●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.150 ●▲■
発行日:2011年 2月7日(月)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com
------------------< 目 次 >------------------
欧州ワイン醸造設備・見聞録、その2
サンテミリオンの「Ch.フォージェール」
●▲■ <世界文化遺産の中のモダン建築>
●▲■ <ポイント!>x5 項目
●▲■ 「おきて破りのメルロ100%」+「ボルドーの鳥居?」
欧州ワイン醸造設備・見聞録、その3
ボルドー左岸の「Ch. ベイシュベル」と「Ch. マルゴー」
●▲■ 6年前、8年前との<変更点!>x4項目
●▲■ 一句、「ポンタリエ、重力式に、回帰する」
●▲■ 「チャイナ・エフェクト」+「飲んじゃう!」
(text = 喜多常夫)
ご紹介情報●1▲「DIEMMEの除梗破砕機、Kappa」
ご紹介情報●2▲「DIEMMEのバスケットプレス、Vintage」
ご紹介情報●3▲「スイスMOOGの樽洗浄システム」
●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■
引き続き、欧州ワイン醸造設備・見聞録。
前号はイタリアでしたが今回はフランス。
「その2」と「その3」の2連発で行きます。
やや専門的すぎるきらいがあるけれど、乞御容赦。
ワイン関係者以外のかたは、斜め読みしてください。
●▲■欧州ワイン醸造設備・見聞録、その2
サンテミリオンの「Ch.フォージェール」●▲■
ボルドー右岸のサンテミリオンといえば、
有名どころのオーゾンヌやシュバルブランにも興味があったけれど、
「サンテミリオンで最も先鋭的設備」との紹介を受けて
「シャトー・フォージェール(Chateau Faugeres)」を訪問先に選びました。
オーナーは、
若くして成功したスイス人実業家のシルヴィオ・デンツ氏。
彼はスペインやイタリアにもワイナリーを持つほか、
ガラス製品で世界的に有名なラリック社のオーナーでもある。
氏は筆者と同じ誕生日で1歳若い。
エライ違いです。
余談ながら連想したのは、、、
ワインの場合、例えばフランスのシャトーを、
スイス、アメリカ、ベネルクス、そして日本などの
お金持ちや企業が買い取って、
資金注入し素晴らしいワインを生み出す、
ということがこの1世紀、普通に行われています。
同じように、
新潟や東北の日本酒蔵元、あるいは九州の焼酎蔵元を、
中国やシンガポールのお金持ちが買い取って、
素晴らしい世界ブランドを生み出す、
という時代が近い将来やってくるのだろうなあ・・・。
●▲■ <世界文化遺産の中のモダン建築>
(以下の話は、ブログ「欧州ワイン醸造設備・見聞録 その2」
http://blog.goo.ne.jp/kita-slow_blog/e/bb29a587b1fd3857725eaac17b889447
で写真を見ていただけます。2011年1月31日分です。)
ヴィンヤードに突然現れるフォージェールの醸造所は、
辺りでみたこともないモダン建築。
所謂シャトーとは全く異なる。
サンテミリオン市街とその周りのワイン生産地域は
「ユネスコの世界遺産」に指定されている伝統地域なのだけれど、
聞けばユネスコのルールでは
「世界遺産区域内に建物を新築する場合、
<伝統的なもの>か<超近代的なもの>のいずれか」
ということらしい。知らなかった。
フォージェールの醸造コンサルタントは、
かのミッシェル・ロラン。
「重力式」レイアウトを織り込んで検討を重ねたという建築は、
世界的建築家、マリオ・ボッタによる。
(サンフランシスコ近代美術館、
渋谷のワタリウム美術館などを設計)
なお、建築に興味がある方に参考までに、
建築専門誌「A+U」(和文+英文)の2008年10月号が、
世界のワイナリー建築特集で、なかなか興味深い。
●▲■ <ポイント!@>
「ブーハー・ヴァスランの画像処理・自動選果」
フォージェール醸造所に入ってまず目につくのが、
画像処理ブドウ自動選果システム。
先述のバンフィにも登場した
「ブーハー・ヴァスラン」のシステム。
この2年ほどで、ボルドーで有力なシャトーには、
これが結構入った。
(因みに、サントリーさんのシャトー・ラグランジュも
これを導入されたそう。)
●▲■ <ポイント!A>
「温度制御ビルトインのオークバット」
醗酵はオークバット(オーク製タンク)による。
ただし、すべて温度コントロールが付いているのに注目!
