●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.277 ●▲■
発行日:2021年6月18日(金)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com
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●▲■ (周年記念企画の連載)「酒類業界の30年を振り返る」
<日本酒・Sake編、その2>
■ 「本醸造」と「酒精強化ワイン」のアル添度合いは似る
(「柱焼酎」と「酒精強化」の歴史的起源も似る)
■ 「サリチル酸」をやめるのに90年、「アル添」の解決は100年?
■ シナリオB:「普通酒」は「第三のビール」?
■ シナリオC:「世界的潮流:アルコール抑制」と「普通酒」の関係??
text = 喜多常夫
ご紹介情報●1▲ 「機械設備アーカイブ」をオープン
ご紹介情報●2▲ 「びん燗キャップ」の資料(6ページ)
ご紹介情報●3▲ 「清酒アルミ缶watching、日本と世界」
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2021年は、当社が大阪で創業して105周年、東京に出て100周年。
周年記念で「酒類業界の30年を振り返る」と題した連載を始めました。
ネットで調べた事ではなく、自分の体験として振り返る30年の変遷。
「10年後の将来像」にも触れます。
前回から「日本酒・Sake編」を書いていて、
「三増酒」は廃止したが、普通酒の多くは「二増酒」として存続、
というところまで書きました。
放言をお許しいただき、続けます。
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>>>30年を振り返る・日本酒・Sake編、その2<<<
●▲■ アルコール添加について考える ●▲■
清酒のアル添には、
1.「そもそも、アル添の是非」の問題
2.「アルコールの由来原料」の問題
3.「アルコール添加%」の問題
の3つがある。
▲■ 「そもそも、アル添の是非」の問題
世界で、粗留アルコールを輸入、精留してお酒の原料に使っているのは、主には
▲韓国(ジンロや鏡月などの「ソジュ(韓国焼酎)」)
▲日本(「清酒」「甲類焼酎」など。他の酒にも使われるのだと思う。)
の2国だけではないか。
主だった「醸造酒」では、日本酒だけだと思う。
「アルコールは添加しているが醸造酒です」と、曇りなく言えるだろうか。
▲■ 「アルコールの由来原料」の問題
世界で今、アルコールを添加していて醸造酒を名乗るのは、こんなお酒。
■スペインの「シェリー」(酒精強化ワイン)
■ポルトガルの「ポート」、「マデイラ」(酒精強化ワイン)
■イタリアの「マルサラ」(酒精強化ワイン)
■日本の「清酒」(「普通酒」のほか、「本醸造」や純米でない「吟醸」)
戦前、ナパ(米)やバロッサ(豪)でも、酒精強化ワインが主流(!)だったそうだが、
戦後は、米・豪は普通のワインに回帰し、ナパやバロッサは世界的ワイン銘醸地となった。
世界市場ではスペインやポルトガルの伝統的な酒精強化ワインのみが生き残った。
酒精強化には、(ワインの主原料と同じ)ブドウのアルコール(ブランデー)を使う。
一方清酒は、(清酒原料の米ではない)トウモロコシなどの粗留アルコールを精留して使う。
しかも、「日本でつくるものが日本酒」と言いながら、添加するアルコールは輸入原料。
シェリー、ポート、マデイラでも、戦争中はトウモロコシ由来などのアルコールを使ったそうだが、
戦後しばらくして、ブドウ由来のアルコールに戻した。
酒精強化ワインは、ワイン自体も、添加アルコールも、すべてブドウ由来で自国製。
私は実は「フォーティファイド(酒精強化)ワイン好き」で、
シェリー、ポート、マデイラ、マルサラのすべての現地を訪問したことがある。
どこに行っても、添加アルコールの作り方や、その目的、歴史をきちんと説明し、
「すべてブドウでつくる」「スペイン(あるいはポルトガル、イタリア)の伝統酒」と、明快に言っていた。
古い歴史的な蒸留器を展示しているところも多い。
一方、輸入原料のアルコールを使っている日本酒を
「すべて米でつくる」「日本で造った酒・伝統的つくり方の酒」と、曇りなく言えるだろうか。
「これが原料用アルコールの蒸留器です」と、写真パネルを紹介できるだろうか。
▲■ 「アルコール添加%」の問題
酒精強化ワイン各種のアルコール添加度合いは、
最終製品のアルコール度数の25%相当程度だと思う。
その意味では、本醸造酒レベル(概ね25%くらいまで)は、
世界基準で理解してもらいやすいかもしれない。
シェリー、ポート、マデイラのアル添は14~18世紀にはじまったもので、
船で樽を流通させるときの品質劣化を防ぐアイデアだった。
清酒のアル添の正当さを江戸初期(17世紀?)の「柱焼酎」とする記述も多い。
この説明の是非は別として、
柱焼酎も清酒の品質劣化を防いで安定させるアイデアだったはずだ。
添加度合いとして同じ25%程度を採用するのは、つじつまも合う。
すなわち、本醸造程度のアル添なら、グローバルに通じやすかろうと思う。
一方、
増醸酒(50%添加)は消費者視点で理解が得にくい。
「この清酒はアルコール分の50%が添加由来です」と、曇りなく言えるだろうか。
(清酒のアル添を(特に、海外での説明の場合に)
「ブレンデッド・ウイスキー」に例える方がいるが、この説明は違うと思う。)
