●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.110 ●▲■
         発行日:2008年 2月13日(水)
  ■お酒・アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
 発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com

 

  ------------------< 目 次 >------------------

●▲■ 近作のお酒書籍のご紹介「前編:清酒・焼酎の4冊」●▲■

 ●その1 「(復刻)日本の酒」  ●その2 「挑戦する酒蔵」
  ●その3 「焼酎の来た道」    ●その4「酒の日本文化」
<清酒の蔵は千数百、焼酎は数百、泡盛は数十。「数」こそ魅力>
<お酒の「ルーツ・歴史・文化」を、もっと知らねばならない>

 ●(番外) 「生物と無生物の間」
                      (text = 喜多常夫)

ご紹介アイテム●1▲ スタイリッシュな「スリム375」びん
ご紹介アイテム●2▲ プレミアムのための「カク720」びん
ご紹介アイテム●3▲ 日本最強? 全8色の「一升びん」

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最近読んだお酒関係書籍のご紹介、2回連続でいきます。
今回は、清酒・焼酎関係の4冊です。

 

●▲■その1「日本の酒」坂口謹一郎著、岩波文庫(¥660+税)

1964年初版の、往年の名著。
10年以上絶版になっていたが、2007年8月に再刊行されたもの。

 「あくまでも「酒に従って法をつくる」ことであって、
  万一「法に従って酒を造らせよう」ということになれば、
  それは酒を殺すこと、日本の酒を破滅に導く」
  →→→「発泡酒」や「第三のビール」を想起させる。
   今回予定の最低製造数引き下げ(果実酒2klなど)はどうなのだろう。

 「仮に灘の全酒造家がイギリスのウィスキー・トラストのDCLのように
  まとまっても、その規模はビール会社の1/10もない、
  これでは近代産業としての体制を整えるのはなかなかむつかしい」
  →→→灘の話というより、清酒業界全体を思ってしまう。
   小さな蔵も含め、数があることが日本酒の魅力ではあるのだが。。。

半世紀後の今に通じる、こんな鋭い視点に驚く。

また、勲一等の東大の先生とは思えない、俗と洒脱を備えた表現が魅力。
いくつか本文から引用してみる。

 「蛙の面に小便である」
  (→日本酒酵母は乳酸が1%くらいでも平気であることを指して)

 「一種の変態的な一時的な間(あい)の子ができる」
  「中国の易でいう二女同居で、きわめて陰相」
  (→麹菌の細胞がつながっても、核は通常別々のままなので)

嗚呼、50年前はこれほど違ったか、というデータも。

 「一番好きな酒は清酒、と答えた人は、
  昭和29(1954)年の内閣府調査で全飲酒人口の70%(!)、
  昭和36(1961)年の酒造組合の調査で56%」

 

なお、再刊行のために書かれた小泉武夫さんの解説が面白い。
小泉さんが、坂口さん、鈴木明治さん(元国税庁醸造試験所所長)らと、
上野の焼肉屋の二階で、
密造(!)のどぶろく(濁り酒)を飲んだ話。

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この、坂口謹一郎さんの「日本の酒」に続けて、
秋山裕一さんの「日本酒」(岩波新書)を再読したが、
正統なる日本酒文献のツートップだと再認識した次第。

 

●▲■その2「挑戦する酒蔵」酒蔵環境研究会編、農文協(¥1,400税込み)

日本酒が飲みたくなる本である。
7つの蔵の「挑戦」を紹介する本。モノクロームの写真もいい。

福光屋(「福正宗」金沢)
  全国にわずかしかない全量純米の蔵のひとつ。 
  「全量純米酒」達成には「全量本醸造」達成から10年かかった由。
  小さな蔵でないだけに全量純米の意味は重いし、
  福光社長の、父子二代の米と純米へ熱意が凄い。
  また、「口に入れて幸せになる酒」というコンセプトが心地よい。

大七酒造(「大七」二本松)
  今の時代に、生?造りであること自体驚きだが、
  蔵つき酵母維持のため新蔵建築の木材を旧蔵に数年置いておいた話、
  特殊な「扁平精米」の話など、そのこだわりに驚く。

