●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.126 ●▲■
     発行日:2009年 4月10日(金)
  ■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■

発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com

 

------------------< 目 次 >------------------

●▲■ 酒類の相似性、その2 ●▲■

●■「甲乙混和焼酎」と「150年前のウィスキー訴訟」
■▲「大正時代、連続蒸留は乙類に混和した」
▲●ブラジルの醤油は、トウモロコシでつくる!

               (text = 喜多常夫)

ご紹介情報●その1▲「beauty-of-mathematics」
ご紹介情報●その2▲「ローブポンプとインペラーポンプ」
ご紹介情報●その3▲「ジャイロパレットのYouTube動画」

 

 

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2月のメルマガで
「清酒・三増酒・合成酒」と「ビール・発泡酒・第三のビール」
の「相似性」について書いたが、
今回は「蒸留酒の相似性」について。

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最近、単式蒸留焼酎メーカーの皆さんの間では、
「甲乙混和焼酎」が話題になることが多い。

先般のFOODEX展示会でも、
日本酒造組合中央会の焼酎・泡盛の出展で、
「本格焼酎と混和焼酎の違い」を盛んにアピールされていた。

混和焼酎は、
価格を安くできるポテンシャルがありそうだし、
「麦」や「いも」と表示されるので
消費者が本格焼酎と混同する、
また、市場を奪われたり安値競争になる懸念なのだろう。

 

余談ながら、先週末に京都の円山公園(桜で有名)を
昼と夜の2度も上下に通りぬける機会があって、
花見客の酒を観察したのだが、確かに、
「むぎ焼酎・かのか」(「甲乙混和」のトップブランド)が多くて、
その浸透ぶりを実感しました。

 

2008年の焼酎の出荷は
   ●「乙類」が304万石
   ●「甲類」が263万石
   ●「焼酎合計」567万石
だったそうだ。
(昔の単位でスミマセン、「1石」=「約180リットル」)

「甲乙混和」は公式統計がないが、
業界筋によれば、2008年は、
39〜40万石程度で、2ケタ(15%程度)の伸びだそう。

この「39〜40万石程度」は、
統計上、どうも甲類の数字に含まれるようである。

ご存じのとおり、2008年は
   ▲好調だった「乙類」が10年ぶりに前年割れ、
   ▲「甲類」は前年なみ、
ということだったわけだが、
「甲類」を、「純粋甲類」と「甲乙混和」に分けると、
   ▲「純粋甲類」も前年割れ
   ▲「甲乙混和」のみ大幅増

、、、ということになる。

 

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スコッチウィスキーとは元来、
モルトウィスキー(ポットスチルによる2回蒸留)だったが、
1850〜1860年ごろに、
グレーンウィスキー(連続蒸留機の発明による)が現れ、
両者をブレンド(混和)するようになった。

当時、混和に反対する大論争がおこり
訴訟も起こったそうだが、
結局、混和は認められた。

 

ウィスキーの場合はそれを契機に
スコットランドのローカルドリンクから、
ロンドン、ヨーロッパ、そしてアメリカに市場を拡大した。

その昔のモルトウィスキーは、
今のシングルモルトほど洗練されていなかったと想像できる。
ブレンドで飲みやすくなったこともあるのだろう。

因みに、
「ジョニーウォーカー、オールドパー、バランタイン、
ホワイトホース、シーバスリーガルなどは、
通常は20種類、多くて50種類くらいのモルト原酒と、
大体4種類くらいのグレーン原酒をブレンド」するそう。
  (「スコッチ三昧」土屋守、新潮選書、2000年刊)

焼酎では(あるいは日本人感覚では)
こんな多くの混和はあり得ないと思うが、
シャンパンの製造工程におけるマリッジ(混和)もしかりで、
ヨーロッパ人はこのくらいの数がむしろ自然なのかもしれない。

 

ブレンドが始まって100年後の1950〜1960年ごろには、
英国の対米輸出の1/3近く(!)を
スコッチ(=ブレンデッド)が稼ぎ出すまでに成長したそうだ。

その後、日本を含む世界市場でスコッチは凋落したが、
御存じのとおり最近10年ほどは、
ブレンドならぬシングルモルトが人気となっている。

 

日本の焼酎では、
「乙類の人気の後に(人気がでたから?)甲乙混和が始まった」
わけだが、
英国のスコッチの場合は、
「混和しはじめて100年間は市場を拡大したがその後縮小、
混和後150年たってシングルモルトが脚光を浴び始めた」
という筋書きである。

 

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日本の場合も、実は、
100年ほど前に連続蒸留が始まった当初は、
乙類に混和したようである。

「明治の末にパテントスチルが導入されると、
全国各地に新式のアルコール工場が建てられ、
それを昔からの「粕取り」焼酎に混ぜて販売するようになった」

「混ぜる割合もだんだん増えてきて、
大正の末年ころには在来の焼酎はほとんど味付け程度の3-5%にすぎず、
その後はさらに極端になって、
在来の焼酎を全く加えないアルコールになってしまったのが、
現在の甲類焼酎である」
  (坂口謹一郎「日本の酒」1964年初版、2007年に岩波文庫で再版)

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「清酒と合成清酒の混和」も議論された時代もあった。

第二次大戦の米不足で開発されたのが
アルコールなどを添加して増量する清酒の三増酒。
(注:酒税法改定で2006年から三増酒は清酒ではない。)

三増酒が清酒業に許可されたことに対抗し、
合成清酒業界は、
1950年に清酒と合成清酒の混和案を発表した。

 ■清酒と合成清酒を混和したものを日本酒(仮に命名)とする
  ■日本酒の税率は、合成清酒と清酒の中間とする
  ■清酒、合成清酒の桶売買未税移出を認める
  ■清酒、合成清酒の製造免許者には日本酒の免許を与へる

