●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.148 ●▲■
     発行日:2010年 12月24日(金)
  ■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■

発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com

 

 

------------------< 目 次 >------------------

  年の瀬のご挨拶。それに、2010年の○と×

●▲■ ビール業界の2010年:「もしも統合していたら」
●▲■ ワイン業界の2010年:「品質志向と国内需要喚起」
●▲■ ウイスキー業界の2010年:「フランス!」
●▲■ 清酒・本格焼酎業界の2010年:「米トレサ法、、、ではなく」

●▲■ きた産業の2010年の○と×

               (text = 喜多常夫)

 

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今年も押し詰まりました。
暮れのご挨拶を申し上げます。

 http://www.kitasangyo.com/2011message/message_2011.html

(↑「5カ国語クリスマス&年賀のカード、
              それに、年末年始の休日のご案内」)

      
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さて、年末恒例の「2010年の○と×」、
お酒・アルコール飲料業界の2010年を振り返って、
○(良かったこと)と、×(悪かったこと)を書きます。

(以下、社名の敬称略で失礼いたします。)

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●▲■ ビール業界の2010年:「もしも統合していたら」

キリンとサントリーの統合交渉の、
撤回発表があったのは今年2月。

もしも統合していたら、
日本の2010年代はずいぶん変わっていたかもしれない。

仮にキリンとサントリーが統合していたら、
メルシャンワインとサントリーワインの統合(想像しがたい!)
は当然だけれど、
「風が吹けば桶屋が、、、」ではないが、
ひょっとしたら、

  アサヒとサッポロが統合して、
   モンテローザとワタミが統合して、
   国分と菱食が統合して、
   ローソンとファミマが統合して、、、
  
   DOCOMOとAUが統合して、
   ユニクロとH &Mが統合して、
   NECと富士通が統合して、
   三菱商事と三井物産が統合して、、、

みたいな日本になっていた「かも」しれない、と思う。

 

そんなことはないだろう、みたいな話だが、
すでに、

  コニカ・ミノルタ
   三井・住友銀行
   大日本・住友製薬
   阪急・阪神
   三越・伊勢丹
   あいおい・ニッセイ・同和損保

など、ちょっと前には想像もつかなかった組み合わせが、
たくさん現実になっている。

 

なにしろ国内市場は縮小で、
生き残り戦略が求められる時代。

「ライバル同士」統合、「強者同士」統合は不可避なのだろう。

統合とは一番縁遠い感のある清酒産業や焼酎産業でも、
そんな時代が来るのかもしれない!?

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ビール産業では、
世界最大のABインべヴ誕生以降は特に、
「規模拡大とグローバル化」が加速している。

 

日本のビール4社もすでに、
相当なグローバル化を果たしている。

素人が新聞等でウォッチできる範囲でしか書けないが、

ビール事業では、
   ●キリン:豪のライオンネイサンと
        フィリピンのサンミゲルが資本傘下
   ●サントリー:上海の三徳利ビール工場、
          韓国OBビールとの販売提携
   ●アサヒ:中国の青島?酒の株取得や、
        カールスバーグとの海外の販売提携
   ●サッポロ:カナダとベトナムでビール会社買収

清涼飲料でも、
   ●キリン:豪州のナショナルフーズや、
        ベトナムでエースコックと清涼飲料の合併
   ●サントリー:仏のオレンジーナ買収に続き、
          米国の飲料会社の欧州事業を買収予定

国内事例も書いておくと、
   ●アサヒ:ハウスから「六甲のおいしい水」、
        カゴメからは「六条麦茶」を買収
   ●サッポロ:協同乳業との資本・業務提携

などなど。

円高で海外企業買収には最適の局面とはいえ、
「規模拡大とグローバル化」
はビール会社経営陣の呪縛(?)にさえ見える。

これからは「買収」ばかりでなく、
「海外との統合」の時代になるだろうけれど、

  ダイムラー・クライスラー(ドイツとアメリカ)の統合解消、
   昨今報道されているホンダのインドのオートバイ会社合併解消、

などを見ると、
海外企業との共同戦線はなかなか難しそう。

 

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2010年のビール業界を振り返ると、、、

 ■輸入PBも含めた「第三のビール」(=低価格品)が伸びる一方、
   プレモルとヱビスの「高級ビール」(=高価格品)も伸びたこと、
   (最近はプレミアムモルツをプレモル、と言うそう)

 ■2009年に登場し一大市場を築いた「0.00%ノンアルコールビール」が、
   2010年はさらに前年比2倍(!)に拡大したこと、
   (09年:約500万ケース→10年:約1,000万ケースの見込み。
    嗚呼今や、ビール系飲料の50本に1本がノンアルでアル。)

 ■スーパードライのエクストラコールドが、
   歴史的猛暑に実にピッタシだったこと、
   (英国人曰く、「目玉が痛くなる」ほど冷たかった)

 ■サッポロHDの筆頭株主だったスティール・パートナーズが
   ほぼすべての株式を売却したと報じられたこと、
   (良かった!)

