●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.304 ●▲■

発行日:2023年7月19日(水)
■ アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報 ■

発行:きた産業株式会社 
https://kitasangyo.com



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< 目 次 >------------------

●▲■ 「日本ウイスキー」 ウォッチング in パリ @2023年
● 「メゾン・ド・ウイスキー」で日本ウイスキー観察
● 日本ウイスキーの近代史:3つのフェーズ=↓・↓・↑
● 「樽のチカラ」を感じた2つのエピソード:「シェリー樽」と「ミズナラ樽」

text = 喜多常夫


ご紹介商品●1▲ スイスMoog社の樽洗浄機・タンク洗浄機
ご紹介情報●2▲ Design Reference Book 「和と洋のシャンパンびん製品」
ご紹介情報●3▲ 「周年記念ボトル」コレクション・20周年~370周年


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前回は、パリの「サケ事情」を書きました。
今回は、同じくパリの「日本ウイスキー事情」を書きます。


日本初のウイスキー、寿屋(サントリー)の「白札」は1929年発売ですが、
白札を生み出した山崎蒸溜所の建設着手が1923年なので、
サントリーさんは「2023年は日本ウイスキー100年」、とされています。

この100年の日本のウイスキーには、いろいろな浮き沈みがあったけれど、
ご存知の通り、今、「世界的な日本ウイスキーブーム」。
以下は、パリで観察した日本ウイスキーブームの状況です。


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●▲■ LMDWで日本ウイスキー観察 ●▲■ 


パリの「La Maison du Whisky(LMDW、メゾン・ド・ウイスキー)」は、
世界のウイスキー・蒸留酒を取りそろえる専門店だが、
「日本ウイスキーをフランスに広めた会社」、という位置づけが大きい。

今ほどの人気があったわけではない日本ウイスキーを、
目立つところに並べているLMDWオデオン店に気づいて、
(ウイスキー店のくせに獺祭など日本酒も売っていたので気づきやすかった)
観察を始めたのは2010年(=オデオン店が開業した年)。
以来、パリに来るたび、定点観測を行っている。

当時、オデオン店にあった日本ウイスキーは、
ニッカ、サントリー、イチローズモルトと、
軽井沢(閉鎖したメルシャン軽井沢の樽からボトリング)の4銘柄。

その後、行くたびに銘柄は徐々に増えていたが、
コロナ期間中に一気に増えたようで、
2023年5月時点で並んでいた日本ウイスキーは以下。


●本坊酒造(駒ヶ岳、津貫など、数種)
●厚岸(数種)
●AMAHAGAN長濱(数種)
●嘉之助(小正嘉之助蒸溜所)
●あかし(江井ヶ嶋酒造)
●丹頂(白鶴酒造)
●ニッカ(余市、宮城峡から、海外専用ブランド「Days」まで、多くの種類)
●サントリー(山崎、白州から、海外専用ブランド「季」まで、多くの種類)
●イチローズモルト(数種)
●軽井沢(多くの種類、後述)

以上で商品数は数十種類となるが、ブランドは10銘柄。

ご存知の通り、近年、日本ウイスキーの銘柄は随分増えているので、
その気ならすぐに20銘柄くらいの数は集まると思うが、
LMDWは、ブランドを選んでいるように見える。

実際の写真や販売価格などは、以下のリンク資料でご覧ください。

●▲■アーカイブ資料:
「日本ウイスキーwatching in パリ+免税店など」 全11ページ
https://kitasangyo.com/pdf/archive/sake-watching/j.whisky2023.pdf


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上記資料に写真を載せているが、LMDWの本店(アンジュー店)には、
販売目的としては「世界最高峰」と思しき、ウイスキーコレクションがある。
日本ウイスキーでは、以下のようなものが含まれる。

■イチローズモルトのカードシリーズ
(全54本セットが2019年の香港のオークションで
720万HK$=当時のレートで1億円、今のレートで1.3億円
で落札されたことで有名)

■ニッカ・サントリー:余市20年、ザ・ニッカ40年、山崎25年、白州25年
(いずれも、日本の店頭で販売されることは極めてまれで、入手困難。
メーカー希望小売価格はあるが、
実勢価格は1本100万円前後~200万円以上)

■軽井沢:様々なラベル、様々な貯蔵年数(29年・30年・31年など)
(メルシャン軽井沢蒸溜所が閉鎖後、その原酒樽を入手した会社が、
毎年本数限定でボトリングして、欧州や台湾に出荷したブランド。
英・仏での価格は1本数十万円。日本では販売されていない。)