桝田酒造(「満寿泉」富山)
  情熱ある社長(現会長)と、能登杜氏で名の知れた三益さん。
  早くからの吟醸への取り組みや、父子二代で杜氏を務めた歴史。
  サブタイトルは「蔵で死にたい」(!)である。

ほかにも、蔵元と杜氏の話を中心に、以下の4蔵を紹介している。
大木代吉本店(「自然郷」福島県西白河)男山本店(「蒼天伝」気仙沼)
白木恒助商店(「だるま正宗」岐阜)数馬酒造(「竹葉」石川県能登)

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清酒を醸造する蔵は残念ながら年々減るのが実態で、
「将来は千軒を割り込んで3桁にならざるを得ない」という人もあるが
願わくば、10年後20年後にも多くの蔵が継続してほしい。

坂口さんの本のところでも書いたが、
私は、「千数百(=4桁)の蔵があること」が日本酒の魅力だと思う。
そもそも、人々が熱中するものには、「数」が必要だ。

例えばボルドーにシャトーが5軒しかなかったら、
どんな良いワインであっても人々は熱中しないのではないか。
ボルドーだけで数百銘柄もの「数」があるから夢がある。奥が深い。

多くの蒐集家がいるジャンルも同じである。
例えば世界中に、日本の浮世絵、印籠、刀の鍔の蒐集家はたくさんいるが、
集めても集めても、集めきれない「数」があるから蒐集が成立する。
藤田嗣治や佐伯祐三、またはゴッホやセザンヌの絵のように、
数がなく滅多に市場に出ないものは、
限られたお金持ちの蒐集対象にしかなりえない。

 

スコッチ・ウィスキーや琉球泡盛のメーカーはそれほど多くないが、
それでも数十社、つまり2桁はある。
熱中や蒐集のためには、4桁や3桁が望ましく2桁は最低限。
1桁では成立しないと思うのだ。

日本で原産地呼称をやる場合も、メンバー数2桁の括りがいるだろう。

日本酒は今、日本で苦戦しているが世界で注目を浴びている。
欧米やアジアの人にとって、日本食との関わりや健康志向だけでなく、
「多くの銘柄(千数百銘柄)があること」が潜在的魅力だと思う。

加えて、日本の場合、
清酒のほかに、焼酎(数百銘柄)と泡盛(数十銘柄)も控えていて、
それぞれが独自の文化や歴史、食との関わりがあるのが頼もしい。

書評から横道にそれたが、
「数を守っていくこと」は日本の酒文化の維持・発展に重要だと思う。

 

●▲■その3「焼酎の来た道」小川喜八郎、中島勝美著、金羊社(¥1,600+税)

学術的な本である。
多少の予備知識がないと読み進むのがつらいかもしれないが、
東南アジアの蒸留酒は未知の領域で興味深い。
著者の一方、中島さんは雲海酒造の社長さんである。

「アジアの蒸留酒の歴史と文化」というサブタイトルどおり、
本の半分は、「黒麹」や泡盛の「シー汁」の源流を探って、
中国、タイ、ベトナムの蒸留酒の現場紹介に割かれる。
2005-2006年に実地訪問した最新情報である。

日本とは全く異なる醗酵方法だが、写真で理解が助けられるし、
醗酵ガスをドライアイスの原料にするなど、意外な逸話もある。
また、日本の焼酎とアジアの蒸留酒の香気分析表も興味深い。

(なお、「数」の話をすると、本書によれば中国には、
蒸留酒(白酒)を作るところが1万箇所以上(!)あるそう)

本の残り半分は、焼酎の香気成分の生成プロセスや、焼酎つくりの技術。
通り一遍の解説でなく、特に風味に関して詳しい。
焼酎代表銘柄の沸点成分(βフェネチルアルコールなど香気成分)の分析表が
実名(銘柄)入り(!)で書いてあったりする。

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西洋の蒸留酒、ウイスキーやブランデーのことは、
ある程度知っている人が多いと思うが、
わが焼酎の出自たる東洋(アジア)の蒸留酒文化やカビ酒文化については
一般にあまり知られていないと思う。

焼酎は世界の蒸留酒の仲間入りを果たしつつあると思うが、
それだけに、
アジアの中での位置づけや歴史もよく知っておきたいものだ。

 