などを記録すべきだろうけれど、

個人的には、2010年の出来事の中では、

 ●キリンがヨーロッパ向け「一番搾り」を
   ヴァイエンシュテファンに製造委託

というニュースが印象的だった。

ビールは、鮮度の問題と、原価に占める輸送費の問題で、
ヨーロッパ向けは域内で委託生産するのが一般的。

いままでキリンをヨーロッパ大陸で飲むと
ロシア・カリーニングラード製(委託生産)だったけれど、
今後は、ドイツ・ヴァイエンシュテファン製。

飲んでみたい!、と思いますね。

「ヴァイエンシュテファン」といえば、
世界最古(1040年創業)の由緒正しいビール醸造所。

そして、同じ敷地内にある、
ミュンヘン工科大学の醸造・食品学科を連想する
関係者が多いと思います。
(ここで勉強された業界関係者も多いと思います。)

「ビール純粋法」のあるドイツで、
ビールの聖地とも言うべき醸造所と委託契約とは、
日本のビールも大したものだ!
と感心して、これを、
2010年のビール業界の「○」としておきます。

 

 

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●▲■ ワイン業界の2010年: 「品質志向と国内需要喚起」

ビール大手は4社の社名を書いたので、
ワインについても大手の社名を記すと、

  ■メルシャン
   ■マンズ
   ■サントリー
   ■サッポロ
   ■アサヒ-サントネージュ

となり、この5社で国産ワイン市場の8割以上のシェアです。

 

ビールは「規模拡大とグローバル化」と書きましたが、
ワインは「(量より)品質志向と国内需要喚起」がキーワード。

全く逆ですね。

 

「日本製品志向」を反映した中国向け輸出や
甲州ワインの英国向け輸出(日本食拡大に伴う欧州市場開拓)、
など、国際化も進んでいますが、
基本的には、国産ワインは国内マーケットが主力。

大手5社はもちろん中堅・小規模のワイナリーも、

  ブドウ栽培に注力し、
   より質の高いクオリティーワインを醸し、
   「ワイン=輸入ワイン」という刷り込みのある
   日本のワイン愛好家にもアピールしうるワインを造ること
   あるいは、独自の価値観のあるワインを造ること

を、目標とされているところが多い。

 

ほかに、
パッケージ業界に身を置く者の視点で2010年を振り返れば、
「750mlびん」がジワリと増加したのも見逃せない。
従来はメルシャンが主体だったけれど、
他の大手や中堅でも採用が増えた年でした。

日本では「720ml(=4合)」が伝統的容量で、
清酒輸出では、容量規制のあるEUとアメリカでも
今やデファクトスタンダードとして720が認められたけれど、
ワイン、特に「クオリティーワイン」の分野では、
国内向けの国産品とはいえ世界標準の750がますます増えるでしょう。

(なお、焼酎輸出では720は未だあまり認めてもらえず、
輸出専用に750や500のびんを使用しているケースが多い。)

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ところで、2010年のワイン業界の「○」は、、、

突然の、
しかも全く個人的見解で恐縮ですが、
リニューアル後のメルシャン勝沼を見学したとき偶々見せていただいた、

  「浅井宇介文庫」

としておきます。

今年の工場や事務所の大改装に伴い、
浅井宇介さん(故人)の蔵書約2,000冊(!)を開架式に並べ、
訪問者に閲覧できる文庫として整備されたもの。

中公新書の「ワインづくりの思想」など、
多くの著作を残されていますが、
浅井宇介さんの志(こころざし)、または哲学に
共感するワインメーカーの方はとても多い。

「志」を持ってワインを造る、というのは、
これからの日本ワイン産業にとって、
とても大事なことでしょう。

 

 