ステンレス・タンクでなく、
オークバットにこだわっている高級シャトーは従来から多かったけれど、
温度制御がビルトインされものはほとんど見なかった。
しかし最近は導入するところが出てきている。
世界的に夏の異常高温や、冬の異常低温が常態化するなかで、
温度調整なしでは乗り切れない、という事情もあるのでしょう。
ステンレスでなくオークバットにする理由は、やはり
「酸素透過度」と
「オークから出る微量有用成分」が決め手。
●▲■ <ポイント!B>
「新世代の自動バスケットプレス」
この醸造所には世界中のワイナリーで一般的な
「メンブランプレス」(風船プレス)はない。
オークバットのフロアの1階下にある
「バスケットプレス」で搾っている。
バスケットがフォークリフトで簡単に出し入れでき、
プロコンで圧力制御をおこなう、
「新世代の自動バスケットプレス」
理由を聞くと
「赤ワインはバスケットプレスでしょ」と単純明快。
メンブランプレスに比べて、
濁度の低い清澄なジュースが取れることがバスケットの魅力で、
かの「オーパスワン」も
バスケットプレスにこだわっているのは有名。
バスケットプレス上部のみを吹き抜けとして、
無用に天井高さが高くなることを防ぐ巧みな建築設計。
なお、
フォージェールはヴァスランの「JLB」だけれど、
DIEMMEにも同様のプレス「Vintage」があります。
●▲■ <ポイント!C>
「樽内醸し醗酵、オクソライン」
フォージェールでは、樽で醸し醗酵を行っている。
使う樽はすべて新樽!
「新樽は酸素透過量が多いから」とのコメント。
樽が自由回転できる「オクソライン」と、
醗酵後の果皮を取り出すために
鏡にステンレス蓋を取り付けた樽に注目。
●▲■ <ポイント!D>
「樽洗浄機はMOOG」
なお、樽洗浄機はMOOGのシステムでした。
当社が日本代理店をしているので、
我田引水、牽強付会と思われては困るのですが、
スイスのMOOGの樽洗浄システムは、
世界中のワイナリーで活躍しています。
●▲■ <ビックリ?!>
「おきて破りのメルロ100%」
カベルネS、メルロ、Cフラン、Pヴェルドなど、
複数のブドウ品種を混ぜて仕上げる(アッサンブラージュする)のが
ボルドーワインの伝統、常識、真髄であるのは
皆さんご存知の通り。
ところが、シャトー・フォージェールの
トップブランドの「Peby」は、「おきて破り」。
なんとメルロ100%。
日本でポピュラーな「プピーユ」はメルロ100%で有名ですが、
筆者はボルドーのGrand Cru赤ワインで、
単一品種モノがあるのは知りませんでした。
(不勉強で詳しくないのだけれど、
ボルドーAOCルールではラベルにはブドウ品種が書けないはずなので、
それ故に判別ができない、ということもあるのでしょうが。
そういえば日本でも、
清酒は「山田錦」とか、焼酎は「黄金千貫」とか
ラベルに原料品種表示するのが流行っていて、
ワインでいえば「新世界型」のマーケティング手法になっていて、
やや、奥ゆかしさに欠ける、というべきか。。。)
- - - - - - - - - - - - - - -
ブログではもうひとつの<ビックリ?!>、
「ボルドーの鳥居?」
の写真も掲載しています。
フランス人の日本文化好きは、誠にありがたいことです。
●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■
●▲■欧州ワイン醸造設備・見聞録、その3
ボルドー左岸の「Ch. ベイシュベル」と「Ch. マルゴー」●▲■
「シャトー・ベイシュベル(Chateau Beychevelle)」は、
「メドックのヴェルサイユ宮殿」と形容される。
この辺りはどこも、文字通り「お城」のような建物のシャトーばかりだけれど、
確かに東面(中庭)からみたベイシュビル建物と手入れの行き届いた庭園は、
飛びぬけてきれい。
昨年暮れの、仮装して走る「メドック・マラソン」
(休憩ポイントではワインを飲む!心臓麻痺を心配するが、、、)
を紹介したテレビ番組で
ベイシュビルをみられた方もいると思います。
- - - - - - - - - - - - - - -
さて本論の醸造設備。
(以下の話は、ブログ「欧州ワイン醸造設備・見聞録 その3」
http://blog.goo.ne.jp/kita-slow_blog/e/4721e6da81266e6c8778b167bba13bcb
で写真を見ていただけます。2011年2月4日分です。)
ベイシュベルは2004年に一度見学したことがある。
「その後の6年で、醸造設備はどう変わったのか?」
を確認するのが今回のミッション。
まず醸造所に入ったところで見るのは、
ブドウ受け入れ部分のコンベア。
2連のバイブレーションコンベアで房の状態で選果する、
この部分は6年前と変わらない。
●▲■ <変更点!@>
「左右からはたいて粒をとるペレンクの除梗機」
2連のラインは、エレベーターコンベアで2台の除梗機に入る。
