●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.257 ●▲■
発行日:2019年12月25日(水)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com
------------------< 目 次 >------------------
●▲■ 年末恒例、2019年の 〇 X !
■ サントリー 「六」:日本のお酒として、
世界の空港免税店の配荷率、(たぶん)史上最高→〇
■ 韓国向け輸出:清酒・ビールとも対前年比4~5割減→×
一方、香港向けは今のところデモの影響は少ない→〇
■ アサヒとキリンの海外戦略:「大手買収」と「クラフト買収」
■ その他諸々の、「!:ビックリ」
スパークリング、シードル、焼酎輸出、海外クラフトサケ、
RWC、海外向けは清酒製造ライセンス緩和、etc.
●▲■ 年の瀬のご挨拶
text = 喜多常夫
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年末恒例の「今年1年の 〇X」は、2005年にはじめて15年目。
今年も、その時期になりました。
当社のビジネスとは関係なく、独自の視点で、
お酒・アルコール飲料業界の2019年を振り返って、
○(マル:良かったこと)
X(バツ:悪かったこと)
!(ビックリ:驚いたこと)
を書きます。(企業名は敬称略で失礼します。)
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●▲■ ●▲■ サントリーのジン 「ROKU・六」 ・・・ 「〇:マル」
サントリー 「六」は、2017年7月の発売。
なぜ、2019年の〇に登場かというと、、、、
あくまで、海外出張時の個人的観察からの推測だけれど、
サントリー 「六」は、2019年末時点で、
「世界の国際空港の免税リカーショップで、
配荷率が一番高い日本製のお酒」
しかも、
「歴史上、最も世界の免税店配荷率の高い
日本製のお酒」
になったのではないか。
(注:配荷率=その商品が売られている店舗数 / 総店舗数)
ヨーロッパやアメリカを旅すると、
ロンドン・パリ・ミラノ・LA・NYなどの主要空港の免税リカーショップでは、
サントリー、ニッカを筆頭に、ベンチャーウイスキーやマルスなどの
日本ウイスキー数銘柄並ぶのが、今やあたりまえ。
この5年ほどで、そうなった。
一方、
ローカル国際空港でも日本ウイスキーが増えたが、それでも、
「スコッチやバーボンはあっても、日本ウイスキーはない」
空港は、まだまだ多い。
だがサントリー「六」は、一気に、
「ジョニーウォーカー」「ビーフィーター」「アブソリュートウォッカ」
といった、世界ブランド並みに、
とても多くの国々の空港の免税リカーショップに並ぶようになった。
彼我のブランドの歴史の差はいかんともしがたいが、
「六」は(ある意味で「山崎」以上に)世界ブランドとなったと感じる。
しかもこれは、
わずかこの1年ほどでの出来事である。
「日本酒」や「日本焼酎」でなく、
「日本ウイスキー」でもなく、
「日本ジン」が、結局一番、認めてもらいやすかったのだろうか。
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日本の貿易統計上、ジンの輸出はこんな感じである。
(この文章を書いている時点で公表されているのは2019年10月まで)
<輸出量> <輸出金額>
2016年: 5KL 1,500万円
2017年: 230KL 6億4,200万円
2018年: 1,400KL 19億8,800万円
2019年(10月まで): 1,700KL 18億7,700万円
かつての日本ウイスキー輸出の勢いをはるかに凌駕する驚異的な伸び。
このうちの過半がサントリー「六」だと思う。
ついで、ニッカ「カフェジン」、そして、各社の様々なクラフトジンだろう。
世界的蒸留酒ブームとタイミングがあっていることもあるが、
ジンの輸出(19億円@2018年)は、
焼酎の輸出(15億円@2018年)を一気抜きした。
日本酒の輸出(222億円@2018年)や、
日本ウイスキーの輸出(145億円@2018年)には及ばないが、
ジャパニーズ・ジンには大きなポテンシャルを感じる。
以前も書いたが、
日本酒輸出には「日本食レストランの呪縛」がある。
(日本酒輸出は、世界の日本食レストラン数の伸びに依存する度合いが高い。
日本食レストラン数の増加が止まると、日本酒輸出も停滞するリスクがある。)
一方、日本食との関係が希薄なウイスキーやジンは、
「日本食レストランの呪縛」がない。
そんな国際市場でのポテンシャル・将来性を見込んで、
クラフト・ウイスキー、クラフト・スピリッツには参入者が多い。
清酒メーカー、焼酎メーカーで免許を取得する会社が相次いでいる。
競争は激化するが、
銘柄数が増えることはジャパニーズ・ジンの強みになると思う。
(スコッチウイスキーも、100以上の蒸留所があることが強みであり、
また、愛好家の楽しみである。)
ただ、無論、
品質や製造方法がきちんとしたジャパニーズ・ジンが増える事が前提になるが。
(様々な品質や製造方法が出てしまったジャパニーズ・ウイスキーでは、
その定義やジャパニーズのルール化について議論されていると聞く。)
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●▲■ ●▲■ 韓国向け輸出 ・・・ 「X:バツ」、
貿易統計を見ると、韓国は、清酒の輸出先として、
量で2位(5,350KL@2018年)
金額で4位(22億1,200万円@2018年)
の、上得意である。
ところが、2019年7月以降の韓国向け清酒輸出を見ると、、、
<清酒>
7月 262KL
8月 149KL
9月 40KL
10月 1KL
嗚呼ついに、10月はほぼ貿易停止状態!
