●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.272 ●▲■
発行日:2021年3月24日(水)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com
------------------< 目 次 >------------------
●▲■ COVID-19のインパクト考 <ビール編>
■ 「胃袋に比例」の法則は、ビールでは不成立の時代に
■ 「コロナが流行って、缶が増える」
■ 「コロナでも、クラフトビール醸造所は増加」
text = 喜多常夫
ご紹介情報●1▲ ビールの「TO GO缶」
ご紹介情報●2▲ 「日本の地ビール25年の歩み(含・県別の歩み)」
ご紹介情報●3▲ 缶ビール充填機「Beer Radix」
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COVID-19は現在進行中で、
そのインパクトを考察するのは時期尚早かもしれないが、
パンデミックの始まりから1年経過時点の状況を考えてみる。
●▲■ グローバル・ビッグプレーヤーの戦略
アサヒビール(ビールで世界7位)
「アルコール度数3.5%以下とノンアルコールの「商品の割合」を
2025年までに20%にする」
ABインベブ(ビールで世界1位)
「ノンアルコールと低アルコールビールの「世界販売量の比率」を
2025年までに20%にする」
今年になって、日経新聞に載っていた、別々の記事からの引用。
微妙にニュアンスが違うが、ほぼ同じ経営戦略。
「アルコール離れを経営に織り込まざるを得ない」
「スマートドリンキングしかない」
という事は、グローバルプレーヤーの共通認識なのだろう。
一見、COVID-19と無関係のように見えるが、
実はコロナで世界中の人々の生活が変わったことが背景にあると思う。
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アサヒビールは今月末にアルコール度数0.5%のビールテースト飲料を発売予定。
ヨーロッパでは0.5%とか0.3%のセグメントは人気らしい。
個人的意見だが、日本でも相当売れそうに思う。
「0.00」のノンアルコールと違って、ビールを醸造してからアルコールを抜くそうで、
税務的に、ある程度の関与はあるのだと思うが、
アルコール度数0.5%の最終製品は、お酒ではない。
(酒税法ではアルコール度数1%以上が酒類)
0.5%では愛飲家は(少なくとも私は)飲んでも酔わないと思うが、
0.00ではないのでノンアルコールとは言えない。
車を運転することや、妊娠授乳期は避けるべきだろうから、
0.00に単純に置き換わらないセグメントであるのも、巧みな設定。
日本のビール大手4社の傾向、すなわち、
「1社が新製品をだすと、残り3社も類似製品を出す」
「後だしがシェアをとることが多い(第三や0.00の事例)」
を考えると、すぐに熾烈な競争が始まって、
今後2-3年で一定の市場になるのではないか。
結果として、低アルコール化は促進される。
AL.10%のウイスキー
AL.8%の本格焼酎
AL.5%の日本酒
AL.3%のワイン
AL.1%の梅酒
AL.0.5%のRTD
なども、2030年までには商品化されるように思う。
個人的には、どれも結構よさそうに思う。
●▲■ 「胃袋に比例」の法則は、ビールでは不成立
「食品や飲料の市場サイズ」は「胃袋の数」に依存(ほぼ比例)する。
「胃袋の数」=「人口」。
世界人口(胃袋の個数)は、概数でいえばこんな感じ。
1980年:45億人(個)
1990年:53億人(個)
2000年:61億人(個)
2010年:70億人(個)
2020年:78億人(個)
日本は人口減少だし、多くの国で人口が伸びない中、
世界人口は、ほぼ一直線で伸びている。
2030年は85億人の予測。
「10年あたり8億±1億人の増加」は不変で、同じ角度で伸びる予測だ。
一方、世界のビール生産量の概数はこんな数字。
1980年: 9,400万KL
1990年:1億1,400万KL
2000年:1億4,000万KL
2010年:1億8,500万KL
2020年:1億8,000万KL(ユーロモニターによる販売量の概数)
2010年までの30年間は、
世界ビール生産量と世界人口とは、両方ともほぼ一直線で伸びていた。
「胃袋の数」に比例してビール消費も増えた。
ところが2010年以降の10年間は、
人口は一直線で伸びているのに、ビール生産量は横ばいになった。
http://www.kitasangyo.com/pdf/e-academy/osake-s/osake_s_1911.pdf