「三増酒は、清酒1石に合成清酒2石を添加するのと同じだ」
と言われたこともあり、
また、二級酒不足もあって、酒販業界も混和に賛成した。
当時、自民党総務会長が全国酒販協会会長(!)だったこともあり、
実現一歩手前までいったそうが、
結局、混和清酒の実現は見ずに終わった。
  (「合成清酒四十年の歩み」昭和41年刊、
       および「酒販昭和史」昭和60年刊より)

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甲類焼酎は、特に東京では、
ホッピーと混ぜてビール風にして飲む下町文化がある。

果汁をプレミックス(混和)した
チューハイやカクテル系のRTD缶づめは全盛である。

発泡酒に蒸留酒を混ぜる「リキュール」区分の第三のビールも
大豆やエンドウの蛋白でつくる
「その他の醸造酒」区分の第三のビールも、大人気である。

 

ちょっと話は飛ぶようだが、
ブラジルの醤油は、トウモロコシが原料だそうである。

先月、FOODEXに出展していたとき、
ブラジルから出展していた「サクラ中矢食品」の
副社長さんと話をするチャンスがあってそう知った。

日系ブラジル企業の「サクラ中矢食品」は、
現地最大手の醤油企業だそうである。
(味噌やソース、それに清酒!も作っている。)

トウモロコシで作った醤油など日本食文化に反する、
と思われる方もいると思うが、
1940年の創業以来、サクラ醤油は現地の日本食を支え、
今では圧倒的シェアを持っているそう。

 

「新原料」を使う製法も、「混ぜる」製法も、
伝統や既成概念に背く場合が多い。

伝統手法も大事にせねばならぬが、
伝統に拘泥しない新しい技術もあるべきだと思う。
それが、技術進歩を支える。

しかし、「混ぜる」にしても「新原料」にしても、
「新しい付加価値を生み出す」
というコンセプトならいいけれど、
「より安価な商品をつくる」
というコンセプトは、行く末を危惧する。

 

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日本のお酒売り場が、
その商品棚には
「紙パック清酒」「紙パック本格焼酎」「紙パック甲乙混和焼酎」
があふれ、冷蔵リーチインには、
「発泡酒」「第三のビール」
が幅を利かせる図を思うと、
個人的には気持ちが暗くなる。

紙パックは容器として優れたものであろうし、
発泡酒、第三のビールの製造技術は素晴らしい。

お酒の価格が安いことも、
不況で縮小する日本経済のなかで、
消費者から見ればありがたいことではある。

しかし「酒を飲む価値観」や「酒を飲む楽しみ」、
あるいは「酒の文化性」が希薄になって、
お酒から遠ざかる若い世代を増やすことになりそうに思う。

 

「清酒紙パック」(1970年代登場)の増加は、
価格低下と清酒総出荷量減少の歴史と重なる。

「発泡酒」(2001年登場)と、
「第三のビール」(2003年登場)の開発コンセプトは、
酒税を節約し価格を安くすることである。

本格焼酎や混和焼酎では、
安値競争にならないことを祈りたい。

焼酎も清酒もビールも、価値高い日本のお酒として、
将来に、また世界市場に、引き継いでいってほしい。

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最後に、エピソードをもう一つ。

 焼酎は14〜15世紀ごろ、
  「島国」の琉球から、
  日本「最南端」の薩摩や九州に伝えられた。

 ウィスキーは12〜13世紀ごろ、
  「島国」のアイルランドから
  英国「最北端」のスコットランドに伝えられた。

相似性、あるいはシンメトリーを感じませんか?!

               (text = 喜多常夫)

 

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さて、ご紹介情報と、きた産業の商品の紹介です。

●▲■ ご紹介情報その1:e-academy ●▲■

「beauty-of-mathematics」
http://www.kitasangyo.com/e-Academy/wine/beauty_of_mathematics.ppt

お酒とは関係ないのですが、
「数学の美しさ」あるいは、
「シンメトリーの不思議」に感じ入ったのでご紹介。
スライドショーでクリックしてご覧ください。全12ページ。

(中尾直史さん(雲雀丘学園校長)から転載させていただいた。
その前はアメリカの妙田俊夫さん(デラウェア大学教授、微生物学)
から送られてきたものだそうだが、
最終ページから察するにオリジナルはブラジル製?
なお、見れない方は、Microsoftのサイトから
PowerPoint Viewerをダウンロードできます。)

 

●▲■ ご紹介情報その2:ROOTSディビジョン ●▲■
「ローブポンプとインペラーポンプ」
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/brewing/rubber-impeller-pumps.pdf

ポンプのことならお任せ下さい。
セントリフューガルやチューブポンプもあります。

各種ポンプの特性比較資料も最近更新しました。
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/brewing/pump-data_ed04.pdf

選択のご参考にどうぞ。

 

 

●▲■ ご紹介情報その3:ROOTSディビジョン ●▲■
「ジャイロパレットのYouTube動画」
http://www.youtube.com/watch?v=1rj8M1SkJBs&feature=channel

壜内二次醗酵のスパークリングワインの
自動ルミアージュ(動壜)のためのジャイロパレット。

フランスのエノコンセプト社の製品で、
日本で初めてのダブルケージです。
(素人撮影で恐縮ですが)動画でご覧ください。

なお、カタログは下記の通り。
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/brewing/Gyropalette_WOP_ed01.1.pdf

 

 

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●▲■バックナンバー閲覧可能!「メルマガ・クロニクル」

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2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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