2019年1年間の清酒輸出はたぶん、
2018年比4~5割減ではないか。
ごく最近のニュース報道では、
日韓関係は多少改善の雰囲気が出てきたようだが、
清酒輸出が回復するには時間がかかるだろう。
2020年も、輸出低調が続く可能性がある。
「総生産の1~2割が輸出、
輸出のうち韓国向けが3~4割」、
といった蔵元は多いと思う。ミクロ的に影響は大きい。
「韓国向け輸出5,350KL@2018年は約3万石相当。
2019年が半減とすれば、
清酒総生産290万石の0.5%以上が飛ぶ」
計算になる。マクロ的にも影響は大きい。
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もっと深刻なのはビール。
韓国は、ビールの輸出先としては、
量で1位(7万9,900KL@2018年)
金額でも1位(78億7,900万円@2018年)
2位の台湾にくらべ、韓国向けは量も金額も約6倍。
全ビール輸出の量で68%、金額で61%を占めるダントツ輸出先。
それが、、、
<ビール>
7月 7,931KL
8月 594KL
9月 1KL
10月 0KL
10月は統計上、なんと「ゼロ」。
2019年1年間のビール輸出はたぶん、前年比5割減だろう。
清酒輸出に比べるとビール輸出は、
大企業(アサヒ、キリン、サントリー、サッポロ)中心なので、
経営へのインパクトは、深刻ではないだろう。
とはいえ、
毎月数百~数千KLあった仕向け先が、ゼロとなると、
大企業でも影響はあるはず。
過去、日韓関係が悪化した局面でも
輸出はこれほど大きな影響を受けずにいたが、
この度の関係悪化はとても深刻 ・・・誠に「X:バツ」である。
●▲■ ●▲■ 香港向け輸出、今のところ ・・・ 「〇:マル」
一方、市民のデモが続く香港はどうか。
香港は、清酒の輸出先として
量で5位(2,100KL@2018年)
金額で2位(37億7,400万円@2018年)
金額的には、韓国の1.5倍の重要得意先。
ビールの輸出先としても
量で8位(1,600KL@2018年)
金額で6位(3億4,400万円@2018年)
同じく、7月以降の輸出を見るとこんな具合。
<清酒> <ビール>
7月 187KL 133KL
8月 127KL 191KL
9月 151KL 217KL
10月 148KL 152KL
デモにより、商店の売上減など経済的ダメージは大きいと伝えられる。
そもそも市内で商品の配送も、ままならないとも聞く。
香港向け輸出も、上の数字を見ると若干は影響があるようだが、
幸い今のところ、韓国のような極端な影響はない ・・・ 「〇:マル」。
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日本酒の輸出先トップ5は、
アメリカ、香港、中国、韓国、台湾(金額の順)
この5か国で、172億円@2018年、
日本酒総輸出額222億円の78%を占める。
しかし、冷静に考えると、、、、、
この5か国すべてが、
日本や中国と、何らかの国際的、経済的、政治的なリスクを抱えている。
韓国向け輸出と同じく、突然、大変化がある可能性も否定できない。
早く、ヨーロッパや東南アジアの市場を育てなくてはならない、、、
と言っても、フランス・英国・タイなども、様々な問題を抱えている。
世界市場でのビジネスは、2020年代は難しくなるように思う。
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●▲■ ●▲■ 海外市場でのアサヒとキリン ・・・ 「!:ビックリ」
●▲■ アサヒ:
オーストラリアの「カールトン&ユナイテッド・ブリュワリーズ」を、
AB InBevから買収。2020年3月めど。
CUBは、ビールのシェアがオーストラリア1位で、
年産80万KL規模=ほぼ、サントリーの日本生産量相当。
(比較のために書くと:アサヒの国内生産量は190万KL@2018年)
因みにオーストラリア2位はキリンの子会社のライオンで、
1位と2位のシェアは拮抗している。
ごく最近の、日経新聞(12月15日)で