実際は、2010年代は1億9,000万KL前後で上下し、
2020年はCOVID-19で大きく落ちたこともあるが、
グラフにして2010年のディケード(10年間)を眺めると、横ばいである。
この10年で、「胃袋に比例」の法則は、ビールでは成立しなくなったと言える。
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COVID-19以前から、日本でも世界でも、
人々の平均アルコール摂取量は明確に減ってきていた。
日本の場合、若者のお酒離れや、男性の飲酒比率低下があるが、
世界を眺めると、
人口増加は主に経済的に貧しい国々で続くこと
WTO(世界保健機構)の、お酒を減らすキャンペーン
世界人口の伸びの中で、相対的にムスリム人口の伸びが大きなこと
法律でお酒を規制する動きのある国(タイ、インドネシアなど)
先進各国では日本と同じく若者のお酒離れがあること
などが理由として考えられる。さらに、
COVID-19で飲食店需要が消失したこと
COVID-19後も飲食店なしの生活に慣れてしまう層があること
を考えると、アルコール摂取量はさらに減るだろう。
冒頭記載のアサヒビールやABインベブの方針は、
このような事情を踏まえたもの。
今のABインベブ社は、ベルギーのビール会社が、
1987年から世界的M&Aを繰り返してできた最終形だが、
その拡大戦略の途上では、「胃袋に比例」の法則が成り立っていた。
今のような世界情勢は想定外だったろうと思う。
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●▲■ 「コロナが流行って、缶が増える」
「居酒屋・料飲店」でのビール消費は、COVID-19で激減した。
2020年のビールは「家飲み」の依存度が一気に高まった。
その結果、一般で報じられている事は、
2020年は、「ビール類」全体で1割減
10月に減税があったが、「ビール」は2割以上減
「第三のビール」が初めて「ビール」より多くなった
などであるが、
以下、当社の生業である、パッケージの視点で考察してみる。
大手4社のビールの販売量は、
おおむね「樽・びん・缶」の3分類ができて、
業界誌(「酒類食品統計月報」など)で毎年公表されている。
2014年:樽35.5%・びん18.2%・缶46.3%
2019年:樽35.6%・びん14.7%・缶49.7%
びん離れは、毎年進む。
一方、缶比率は5年で3ポイント以上上昇。
2020年の数字はまだ公表されていないが、
第3四半期までのデータなどによる管見の推定では、こんな感じだと思う。
2020年の推定:樽28%・びん11%・缶61%
「居酒屋・料飲店」需要が激減した結果、樽やびんは大きく減らし、
缶のシェアが一気に10ポイントくらい上がったと考えられる。
以上は、「ビール類」ではなく、「ビール」の数字である。
2020年の大手4社の「ビール類」内訳は、
「ビール」41%、「発泡酒」13%、「第三のビール」46%。
「発泡酒」や「第三」は、びんや樽はほとんど存在しない。
従って、「ビール類全体」では、今や缶が80%以上である。
「風が吹けば、桶屋がもうかる」ではないが、
「コロナが流行って、缶が増える」。
ただ、「増える」ことで、諺の「桶屋」のように、
「製缶メーカー(缶屋)」が「もうかる」のかどうかは、よく知らない。
しかし、「製壜メーカー(びん屋)」がとても苦しいのは、事実である。
大手ビール4社のいわゆるRびん、すなわち、
633の大びん、500の中びん、334の小びんは、
完全にリユースシステムが確立している。
10数回は繰り返し同じびんが使われる、環境の優等生である。
アルミ缶は、回収率が高く、CAN to CAN比率が高い、エコな容器。
とはいっても、個人的な(人間的な)感覚では、
洗って再利用するRびんの方がエコで、環境にやさしいように思うのだが、
ビールのガラスびんは、今後ますます苦戦しそうだ。
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アメリカでも、2020年は缶の消費が大きく増えて、
アルミ缶の供給が追いつかなくなっている、という。
これはコロナの影響もあるが、別の要因もある。
アメリカでは、州や地域、あるいは、ゴルフ場、スポーツクラブ、ホテルで
PETボトル飲料の持ち込みを規制したり、販売しないところも増えている。
脱プラでPETボトルを規制する動きも、飲料全般の缶シフトを促進している。
クラフトビールも一気に缶にシフトしている。
北米に、手軽で安価な缶ビール製造機メーカーが数社できたこと、
缶のオンデマンド印刷など、缶の小ロット対応技術が広まったこと、