●▲■その4 「酒の日本文化」 神崎宣武著、角川文庫(¥590+税)

これは、近刊というわけではない。
1991年初版だが、2006年に文庫として再版されたもの。
著者は民俗学者で、「日本酒で乾杯推進会議100人委員会」の委員。
(2007年に「乾杯の文化史」という新著も出されている。)

歴史を踏まえた日本酒の文化的考察が中心だが、
アメリカ人の日本文化研究者と、山梨のとある「講」にいったところ、
最初は般若心経だったが、すぐに酒盛り&カラオケ大会になった話など
面白い逸話も織り込まれている。

「日清日露で徴兵し、軍隊で酒を飲ませたことが
清酒が日本にひろまる要因となった」、
「貧乏徳利(骨董品屋で見かける、酒銘柄などが書いある、あれ)は
東は美濃焼の陶器、関西は立杭焼の陶器、西は有田焼の磁器」、
などという話も、初めて知った。

個人的には、栗山一秀さん(元月桂冠)の京都弁まるだし(失礼)の引用
  「そうでんな、酒を澄ますのに木灰をつかうのは、、(後略)」
  「酒の手直しとしては火入れが一番大事やといえますやろ、、(後略)」
が、印象に残った。ご本人が目に浮かぶ。
(昨年暮れに醸友会でお会いした時も同じ口調の名調子だった)

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日本酒を広めるため、「スローフード」や「地産地消」、
「米食への回帰」や「食育」なども大事だが、
「酒の文化を語ること」もとても大事だと思う。

 

清酒や焼酎を味わうには、
その「ルーツ・歴史・文化」をもっと知らねばならない、
今回の4冊を読んで改めてそんな風に思った。

 

 

●▲■(番外)「生物と無生物のあいだ」福岡伸一著、講談社(¥740+税)

お酒関係の本ではないが、番外で1冊紹介。
微生物を使う醸造・醗酵には縁があるジャンルではある。

この種の本にしてはよく売れているらしく、
「どきどきする読み物です。よしもとばなな(!)」、
などという帯がついている。

野口英世は、日本ではお札に印刷されたくらいなのに、
野口が在籍したアメリカのロックフェラー研究所では、
研究は間違っていたとして評価されていないという逸話が面白い。
わが業界の(タカジアスターゼの)高峰譲吉のような話だ。

DNAの発見でノーベル賞をもらったワトソン、クリック。
その影に、成果をあげながら脚光を浴びなかった人や、
研究を盗んだ疑いがあった、というのも興味深い。

そんな人間的エピソードと平行して、
DNAの知識や、生物と無生物を分ける「動的平衡」など、
主題の科学的な解説が抜かりなく進む。

醸造関係の学会発表でよく見かける「PCR分析」の原理も
恥ずかしながら本書の解説で初めて知った。

小説を読んでいるようで、一気に読めるし、
私には(理科系故か)とても面白かった。お勧めします。

                (text = 喜多常夫)

 

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さて、当社商品のご紹介です。

●▲■ ご紹介アイテムその1:K2ディビジョン ●▲■

スタイリッシュな清酒、焼酎に:「スリム375」びん
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/package/SLIM375_ed06.pdf

いままでのお酒のイメージではない、スタイリッシュなパッケージ。
2合という容量も、お酒ではニッチ。
相似形の「スリム500」もあります。

●▲■ ご紹介アイテムその2:K2ディビジョン ●▲■

プレミアムの清酒、焼酎に:「カク720」びん
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/package/kaku720_ed04.PDF

今までにないプレミアム感。
クラッシック&コンテンポラリー。
相似形の一升びん(「カク1.8」)と組み合わせてみてください。

●▲■ ご紹介アイテムその3:K2ディビジョン ●▲■

日本最強? 全8色の「一升びん」
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/package/18LBIN.html

清酒・焼酎の定番・伝統の容器である一升びんに、
ピンク、ルリ色、ベネチアンブルー、スカイブルー、ブラックなど、
特別な色を取り揃えました。
フロスト加工も含めると、なんと全16種類(!)です。

特に、特別色とフロスト加工は、
「競争力のある価格」でご提供しています。

営業担当にご照会ください。

 

 

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