●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.163 ●▲■
     発行日:2012年1月20日(金)
  ■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■

発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com

------------------< 目 次 >------------------

●▲■ 4つの視点で観察、
      サケwatching in ブラジル・サンパウロ ●▲■
●▲■ ブラジル清酒「東麒麟」見学記 ●▲■

●▲■ 市場に出回る「疑似サケ?」
        :サケ・焼酎の国際基準の必要性 ●▲■

                  (text = 喜多常夫)

ご紹介商品●1▲びん製品のアピールに「クリアカートン」
ご紹介商品●2▲清酒の「びん燗殺菌の替栓」
ご紹介資料●3▲清酒・焼酎の「量り売り」のための機材

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ブラジルはサケ消費の多い国。

海外でサケ(清酒)消費量の多い国トップ2は韓国とアメリカ。
日本からの輸出に加え、
自国内で醸造されるサケも併せると10万石/年を超える。

その次に多いのが、台湾、中国、ブラジルで、
各国とも2万石強〜1万数千石/年の消費量と思われます。

 

ブラジルでは、
「ブラジル製」「日本製」「アメリカ製」の3種のサケが飲まれています。
(韓国、アメリカ、台湾、中国がそうであるように、
自国産のサケ、すなわち「ブラジル製」が一番多く飲まれる。)

 

ブラジルの日系人は130万人。
1908年に初めての日本移民がブラジルに渡って以来、
いまや日系3世、4世、5世の時代。

しかし、「サケ需要=日系人」ではありません。

ブラジルのサケの歴史的起源は当然日本移民だけれど、
今や「サケ需要の90%は非日系人」だそう。

 

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●▲■ 4つの視点で観察、
      サケwatching in ブラジル・サンパウロ ●▲■

昨年末にブラジルのサンパウロを訪問する機会があったので、
サケ事情を見てきました。

サンパウロは南半球最大の都市。
近郊を含めば2000万人以上の人口、
ブラジルの国民総生産の50%を生みだす巨大都市。

アルコール飲料業界の出来事で言えば、
キリンビールさんが2011年に完全買収した、
ブラジル2位のビールメーカー、
スキンカリオール社がサンパウロ近郊にある。

 

●▲■ 視点1:ハイパーマーケットのサケ売り場にて

サンパウロ市内に複数の店舗がある代表的ハイパー「extra」。
膨大な量のビール、ワイン、スピリッツなどが並ぶ。
その広い酒売り場の一角には、ちゃんとサケ(清酒)もある。

並ぶのはブラジルのサケ、「東麒麟」と「純・大地」。
(残念ながら日本製サケはない。)

 

圧倒的な棚(フェース)取りは、
ズラリと並ぶ「東麒麟(アズマキリン)」。
「東山農産加工」社(ヒガシヤマではなく、トーザンと読む)が、
サンパウロ近郊のカンピーナスで醸造する伝統ブランド。
ブラジル清酒の過半のシェアをもつ。

「純米」「Dourado(=金印)」など4種の清酒が並ぶほか、
東麒麟ブランドの「米焼酎」も置いてある。

 

「東麒麟」が20列以上の大きな棚取りなのに対し、
もう一つのブランド「純・大地」はわずか2列。
10分の1ほどの棚取り。

「大地- Daiti」はもともと、
ブラジルの醤油最大手「サクラ中矢」社の清酒ブランドで、
一部自家醸造、不足分をバルク輸入していた。
2010年にディアジオ社(!)がそのブランドを買い取って
「純・大地」に改称したものだそう。(全量バルク輸入)

ディアジオはギネスビールやジョニーウォーカーを持つ世界企業。
「世界のディアジオがサケ・ビジネスに参入!」に驚く。
「単独で飲むサケ」ではなく「カクテルベース向け」の意図らしい。

カクテルカウンターに置かれることを意識したのか、
「純・大地」はパッケージデザインにも力が入っていて、
肩部に漢字で「酒」の刻印の入った、シャレたブルーの専用ボトル。
容量戦略も微妙で、670ml。(東麒麟は740ml)

  ■(参考情報1)ブラジルのサケ・カクテルのミニ解説
   「カイピリーニャ」がブラジル伝統のカクテル。
   ライムとカシャッサ(=ピンガ。ブラジル特産の蒸留酒)で作る。
   カシャッサの代わりにウォッカを使う「カイピロスカ」を経て
   サケを使う「カイピサケ」または「サケピリーニャ」がいまや定番。
   キウィ、苺、パッションフルーツなどのサケ・カクテルも多い。
      (Wikipediaとコロニアニッケイの記事から抽出)

