●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.212 ●▲■
発行日:2015年9月25日(金)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■

発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com

 

------------------< 目 次 >------------------

 

●▲■ クラフトビールの20年(その2) ●▲■

  ●■ 地ビール醸造所の20年存続率は56%
●■ 日本製でない、日本クラフトビール?
●■ 世界市場で伸びるベルギービール

                      text = 喜多常夫

ご紹介情報●1▲ 2000cphビール缶詰機「G-TRON(ジー・トロン)」
ご紹介情報●2▲ ビールびん詰め機、独「ライビンガー」と米「メヒーン」
ご紹介情報●3▲ ビールタンクの「スプント弁」

 

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2015年は、
小規模ビール醸造が解禁になって20年の節目。

前回メルマガの「その1」では、
「世界的動向としての、大手のクラフトビール参入」
「日本とほぼ同じ20年の歴史のチェコのクラフトビール」
について書きました。

今回の「その2」は、
日本の地ビール、ベルギーのビールの話。

 

 

 ●▲■ 日本の地ビール醸造所数の分析

きた産業では、地ビール解禁の1995年以来、
独自に地ビール・地発泡酒の醸造所数を毎年カウントして蓄積し、
ウェブサイトで公開しています。
http://www.kitasangyo.com/BEER/beer_index.htm

この蓄積情報による、いままで20年間の累計は:

 ●394社が開業(再開含む)
●173社が閉店(休業含む)
●394-173=221社が2015年3月現在営業中の醸造所数

 

存続率は、221÷394=56%。
ずいぶん多くが淘汰されたことになる。

ただ、中小企業庁の2011年の「中小企業白書」の
「企業の生存率」という分析によれば、
「日本企業の20年間存続率は52%」だそう。

地ビール・地発泡酒の56%は、
20年前創業の会社ばかりでなく、
10年前や5年前に創業した会社も含む平均なので比較にならないが、
まあ、日本企業の平均的存続率に近いのかもしれない。

 

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20年の開業数・閉店数を分析すると、
いくつかの時代に分けることが出来る。

 ■1995~1999年の5年間:急増の時代■
5年間で313社が開業(20年間の総開業数394社の8割)。
この間の閉店はわずか10社。
ヨーロッパ各国からのいわば「お雇い」外国人技師、
アメリカのクラフトビール経験者、
大手ビール技術者、、、
などの醸造指導でビールを造る、今思えば手探りだった時代。
無手勝流でビールを醸造する人もいた。
ピークだった99年には303社が操業していた。

 ■2000~2009年の10年間:淘汰の時代■
実は美味しくない地ビールが多い、と言われた時代。
大手ビールで「発泡酒」のシェアが増加し、
さらに安価な「第三のビール」が出現した時代でもある。
この10年間は141社も閉店(20年の総閉店数173社の8割)。
当然、新規開業にはブレーキが掛かり、開業数は46社。
醸造所数は年平均10社減少。
10年で300社強から200社強に。
しかし生き残った醸造所、新規参入の醸造所では、
ビールの味や品質の改善が進んだ。

 ■2010~現在の5年間:再興の時代■
ビール品質が全体として安定し、また、
世界的なクラフトビールブームもあって、市場が再拡大。
この5年間は、開業が35社、閉店が22社。
閉店より開業が多くなって、醸造所数は漸増基調に。
リーマンショック(2009年)を過ぎた2010年からは
景気回復基調になった事も大きいと思う。
日本人経営でない、外国人経営の醸造所も増えた。
また、前回メルマガ記載の通り、
「大手ビールのクラフトビール買収・参入」の時代の始まりでもある。

 

 

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 ●▲■ 日本製でない、日本のクラフトビール?