などが背景にあるが、なにより社会認識が変わったことが大きい。
20年前は、アメリカのクラフト醸造者には、
「缶は大手ブランドのマスプロ商品、クラフトはびんである」、
という固定観念があったのが、この10年で一気に変わった。
消費者側も、缶製品でもクラフト、と認知するようになった。
そしてコロナでさらに缶化が加速した格好である。
「コロナが流行って、缶が増える」
とは、より正確には、
「脱プラで、社会認識も変わって、コロナが流行って、缶が増える」
日本でも、クラフトビールの缶化はすすんでいる。
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●▲■ 「コロナでも、クラフトビール醸造所は増加」
日本のクラフトビールへのCOVID-19の影響はどうだろうか。
当社では、日本の地ビール(クラフトビール)のリストを
1995年以来25年にわたって継続調査し、公表している。
2021年2月で情報を更新し、現在500の醸造所をリストに収載している。
http://www.kitasangyo.com/beer/MAP.html
2019年
年内の新規開業55、閉店5、年末の営業中が446醸造所
2020年
年内の新規開業51、閉店4、年末の営業中が493醸造所
コロナ前の2019年と、コロナ後の2020年では、
開業数や閉店数に大差なく、増加傾向は維持している。
コロナ2年目の2021年も、同じくらいの開業数がありそうだ。
すなわち、コロナだからと言って、醸造所計画を棚上げする人は少ない。
当社の知る範囲で、コロナの影響で閉店した醸造所は現時点で3つ。
もちろん、クラフトビールの皆さんは苦戦されていると思うが、
全体としてみると、クラフト業態は思いのほかコロナに強いと感じている。
(アメリカでは相当数が減ったのではないかと思うが、
アメリカのクラフトビール醸造所の2020年の統計はまだ公表されていない。)
text = 喜多常夫
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さて、情報や商品のご紹介です。
●▲■ ご紹介情報 その1 アーカイブ情報 ●▲■
ビールの「TO GO缶」
http://www.kitasangyo.com/pdf/archive/package-designs/PDA_291.pdf
「TO GO」とは持ち帰りのこと。
昔から、ガラスびんのTO GO(「グローラー」)はありましたが、
最近は、缶によるTO GO(「クローラー」)が人気です。
「720mlのアルミ樽」+「手締めアルミキャップ」で、
キャッパー設備無しでTO GO対応が可能です。
小ロットで出荷します。営業担当にご照会ください。
●▲■ ご紹介情報 その2 eアカデミー ●▲■
「日本の地ビール25年の歩み(含・県別の歩み)」
http://www.kitasangyo.com/pdf/craftbeer/craftbeerstatistics.pdf
本文中で、地ビールリスト http://www.kitasangyo.com/beer/MAP.html
のことを紹介していますが、その末尾に追加した3ページの統計資料です。
47都道府県の過去25年の醸造所数を資料化したのは、たぶん史上初。
資料の通り、東京都には2020年末時点で69か所もあります。
2位は神奈川県の36か所、3位は北海道の25か所。
長崎県はこの10年の間、唯一「地ビール醸造所がない県」でしたが、
現在、3か所程度の開業計画があるようです。
●▲■ ご紹介情報 その3 ROOTSディビジョン ●▲■
缶ビール充填機「Beer Radix」
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/Beer_RadixIV_J.pdf
全国のクラフトビールや、大手ビール研究所で使われている「ビア・ラディクス」缶詰機。
「半自動デパレ(半載パレット対応)」と組み合わせた新型機を準備中です。
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http://www.kitasangyo.com/Archive/mlmg/BN_top.html
2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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2006年4月以来、きた産業のトピックスを写真で収録。
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