●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.157 ●▲■
発行日:2011年8月22日(月)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com
------------------< 目 次 >------------------
●▲■開店当時から続く、おでんだし、焼鳥のたれ
何十年も続っている秘伝の「くさや」漬け汁
●▲■シェリー、泡盛古酒、ブランデーの共通点?
「お酒のエンドレス・ブレンドに関する一考察」
(text = 喜多常夫)
ご紹介商品●1▲「スマート・スクリュー」:ネジ山が見えない!
ご紹介商品●2▲「スプリットなしPPキャップ」:海外輸出仕様に!
ご紹介商品●3▲「ノマコルク」:圧倒的シェアのワイン用合成コルク
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開店当時から使い続ける、おでんのだし、焼鳥屋のたれ。
何十年も「くさや」を漬け続ける秘伝の漬け汁。
ちょっと前なら、
おばあちゃん手造りの漬け物、その糠床(ぬかどこ)は、
嫁ぐ時、実家から分けてきた、なんていうこともあったろう。
おでんのだしなら、
毎日、火を入れて(殺菌して)いるからまだいいが、
エンドレス利用の焼鳥のたれ、くさや漬け汁、糠床は、
いかがなものか、、、個人的にはやや腰が引ける。
(衛生上の危惧。酒蔵の「蔵つき酵母」に近い?のかもしれないが。)
しかし、世の中には、
「つけたし」ながら何十年(!!)も
「エンドレス・ブレンド」する(=際限なく混ぜる)食品が
確かに存在する。
むしろ、高付加価値商品である。
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「スコッチのほとんどのメーカーはブレンドしている。
コニャックも似たようなやり方であり、
葡萄酒でも同様な部分が多い。
筆者の経験によれば、
酒はブレンドによって向上することのほうが、
劣化することよりも多い」
坂口謹一郎「横から眺めた日本酒史」より
今回は、「ブレンド」の上をいく(?)、
「エンドレス・ブレンド」の酒に関する考察。
「ブランデー蒸留にエンドレス・ブレンド工程があるとは知らなかった」
というのが主題なのだけれど、
その前にソレラとクースの話を少々。
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●▲■シェリー(と、ウイスキー)の
エンドレス・ブレンド
お酒で「エンドレス・ブレンド」と聞いて思いだすのは
スペインのシェリー酒の「ソレラ・システム」。
樽を3〜4段積み重ね、
最下段の樽のシェリーを1/3〜1/4くらいとって壜詰めする。
減った分を、下から2段目の樽のシェリーで補充する。
2段目の樽は下から3段目の樽のシェリーで補充、、、
というようにして、
最上段の樽には、その年の新酒のシェリーを補充する。
完全に樽を使いきることがないので、
いつも何十年も前のシェリーが、
いくばくか(少なくとも分子レベルでは)
混ざっていることになる。
開店当時から付け足して使い続ける、
おでんだし、焼鳥のたれと似ている
、と言うと怒られるだろうか。
シェリー酵母として有名な
「産膜酵母」の残骸なども引き継がれていくだろう。
シェリー最大手のゴンザレスビアス(「ティオ・ペペ」)
を見学したことがあるのだけれど、
優に数十年は動かしたことがないように見える、
古めかしい煤けた樽でソレラを行っていた。
普通、醸造酒はエンドレス・ブレンドには堪えない、
ように思うが、シェリーは例外。
酒精強化(アルコール添加)の故だろうか。
とにかく、
年代の異なる酒をエンドレスでブレンドすることで、
味わい、品質安定に効果がある。
複雑さ・まろやかさ(=付加価値)にも貢献するだろう。
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ワインや焼酎でも、
たぶん過去にソレラを試した人がいただろうと推察するけれど、
商品として現存しないのは、
なかなかうまくいかなかったのだろう。
10年ほど前、こんなことを自宅で試したこともある
http://www.kitasangyo.com/Archive/Data/Solera.htm
が、清酒でも商品化は難しかろう。
ただ、ウイスキーには、
「グレンフィディック・ソレラ」というのがある。
3種類の樽(バーボン古樽、シェリー古樽、オーク新樽)
で熟成した原酒を、
大樽(オーク・バット)に移して混ぜ合わせる。
この大樽から小樽に移したあとボトリングするのだが、
大樽はいつも「半分以下にならない管理」をするのだそう。
シェリーのソレラと同じ考え方。
ただ、シェリー式ソレラだと
