●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.174 ●▲■
発行日:2012年12月10日(月)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com
------------------< 目 次 >------------------
●▲■「サケ・焼酎の国際化を考える上での
Tidbits(マメ知識)」●▲■
<続:焼酎編>
■アメリカでは「日本焼酎」:「韓国ソジュ」=1:13
■OEM焼酎:ベトナム製&大分製inアメリカ
■麹でつくるウイスキーinカナダ
(text = 喜多常夫)
ご紹介情報 ●1▲フランス・ザルキン社のキャッパー
ご紹介情報 ●2▲発泡酒の製造技術「びん内醗酵編」
ご紹介情報 ●3▲「キャップ・アート」
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前回は、
●本格焼酎と甲乙混和焼酎の国内シェア・輸出シェア、
●スコッチのブレンデッドとモルトのシェア
について書きました。
続けて焼酎の話を書きます。
※醸造協会誌7月号に掲載された拙稿
「成長期にあるSakeとShochu」
の一部に、加筆・修正したものです。
●▲■ 国際市場におけるソジュvs焼酎 ●▲■
「ソジュ・Soju」は韓国製の焼酎です。
漢字由来の韓国語で、漢字表記では「焼酒」。
「ジンロ」や「鏡月」が有名ですね。
ソジュは日本では「焼酎(甲類)」として売られていますが、
日本以外の国では「ソジュ」として販売されています。
国際マーケットでの「日本焼酎」と「韓国ソジュ」の
勢力図を見てみましょう。
■2011年の総輸出額
●日本の焼酎の輸出:約14億円
●韓国のソジュの輸出:約91億円(1.14億US$を@80円/$で換算)
●(参考)日本の清酒の輸出:約88億円
■2011年の輸出量上位国
●日本の焼酎;
1位中国、2位アメリカ、3位香港、4位韓国、5位シンガポール
●韓国のソジュ;
1位日本、2位アメリカ、3位中国、4位フィリピン、5位カナダ
[コメント]
輸出金額は、ソジュが焼酎の6.5倍(!)
日本の清酒輸出より、ソジュの輸出規模が大きい。
アメリカと中国、それに互いの国が主要輸出先であるのは
「日本焼酎」と「韓国ソジュ」で共通。
次に、その主要輸出国についてのデータを見ます。
■2011年の日本の焼酎輸出
●アメリカ向け 2,380石 (1,181円)
●中国向け 2,630石 (857円)
●韓国向け 900石 (732円)
輸出総合計 1万1,700石 (1,157円)
注:財務省貿易統計による
■2011年の韓国のソジュ輸出
●アメリカ向け 3万0,827石 (222円)
●中国向け 2万3,690石 (180円)
●日本向け 29万8,540石 (248円)
輸出総合計 38万5,372石 (237円)
注:韓国の貿易統計による
[コメント]
いつも古い単位で恐縮ですが、
業界人にわかりやすいよう(?)
リットルを石(=180リットル)に換算して表示しました。
( )内は1.8リットルあたりFOB価格です。
韓国ソジュの輸出量の実に約8割が日本向けであるのは、
80〜90年代の韓国の戦略の成果でしょう。
「アメリカでのシェアは、日本:韓国=1:13」
焼酎業界の方はご存じの通り、
アメリカ向け本格焼酎はラベルに「Shochu・Soju」と
表記している商品がほとんど。
日本ブランドの価値を打ち出していくために、
Soju併記は個人的には避けるべきではないかと思いますが、
圧倒的にSojuが多い(認知度が高い)という現実があります。
「中国でのシェアは、日本:韓国=1:9」
日本の焼酎輸出先トップの国、中国でさえ、
韓国勢が圧倒的に強いという現実を踏まえて
日本焼酎の国際戦略を練らねばなりません。
一方、( )内の1.8リットル単価を見ると、
ソジュは極端に安い。焼酎はソジュの概ね5倍。
これだけ価格の違う物が同じカテゴリーで売られているのに
危うさを感じます。
高価格蒸留酒として
差別化ブランディングが必要です。
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●▲■ 中国市場における蒸留酒 ●▲■
■中国における2011年の「白酒」の生産量:
1,025万6,000KL(65度換算)、対前年比30.7%増加
(「中国食品報告」による)
[コメント]
1,025万6,000KLは約5,700万石(!)