1台めの「ヴァスラン・ブーハー」は6年前と同じだが、
もう1台の「ペレンク」は2010年シーズンに導入したものだそう。
除梗後の粒を選果するのに、
「ブーハーの後は6人いるけれど、ペレンクの後は2人で済む」
とのこと。
ペレンクの除梗機は、通常の「回転ケージと回転ビーター」ではなく、
「左右からはたいて粒をとる」という独特の形式。
●▲■ <変更点!A>
「コンクリ・タンクを増設」
次に醸造室。
左側にステンレス・タンク、右側にコンクリート・タンクが
ずらりと並ぶ眺めは6年前と何も変わっていないように見えます。
が、よ〜く見ると、右側のコンクリ・タンクの数が増えている。
色や意匠を同じにしているので気付きにくいが、
いちばん手前の数基は、最近増設したそう。
温度変化が緩やかなコンクリ・タンクは、
数年前から静かなブームになったと思いますが、今でも信奉者は多いよう。
なお、ベイシュビルのオーナーはグラン・ミレジム社で、
サントリーさんがシェアホルダーです。
- - - - - - - - - - - - - - -
次は、
ボルドーの「シャトー・マルゴー(Chateau Margaux)」を訪問。
ボルドーの「5大シャトー」のなかでも特に有名で、
「この紋所が目に入らぬか、頭が高〜い」
と、言いたくなるような世界に冠たるブランド。
5大シャトーのうち、ラツールやムートンは
「積極的に設備更新と建物リノベーション」を行うけれど、
マルゴーは「やり方を変えない」事で知られる。
(たぶん、オーブリオンとラフィットも後者の部類)
マルゴーは2002年に訪問して以来、8年ぶり。
はたして何も変わっていないのだろうか?
「その後8年で醸造設備はなにか変わったのか?」
を確認するのがミッション。
- - - - - - - - - - - - - - -
時間が止まった如く、
シャトーも園庭も醸造所建物も全く変わっていない。
案内してくれるガイドさん(Ms. Bizard、有名なベテラン)
さえ、8年前と同じである。
醸造所でまず案内されるのは、
樽貯蔵庫。
8年前と何も変わっていない。
樽の置き方や数も変わらない印象。
●▲■ <変更点!B>
「クレーンでつり上げ、オークバットに投入」
次に醗酵タンクの部屋。
長く使いこんで黒ずんだ大型オークバットは
以前と同じ眺めで、
ここも何も変わっていないように見えるが、、、
以前はステンレスのキャットウォークがなかった気がする。
それに天井をみると、クレーンが!
尋ねると「ブドウは大桶に入れて、クレーンでつり上げ、
オークバットに投入するやり方」に変えたとのこと。
マルゴー(オールドワールド、伝統的)と対極にある、
オーストラリアの「ウルフブラス」(ニューワールド、近代的)でも
「クレーンでつり上げて投入」を見たことを思い出しました。
いわば「人間が桶で担いで投入する」のに近く、
大昔のやり方に回帰したと言ってもいい。
また、「ポンプを使わず」という意味では、
「重力式」と同じ思想と言っていいでしょう。
一句、
「ポンタリエ、重力式に、回帰する」
(呼び捨てにしてすいません、ポンタリエさんは有名な、
マルゴーの醸造責任者。当日もチラリと見かけました。)
●▲■ <変更点!C>
「小容量ステンレス・タンクの導入」
そしてもう一つの変化は、「小容量ステンレス・タンクの導入」。
畑の細かい区画ごとに仕込みを分けるそう。
ボルドーでは、4〜5年前までは、
ステンレスにしろ、コンクリートにしろ、オークバットにしろ、
300〜100HL(ヘクトリットル)クラスを見ることが多かったが、
今は小型化が「流れ」となっている。
サントリーさんのシャトー・ラグランジュでも、
近年、小型タンクを順次導入されています。
最近は60〜30HL、特定区画については10HLくらいのミニタンクで
仕込むこともよく行われます。
(区画の予定収穫量でちょうど満量になるよう、
9HLとか10.5HLとかの端数サイズを特注するシャトーもある。)
- - - - - - - - - - - - - - -
「マルゴーの醸造設備は8年間でなにか変わったか?」
を確認するミッションに対しては、
「基本を変えないけれど、やはり進化していた」
というのが結論。
「2002年物のマルゴー」と
「2010年物のマルゴー」を
2020年ころに飲み比べるとその成果が分かると思います。
そんな贅沢をしてみたいものです。
- - - - - - - - - - - - - - -
●▲■ 「チャイナ・エフェクト」
余談になるけれど、「5大シャトーのワイン」といっても、
2000年頃は1本2〜3万円からあった。
セカンドラベルは1万円くらいだった。
ところがこの5年ほどで2倍に値上がりしている。
出来の良かった2005年ヴィンテージなど、
今や10万円くらい。
世界景気も悪いのに、一体どうして??と、
フランスで何人かの関係者に聞くと、
「チャイナ・エフェクト(中国効果)」
と答える人が多かった。
通常、ワイン好きは