  ■(参考情報2)ブラジル製焼酎
   「大地」ブランドがサクラ中矢からディアジオに移ったことで
   ブラジルで醸造される清酒は「東麒麟」1銘柄になったようだが、
   ブラジルで蒸留される焼酎は現在2銘柄がある。
   「東山農産加工社」の「東麒麟」(米焼酎)と、
   「MNプロポリス」社(日系の蜂蜜の会社)の「伯魂」(キャッサバ芋焼酎)。
   かつて、1970年代に本坊豊吉さん(本坊酒造、南九州コカ)が、
   ピンガ工場を設立、米焼酎「富士」も造ったそうだが、今はない。

 

●▲■ 視点2:日本食料品店のサケ売り場にて

サンパウロの観光案内に必ず登場する日本人街「リベルダージ」。
そのリベルダージの代表的日本食品店「丸海(まるかい)」を観察。
お米、味噌・醤油、インスタントラーメン、お菓子まで何でもそろう。

酒売り場のサケ(清酒)は、次の3種。
「ブラジル製」、「日本製」、「アメリカ製」

●「ブラジル製」サケ:
  一番たくさん並ぶのは地元の「東麒麟」。
  ハイパーにはなかった「生酒」(賞味期間が短い)もある。

 ディアジオの「純・大地」も並ぶが、
  どういうわけか、この店にはまだ
  「サクラ中矢」社の「大地」も残っていた。
  (サクラ中矢製は漢字で「大地」と大書しているが、
  ディアジオ製は「純」が漢字で「大地」はアルファベット)

 さらに「力酒(THIKAR? SAKE)」という未知のブランドも。
  ラベルを見ると製造元の住所はサンパウロ。
  自家醸造はしていないと思うのだが、、、
  バルク輸入かどうかなどは不明。

●「日本製」サケ:
  棚に並ぶのは、
  「白鹿」「大関」
  「高清水」「陸奥八仙(八戸酒造)」
  「司牡丹」「谷の越(白河銘醸)」など10銘柄ほど。

 焼酎は、
  「いいちこ」「海童」「くろうま(神楽酒造)」など。
  泡盛「瑞穂」もあった。(ブラジル移民は沖縄出身が多い)

 ガラス壜が主流で、紙パック製品は清酒・焼酎とも少ない。

●「アメリカ製」サケ:
  カリフォルニアの「月桂冠」と「大関」が各2品種並ぶ。

 アメリカ製サケはずいぶん棚取りが広かった。
  ブラジルは、福島原発事故で
  日本食品の厳しい輸入規制をした国の一つだが、
  棚取りが広かったのはその影響も大きいのかも。
  (お菓子コーナーも、日本のロッテ製品でなく、
  韓国のロッテ同等製品−パッケージデザインは同じで
  商品名だけハングル文字−がずいぶん多かった。
  円高・ウォン安も要因かもしれないが。)
 

 

なお、日本銘柄のビールは
キリンとサッポロの壜と缶が並ぶ。
両銘柄とも北米で委託醸造されたものが輸入されている。
(アサヒとサントリーはありませんでした。)

梅酒は、意外なことに日本製より、
韓国製、台湾製の比率が多いようでした。

 

●▲■ 視点3:日本酒専門店にて

日本人街に2011年暮れにオープンした
ブラジル初の日本酒専門店、
「KAZU SAKE EMPORIUM」を訪問。

カウンターバーでサケを飲めるほか、小売りも行っている。
内装はモノトーンでとてもクール。
パリやNYにあってもおかしくない感じのお店。

サケ(清酒)は全て冷蔵リーチインに入っていて、
大手ブランドでは
   「沢の鶴」「日本盛」「大関」など
地酒ブランドでは
   「白瀧」「李白」「真澄」「小鼓」「天山」
   「高清水」「一ノ蔵」「満寿泉」「梅の宿」
   「小鼓」「天狗舞」「蓬莱泉(関谷醸造)」
   「箱根山(井上酒造)」「白鴻(盛川酒造)」
など20種類以上が並ぶ。

本格焼酎では
   「黒霧島」「いいちこ」「海童」
   「白波」「しろ(高橋酒造)」「くろうま」
など。

 

ホテルの部屋で飲もうと、
  「天狗舞」300ml(115レアル=約5,500円也)
  「真澄」720ml(162レアル=約8,000円也)
を購入。

このお店はすべてリーファー輸送だそう。
とはいえ高いなあ、、、とは思いつつ、
地球の裏側で日本酒を愛(め)でる魅力には抗しがたい。

 

