●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.164 ●▲■
発行日:2012年2月14日(火)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com
------------------< 目 次 >------------------
(メルマガvol.158、159、160から続く)
●▲■ 韓国の酒類事情 その4:
日本清酒・焼酎&韓国清酒 ●▲■
●▲■ ロッテマートの売場観察 / お盆の清酒(チョンジュ)
/ 米国清酒の競争力 / (おまけ)金属製のお茶碗 ●▲■
(text = 喜多常夫)
インターネット・ショップを開業!!
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昨年9月に韓国酒類業界視察ツアーに参加したあと、
「LOTTEの清酒工場」、「マッコリ事情」、「韓国のビール事情」
を3連発でメルマガで書いて書き疲れ、
その後、ストップしていたのですが、
韓国でもう一つ書き残していたテーマが残っています。
「韓国で売られている日本清酒・焼酎と韓国清酒」
について書きます。
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そのまえに、
2011年暦年の清酒輸出統計がすでに発表されているので、
見ておきましょう。
韓国は福島原発事故での輸入規制が厳しかったけれど、
2010年:1.44万石 → 2011年1.57万石(+9%)
増勢を維持。清酒輸出先2位の地位を確固たるものに。
なお、清酒輸出先1位のアメリカは、
2010年:2.06万石 → 2011年2.26万石(+10%)
2008、09、10年と落ちていた勢いが、11年は回復。
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それから、
お酒の通関事情も少し調べました。
韓国の輸入酒に対する税制は「従価税」で、次のとおり。
ビールとウイスキー
:輸入関税30%、酒税72%、教育税30%
ワインと醸造酒
:輸入関税30%、酒税30%、教育税10%
お酒に「教育税」とは面白い。
しかも酒類によって税率が違うとは。
清酒(韓国のHSコード2206.00.2010)の具体的な税率、
すなわち「政府の取り分」は以下のようであるらしい。
a. 輸入関税:CIF価格の15%
(基本は30%だが「国際協力関税の適用」により15%)
b. 酒税:(CIF価格+輸入関税額)の30%
c. 教育税:酒税額の10%
d. 付加価値税:10%
一方「民間業者の取り分」は、概ねこんなことらしい。
x. 輸入業者は物流経費など30〜50%アップで卸売業者に
y. 卸売業者は10〜20%のマージンで小売りに
z. 小売業者は30%程度のマージンを付けて店頭販売
仮にCIF価格が1本1,000円の清酒は韓国でどうなるかというと、、、
a. 輸入関税:150円
b. 酒税:345円
c. 教育税:34.5円
通関価格は以上の合計で、1,529.5円
x. 輸入業者:40%アップとして、2,141円
y. 卸売業者:15%マージンとして、2,462円
z. 小売業者:30%マージンとして、3,201円
d. 付加価値税:320円
これで最終店頭価格は3,521円。およそ3.5倍となる。
(韓国政府の取り分850円、民間の取り分1,671円)
CIF価格が1,000円の清酒は、
日本国内の販売価格も2,000円以上はしそうだから、
まあ、そんなものか、と思う。
(参考までに日本の輸入制度について言えば、
日本に清酒(日本のHSコード2206.00.201)を輸入する場合、
CIF価格に関係なく70.40円/リットル。
清酒に限らずお酒は「従価税」でなく「従量税」なので、
日本の関税は韓国に比べてずいぶん安い。)
長くなったけれど以上が前段、以下が本論です。
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●▲■ ロッテマートで清酒・焼酎の売場を観察 ●▲■
ソウル駅のロッテマートは、
ソウルの代表的ショッピングセンター。
酒売り場には、ビール、ワイン、ウイスキーなどと並んで、
清酒、焼酎が売られている。
■その1:日本清酒と韓国清酒■
日本清酒の価格表示には「日の丸」がついていて一目瞭然。
(日本酒に限らずワイン、ビールなど酒類はすべて原産国の国旗付き)
韓国清酒(=LOTTE酒類の清酒)は、日本清酒と別の棚に並ぶ。
価格順にそれぞれの代表製品を書くと、こんな感じ。
LOTTE「白花寿福」180mlカップ:1,550ウォン(110円)
LOTTE「清河」300ml:1,570ウォン(110円)
LOTTE純米酒「菊花」700ml:6,900ウォン(560円)
LOTTE大吟醸酒「雪花」700ml:19,600ウォン(1,330円)
白鶴・まる500ml紙パック:9,800ウォン(670円)
秋田清酒厳寒仕込み720ml:24,500ウォン(1,670円)
陸奥男山720ml:25,000ウォン(1,700円)
