●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.175 ●▲■
     発行日:2012年 12月27日(木)
  ■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■

発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com

 

 

------------------< 目 次 >------------------

  年の瀬のご挨拶。それに、2012年の○と×。

●▲■ ワイン業界の2012年:「消費量史上最高(の見込み)」
●▲■ ビール業界の2012年:「グローバル経営力」
●▲■ 清酒・本格焼酎の2012年:「長寿DNA」
●▲■ (おまけ)驚いたこと:パイチュウとボジョレーヌーボー
●▲■ きた産業の2012年の○と×

               (text = 喜多常夫)

 

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今年も押し詰まりました。
暮れのご挨拶を申し上げます。

 http://www.kitasangyo.com/2013message/message_2013.html

(↑「5か国語クリスマス&年賀のカード、
              それに、年末年始の休日のご案内」)

      
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さて、年末恒例の「2012年の○と×」、
お酒・アルコール飲料業界の2012年を振り返って、
○(マル:良かったこと)と×(バツ:悪かったこと)を書きます。

 

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●▲■ ワイン業界の2012年:「消費量過去最高(の見込み)」

「日本にあるワイナリーの完全リスト」
というのを、この10年ほど継続的に調査し、公開しています。

今年も最新情報を盛り込んで、先週末に公開しました。
自社栽培・契約栽培のブドウ品種も掲載しています。
   http://www.kitasangyo.com/Wine/winery_list_ed09.pdf

掲載したブドウのワイン製造業者の数は219社で、
これは過去40年ほどで最も多いと思います。
(それ以上昔、戦前や戦後はもっと多かった。
山梨や大阪などに醸造免許を持つブドウ農家や
農家共同組合、小規模製造業者が多くあった。)

その219社のうち、実に71社(30%以上!)が、
2000年以降の新規参入者だという事実が、
近年のワイン製造参入ブームを物語ります。
(「集計分析シート」に創業年の分布を掲載)
  http://www.kitasangyo.com/Wine/winery_analysis_ed09.pdf

今後も年に数社のペースで新規開業は続くと思われ、
2020年には250社程度になると予測します。

 

これは一つには「特区制度」の影響もあります。
ワイン醸造免許は通常6KL以上だけれど、
特区では2KL(720mlびん2,800本分)に緩和される。

その結果、本来想定される、

 ■専用品種を栽培して小規模ワイン醸造を行う(長野県など)

という「一般的な参入者」の他に、

 ■商店街の活性化目的で果汁からワインを醸造(神奈川県など)
  ■農村の活性化目的のワイン醸造所(大分県など)
  ■6次産業化補助事業としてのワイン醸造所(秋田県など)
  ■NPO(=非営利団体)のワイン醸造所(三重県)
  ■BOP(=カナダに多い醸造体験型)のワイン醸造所(北海道など)
  ■醸造したワインを自営民宿で提供(大分県)

といった様々な「日本独特のワイン醸造所」形態が出現しています。
実際には年間1,000本程度しかつくっていない醸造所もあるようで、
とてもワイン販売だけではビジネスになり得ない。
多くは兼業や兼職を前提としています。

意味合いが違いますが、

 ■ヤマブドウや、ヤマブドウ交配種に取り組む醸造所

が多いのも「日本独特」で他の国ではあまり聞かない。

 

この10年は「日本のワインルネッサンス」というべき時代で、
メルロ、カベルネ、シャルドネ、ピノ、それに甲州などの
「栽培品質、ワイン品質が劇的に向上した時代」ですが、
(そのことがワイン製造参入ブームの最大要因)
一方で「日本独特」が生み出された時代ともいえます。

「ガラパゴス携帯」などと揶揄される日本独特もありますが、
「軽自動車」のように社会に定着し進化を続けている日本独特もある。
「日本独特ワイン醸造所」も後者のように進化することを期待します。

 

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いくつかの地域で、新しく、
ワイン醸造所が「集積」し始めていることも近年の潮流。

 ●長野県東御市(ヴィラデスト)周辺に3社
  ●新潟県角田浜(カーブドッチ)周辺に4社
  ●北海道三笠市・岩見沢市に7社(委託醸造含む)

これらの地域では、さらに新規ワイナリーが増える見込みです。

温暖化も影響しているのでしょう、
大きな地域で言えば、北海道に集積が始まっています。

 ●北海道にはワイン醸造所が22社

22のうち2000年以降に新規開業したものが16で、実に70%以上!

山梨県甲州市勝沼町の密度(町内に約30社)には遠いけれど、
新しい集積地ができるのは楽しみです。

ワイナリー集積地ができるのはワイン産業の〇(マル)。
品質向上効果も大きいし、
勿論、ワインツーリズムにとっても大きな○です。

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ワイン参入者の増加の背景の一つには、
「栽培品質、ワイン品質の向上」のほかに、
「ワイン消費量の伸び」があります。

2012年の日本のワイン消費は
「史上初めて30万キロリットルの大台を越えた」と思います。

国税庁のワイン消費量(輸入+国産)を見ると、
過去最高はミレニアムブーム直前の1998年で、29.8万KL。
その後減少フェーズに入って、
特に2003〜2008年は22〜23万KL台を低迷していました。

それが2009年から再び伸び始め、2011年は29万KL。
そして今年2012年、まだ統計結果がでるのはだいぶ先ですが、
感触的には30万KL越えていると思います。

「ワイン消費量史上最高(の見込み)」であることは
2012年の大きな○(マル)です。

 