LMDWの棚卸は、時価評価なのか調達簿価なのかは知らないが、
時価なら確実に億円単位となるウイスキーびんが、目の前の棚に並べてある。


余談ながら、、、
前回、2018年にパリにきたとき、
アンジュー通りの近くで暴徒化した「黄色いベスト運動」の人たちが、
店舗の窓を割ったり、路上のバイクに火をつけたりしているところに出くわした。
LMDW本店付近は警官が道路封鎖して、催涙ガスが漂っていた。
もしもLMDWが襲われていたら、たぶん数億円の損失だっただろう。
そんなことにならなくて本当によかった。





●▲■ デパートとCDGで日本ウイスキー観察 ●▲■ 


リンク資料には、パリの「デパート」と「空港免税店」で見た日本ウイスキーも掲載。
無論、サントリーとニッカは並んでいるので、
それ以外で並べられていた銘柄を記録しておく。
前掲のLMDWとは異なる銘柄がある事がわかる。


■■「ボン・マルシェ」(パリの有名デパート)の酒類売り場

●越百COSMO(本坊酒造)
●あかし(江井ヶ嶋酒造)
●戸河内(サクラオディスティラリー)
●山桜(笹の川酒造)
●松井(松井酒造)

一番高価だったのは、「松井」の106ユーロだった。
(次が、サントリー「響」の96ユーロ)


■■「パリのシャルルドゴール(CGD)空港の免税店」

●富士(キリンディスティラリー)
●あかし2種(江井ヶ嶋酒造)
●戸河内2種(サクラオディスティラリー)
●山桜2種(笹の川酒造)
●松井、倉吉18年(松井酒造)

ここでも一番高価だったのは松井酒造で、「倉吉18年」の191ユーロ。
(次が、サントリー「白州12年」の100ユーロ)


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リンク資料には日本の関西国際空港の免税店で観察した
日本ウイスキーの写真・価格も掲載しているが、
それについては、次回以降に、別テーマで改めて書きます。




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●▲■ 時代は変わる=3つのフェーズ ●▲■ 


日本ウイスキーは、100年を経て、世界に認められた感がある。
「100年の歴史」を俯瞰したいところだが、とりあえず、
「近世の歴史」を、3つのフェーズ(あるいは、3つの場面)として書いてみる。



■▲フェーズ1■▲
「1980年代後半~90年代」=「↓」

個人的な昔の記憶なのだが、
メルシャンの軽井沢ウイスキーは、筆者の地元、関西ではまったく見ない商品で、
関東にいったときローカルの酒販店で初めて見たのを覚えている。
ずいぶん安い価格で売られていたと記憶する。

東亜酒造がOEM生産していた生協向けウイスキー「虹の宴」は、
地元の灘・神戸生協でもよく見かけた。
COOPブランドなので低価格。飲んだこともあって、悪くないと思ったが、
気が付くと、生協の店頭からなくなってしまった。

1983年が、国産ウイスキーが最も売れたピークだったが、
それ以降、80年代後半・90年代とウイスキー需要は減少し続けた。
大手のサントリー・ニッカも大変な時代だったが、
それ以外のウイスキーブランドは大変な苦境を迎えた。


■▲フェーズ2■▲
「2010年前後まで」=「↓」

東亜酒造は経営不振で、2004年に日の出HLDGSの傘下となる。
その時、ウイスキー生産は撤退した(免許は保有)。

メルシャン軽井沢蒸溜所は、
ウイスキーの蒸留を2000年に終了。
2007年にキリンの傘下に、そして2012年に完全閉鎖となった。


■▲フェーズ3■▲
「21世紀に始まった、今に続く新しい胎動」=「↑」

2004年設立のベンチャーウイスキーは今や世界的ブランドとなった。
その創業は、東亜酒造の経営交代がきっかけと言える。
東亜酒造の原酒も廃棄されることなく商品化され、世界で高い評価を得た。

軽井沢蒸溜所の原酒もまた引き取られ、
前述のLMDWでの事例のように、海外で高価な商品となっている。

東亜酒造自身も、
2016年に輸入モルトでウイスキー生産を再開、
2021年にはポットスチルも導入して自家蒸留を再開。

メルシャン軽井沢蒸留所は復活していないが、
その名をオマージュとした、
(少なくとも海外ではオマージュととらえられるであろう)
「軽井沢ウイスキー株式会社」(2022年蒸留開始)
「軽井沢蒸留酒製造株式会社」(2023年蒸留開始)
という2つのウイスキーが新しく活動を開始している。
(さらに、2023年5月の新規ウイスキー免許取得者の中に
「北軽井沢」を冠した蒸溜所がある)