「豪の独禁当局、懸念示す」
(ビールではなく、シードルのシェアが2/3を超えるから)
という記事もあったが、たぶん買収は実現するのだろう。
●▲■ キリン:
アメリカのクラフトビール「ニュー・ベルジャン・ブルーイング」を
オーストラリアの子会社を通じて、2020年3月までに買収。
ニュー・ベルジャン・ブルーイング(と新聞に載っているが、
社名は正確にはBelgianではなくBelgium)の生産規模は、
クラフトビールでアメリカ3位、大手を含めてもアメリカ11位で、
年産10万KL規模。
(比較のために書くと:キリンの国内生産量は170万KL@2018年)
NBBの従業員の賛成も得られたようで、
買収は計画通り進みそうだ。
「ブルックリン・ブリュワリー」(アメリカのクラフト12位)に
キリンが出資した時は24.5%
(アメリカのクラフトビールの団体BAの定めるクラフトの定義、
「大手酒類企業の持ち分が25%未満」も関係したのだと思う)
だったが、今回は100%の買収だそう。
因みに、
日本企業によるアメリカのクラフトビールの100%買収は、
サッポロの、2017年の「アンカースチーム」買収についで2回目。
(アンカースチームは、アメリカのクラフト22位)
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ビール業界トップ2社の海外戦略は、相当異なってきた。
アサヒは、
ヨーロッパのグロールシュ、ペローニ、ウルケルなどに続き、
オーストラリアのCUBを買収。
「大会社」を対象に投資。また、
「成熟市場」(=成長市場とはいえない)、
ヨーロッパやオーストラリアに投資している。
キリンは、
ブラジル・キリン撤退以降は、
オーストラリア、米国、英国の「クラフト」に投資。
クラフトは、ある種のピーク感はあるものの、
「成長市場」と言えるだろう。
日本国内でもクラフト系の店舗展開や、
「タップマルシェ」(クラフトのサーバー)に注力している。
(健康食品のファンケルへの33%出資など、
国内では健康分野にも主軸を置いているが)
日本では、ビールの総需要は減り続けている。
今も増え続けるRTDも、2020年代には減少に転じるだろう。
「人口減少+高齢化」が続く中で当然である。
少し前のメルマガでも書いたが、
世界レベルでも、2010年代に入ってビール需要は停滞し始めた。
ただしこちらは、
「世界人口は増加継続」しているにもかかわらず、
である。
日本と世界でビジネスを展開する大企業の経営戦略、
特にアルコール飲料の世界戦略は、
益々難しくなるだろう。
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今年(2019年)から、
ビール酒造組合は5社のシェアの公表を取りやめている。
キリンの引き受けたPB、「バーリアル」の計上をめぐって、
意見が一致しなかったからだと伝えられる。
アサヒは来年(2020年)から販売実績数量の公表しない、
との発表も、つい先日あった。
ビール産業ウォッチャーとしての個人的独白だが、大手4社には、
日本の自社ビール販売数量を公表しなくなっても、せめて、
世界の自社ビール販売数量の総量を公表してほしいものだ、、、。
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●▲■ ●▲■ そのほか、諸々の ・・・ 「!:ビックリ」
長くなるので、以下は簡単に記載。
企業名も書いてしまって恐縮ですが、1年の記録として残します。
●■海外のクラフトサケ醸造所:
従来は北米中心だったものが、
近年ヨーロッパ各国にもでき始めたことに、「!:ビックリ」
現在、アメリカ・カナダに20社程度、
ヨーロッパ(英・仏・スペイン)に7社。
●■びん内二次醗酵スパークリング:
ワインでは、実に多くの会社がびん内二次醗酵を製品化。
清酒でも、awa酒協会会員を筆頭に多くの製品が出現。
シャンパーニュと同じ手法のスパークリングを生産するのは、
ワイン+清酒で今や50社以上になったのに、「!:ビックリ」