●▲■ 10年後の日本酒像、シナリオA ●▲■
● 「アルコール添加%」の問題、合成清酒の問題
個人的には、「すべて純米にすべき」と思っていた。
しかし、アル添が酒質に貢献する事、香りがよくなる事など、
清酒産業に欠かせない技術になっているのだなあ、、、
という考え方に、この数年で変わってきた。
アル添全面禁止は現実的でないとすれば、
「アル添割合は本醸造レベルまでにする」、またはせめて
「2倍増醸酒は廃止する」というルールの改正が、
ごく近い将来、必要ではないかと考える。
たとえ、一時的に清酒の市場が大きく縮小することがあっても、
そこから増やす努力をすることが、
グローバルマーケットでSakeのブランド価値を高め、
日本酒が愛される酒類として成長する出発点になると思う。
痛みを伴うが、同時に、「合成清酒」も廃盤、
あるいは、せめて名称変更すべきだろう。
合成清酒も、輸出されたらSakeと呼ばれる。
●▲■「合成清酒」生産量の30年の推移
1990年 12万石
2000年 34万石
2010年 24万石
2020年※ 11万石
(※2020年は未確定なので推定)
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● 「アルコールの原料」について
合わせて、添加アルコールは「米由来」にすべきだと考える。
既に、添加用に米焼酎を自社で製造する蔵元があり、
米由来の添加アルコールが市場に流通しているので、可能なことである。
参考にすべき連想事例を2つ書いておく。
■びん内二次醗酵スパークリングは「糖分」と「酵母」を再添加する。
糖分には伝統的にはシュガービーツ由来の糖分などを使うが、
「ブドウ由来の糖分」の利用に取り組んでいる醸造所がある。
目的は、「このスパークリングワインはブドウでできています」と言うため。
ラベル表示強化の動きへの対応もあっての事だが、そうすれば確かに
「ブドウからできています」と自信をもって言える。
■グローバル商品ではないが、韓国のマッコリの事例も参考になる。
戦後の韓国は、日本以上の食糧米不足で、
政府がマッコリに米を使うのを禁止した。
その結果、マッコリは小麦粉やトウモロコシでつくるようになり、
味が落ちて年々人気がなくなって生産量が減った。
しかし時代は変わり、米に余裕ができて、
1990年代にマッコリに米を使うのが解禁されると
徐々に人気が出て需要は回復し、21世紀になってブームになった。
日本にも飛び火してマッコリブームになったのが2011年だった。
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なんだか、前回引用した40年前の本、
「ほんものの酒を!」の論調を繰り返したようになったが、
Sakeの国際化を進めなければならない今、問題の先送りはできない。
清酒の防腐剤サリチル酸、、、といってもご存知ない方が増えたかもしれないが、
お雇い外国人教師、コルシェルトの提案で、1879年に使用を開始したもの。
当時大きな問題だった清酒の腐造を防ぐのに効果をあげた。
しかしサリチル酸は食品として有害。(皮膚軟化作用がある。「イボコロリ」の主剤)
1903年の内務省令で、サリチル酸は飲食物への使用が禁止される。
ところが、清酒業界は強く反対、清酒への適用だけは延期され続けた。
一部の先進的な酒蔵は早くから「防腐剤入らず」を商品化していたにもかかわらず、
清酒業界全体がサリチル酸を使わなくなったのは1969年である。
(あまり知られていないが、ワインへの添加も認められていた時期があった。)
当時私はまだ中学生だったが、
ベトナム戦争の惨状を伝える雑誌の特集号の片隅に
「酒にサリチル酸を使わなくなる」という記事がポツンとあって、
意味がよく分からなかったが、なぜか鮮明に覚えている。
晩酌を1日も欠かさない自分の父親の健康に良いのだだろうと。
1879年から1969年。
サリチル酸をやめるのに90年もかかった。
戦前・戦中に米不足対策でアル添(増醸酒)が始まって今で80年ほど。
あと10年でサリチル酸と同じ90年。
10年先の2030年までには、スッキリさせたいものだ。
添加アルコールを完全に米由来にするには、
あるいは、20年先の2040年、すなわち100年かかるのかもしれないが、
日本酒の次の「100年の計」のためには、
「世界が見ておかしくないルール」、「100年通じるルール」にすべきだと思う。
●▲■ 10年後の日本酒像、シナリオB ●▲■
、、、といった話を、ある人に話したら、「違う」と言われた。
曰く、、、
「普通酒」は十分おいしいし、たくさんのファンがいる。
グローバル市場を考えるより、国内の清酒ファンを大事にすべき。
「第三のビール」は、ビール信奉者からみたらニセモノだろうが、
毎年改良されて旨くなった。
そして「第三のビール」が本家の「ビール」の量を追い越した。
第三のビールは、グローバル市場に通じる商品ではないが、
日本市場では十分に貢献している。
2026年にビール・発泡酒・第三の3つの税金が同じになっても、
第三は日本で生き残るのではないか。
●純米酒 = ビール
●本醸造やアル添吟醸 = 発泡酒
●普通酒 = 第三のビール
と考えればいい。
清酒の場合は既に3つの税金は同じである。
確かに一理ある。
むつかしい問題であると思った。
●▲■ 10年後の日本酒像、シナリオC ●▲■
そして、さらに別のシナリオもある。