フェーズ3の「↑」は、フェーズ1とフェーズ2の「↓」があったからこそ、
起こった事象であるともいえる。

100年の日本ウイスキーの歴史ではもっと様々な事があったが、
長くなるので、そのことはまたチャンスがあれば書きます。



●▲■ 「樽のチカラ」 ●▲■ 

撤退したブランドのウイスキー原酒が、後に価値を見出されるのは、
日本だけでなく、スコットランドでも先例がある。
そんなストーリーの英国の映画(The Angel’s Share)もあった。

根本的には、その原酒の価値を見抜いた人の
テイスティングの才能、慧眼、そして商品化努力によるところだが、
「樽のチカラ」も大きいのではないかと思う。

樽の中で年数を経ると、お酒がうまくなる(場合がある)。
蒸留酒では、「樽のチカラ」が、価値を左右することが多い。(醸造酒のワインでも然り)


本稿の締めくくりに、
最近体験した、樽のエピソードを2つ書いておきます。


<<エピソード1:へレスで見たシェリー樽>>

●▲■アーカイブ資料:
「サケwatching in ミラノ&へレス + シェリー」 全6ページ

https://kitasangyo.com/pdf/archive/sake-watching/milan&jeres+sherry2023.pdf 

2022年と2023年にイタリア・ミラノとスペイン・へレスでサケ(日本酒)を飲んだ記録ですが、
へレスではシェリーの見学記も追記。
Lustau(ルスタウ)という有名なシェリー醸造所を見学したとき、
「CHICHIBU」(=ベンチャーウイスキーの「秩父」蒸溜所)の焼き印の入った
シェリー樽を見たことを書いています(最終ページ)。

ウイスキーのエージングには新樽以外に、バーボン樽やシェリー樽が必須だが、
日本からトレーサビリティーのある良質なシェリー樽を調達するのは極めて困難。
ルスタウのような著名なシェリーボデガに自社の新樽を持ち込み、
貯蔵するシェリーの種類と年数(通常2年程度)を指定して、
自社用のシーズニングを行っているのは、日本ではベンチャーウイスキー以外にはないのではないか。
スコッチウイスキーでも、このような例は多くはないと思う。

貯蔵年数を考えると資金回収が10年先になるような投資。
 10年先の市場などだれも予測できない中で、
 品質のためにこのような投資をされているのに大いに感銘を受けた。



<<エピソード2:ピエモンテで見たミズナラ樽>>

●▲■アーカイブ資料:
「グラッパ蒸溜所訪問記 in ピエモンテ」 全5ページ
https://kitasangyo.com/pdf/archive/world-alcoholic/grappa.pdf 

2023年にイタリア・ピエモンテで、グラッパ蒸溜所を見学した記録。
グラッパは「エージングなし」が多数派だが、
「樽でエージングしたもの」は、プレミアムグラッパとして市場を伸ばしている。

アルバ近くにあるマローニという蒸溜所の樽貯蔵庫で
たくさんのヨーロピアンオークやアカシアの樽の中に混ざって、
たった3つだが日本のミズナラの樽があるのを見つけて驚いた。

「苦労してようやく3つを日本から手に入れた。
高価だったが、手に入るならもっと欲しい。」
と、オーナーの方は話していた。

日本ウイスキーで利用されてきたミズナラ樽は、
今では世界的人気となり、
スコッチウイスキーの「シーバス」や
メキシコの有名なテキーラの「カサ・ドラゴネス」でも、
「Mizunara」をラベルに大書してアピールした製品が出ている。



蒸留酒における樽の重要性、「樽のチカラ」を感じた2つの体験だった。


text = 喜多常夫


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さて、当社情報のご紹介です。


●▲■ ご紹介情報 その1  :ROOTS ディヴィジョン ●▲■
MOOGの樽洗浄機
https://kitasangyo.com/pdf/machine/winery-and-brewery/Rothojet.pdf
MOOG
の吊るして使うタンククリーナー
https://kitasangyo.com/pdf/machine/wine-beer/moog_hang.pdf

樽やタンクの洗浄の効率化、確実化に。スイス製です。



●▲■ ご紹介情報 その2 :K2ディヴィジョン ●▲■
Design Reference Book 「和のスパークリング」
https://kitasangyo.com/pdf/archive/package-designs/DRB23_sparkling-s.pdf
Design Reference Book
「シャンパン製法のスパークリングワイン」
https://kitasangyo.com/pdf/archive/package-designs/DRB23_sparkling-wine.pdf

シャンパン壜に入った和と洋の製品の写真資料です。




●▲■ ご紹介情報 その3 :K2ディヴィジョン ●▲■
「周年記念ボトル」コレクション
https://kitasangyo.com/pdf/archive/package-designs/PDA_anniv.pdf

この10年ほどの間に、周年記念でいただいたお酒を、撮影した資料。
100周年、150周年、200周年、250周年、300周年などを含みます。



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