そして、ワイン・清酒とも、近年の品質の向上にも、「!:ビックリ」
●■日本ワイン:
これも、醸造所数の増加と、品質向上ぶりに、「!:ビックリ」
ワイン醸造者は350社程度にはなっているだろう。
ブドウ品質は、日本の栽培上の悪条件をブレークスルーした感あり。
ワイン醸造設備も、世界のトップレベルになってきた。
見せてもらった個人的体験の中では、
今年新設の、メルシャン椀子の設備(の組み合わせ)に特に感心した。
●■クラフトビール:
2019年末時点の醸造所数は確定しにくいが、
450場程度まで増えた。
その数に、「!:ビックリ」
(アメリカの7,450場@2018年には遠く及ばないが)
●■シードル:
最近、とても人気である。イベントも多い。
極小規模であったり、ワイナリーの兼業が多いので目立たないが、
日本のシードルブランドの急増ぶりには、「!:ビックリ」
長野、青森、北海道、山形に集中しているが、
この2年間で、優に30くらいは増えた。
●■焼酎の輸出:
焼酎の輸出はこの数年停滞していて、「×:バツ」
2019年もほぼ前年並み程度。そんな中、
今年発売された輸出専用ブランド、三和酒類の「彩天」
(AL度数が43度と高い、高品質焼酎)に、「!:ビックリ」
個人的には、ジン以上に、グローバル・ポテンシャルを感じる。
●■ラグビーワールドカップ:
公式スポンサー、ハイネケンの露出度を目の当たりにして、
スポーツイベントでこれだけアルコール飲料が売れること、
RWCとアルコール飲料の関係に、「!:ビックリ」
●■サントリー:
「インドに本格進出」というニュースに、ちょっと、「!:ビックリ」
インドは世界最大の蒸留酒消費国である。
●■オリオンビール:
「野村証券とカーライルが買収」というニュースに、「!:ビックリ」
カーライルはアメリカの投資ファンドである。
連想だが、、、、、
日本酒でも、譲渡・買収などオーナー交代が近年増えた。
実はその中で、外国人オーナーの日本酒も何軒かできている。
●■日本酒輸出:
「日本産酒類の輸出支援に前年度比10倍(!)の25億円要求、
その後、18億円弱で確定」、、、そして、さらに
「輸出であれば日本酒製造免許を緩和」
には、大変、「!:ビックリ」 である。
日本酒免許は、日本人より、外国人が欲しがりそうに思う。
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勝手なことを長々書きました。放言、ご容赦ください。
今年も押し詰まりました。暮れのご挨拶を申し上げます。
http://www.kitasangyo.com/2020message/message_2020.html
(↑「5か国語クリスマス&年賀のカード、
それに、年末年始の休日のご案内」)
2010年代の10年、中でもその最後の2019年は、
世界中の国々・人々が、
(X) 経済的、政治的、国内・国際的、宗教的、民族的な問題
(Y) 気候問題(高温・大雪、豪雨、台風・ハリケーン、異常潮位など)
という、深刻な問題に直面した年でした。
2020年は、新しいディケード(10年)に入ります。
次の10年、客観的に見てXもYも、ますます状況は悪化しそうです。
そしてさらに、XとY以外の様々な地球的問題があります。
(Z) たとえば、マイクロプラスチック、人口と食料、ネット社会の弊害、、、
来年以降は、X、Y、Zは複雑に絡んで、大変な逆境になりそうに思います。
が、逆境はなんとかチャンスに変えて、乗り切らねばなりません。
2020年が平和で穏やかな一年となることを願っています。
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きた産業は、
資材や機械などの「多様な事業分野」「独自ノウハウ」を活かし
「酒類産業界のサプライヤー」として、
皆様からさらに支持していただける企業
を目指して取り組んでまいります。
2020年も、なにとぞ宜しくお願いいたします。
きた産業株式会社 代表取締役 喜多常夫
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