

(歴史書にはないが、スペイン風邪は戦後恐慌の一因であったと思う。
39万人死亡というのは内務省の数字。別の研究者によれば45万人死亡。
日本統治下だった台湾・朝鮮を含めた推計は74万人死亡。
いずれにせよ、3年後の関東大震災の10万人死亡よりはるかに多いのに、
一般的な教科書や歴史書に登場しないのは、不思議である。)

アメリカの禁酒法も、それまでの長い禁酒運動や女性運動が主な背景で
1920年に成立した、というのが一般的なとらえ方。
感染死が身近な状況は、多くの人々の禁酒意識を後押ししたと思うが、
それに言及した資料は見たことはない。

(中世ヨーロッパのペストでは、死亡率がもっともっと高かった。
バタバタと人が死ぬ状況では、人々はもうこの世の終わりだと思って、
禁酒せず、酒をあおった。「デカメロン」の世界である。)

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100年前の「スペイン風邪」と「清酒28%減」は、
あるいは関係が薄かったのかもしれないが、
少なくとも、
「悪いことは重なる」という諺どおりの実例である。

話を現在に戻すと、
清酒の近年の大いなる希望は、海外マーケットである。
近年、国内マーケットは落ちても、海外が成長してきた。

が、2019年、韓国で輸出が急減、
2020年は、韓国の減に加え、
香港・台湾・中国・米国の5大清酒輸出国のすべてが不安定となった。
COVID-19の影響もあるが、別の政治的要因が大きい。

さらに、海外のSAKE消費は、
日本食レストラン需要(=外飲み)で支えられていて、
家飲み比率がとても低いことも留意しなければならない。

 ●日本における清酒は 家飲み比率>少なくとも50%以上(たぶん70%くらい?)
 ●海外におけるSAKEは 家飲み比率<15%

であると思う。
アジアではもう少し高いが、ヨーロッパでは5%以下かもしれない。

New Normalで家飲み重視になるのは、
日本でも海外でも同じ。
日本食レストランの世界的急増が日本酒輸出増加の主要原動力だったが、
それはCOVID-19では裏目になる。

国内向け・海外向け、両方が厳しい、、、
「悪いことは重なる」ものである。

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日本の酒造メーカーには長寿企業が多い。
個人個人にとっては「COVID-19は経験したことがない局面」だが、
社歴のある会社は「もっとひどい局面(第二次大戦など)」を経験し、
それを乗り越えて来ている。

会社でなく、日本の酒造業・醸造業という見方をすれば、
何世紀もの間、いくどもの難局を乗り越えて今に至っている。

日本にとって、酒造業・醸造業は、
電気、自動車、ITなどより、むしろグローバル価値が高い産業であると思う。
難局を克服しなければならない。

                          text = 喜多常夫

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さて、商品紹介です。

●▲■ ご紹介情報 その1 ROOTSディビジョン ●▲■
「醸造所のホース巻き」
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/winery-and-brewery/MODULO.pdf

ホースを床に置かないのはHACCPの基本。
ホースを巻き付けてコンパクトに収納、残留液も自然排出。

●▲■ ご紹介情報 その2 ROOTSディビジョン ●▲■
ワインや蒸留酒のためのMOOG樽洗浄機
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/winery-and-brewery/Rothojet.pdf

スイスMOOG社は、樽洗浄機の世界トップブランド。
日本でも、多くのワイナリーでご採用いただいています。
蒸溜所の大型の樽にも、エクステンションパーツで対応。

樽関連で、こんなマニアックな(?)ものも在庫しています。
蒸留酒樽からのサンプラー「トペット」
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/winery-and-brewery/Topette.pdf
ワイン樽からのサンプラー「ワインシーフ」
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/winery-and-brewery/Wine_Thieves.pdf
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/winery-and-brewery/Wine_Thieves2.pdf

●▲■ ご紹介情報 その3  ROOTSディビジョン ●▲■
びん内二次醗酵スパークリング(ワインと日本酒)の設備一覧
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/for-sparkling-cider-and-brandy/ch_equipment3r.pdf

主にワインを意識したイラスト資料ですが、
日本酒で採用実績のあるものにマーキングしています。

びん内二次醗酵だけでなく、タンク内ガス添加も含め、
スパークリングの設備・資材ことなら、お任せください。

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