「現在営業中の221社」に入っていない
「日本のクラフトビール」もある。

漢字・ひらかな・ローマ字で
でこんな銘柄を記したクラフトビールをご存じだろうか。

 「欧和(おうわ)」
「馨和(かぐわ)」
「生(IKI)」

ロンドン、パリ、アムステルダム、ブリュッセルなど、
ヨーロッパ主要都市の有名日本食品専門店の酒類売り場で
最近、よく見かける。
日本製クラフトビールブランドより、棚取りが多いように思う。

「欧和(おうわ)」「馨和(かぐわ)」は東京でも買えるので
ご存じの方も多いのではないだろうか。

これらはすべて、ベルギーで醸造される。

●「欧和(おうわ)」:
キリンビール勤務の経験のある今井さんが、
2007年からベルギーのビール醸造所で製造。
梅、桜、柚子のランビックもある。

●「馨和(かぐわ)」
日本クラフトビール社の山田さんが、
自分のレシピでベルギーの醸造所に委託して製造。
ゆずや山椒のフレーバー。
「Far East Tokyo」という別ブランドもあって、
こちらは日本国内のクラフトビールに委託して製造。

●「生(IKI)」
日本に留学経験のあるオランダ人、ヘメラールさんが、
ベルギーの醸造所に製造委託、ヨーロッパ域内で販売。
日本食材にインスピレーションを得た、
副原料に煎茶や柚子を使ったビール。

 

これらはベルギー製であっても、ヨーロッパの人たちの視点では
「日本のクラフトビール」だろう。

これからの5年間、2015~2020年は、
クラフトビールにとって海外市場が大きな意味をもつ時代。
(日本だけでなく世界中のクラフトビールが、輸出にドライブをかける)

そんな中で、
「ベルギー製の日本クラフトビール」という方法論・ビジネスモデルは、
ベルギービール自体が持つ魅力もあいまって、
注目すべきだろう。

 

 

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 ●▲■ 世界市場で伸びるベルギービール

クラフトビールの範疇からやや外れますが、
ベルギーのビールについて書きます。

ベルギーには、
小さな国土(四国より大きく九州より小さい)の中に

 ●170くらいのビール醸造所
●240くらいのビール製造会社(醸造所なしの経営形態もある)
●1,500ものビール銘柄

があるのだそう。

積極的にPB製造を受託する醸造所もあるようで、
日本でも大手酒販や流通でベルギー製PBビールを販売している。
韓国製PBビールとは対極の、高価格商品である。

ベルギーのビールは、
ファミリーカンパニーとして数世代経過した、歴史ある会社が多い。
地域ごとに中世以来の独自のビールのレシピや文化があることも多い。

 

いまやベルギービールの名は世界に轟いているけれど、
かつて、つい30~40年前は、
それほど有名ではなかったと思う。

酒学の泰斗(たいと)、坂口謹一郎は、
戦後の1950~1951年の旅を著した名著
「世界の酒」で、
デンマークの「カールスバーグ」
ドイツの「レーヴェンブロイ」
英国の「バス・ペール・エール」
については詳しく書いているし、
アメリカのビールは「オートメーションで量は世界一だが、まずい」
オランダのハイネケンやアムステルは「それほどでもない」
と酷評ではあるが、触れてはいる。

しかし坂口は、
ベルギーのビールについては何も触れていない。
当時のベルギービールは、
世界市場では注目されていなかったのだろう。
実際、そのころのベルギーのビール産業は
衰退の途にあったのだと思う。

 

それが、、、

 オレンジピールやコリアンダーを使った独特の風味
びん内二次醗酵ビールという付加価値の高い製法
食事との相性(フード・ペアリング)を語れるビールであること
初期のアメリカのクラフトビールでベルギースタイルが人気となった
ベルギー出自のAB InBev社がいまや世界一のビール会社になったこと
国際機関の本部が多くベルギー国のプレゼンスがあがったこと

などなど、、、
単一の理由でないく、複合的要素の結果だと思うけれど、
とにかくこの20年ほどで世界的人気となった。

ベルギーは、
21世紀に入ってビール生産量が増加基調にあるという、
先進国では例外的な国。
ベルギーでも近年、一人当たりビール消費量は日本並みに減少している。
しかし、輸出が毎年伸びている。

日本の輸入統計を見ても、
ベルギービールは、輸入金額第1位、輸入量第3位(2014年)。
ベルギービールファンの増加と、
高価格商品であることをうかがわせる。

 

偶々のチャンスを得て今月初旬にベルギーにビールを見に行きました。
見学した4か所の醸造所のこと、
年に一度のお祭り「ベルギービール・ウィークエンド」のことなど、
写真資料にまとめました。

●▲■アーカイブ資料
「ベルギービール・ウォッチング」(7ページ)
http://www.kitasangyo.com/Archive/Data/belgian_beer.pdf