日本焼酎の輸出先トップの国、中国では
焼酎・ソジュは「白酒(パイチュウ)」
あるいは「焼酒(シャオチュウ)」のカテゴリーに含まれます。
既に述べたとおり、
ソジュの中国向け輸出は2万3,690石、
焼酎の中国向け輸出は2,630石。
中国製白酒5,700万石の前では、
ソジュも焼酎も陰が薄い存在といわざるを得ません。
白酒のほとんどは茅台酒(マオタイしゅ)など、
高粱(コーリャン。イネ科ではあるがイネではない)を
主原料とするもの。
20世紀にはアルコール度数50%以上が主流だったけれど、
近年は35〜47%が多くなっているそう。
茅台酒の好調ぶりは新聞などでも時々伝えられるところで、
(トップメーカー貴州茅台酒社は上海証券取引所に上場していて、
日経産業新聞8月1日の記事によれば、時価総額が405億ドル。
日本のキリンとアサヒは両方とも約108億ドルだそうで、その4倍!)
いずれ輸出にも力を入れてくるのではないかと思います。
しかも高級茅台酒はソジュと違って貯蔵するお酒で、
本格焼酎以上に高価な商品。
原発事故による輸入停止や、
領土問題に伴う日本製品非買運動は、
チャイナリスクを考えさせられましたが、
違った意味で中国が焼酎の脅威になる時代が来るかもしれません。
白酒、ソジュなど様々なアジアの蒸留酒の中で、
日本焼酎を付加価値の高い存在として成長させていく
長期戦略が必要です。
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●▲■ 国際市場におけるOEM焼酎 ●▲■
ベトナムで生産された焼酎が、
カナダやアメリカに輸出されています。
アメリカでOEMブランドとして販売される事例を2つ紹介します。
■<事例1>オレゴンで清酒を造っているSakeOne社は
「Tombo(トンボ)」という焼酎も販売しています。
●2012年年初のSakeOne社のトンボの説明(ウェブサイトの抜粋)
Distilled in by a Japanese distiller
who built a state of the art facility in Vietnam
to avoid the high cost of land and materials in Japan.
Sold in Japan under various names and in Canada
under the Moonlight brand. Number one selling shochu in Canada.
(要約:「日本のディスティラーがベトナムで造る焼酎。
カナダでベストセラーの焼酎でもある。」
ベトナムから調達したことをはっきり書いていました。)
●ところが、最近同じサイトを見ると記述内容が変わっていて、
2012年11月現在の商品説明は以下のように修正されています。
An authentic Honkaku Shochu (also known as Ostu-rui, or "real thing"),
Tombo is single pot distilled from North American barley and white koji.
Drawn from the head and body of the distillation process
and aged six months in stainless steel tanks,
Despite similarities, Tombo shochu is not vodka and
we find it more refined than much of it's Korean relatives known as Soju
(要約:「北米の麦と白麹で単式蒸留器で造られた本格焼酎。
乙類、または、本物とも称される。6カ月のタンク内熟成。
韓国のソジュよりずっと洗練されている。」
なお、にもかかわらずラベルには「Shochu/Soju」と併記。)
http://www.sakeone.com/tombo/let-your-inner-dragon-fly.html
■<事例2>ニューヨークで「TY KU(タイク)」という
OEM清酒ブランドを販売している TY KU社は
「TY KU Soju(タイク・ソジュ)」も販売しています。
●2012年11月現在のTYKU社のウェブサイトの商品説明の抜粋
BARLEY - The highest quality in the world, handpicked in Oita, Japan.
SPRING WATER - Naturally filtered by the cedar forests of the Kyushu Mountains.
KOJI - Handmade white koji evokes and enhances flavor and aroma.
(要約:「大分で手摘み(!)された麦、
九州の山々の天然水、そして手作業による白麹の製麹」
大分の麦焼酎であると記しています。
それにしても、ワイン葡萄の手摘みはあるけれど、麦の手摘みとは?