白鶴・本醸造・匠技720ml:28,800ウォン(1,970円)
鬼殺し1.8リットル:26,800ウォン(1,820円)
蔵人三代2リットル紙パック:28,800ウォン(1,960円)
(円は、韓国を訪問した2011年9月のレート、
1ウォン=0.068円で換算)
以上を観察しての第一印象は:
●韓国清酒は結構きっちり価格を取っているなあ
●紙パックの日本清酒は安売り価格でなくてよかった
(注:韓国は「500ml紙パック日本酒が居酒屋でポピュラー」
という、特異なマーケット。従って、
紙パックの価格維持政策は是非継続してほしいところ。
なお、韓国清酒は紙パック製品を製造していない。)
さらに気づき点を書くと:
●もう少し日本酒銘柄の種類がほしいなあ
●カリフォルニア清酒はロッテマートでは売っていない
といったところ。
写真は以下の資料にまとめてありますので参照ください。
●▲■アーカイブ資料:
「サケwatching in 韓国ソウル 2011」(3ページ)
http://www.kitasangyo.com/Archive/Data/Sake_in_Seoul_11.pdf
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同じロッテマートの売り場を、
2009年8月に撮影した資料を収録しています。
http://www.kitasangyo.com/Archive/Data/Sake_in_Seoul.pdf
今回と比較すると、日本清酒の販売価格は同じか、
または、僅かに下がっていることが判る。
2009年8月のレートを調べると1ウォン=0.075円。
2年で10%以上の円高ウォン安。
これで店頭価格が変わらないというのは、
競争で、日本側のCIF価格が下がっているのか、
輸出業者のマージンが下がっているのか。。。
■その2:「お盆の清酒需要」観察■
韓国に行ったのはちょうど、
旧盆(2011年は9月10−12日)の直前だった。
韓国ではお盆の先祖供養に、
清酒(韓国語でチョンジュ)を供えると聞いていたが、
はたしてロッテマートの売り場には、
「清酒お供えセット」が山積みになっていた。
相当な清酒需要があるようで、
LOTTE酒類の清酒工場を訪問した時も
「お盆前はフル生産」だと言っていた。
お供え用の酒は、
お箸(韓国は金属製の箸)、おつまみ、
などがサービスでついているので一目でわかる。
「白花寿福」700ml:4,450ウォン(お箸つき)
「白花寿福」1リットル:6,000ウォン(おつまみ・お箸つき)
「白花寿福」1.8リットル:9,400ウォン(サラダオイル・お箸つき)
「白花寿福」(LOTTE酒類の清酒)が、
もっぱらお供え用の代表ブランド。
ラベルの隅にごく小さく「清酒」とあるのが唯一の漢字で、
銘柄の「白花寿福」は漢字でなくハングル表記である。
(2006年頃から漢字を廃しハングル表記になった。)
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一方、漢字で小さく「薬酒」と表示しているお酒も
お供え用に多く売られていた。
たとえば、ぺ・サンミョン社の薬酒はこんな価格。
(銘柄はハングルなので判読できず)
700ml:4,800ウォン
1.8リットル(一升壜):9,800ウォン
清酒「白花寿福」とほぼ同価格である。
薬酒といっても薬草を漬け込んだものではなく、
韓国では米で造った清澄な(濁酒でない)お酒のことを指す。
製法の詳細は知らないのだけれど、
「薬酒は清酒と同じです」
と、韓国酒類関係者から何度か聞かされた。
一般消費者の方々のとらえ方はどうなのだろう。。。
(以前、ブラジルのメルマガでも書きましたが、
日本として「清酒」の定義、また「本格焼酎」の定義を
打ち出す必要があるのではないかと思います。)
■その3:焼酎編■
ロッテマートには、日本の焼酎は、、、、、
残念ながら、見当たりませんでした。
酒売り場の焼酎は韓国製で占められている。
日式居酒屋のメニューには日本の焼酎がたくさんあるのですが、
酒売り場への進出は、まだ十分果たせていないよう。
韓国に行った人ならご存知の通り、
韓国のソジュ(焼酒)の標準的なパッケージは360mlガラスびん。
アルコール度数は20度前後。
韓国居酒屋では皆さんこの小壜を飲みきりで飲んでいます。
ロッテマートの売り場価格は、というと、、、
1壜1,000ウォン、すなわち70円くらい。
安い。
750mlの生マッコリは1,200〜1,400ウォンくらいで、
酒類売り場の安い価格の両雄となっている。
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●▲■ 某流通企業のヤードにて ●▲■
次に、
メルマガVol.160にでてきたソウルの大手酒類流通会社の、
清酒の在庫状況を観察した記録。
この会社は、
ソウル市内の居酒屋、ワインバーなどに卸しているそうで、
2010年の売上が約610億ウォン。43億円程度。
ビール、焼酎、ウイスキーが売上の中心だけれど、
「付加価値の高いワインと清酒に力を入れている」
そうで、現状では
ワイン売上が6%−39億ウォン、
清酒売上が3%−17億ウォンを占めるそう。