以上の顛末は、この写真資料を参照ください。

  ●▲■アーカイブ資料:
「サケwatching in ブラジル・サンパウロ」(4ページ)
http://www.kitasangyo.com/Archive/Data/Sake_Brazil_1.pdf

 

 

●▲■ 視点4:日本レストランにて

サンパウロには日本レストランが多い。

3泊の滞在で3つの日本レストランで食事をして、
サケを飲んだ顛末については、、、

先に紹介したアーカイブ資料の4ページ目を参照ください。

 

レストランでの体験を総合すると、ブラジルでは、

  ■日本製では「白鹿」
   ■カリフォルニア製では「月桂冠」

のシェアが高いように思いました。
しかし、もちろん一番愛飲されているのは、

  ■ブラジル製の「東麒麟」

で、その「生」や「吟醸」は、
日本製サケと飲み比べても負けない。

東麒麟の品質が近年高くなってきていることは、
地元でも評判だそうです。

 

 

 

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●▲■ ブラジル清酒「東麒麟」見学記 ●▲■

ブラジル清酒「東麒麟」は
「東山農産加工有限会社」が生産する。

東山農産加工は1934年に清酒工場として創業。
岩崎弥太郎(三菱の創業者。雅号が東山−とうざん)が、
個人資金で1927年にブラジルに購入した「東山農場」に由来する。

何とも気宇壮大でにわかに想像しがたいけれど、
岩崎弥太郎は「将来は農業(食糧)が大事」との思いで、
三菱の事業とは別の個人事業として、戦前に
日本、朝鮮、台湾、インドネシア、マレーシア、ブラジルに
農場を開設したそう。
しかし敗戦で多くを失い、現在残るのは、
日本の小岩井農場とブラジルの東山農場のみだそうです。

ブラジルでTOZAN(東山)の知名度はとても高いが、
それは東山農場や清酒事業だけでなく、
東山のブラジル経済・社会への貢献が大きかったから。

東山の農場長の天敵によるコーヒー害虫駆除技術開発、
東山の総支配人が戦後の初代ブラジル大使に抜擢、
など、多くの歴史的貢献がある。

現在、「東山農場」はコーヒーを栽培する大農場。
(NHKドラマ「ハルとナツ」のロケ地としても有名)
一方、「東山農産加工」には1975年にキリンビールが出資。
現在はその株の約9割をキリンが保有する。
(東麒麟という名前はキリン出資以前からのもので偶然の一致)

 

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サンパウロから約120Km離れたカンピーナス。
ハイウェーから何キロか入ったところに、
東山農産加工の醸造工場がある。

ファサード上部に三菱マークの刻印された、
創業当初の白亜の建屋が残っているのが、
何とも歴史を感じさせる。

 

まずは清酒醸造工場を見せていただく。

生産に携わる作業者は全員ブラジル人。
(会社で日本人は、文末の<acknowledgements>にお名前を記載する
社長さんと取締役工場長のお二人だけ。)

原料米はウルグアイから輸入するジャポニカ種の「弥勒米」。
醸造設備は、サタケの精米機、藪田式の搾り機など。

しかし麹は、なんと麹室で手造り。
サケ生産は近年概ね順調に伸びていているそうで、
その生産量を考慮すると相当な作業量だと思われるが、
伝統的で丁寧な造りをされている。

 

東山農産加工は、清酒だけでなく醤油や味噌も生産。
醤油工場も見せていただいたが、
なんと日本でも少数派の、
伝統的な「天然醸造」であった(長期間の仕込みを要する)。

 

以上の顛末はこの写真資料を参照ください。

 ●▲■アーカイブ資料:
「サケmade in ブラジル」(2ページ)
http://www.kitasangyo.com/Archive/Data/Sake_Brazil_2.pdf

 

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●▲■ 市場に出回る「疑似サケ?」
        :サケ・焼酎の国際基準の必要性 ●▲■

東麒麟さんのラボで、
市場に出回ってる「疑似サケ?」も試飲させてもらいました。

ラベルに漢字で「隼・健福好」と「沖縄」と書かれている2本。
(アーカイブ資料に写真を掲載)
いずれもSaqu?(ポルトガル語のサケ)またはSakeの表示があるが、
一般的なサケとはかけ離れた味わい。

サケに似せて、混ぜ合わせて作った?
しかし、カクテルベースに使うのなら、わからなくなる!