「安いものからワイン遍歴を初めて、
次第に高いワインも試し、
ごく一部の人が最高級品に行きつく」
わけだけれど、
中国人のお金持ちのワイン好きは
「最初から最高級品を金に糸目をつけず買う」
というパターンが多いそうで、
それが価格を押し上げるそうです。嗚呼。。。
でも、いいなあと思ったこともあって、
それは、、、
西洋の人は、オークションで高いワインを競り落としても、
飲まずにストックする人が多い。
時代の変遷とともに世界中のお金持ちの間を、
年代物のワインがぐるぐる回るようなことになる。
ところが、中国人は、競り落とした後すぐに
「飲んじゃう!」人が多いと聞きました。
それは、結構素晴らしいことではないか!
と感心しました。
- - - - - - - - - - - - - - -
以上、「欧州ワイン醸造設備・見聞録」として
フランス、イタリアの最新のワイン設備事情をご紹介しました。
(text = 喜多常夫)
●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■
さて、商品の紹介です。
●▲■ ご紹介情報 その1:ROOTSディビジョン ●▲■
「DIEMMEの除梗破砕機、Kappa」
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/brewing/Kappa.html
DIEMMEはメンブランプレスのほかに、
除梗破砕機「Kappa」シリーズも制作しています。
21世紀にはいって以降、
日本への導入台数は12台。
日本における除梗破砕機のシェアは、
DIEMME・きた産業がトップです。
●▲■ ご紹介情報 その2:ROOTSディビジョン ●▲■
「DIEMMEのバスケットプレス、Vintage」
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/brewing/Vintage.htm
メルマガ本文にもありましたが、
高品質の赤ワイン、
ブドウ品種ではメルロやカベルネSには、
バスケットプレスがいい。
バスケットがフォークリフトで簡単に出し入れでき、
プロコンで圧力制御をおこなう、
「新世代の自動バスケットプレス」。
DIEMMEの「Vintage」シリーズには、
5HL、8HL、12HL、23HLの4機種があります。
●▲■ ご紹介情報 その3:ROOTSディビジョン ●▲■
「スイスMOOGの樽洗浄システム」
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/brewing/Rothojet_ed06_WOP.pdf
高圧洗浄機に接続して使う、
ハンディーサイズの樽洗浄機は
国内でも多くご採用いただいています。
カタログ更新が間に合っていませんが、
今年から新たに、
「電気不要・水圧のみで洗浄ヘッドが回転する」方式の
「HR」シリーズも登場。
スイス・クォリティーです。
?
__________________________
●▲■バックナンバー閲覧可能!「メルマガ・クロニクル」
http://www.kitasangyo.com/Archive/mlmg/BN_top.html
2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
__________________________
●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■
紹介商品に関するお問い合わせは、営業部まで。
西日本担当:大阪営業部
tel.06-6731-0251 mailto:osaka@kitasangyo.com
東日本担当:東京営業部
tel.03-3851-5191 mailto:tokyo@kitasangyo.com
__________________________
●本メールがうまく表示されない場合 ●登録内容の変更や、
配信停止希望の場合 ●メルマガに関するご意見・ご要望など、
は、メールアドレス:mailto:info@kitasangyo.com まで 。
__________________________
このメルマガは、「ご登録いただいたお客様」、
及び「当社営業担当で登録させていただいたお客様」に、
お届けするサービスです。
ご要望があってもお届けできない場合がございます。
発信専用アドレスから送付しております。このアドレスに返信
いただきましても回答できませんので、予めご了承ください。
__________________________
記載された記事を許可なく転送・複製・転載することを禁じます。
Copyright 2002-2011. Kita Sangyo Co., Ltd. All rights reserved.
きた産業株式会社 ニューズレター担当:企画・開発グループ
__________________________