なお、ラベルは「TYKU Soju」となっていてShochuの表記はない。)
http://www.trytyku.com/soju.html
[コメント]
上記のアメリカの事例を日本の焼酎業界の視点で見ると、
複層的な問題点を含んでいます。
・海外企業による本格焼酎ブランド
・日本以外の国の焼酎を使ったOEMブランド
・焼酎とソジュの混用
一方日本でも、たとえば全国の生協で販売されている
生協ブランドの乙甲混和焼酎「麦の友」の表示を見ると、
「国産焼酎乙類30%、カナダ産焼酎乙類21%」と書かれていて、
日本にカナダ製本格焼酎が輸入されていることがわかります
現在、「焼酎・Shochu」という名称で蒸留酒を生産している国は
ブラジル、ベトナム、カンボジア、ニュージーランドなど10カ国近い。
さらに、カナディアン・ライウイスキーの中には
麦芽でなく麹で糖化(!)している会社があるそうで、
(ウェブサイトに、Aspergillus fungusで糖化、と記載)
これは、見方によっては焼酎といえそうにも思います。
120年前の高峰譲吉先生の夢が実現した、ともいえますが、
国際市場では想定以上に事情が複雑化しています。
因みに、韓国ソジュも、
かつては曲子(リゾープス)を使っていたけれど、
最近はアスペルギルスオリゼー(日本の麹)を使う場合が多いと聞きます。
(高峰譲吉1854〜1922:
アドレナリン、タカジアスターゼの発見者。
1890年代、米国でウイスキーに日本の麹を使う特許を出願。
それを採用したいという米国の酒造会社の求めに応じて、
渡米して麹でモルトの代替えを行う研究所をつくったが、
実現前夜にモルト業者に研究所を焼き討ちされ計画が頓挫。)
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以上、いくつかの事例を述べました。
焼酎が日本製だけでなく
日本以外の国でも造られる国際商品となっている事や、
韓国ソジュ、中国白酒との差別化を念頭においいて、
ジャパニーズ焼酎の成長戦略、
プレミアム・スピリッツとしてのブランド化を
考える必要があると思います。
<acknowledgement>
本稿で引用した韓国や中国の統計の検索方法は、
宇都宮仁さん(国税庁鑑定企画官付酒類国際技術情報分析官)
に教えていただきました。
また、多くの国際情報をご教示いただきました。
そのことを銘記し、お礼申し上げます。
<訂正>
前回のメルマガで、
「甲乙・乙甲混和の平均比率を仮に「甲:乙=8:2」とすれば、
7万KLの内訳は甲類分が5万6,000KL、本格分が1万4,000KL。
2010年度の課税移出は甲類焼酎40万1,051KLなので、
甲乙混和を除いた純粋な甲類:34万5,051KL」
といった内容を書きましたが、
これは誤りだとのご指摘をいただきました。
「甲・乙混和焼酎」は、その混和比率により按分されて
連続式蒸留しょうちゅうと単式蒸留しょうちゅうになっているので
これからさらに計算するのは、間違っているとのことです。
お詫びして訂正いたします。
(text: 喜多常夫)
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さて、情報紹介です。
●▲■ ご紹介情報 その1:ROOTSディビジョン ●▲■
フランス・ザルキン社のキャッパー
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/machine/zalkin_catalog.pdf
ザルキン社は、イタリアのAROL社と並ぶ
世界のキャッパー2強の1社。
きた産業はザルキンの日本代理店です。
テクニカルサービスもお任せください。
●▲■ ご紹介情報 その2 ●▲■
発泡清酒・発泡リキュールの製造技術「びん内醗酵編」
http://www.kitasangyo.com/e-Academy/Gas/data/SURSparkSakeBFmethod.pdf
「酒うつわ研究」最新号に掲載した
発泡酒の製造技術。
PPTで全18ページのプレゼンテーションです。
発泡清酒、発泡リキュールのことなら、
製造プラントからパッケージデザインまで、
きた産業にお任せください。
●▲■ ご紹介情報 その3 ●▲■
「キャップ・アート」
http://www.kitasangyo.com/Archive/Data/capart_120914.pdf
スチールキャップ(王冠)、
アルミキャップ、プラスチックキャップを使った
アートのご紹介。
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http://www.kitasangyo.com/Archive/mlmg/BN_top.html
2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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