その清酒倉庫を取らせてもらった写真を、
アーカイブ資料に掲載しています。
優に百種類以上は置いてあって、力の入れようがわかる。
スナップ写真を頼りに、主な在庫銘柄を記録すると次のごとし。
大手銘柄:
白鶴、月桂冠、大関、菊正宗、松竹梅、白雪、、、、、
新潟銘柄
白瀧、八海山、越乃寒梅、久保田、白龍、真野鶴、、、、、
東北銘柄
高清水、会津ほまれ、出羽桜、一ノ蔵、南部美人、、、、、
西日本銘柄
黒龍、獺祭、天狗舞、賀茂鶴、、、、、
紙パックやキュービテナー中心の清酒
北関酒造、小山本家、キング醸造、チョーヤ、、、、、
本格焼酎銘柄
いいちこ、さつま白波、さつま小鶴、天孫降臨、、、、、
米国清酒銘柄
月桂冠、大関、八重垣
ダントツに品種が多いのは白鶴で、
紙パック「まる」やカップ酒から、高価な吟醸酒まで、
15種類くらいあった。
しかし、単品でいちばん売れているのは
「米国月桂冠750mlびん」だそうだ。
カリフォルニア清酒は韓国できわめてポピュラー。
居酒屋メニューでもよく見る。
原料米価格が日米では全く違うので、
米国製清酒は韓国で価格競争力が高いのだと思います。
加えて、韓国とアメリカはFTAを締結する。
輸入関税は(教育税も?)暫時下がるはずなので、
米国製清酒は価格競争力がさらに増すはず。
日本清酒は、
日本アイデンティティーとブランド力を
さらに高めなければなりません。
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●▲■ 日式居酒屋のサケ探訪編 ●▲■
最後に、居酒屋でのサケ探訪。
ソウルの日式居酒屋を2種に大別すると、
「日本語メニューあり・日本語可」
「日本語メニューなし・日本語不可」
があります。
団体旅行の限られた日程だったけれど、
両方をトライできました。
●まずは「日本語メニューなし・日本語不可」の居酒屋。
ソウルを横切る漢江(ハンガン)の南、
ロールスロイスのショールームや高級ブティックが立ち並ぶ、
清潭洞(チョンダムドン)にある、
日本酒専門店「李上(イサン)」。
道に面した窓にはずらりと日本酒の一升壜が並ぶ。
ネットでソウルの居酒屋を検索するとたくさん出てくるけれど
この店は日本語の検索では出てこない。
平日の夜8時過ぎだというのに、店内はほぼ満員。
日本人客らしい人は一人もおらず、韓国人客ばかり。
場所柄か、身なりのきちんとした若い人が多い。
お酒メニューは写真入りなので、
300mlの賀茂鶴と月桂冠をオーダー。
料理メニューはハングル語のみ。
しかし「ODEN−おでん」は通じる。
ソウルの夜、日本語は全く通じなくても、
美味しいお酒と美味しいおでんで、
「和の雰囲気」を堪能しました。
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●次に「日本語メニューあり・日本語可」の居酒屋。
西洋人の多い梨泰院(イテウォン)近くの
居酒屋「天翔」。
こちらは日本人客中心で、
店員さんの多くも日本人。
ツアー参加者全員で行ったのですが、
皆さん酒好きで大いに盛り上がり、
こんなにボトルをあけました。
黒龍720ml:80,000ウォン
菊正宗・樽酒720ml:55,000ウォン
久保田・千寿720ml:70,000ウォン
さつま白波900ml:50,000ウォン
「日本語可」のお店は、やはり居心地がいい。
ただ、和の雰囲気、高級感では、
むしろ「日本語不可」のお店のほうが良かった。
サケ・焼酎の潜在需要、成長性で言うならば、
これからは「日本語不可」のお店ではないか、
と思いました。
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●▲■(おまけ)お箸、ご飯茶わんは金属製 ●▲■
韓国では、ご飯は匙(さじ)で食べる。
食卓には必ず匙とお箸(はし)が出てくる。
お箸はキムチなどを摘むのに使うけれど出番が少ない。
みなさん、匙中心で食べているよう。
ご飯茶わんを手に持ってお箸で食べる日本スタイルは、
「はしたない」そうだ。
で、その匙は金属製である。
「お盆の清酒」のところで書いたけれど、箸も金属製。
ご飯茶わんも金属製。
冷麺も金属製ボウルで出てくる。
高麗青磁、李朝白磁など、韓国は陶磁器の国。
日本の有田焼、薩摩焼、萩焼などの陶芸技術は、
朝鮮人陶工由来であるものが多い。
その韓国がなぜ陶器でなく金属なのか、、、。
不思議に思ってネットで調べてみると、
たくさんの書き込みがありました。
「理由は朝鮮戦争です。ソウルに取材に行ったときに
複数の韓国人に聞きました。戦況の変化が激しく、
住民は急な移動の連続で、金属製食器が持ち運びに便利だった」
「もともと韓国では匙と箸は常にセットで、
そのため箸も金属なのでしょう。また、食器に金属が多いのは、
熱いものは熱いまま、冷たいものは冷たいままにするため」
「王族、両班が青酸による暗殺を避けるために、
化学変化しやすい銀製の製品を愛用した名残と言われる」
どれが本当か、というより、
どれも本当、なのかもしれないと思います。
お国事情があるものだなあ、と改めて思いました。
(text=喜多常夫)
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