●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.117 ●▲■
      発行日:2008年7月30日(水)
■お酒・アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com

 

  ------------------< 目 次 >------------------

●▲■ 「ビンパストラの酒」

 ■宮城と山形で驚いたこと ■ビールは15PU。清酒は52PU必要(か?)
  ■「びん燗対応の替栓」 ■清酒は殺菌必要、ワインは不要

                   (text = 喜多常夫)

ご紹介アイテム●1▲「びん燗火入れ」のための替栓、PPキャップ
ご紹介アイテム●2▲「びん燗火入れ」「愛情シリーズ」など首かけポップ
ご紹介アイテム●3▲「移動式タンク」は便利です!

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「崖の上のポニョ」
「カリオストロの城」
「となりのトトロ」
「風の谷のナウシカ」
「天空の城ラピュタ」
「ハウルの動く城」
「未来少年コナン」、、、などなど。

いつも大ヒットの宮ア駿(みやざきはやお)監督のアニメは、
並べてみるとタイトルにパターンがあるなあ、と思います。

今回のタイトル、「ビンパストラの酒」は、
ちょっと真似して、
不思議系カタカナ言葉(?)入りのタイトルをつけてみました。

 

「びん」充填後に「パストラ」イゼーションをするお「酒」、です。

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「パストライゼーション」:パスツールが発見した「低温殺菌法」。

1861年に、食品の腐敗は微生物由来であること、
すでにあった100℃以上の「レトルト」技術ではなく、
60〜70℃程度の「低温」で時間をかければ殺菌できることを発見。

 

発見者の名前を冠した法則、定数、病名などは数多いけれど、
(メンデルの法則、プランク定数、アルツハイマー病など)

「XXXXXゼーション」、「XXXXXイズム」など、
人名そのものを名詞や動詞にしてしまった例は少ないと思います。
私が思いつくのは、
マルクス、キリスト、仏陀、それにこのパスツール。

日本酒ではパスツール以前から低温殺菌を行っていた、
とはよく言われるところですが、
人名が普通名詞になるほど世界中で普遍的に使われる偉大な業績ですね。

 

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この1か月ほどの間に、東北に二度行くチャンスがありました。
宮城県と山形県でいくつかの清酒メーカーさんを回らせていただいたのですが、
ちょっと驚いたことがありました。

それは、非常に多くの方が、
一升壜や720ml壜で「びん燗火入れ」、
すなわち、びん充填後にパストライゼーションをしている、
あるいは、近々そうしようとしている、ということでした。

生酒以外のお酒は普通、プレートヒーターなどで加熱して、
充填前に殺菌してから壜詰めしますが、
ここでいっているのはそうでなく、低温で詰めた後、王冠・キャップを打栓して、
壜の状態で湯煎またはトンネルシャワーで殺菌温度まで持ち上げること。

エネルギー節約の今の時代要請からすれば
むしろ逆行に見えますが、
新酒鑑評会に出品される清酒はほとんど「びん燗火入れ」である、
という事実が品質に対する好影響を物語っています。

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ビール醸造学のテキストにはたいてい書いてある
PU(Pasteurization Unit。文献によってはPE。殺菌単位、と訳すべきか)
については、清酒ではあまり言われないような気がします。

PU=(分)x1.393の(温度-60℃)乗。
熱殺菌の効果(PU)は温度と時間で決まり、
同じPUなら高温短時間と低温長時間で同じ効果、という概念です。

通常のビールだと、
「14-15PUが必要(「Technology Brewing & Malting」Kunze)」
といわれます。
たとえば、64℃なら1.393の(64℃-60℃)乗が3.765。
15PUのためには15÷3.765=3.98分必要なことがわかります。
4℃高い68℃の場合、15PUを計算するとほぼ1/4の1.05分。
同じ15PUの殺菌効果をえるのに、
わずかの温度差で大きな時間短縮となることがわかります。

日本の大手メーカーのビールは衛生管理やフィルター技術のおかげで、
ほとんど「生」(パストラなし)になってしまいました。
「キリン・ラガー」が全工場で生ビールになったのは1996年と記憶します。

一方、2007年新発売の「キリン・ザ・ゴールド」では、
パストラを復活していると聞きます。
お酒の特性によってもパストライゼーションの必要性が左右されます。

牛乳では、
低温殺菌の場合65℃30分、または72℃15秒間。
(7℃の温度差で時間は60分の1に短縮!)
高温殺菌では120-130℃2-3秒、常温保存可能な超高温殺菌は130-150℃2秒
というのもよく聞かれると思います。

(注:100℃以上にはPUの概念は拡張できないかも知れません。
パストライゼーションは必ずしも完全滅菌ではないのに対し、
常温流通牛乳やレトルトカレーなどは完全滅菌を前提としているので。)

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以下の記述は専門家に確認の必要がありますが、
あえて清酒にあてはめて言いますと、、、

清酒は
「65℃10分保持が安全(「灘の酒用語集」灘酒研究会)」
とすれば、10x1.393(65-60)=52PU
が必要単位であることになります。

ただし、火落ち菌に限ると、
「65℃23秒で生菌数は100億分の1で殺菌は完全(「改定醸造学」野白喜久雄ら)」
だそう。

トンネルパストライザーでは(あるいは湯煎でも)
各温度ゾーンでPUが積算されることに留意が必要です。

たとえば、 ありそうな条件として
「62℃5分→68℃7分→(冷却も時間がかかるのでその間の平均が)62℃5分」
を積算計算すれば、
5x1.393(62-60)+ 7x1.393(68-60)+ 5x1.393(62-60)=118PU
となり、必要条件(52PU)の2倍以上の熱履歴をかけていることになります。