資料に記載していますが、
20年ぶりにカンティヨン醸造所を訪問して、
蜘蛛の巣がなくなって(!)樽貯蔵所が清潔になったこと、
麦汁の冷却パンの上の屋根の穴がふさがった(!!)こと、
そして、
世界中からの訪問客の多さ(世界的人気!!!)
には、驚きました。

冒頭記載の、
「欧和(おうわ)」「馨和(かぐわ)」「生(IKI)」などの
「ベルギー製の日本のクラフトビール」も収載。

 

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<付記1>
余談ながら、ベルギービールは、
ユネスコの世界無形文化遺産登録を目指しているそうだ。
それを聞いて、
世界一の長寿企業群である日本酒こそ
文化遺産登録を目指すべき、と思った。
間違えなく取得できると考えます。

 

<付記2>
前回メルマガで

 「世界の大手ビール企業の経営戦略を俯瞰すると、
再編ドミノ:M&A合戦の時代は、
2002年のSABミラー誕生に始まって
2012年のメキシコ1位のモデロ買収でほぼ終了
中規模以下のM&Aは今後も続くが、大型の買収対象はなくなった」

と書いた。

しかしその後、つい先日の新聞で

 「世界1位のAB InBev社(本社ベルギー)が、
世界2位のSABミラー社(本社英国)に買収打診
実現すれば世界ビールの3割をしめる巨大企業誕生」

という報道があった。

以前からこの買収の話題はあったが、
米・欧の独禁当局が許可しないと言われていた。
けれど、これだけ報道されるということは、
実現環境が整ったのかもしれません。

AB InBevの今の社長はブラジル出身ではあるけれど、
シェア拡大の執念は「社風」、すなわち「ベルギーの血」だと思う。
新テクノロジーで首位交代があるIT産業などと違って、
ビールはいわば「古い産業」。
そんな古い産業で、
ローカル発の会社が20年で圧倒的世界一になるとは。
しかもさらにシェア拡大に打って出る。

ベルギー恐るべし、、、と思いました。

 

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<しめくくり>

2015年以降は、
アルコール度数10%を超える酒類(ワイン、日本酒など)より、
アルコール度数1ケタの酒類の「多様化」が進む時代だと思います。

そのなかで、
手軽で安価なRTDも増えるのだとは思いますが、
これは「お酒の文化」「お酒の産業」にとって、
必ずしもプラスだとは思いません。

一方、
クラフトビールのシェア拡大による
「ビールの多様化」、あるいは、
「ビールの付加価値向上」が果たす役割は、
「お酒の文化」「お酒の産業」にとって大事な役割を果たすと思います。

クラフトビールの次の20年に期待します。

                 text = 喜多常夫

 

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さて、情報紹介。
今回はビール向けの機材のご紹介です。

 

●▲■ ご紹介情報 その1:ROOTSディビジョン ●▲■

2000cphのビール缶詰機「G-TRON(ジー・トロン)」
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/machine/G-Tron.pdf

従来、ロータリーのビール缶詰め機は、
「ドイツ製・充填機+ルーツ製・缶巻き締め機」のモノブロック
をお勧めしていましたが、このたび
「充填機も缶巻き締め機もルーツ製」のモノブロック、
「G-TRON」を開発。

すでに、
地ビール2社にご採用いただいています。

 

 

●▲■ ご紹介情報 その2:ROOTSディビジョン ●▲■

ロータリーのビールびん詰め機「ライビンガー(旧社名SMB)」
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/machine/leibinger.pdf

SMBの6、9、12、15ヘッドのびん詰め機、10台以上に加え、
ライビンガーの新型「ハイジ―ニック」モデルも、
日本の地ビール醸造所で稼働中。

 

横型インラインのビールびん詰め機「メヒーン」
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/machine/Meheen.pdf

メヒーンは、
アメリカのクラフトビールで最も多く使用されるびん詰め機。
日本でも20台程度が稼働しています。
リーズナブルな価格と、量産体制による短納期が特徴です。

 

 

●▲■ ご紹介情報 その3:ROOTSディビジョン ●▲■

ビールタンクのスプント弁
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/gas/supund.pdf

地ビールだけでなく、
大手ビールにもご採用いただいています。
ドイツ品質。B+K社の製品をご紹介しています。

 

 

 

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