年代の異なる酒をエンドレスにブレンドするわけだから
「XX年もの」とは名乗れないはずだけれど、
ウイスキーのグレンフィディックでは
「ソレラ・リザーブ12年」「ソレラ・リザーブ15年」
などと、年代表示があるのが異なる。
ともあれソレラは、
一定の品質を保つこと、あるいは
独特の商品価値を生み出すことに貢献している。
●▲■泡盛のエンドレス・ブレンド
沖縄(琉球、というべきか)に伝わる、
「仕次ぎ」による泡盛の古酒(クース)もまた
「エンドレス・ブレンド」。
初めに、
選りすぐった泡盛で甕(かめ)を1本ずつ満たし、
いくつかの貯蔵甕をつくる。
甕は古い順に親酒、二番手、三番手……と呼ぶ。
ある程度年数が経ったところで、
最も古い親酒泡盛を必要量取って、飲用とする。
貴重なので伝統的にはもっぱら慶事の酒。
親酒の減った分(飲んだり、蒸発で減った分)は、
二番手の泡盛で補充する(「仕次ぎ」)。
二番手が減った分は三番手の泡盛で補充、、、
というようにして、
最後の甕には、新しい泡盛を補充する。
仕次ぎクースは、誠にソレラと同じである。
泡盛はエンドレス・ブレンドに耐える酒、
故にこのやり方が考えられた、という事情もあるだろう。
沖縄県酒造組合のホームページには、
「泡盛は洋酒と違って、樽貯蔵なしでエージングがすすむ」
として、次のような記述がある。
「洋酒は原則として樽貯蔵され、
樽からさまざまな成分をもらって熟成し古酒になっていく。
泡盛は、含まれる成分そのものが長期熟成によって、
物理的・化学的変化をへてまろやかで甘い香りを醸し出す。
洋酒は、樽から出して瓶詰めすると古酒化は
それ以上なかなか進まないといわれるが、
泡盛は自らの成分そのものを変化させて古酒になるので、
瓶詰めしたあとでも古酒化が進む」
数年前に某泡盛メーカーで、
造り体験をさせていただいたことがあるけれど、
蒸留直後に、他の蒸留酒と違う香りを感じたのを思い出す。
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なお、念のため付け加えると、
市販されているいわゆる泡盛の古酒(クース)は、
「仕次ぎ」方式でなく、
「タンク内熟成」や「壜内熟成」が一般的。
公正取引委員会の基準は「50%(過半)ルール」。
3年貯蔵酒が総量の50%を超えると「古酒」と表記できる。
「古酒」とだけラベルに記されているものは、
「3年以上古酒」と「一般酒」のブレンドが普通。
ただ、沖縄県酒造組合の自主規制で、
具体的年数が表記された泡盛古酒は「100%ルール」となる。
たとえば、
「5年古酒」とラベルにあれば「全量5年熟成」
(あるいは「5年古酒に、5年以上古酒をブレンド」)
となる。
仕次ぎでない古酒が近年の合理化の産物というわけではない。
新井白石の著した「南島誌」(1719年)には、
泡盛は「甕中にもり密封七年にして之を用ふ」
と書かれているそうだが、
これは仕次ぎでない、7年貯蔵古酒のことだろう。
古来、ブレンドしない貯蔵がむしろ一般的な古酒で、
仕次ぎ古酒は王家・王族の古酒だった。
「金庫蔵の鍵は家来に任せても、
古酒蔵の鍵は主人自らが所持する」
というくらい価値のあるものだったそう。
かつて琉球王朝時代には
200年物、300年物クースも存在したそうだが、
1879年に日本の沖縄県となって琉球王家は日本華族とされ、
さらに1945年の沖縄戦を経て、
これらの貴重なクースはほとんど失われた。
●▲■泡盛とシェリーの歴史的共通点
それでも首里の泡盛蔵には、
「沖縄戦を超えた100年以上のクース」が現存するそう。
「戦時下を超えて100年以上同じ樽でソレラ」
を続けるシェリーのボデガ(醸造所)もあるそうだが、
遠く離れた洋の東西で、事情が符合するのには驚く。
●泡盛の仕次ぎの古酒はいつ頃始まったか、
●シェリーのソレラ法がいつ頃始まったか、
を調べてみたが、、、これがわからない。
それどころか、
▲泡盛の麹が(餅麹から?)黒麹に変わった時期
▲シェリーで酒精強化が始まった時期
さえ、何世紀のことか諸説あるようだ。
酒の歴史は、未解明のことが多い。
日本の沖縄と、
スペインのへレスデラフロンテーラ(シェリーの産地)は、
東洋・西洋の中でもごくローカルな場所であるが
歴史的共通点がある。
琉球は、
日本と中国・南アジアの交流の接点だった。
へレスデラフロンテーラも、
ヨーロッパ文明とアラブ文明の両方を経験した。
「異文化交流が、似た技術が生みだす元になった」
という仮説はどうだろうか。
もしくは、、、
泡盛(に限らず世界中の蒸留酒)の蒸留技術は
アラビア(メソポタミア)起源と言われるが、
「アラビアにエンドレス・ブレンドの起源があった?」
という事もありえるかもしれない。
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●▲■ブランデーの蒸留にも
エンドレス・ブレンド工程!