何人かのお蔵の方と話していて気になったことは、
「xx℃までは上げなければならない」と
最高到達温度ばかりを非常に気にされていること、
またそのために非常に長時間かけて温度を上げていること、です。

実際のところ積算温度で効いてくるのだから、
もっと低い温度で条件だしができる余地があるのではないか、、、

素人ながらそんな風に感じました。

なにしろパストラの一般的心配ごとは温度履歴による風味の低下ですし、
熱エネルギーの無駄遣いは極力避けるべきですから。

 

ただし当然ながら、ここでいう温度はシャワー温度でなくお酒の中心温度。
シャワーの場合、壜底から1〜2cmのところが低温スポットになりやすい、
湯煎の場合、むしろ喫水線を低くしたほうが壜内品温が均一化する、
といった事情はよく踏まえなければなりません。

PUは、
蔵の衛生状況、醸造法、フィルターの仕様などによって決定されるべきですが、
いまや20-25PU(65℃なら3.8〜4.7分、62℃なら10.3〜12.9分)、
あるいはそれ以下で充分なお蔵が多いのではないか、
と個人的に思います。

 

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実は、
以上のことは当社にとって非常に実務的な関係がありまして、
最近、一升壜用の替栓で「びん燗対応替栓」というのを作っています。

普通の替栓はポリエチレンでできていて、
「湯煎」ならまあなんとかなる場合も多いのですが
「トンネルパストライザー」で温水シャワーを浴びると縮んでしまって、
漏れのリスクにつながります。

そこで、熱履歴後(熱収縮後)に適切な密封性となるように
耐熱温度を高めた特殊素材と構造で作っているのですが、
今のところ、許容熱履歴範囲が狭くて、
熱水を浴びすぎると抜栓が緩くなるし、
低い目の温度のお湯なら予定収縮にいたらず抜栓が硬い、
というジレンマで、改良せねばと思っているところなのです。

それというのも、
「びん燗火入れ」の温度や時間の条件が
お蔵によってあまりにさまざまで、
ここまで温度を上げる必要があるのかなあ、
というくらい高温水を使っておられるところがあるのが、
一つの原因なのです。

また、
パストラ後に速やかに温度を下げるのが酒質に良いのですが、
この冷却条件もお蔵によって随分違う
(「びん燗火入れ」→「零下の貯蔵庫で熟成」という蔵もあります)
ので、すべての条件に適合するキャップがなかなかできないのです。

ちょっと内輪話になりましたが、
よりすぐれたびん燗対応の替栓やPPキャップを開発中ですので、
よろしくお願いいたします。

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清酒は基本的に殺菌をしないといけませんが、
かつてパスツールがその開発目的としたワインは、
別に無菌フィルターを通しているわけではないのに、
いまや火入れをしないのが一般的。
(日本のワイナリーでは熱充填しているところが結構ありますが、
少なくとも外国のワイナリーでは常温充填が一般的)

清酒の場合、
いま注目されている「発泡清酒」も熱殺菌をしている例が多いですが、
一方、発泡ワインである「シャンパン」は火入れしません。

火入れ工程がないと随分、楽に作れることになります。

同じ醸造酒で、似たようなアルコール度数なのに、
片や殺菌必要、片や常温充填可能。
なぜ故こうなっているのか、専門的な解説を聞いてみたいところです。

 

                   (text = 喜多常夫)

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さて、当社商品のご紹介です。

●▲■ ご紹介アイテムその1:KKディビジョン ●▲■

「びん燗火入れ」のための替栓、PPキャップ
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/closure/binkanKS.pdf

本文中にもありました、一升壜用の「びん燗対応替栓」です。

「湯煎」または「トンネルパストライザー」を通過後に
適切な開栓性となるように高い特殊素材と構造で作っています。

720ml壜(30ミリSTDのPPキャップ)でびん燗火入れを行う場合は、
「HRグレード」か「PM(インシェルモールド)」がお勧めです。

「HRグレード」はシーマーのトッププレッシャが異なります。
下記でご確認ください。

http://www.kitasangyo.com/e-Academy/capping/PPmakijime_C_ed03.pdf

 

(替栓・PPキャップとも、殺菌条件や打栓条件によっては、
開栓性や密封性に問題が出る場合がありますので、必ず事前にご確認ください。)

 

●▲■ ご紹介アイテムその2:K2ディビジョン ●▲■

「びん燗火入れ」「愛情シリーズ」など首かけポップ
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/closure/pop_k.pdf

「びん燗火入れ」・・・一升壜または720ml壜にどうぞ。
「愛情シリーズ」・・・お酒やワインだけでなく花一輪のプレゼントにも。
「ワインシリーズ」・・・商品差別化に是非どうぞ。

 

●▲■ ご紹介アイテムその3:ROOTSディビジョン ●▲■

移動式タンクの納入事例
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/brewing/idotank_jirei_2.pdf

1KLや2KLのタンクがあると何かと便利なもの。
ステンレス高騰のおりですが、競争力のある価格提案をいたします。

 

 

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http://www.kitasangyo.com/Archive/mlmg/BN_top.html

2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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