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●▲■ ウイスキー業界の2010年:「フランス!」

各種の酒類の中で一番元気が良くて、
まだ伸びが続いているのがウイスキー。

プレーヤーは、

  ●サントリーが圧倒的シェアで1位
   ●ニッカ(アサヒ)が2位
   ●キリンが3位

で、3社合わせて国産ウイスキー市場の9割以上。

四半世紀以上の、長い長〜い縮小の末、
反転、増加に転じた。

この長い縮小の期間、事業を維持し、反転につなげた、
サントリー初め業界の皆さんの大変なご努力には脱帽します。

ご存知の通り、
ハイボールや水割りがけん引しているようで、
決して若者が高アルコール濃度に目覚めたわけでないと思うけれど、
高価格帯のウイスキーも品不足だそう。

20年ぶりの新設蒸留所、「ベンチャーウイスキー」の設立や、
本坊酒造が信州ウイスキー工場で何年かぶりで蒸留再開予定など、
近年、ウイスキーには風が吹いている。

 

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日本ウイスキーの2010年は、
国内市場だけでなく、海外にも注目すべき事がある。

最大の輸出先、台湾は長期的には減少しているが、
フランス向けや英国向けが伸びている。

特にフランス向け輸出量は、

  5年ほど前までほとんど統計に表れなかったのが、
   2006年に急増、
   2006年から2009年の3年間で3倍(!)、
   2009年から2010年の1年間で2倍の見込み(!!)

という勢い。
今や「月1コンテナ」が大げさでないくらい。

2011年は英国向けを上回るのではないかと思います。
(英国は台湾に次ぐ日本ウイスキーの輸出先。
なお、英国向けもずいぶん伸びている。)

 

日本市場でウイスキー需要が急増したのも驚きですが
フランス市場で日本ウィスキーが急成長とは!
もっと驚きです。

個人的体験では、かつて(30年ほど前)
フランスでウイスキーを飲む人は、
ほとんどいなかったように思います。

1977年発行の玉村豊男さんの著作、
「パリ 旅の雑学ノート」の
アルコール飲料の飲まれ方について書かれた部分にも
「ウイスキーはまだフランスでは最終的な市民権を得ていない」
と書かれている。

それが、今やフランスは、
「スコッチウイスキーの最大の消費国」である。
(アメリカや本場英国の消費量さえ上回る!)

フランス人に聞けば、
「若者も結構ウイスキーを飲む」のだそう。

「ワイン好きの国」がどういう経過で、
「ウイスキー好きの国」になったのか。。。

 

2010年のウイスキー業界の「○」は、

 「フランスにおけるジャパニーズウイスキーの拡大」

としておきます。

 

 

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●▲■ 清酒・本格焼酎の2010年:「米トレサ法、、、ではなく」

 

ビール、ワイン、ウイスキーで社名を記したので、
同じように社名を記すと、

  ■三和酒類(「いいちこ」)
   ■霧島酒造
   ■白鶴酒造
   ■月桂冠

が、出荷量で見た現状のトップ4。

ウイスキーのところで
「四半世紀以上に及ぶ、長い長〜い縮小の末、反転」
と書きましたが、

清酒は、
「ウイスキーよりさらに10年長く縮小が続き、未だ底ならず」
本格焼酎は、
「21世紀初めまでの長い成長の後、近年若干の縮小に転ず」
という状況。

思いつくまま書くと、
業界の視点で見た2010年の「×」は、

  ■「甲乙混和焼酎」の増加
   ■「紙パック」比率が50%を超えてもなお漸増傾向
   ■「紙パック」の低価格化が、清酒からじわじわ焼酎、泡盛に
   ■「極低価格居酒屋」(280円均一、270円均一の居酒屋など)

2010年の「○」は、

  ■「スパークリング」の市場拡大
   ■「和のリキュール」の市場拡大
   ■「海外マーケット」が堅調

そして2010年の「!」(○とも×ともいえない)は、

  ■「米トレーサビリティー法」

といった項目でしょうか。

 

「米トレサ法」(と、業界では呼ぶ)は、
事故米の不正流通事件をきっかけにできたもので、
本来の目的は、
   「使った米の履歴を3年間保存し、
    万一の事故の時にトレースできる体制」
これは時代の要請だし、正論でしょう。

しかし、清酒・焼酎産業の場合、
   「ラベルに原産国を表示すること」
が焦点になった。

「米トレサ法」の施行にともなって、
本格焼酎の麹原料から「タイ米」が一気に減ったのには、
はたしてこれでよかったのか?と考えさせられました。

国産米(価格は当然高い)の新需要を生みだしはしたけれど、
タイ米でおいしい焼酎ができていたわけだし、
タイのお米生産者は大打撃だと思います。

 