前置きが長かったが、これからがメルマガの本題。
「ブランデー蒸留に、
エンドレス・ブレンド工程があるとは知らなかった」
という話。
この夏前のことだけれど、
フランスから輸入した小型のブランデー蒸留機
(シャラントポット)の立ち合いで、
フランス人の蒸留エンジニア氏から
コニャックの実際の蒸留手順を教えてもらった。
コニャックは、モルトウイスキーと同じで、
「単式蒸留機」で「2回蒸留」を行う。
ただし、ウイスキーは「初留釜」と「再留釜」が別なのに対し、
コニャックは、同じ釜(「シャラント・ポット」)を2度使う。
「シャラント・ポット」は、
アラビアンナイトのお城の屋根と言うか、あるいは、
オニオンシェープと言うか、
形を見たら、あああれね、と思う、
シンプルな単式蒸留釜、アランビック。
コニャックのほか、
カルヴァドス(ノルマンディー名産のリンゴ蒸留酒)も
シャラント・ポットを使うのがルールだそうだ。
「釜(蒸発装置)」と「コンデンサー(冷却装置)」が
一対になって左右にあり、それが
「スワンネック(接続管)」でつながるだけの単純形。
ただし、単純構造のようだけれど、エンジニア氏いわく、
「オニオンシェイプの容積はボイラー容積の12%」
「スワンネックの角度はXX」
「コンデンサー内の蛇管の径は最初がXXで最後がXX」
「受けタンクの材質は316Lであらねばならぬ」
など、積年のノウハウがある。
(XX部分は失念しました、すいません。)
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さて、蒸留作業開始。
出てくる蒸留液を、順に
「前留」「中留」「後留」
などと分ける基本原則は、どのスピリッツも同じこと。
コニャックの場合、「初留」は、
「ヘッド」「ブルーイ」「テール」と3分して、
「ヘッド」「テール」を捨てて、
その中間の「ブルーイ」と呼ばれる、
(「ブルイイ」と書くべきか。仏語でbrouillis、辞書にない単語)
平均アルコール度数が約30%くらいの
少し濁りのある液を取りだす。
「ブルーイ」は、
蒸留前のワイン原液容積(=釜容積)の1/3位が取れる。
したがって初留を3回行うと、
ブルーイが釜容積1つ分になるので、
4回目の蒸留は、ブルーイだけで「再留」を行う。
再留は
「ヘッド」「ハート」「セカンド」「テール」と4分して、
「ハート」(平均アルコール度数約70%)が
ブランデーの製品液になる。
(実際には何年も樽貯蔵し、さらにブレンドしてブランデーになる。)
で、ハートの次の「セカンド」と呼ばれる部分
(アルコール度数60%から区分開始。平均で約30%)は、
釜容積の1/4位も量があって結構多いのだけれど、
「初留のワイン原液」に戻して混ぜて再使用(!)する。
ブランデーやコニャックを良くご存じの方には、
当たり前のことかもしれませんが、
はじめて知って驚きました。
量が少ない「ヘッド」や「テール」を再度蒸留に回す、
というのはあるけれど、「セカンド」は結構な量なので、
思わず、
「使い続ける、おでんのだし、焼鳥のたれ」
を連想した次第。
かくして、再留した一部が初留に戻され、
エンドレスで回り続ける。
これが「マーテル」流だそう。
コニャック各社はそれぞれのやり方があるようで、
たとえば「レミーマルタン」流や「ヘネシ―」流は
「セコンド」を、「初留」でなく「再留」の原液と混ぜるそう。
いずれにせよ再留の「セコンド」は、
上流工程に戻して使い回しする、
すなわちエンドレスでブレンドするのです。
シェリーと、泡盛古酒と、ブランデーの共通点は、
エンドレス・ブレンディングでした、、、
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、、、と結論付けようと思っていたのですが、
文を書きながら考えると、
シェリーや泡盛古酒は最終製品に直接かかわるブレンド。
一方、コニャックの場合、
蒸留前の原液へのフィードバック・ブレンドなので、
それが最終製品の酒質に影響を与える度合いは低かろう。
同じエンドレス・ブレンドでも性格が異なる。
アルコール成分や香気成分などのより効率的回収テクニック、
というべきかもしれません。
多少、こしおれ文になってしまいましたが、
「お酒のエンドレス・ブレンドに関する一考察」でした。
(text=喜多常夫)
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さて、商品の紹介です。
今回はキャップ・クロージャの新製品3点。
●▲■ ご紹介商品 その1:KKディビジョン ●▲■
「スマート・スクリュー」ネジ山の見えないオールアルミキャップ
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/closure/smart_screw_ed02_2.pdf
●▲■ ご紹介商品 その2:KKディビジョン ●▲■
「スプリットなしPPキャップ」海外輸出仕様に!
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/closure/roll_on_without_vertical_split.pdf
●▲■ ご紹介商品 その3:K2ディビジョン ●▲■
「ノマコルク」世界で圧倒的シェアのワイン用合成コルク
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/closure/Nomacorc2011.pdf
お酒の、
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