 

それほど多くは出回っていないようですが、
イミテーションは成長市場を傷つけるのは間違えありません。

 

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中国でも疑似サケ問題(偽造ブランド含め)があるけれど、
サケや焼酎が国際商品になるにつけ、現地生産が進むのは必然。

酒税法で製造法が限定される日本とは違って、
仮にイミテーションを意図していなくても、
様々な製法が出てくるのは避けられないでしょう。

ローカル問題としての対処ばかりでなく、
サケや焼酎の統一基準を国際的に明確にしないと、
世界のサケ・焼酎マーケットのためによくないのでは、と思います。

例えば、、、

  ●米麹(アスペルギルス・オリゼー)でなく、
    中国や韓国で一般的な麦麹(リゾープス)で造ったものは
清酒(サケ)・焼酎(ショーチュー)なのか?
   ●ビール酵母やワイン酵母で発酵させた場合はどうか?
   ●大幅なアルコール添加をした場合は?
   ●「合成清酒」を海外で造った場合サケと名乗れるか?
   ●「甲乙混和焼酎」を海外で生産した場合の表示は?
   ●「焼酎」と「Soju(韓国焼酒)」の併記表示がいいのか??

などなど、いろいろなケースが考えられます。

 

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連想するエピソードを3つ書きます。

 @日本のお醤油は、「大豆と小麦」で造る。
   一方ブラジルの醤油製造最大手、
   1940年創業の「サクラ中矢」社は、歴史的経緯もあって、
   「大豆とトウモロコシ」で造られていて、
   日本の醤油とはやや味がちがう。
   醤油の世界トップシェアは「キッコーマン」だけれど、
   ブラジルと南米のトップシェアは「サクラ醤油」だそう。
   すなわち「南米ではトウモロコシ原料醤油がスタンダード」です。
   (世界ではビールは麦芽で造るのがスタンダードですが、
   「日本では麦芽に由来しない第三のビールが今や35%のシェア」
   というのも、似たケースと言えるのかもしれません。)

 A高峰譲吉(アドレナリンの発見者)は、
   百年以上前、アメリカの会社の依頼で
   モルトでなく、麹(たぶんアスペルギルス・オリゼー)で
   糖化するウイスキーを計画し、
   工場完成寸前までこぎつけた。
   最後にモルト業者の放火にあって実現しなかったけれど、
   もしもそれが実現していたら、、、。
   今頃は焼酎とウイスキーの境界線は曖昧だったかもしれません。

 B韓国は90年代に「キムチ」の基準を、
   CODEX(食品の国際規格)に提出して認定を得ている、
   と聞いたことがあります。
   キムチは日本を含む世界各国で作られているけれど、
   「キムチとはこういうものだ」という標準をはっきりさせて、
   あまりにも韓国と違うものをキムチと称させないため、
   だそうです。

 

今や、筆者の知る限り、
サケは世界10カ国、
焼酎(名前に焼酎を冠する商品)は世界8カ国で作られています。

CODEXがいいのかどうか分かりませんが、
日本政府(酒造組合中央会?)としては、
何らかのサケ・焼酎の国際基準を提唱すべきではないかと思います。

 

   <acknowledgements>
    初めての、しかも僅か3日のサンパウロ滞在で、
    多くの体験と情報収得の機会を与えていただいた、

    東山農産加工有限会社
      社長 岡橋亮輔さま
      取締役工場長 小原哲夫さま

   に、心からお礼申し上げます。

                (Text: 喜多常夫)

 

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商品のご紹介です。

●▲■ ご紹介商品 その1:K2ディビジョン ●▲■
びん製品のアピールに「クリアカートン」
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/package/K2Clearcarton_ed04.pdf

サイズ、アイテムを強化中。
クリアカートンのことならお任せください。

 

●▲■ ご紹介商品 その2:KKディビジョン ●▲■
清酒の「びん燗殺菌の替栓」
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/closure/binkan_hiireKS_ed5.pdf

びん燗殺菌(キャッピング後の低温殺菌)については、
多くのノウハウを蓄積しています。
スパークリング対応のPPキャップもあります。

 

●▲■ ご紹介商品 その3:K2ディビジョン ●▲■
清酒・焼酎の「量り売り」の機材
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/package/hakariuri_J_03_1.pdf

清酒・焼酎の販売シーンの演出も、当社にご照会ください。

「官能検査ブース」のデザイン、施工も行います。
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/brewing/sensory_b.pdf

 

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