2010年の「!」は「米トレサ法」

とすべきところですが、、、

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ここでは、王冠・キャップ業者の視点で
2010年の「○」を選ぶことをお許しいただいて、

  「一升びん口」の720mlびん

とさせていただきます。

一升びんと同じく、「替栓」の上に「冠頭」を被せる、
いわゆる「複式王冠」の4合びんのことで、
2010年は大手でも採用されました。

私が知っている範囲で言えば、

  奥の松
    →黒龍、獺祭、真澄
     →剣菱、月桂冠、菊正宗

というのが大まかな採用の流れだったと思います。
(実際にはもっと昔からあったけれど、
これほど露出度が高まったのは奥の松以降。)

海外マーケットでも
「サケらしいびん」
「一升びんのイメージに近い」
「ネジ山のないびん形がきれい」
「スクリューキャップよりプレミアム感あり」と人気が高いよう。

 

そもそも、一升びん自体は年々激減していて、
2010年の推定使用数量は、
新壜0.6+回収壜1.4=2.0億本(清酒1.2+焼酎0.7+その他0.1)
この10年では1/2に減少している。

ただ、これだけ減っているといえ、
清酒にしろ、本格焼酎にしろ、泡盛にしろ
コマーシャルフォトには一升びんが登場する場合が多い。

ボルドーワイン、ブルゴーニュワイン、シャンパーニュは、
その壜形をみたらそれとわかるのと同じで、
一升びんも清酒や焼酎や泡盛のシンボル的なびん。

「複式王冠」も一升びんのイメージの重要な構成部品で、
これを720mlびんで採用するのは、
サケのイメージにとってプラスだと思います。

勝手ながら「一升びん口」の720mlびんを
2010年の「○」とさせていただきます。

今後は本格焼酎でも採用されることを期待しています。

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余談ながら、
最近、同じ銘柄、同じ製造時期の清酒で、
一升びん入りと720ml入りを飲み比べる機会があったのですが、
一升びん入りの方がおいしい(!)ことを発見した。

ワインでも、
同じビンテージで750とマグナム(1500)を飲み比べると、
私の経験では例外なくマグナムがおいしいいが、
一升びんも同じなのかもしれない。

 

 

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●▲■ きた産業の2010年の○と×

例年この時期に思う「×」ですが、
  ▲計画通り進められなかった事案が多かった。
  ▲クレームやコンプレインも多かった。

2011年は挽回を期して社を挙げて取り組みます。

一方「○」としては、
  ●加熱機能付き容器が生産開始から25年で6,000万缶達成
  ●大阪事業所内の大改装を行って工場環境を改善
  ●青森で新設シードル工場の設備一式を担当したこと
  ●FOODEXで世界各国産の清酒や焼酎を一堂に集めたこと

などがありますが、合わせてこれもご紹介しておきます。
  ●「47都道府県めぐりブログ」なんとか完成(見込み)
   http://www.kitasangyo.com/topics.html

正月から始めた2011年の企画で、
夏ころまでには終わるだろうと思ったら、
アニハカランヤ遅々として進まず。

11月末時点で20県以上残っていたものを
12月に入ってから一気に連日更新して、
なんとか年内終了(予定)です。

47都道府県ブログを眺めてみて改めて、
北から南まで、
全国のお客様とお取り引きいただいていることに、
心から感謝しています。

 

 

 ●▲■ むすび ●▲■

 わが王冠・キャップ業界はますます厳しい。
 
  ご記憶の方も多いと思うけれど、
  2008年末に業界中堅のN社が破産したのに続き
  2010年5月に清酒向けを主力にしていたT社が破産した。

 王冠・キャップ業者は、この20年で20社減った。
  1年に1社の割で減少。

 当社の場合、ガラス壜やアルミ缶、機械類も販売しているので、
  王冠・キャップ製造の専業ではないが、
  この割合で行けば、大手の数社は別として、
  5年後に我々中堅クラスで生き残るのは2〜3社となる。

 時代の流れは誠に厳しい。

 けれど、逆風に負けず、
  よりすぐれた製品品質、付加価値の高い提案で、
  存在価値のある企業となるよう精進いたします。

 2011年、
  きた産業は創業95年となります。
 
  なにとぞ宜しくお願いいたします。

      きた産業株式会社 代表取締役 喜多常夫

 

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