前々回のメルマガで、アイルランドで導入が議論される、
国民の飲酒抑制のための法制度について書いた。
実際に2022年から実現するのかどうかは不透明だが、
「アルコール1gにつき10セント」を最低価格とするもので
実施されると、、、
500ml缶ビール=1.7ユーロ=約220円
750mlワイン=7.75ユーロ=約1,020円
700mlジン=20.71ユーロ=約2,730円
(1ユーロ=132円で換算)
上記が最低価格で、それ以上で売らねばならなくなる。
価格の安い、PBのビール、ワイン、スピリッツが締め出しになる。
「安価なお酒が販売されていると、購買意欲を刺激し、
アルコール摂取量が増えて、国民の健康被害を助長する」
というロジック。
アイルランドで、特にアル中(アルコール依存者)が多いわけではない。
統計上、人口比でみて、日本よりは多いが、アメリカや英国より少ない。
アルコール規制は世界的な流れなのである。
お酒を規制する場合、
アジアの国々では販売規制や飲酒運転厳罰化などが多いが、
先進国では「酒税を上げること」が一番合理的だろう。
タバコと同じである。
日本でも10年先には似た状態になるかもしれない。
仮に、アイルランドの「アルコール1gにつき10セント」よりやや安い
「アルコール1gにつき10円」で規制すると、
清酒や代表的な酒類の最低価格はこうなる。
AL14%の2L紙パック清酒=2,240円
AL25%の1.8L本格焼酎=3,600円
AL13%の750mlワイン=780円
AL5%の350ml缶ビール(第三もRTDも)=140円
今、普通酒の主要部分である2L紙パック清酒の実勢価格は1,000円前後。
もしそれが2倍以上の価格になれば、
普通酒の需要自体が、そもそも蒸発してしまうのではないか。
先週のG7で、各国共通で法人税は最低15%、という話し合いが行われた。
10年後のG7では、各国共通の酒税の最低ルールを話し合っているかもしれない。
その場合、「アルコール1gにつきいくら」というルールがシンプルだし、
たとえば「10円/g」といった制限サイドに振った税率になると思う。
(そもそも10年後にG7があるのか、日本が入っているか、わからないが、、、)
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10年後の「シナリオA」・「B」・「C」はそれぞれ、
「理想論の未来」・「現実論の未来」・「世界潮流の未来」
と言い換えられるかもしれない。
「世界潮流の未来」のような増税が現実にならなくても、
酒類の消費量が減っていくのは避けられないと思う。
その中で、お酒の付加価値(=価格)を上げることが生き残りの道と考えるなら
「現実論の未来」(低価格帯の維持)よりは、
「理想論の未来」(プレミアムに特化)が望ましいと、個人的には考える。
なお、書かなかったが、
「新規の清酒製造面免許の制限」
の問題も、今、クローズアップされつつある。
10年後にはたぶん、ワインやクラフトビール並みに自由化されているのだと思う。
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清酒の30年を振り返る時、「国際化」は欠かせませんが、
そのことについては、次回に。
text = 喜多常夫
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さて、商品のご紹介です。
●▲■ ご紹介情報 その1 ROOTSディビジョン ●▲■
「機械設備アーカイブ」をオープン
https://kitasangyo.com/archive/machine-archives.php
清酒、焼酎、ビール、ワインなどのお客様に
近年納入した機械設備、約100の事例を
写真資料でビジュアルに紹介しています。
●▲■ ご紹介情報 その2 KKディビジョン ●▲■
「びん燗キャップ」の資料(6ページ)
https://kitasangyo.com/pdf/package/closures/binkan.pdf
「びん燗火入れ」をする蔵元はますます増えています。
当社は「びん燗キャップ」で、日本で一番多くの実績を持っています。
資料の最終ページにはパストライザーも紹介。
キャップも設備もお任せください。
●▲■ ご紹介情報 その3 K2ディビジョン ●▲■
「清酒アルミ缶watching、日本と世界」
https://kitasangyo.com/pdf/archive/siennas-watching/seisyu_can.pdf
当社のPR誌「酒うつわ研究」の最新号に掲載した、
現時点で市販されているお酒のアルミ缶をほぼ網羅した写真資料。
清酒のアルミ缶と缶詰設備は当社にお任せください。
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●▲■バックナンバー閲覧可能!「メルマガ・クロニクル」
http://www.kitasangyo.com/Archive/mlmg/BN_top.html
2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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2006年4月以来、きた産業のトピックスを写真で収録。
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