なお、30万KL消費の内訳は、
おおよそ「輸入ワイン7割」「国産ワイン3割」。

しかし、ワイン業界の皆さんはご存じの通り、
「国産ワイン」のうち、
「日本のブドウでつくる純国産ワイン」は半分以下。
(残りの国産ワインはバルク輸入ワインや輸入果汁によるワイン)
というのが現実で、これも、
「日本独特」と言うべきかもしれません。

 

(付録)ワイン関係者の皆さんへ
11月のボルドーVINITECH展示会訪問と、
シャトー見学の報告ブログをアップしています。
  http://blog.goo.ne.jp/kita-slow_blog/

 

 

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●▲■ ビール業界の2012年:「グローバル経営力」

世界のビール産業の2012年は
ますます集約化が進んだ一年でした。

 ■世界1位のABインベヴが、
  世界7位のメキシコのモデロ(コロナビール)を買収。
  (従来から非支配株を保有していたが2012年に完全買収。
  統合後のABインベヴは4,000万KL!となる。)

 ■世界3位のハイネケンが、
  シンガポールのタイガービールを買収。
  (タイの大手タイビバ社との競合の末の買収。
  キリンが出資するF &N社が売主なので日本でもよく報道された。)

 ■世界10位のエフェスは、
  世界2位のSABミラーに自社株の一部を譲渡するのと引き換えに
  成長市場のロシア・ウクライナのビール事業を取得。
  (トルコのビール、エフェスは日本ではなじみがないが
  英国のリサーチ会社Plato Logicの2011年ビールランキングでは
  キリンの世界9位につぐ10位。)

主要な世界の市場は「この10年ほど」で、
  ABインベヴ
  SABミラー
  ハイネケン
  カールスバーグ
  モルソン・クアーズ
の世界大手5社が、押さえてしまった感があります。

最大市場である中国も、上記5社に加えて、
中国資本の華潤雪花、青島、燕京の3大手が押さえている。

日本の大手ビール各社、
キリン、アサヒ、サッポロ、サントリーも、
近年グローバル戦略を積極果敢に進めていますが、
世界大手に比べると遅かったように感じます。

もしもの話は詮無い事ですが、
「もしも日本勢が10年早く進めていたら」、
世界シェアの勢力図は全く違ったかもしれません。

もっともその分、日本の大手は
「この10年でビール以外の分野(飲料など)でグローバル化」
を果たした、ともいえますが。

いずれにせよ、ビール事業はこれからよりいっそう、
「グローバル経営力」が問われる時代です。

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2012年の業界を振り返ると、、、

 ●セブン&アイやイオンのPBビールを大手各社が供給、
  低価格PBのほか高価格PBもあり、その販売は好調、
  イオンへのビール卸が公正取引委員会から不当廉売で警告された、
  など、「流通の存在感」が一層強まってきていること

がありますが、これは、
「○」なのか「×」なのか判定しにくいところ。

 ●「発泡酒」、「第三のビール」の登場以来、減り続けていた
  本物の「ビール」の需要にやや底打ち傾向が見られること、
  「地ビール」に関する正確な統計情報は持ち合わせていませんが
  どうやら地ビールもプラスになっていること、

は「○」というべきでしょう。
しかし、2012年のビール業界の一番の「○」は

 ●「キリン一番搾り」「アサヒ・スーパードライ」
  「サントリー・プレミアムモルツ」「サッポロ・プレミアム」
  という各社のフラッグブランドの海外攻勢が一層進んで、
  海外委託生産の増加のほか、
  日本からの直接輸出も過去最高の見込みであること

としておきます。

今年は海外出張先で日本ブランドのビールの露出率が
急激に増えていることがとても印象的でした。
日本食レストラン向け需要だけでなく、
「クールな日本ブランド」の一員として、
世界マーケットで定着することを期待します。

 

(付録)地ビール関係の皆さんへ
「全国地ビール・地発泡酒リスト」を今年も更新しています。
2012年の新規開業は6社、閉店は5社、現在営業中は208社です。
  http://www.kitasangyo.com/BEER/beer_index.htm

 

 

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●▲■ 清酒・本格焼酎の2012年:「長寿DNA」

2012年は周年行事に参加させていただく機会が2回ありました。

 ●山元酒造さん(焼酎「さつま五代」)の100周年記念式典
  ●辰馬本家酒造さん(清酒「白鹿」)の350周年記念式典

そこで感じたことを書きます。

1人の経営者が経営できるのは長くても20〜30年。
100年も、あるいは350年も事業を維持することは、
尋常ではできません。

現在、酒類業界は逆風です。
しかし、100年、200年といったスパンで見ると、
経済恐慌、戦争、天災、原料制限、行政指導による統合など、
もっともっと厳しい逆境があったと思います。

もちろん一義的には、
歴代の経営者のご努力の賜物というべきですが、
日本の酒造業それ自体が「長寿DNA」を持っている、
ということもあるのではないかと感じました。

フランスのワイン・シャトーやシャンパーニュ・メゾン、
英国のビールやスコッチの会社などでも
20世紀初頭や19世紀に創業したブランドをよく見るので、
「世界的に見て酒類製造業は長寿産業」と言える要素はありますが、
「清酒製造業では創業100年以上が763社」というデータもあり、
「日本の酒造業は例外的に長寿」だと思います。

本格焼酎製造業は蒸留という比較的新しい技術を使うので
創業100年以下が主流、古い企業でも創業100〜150年が多い。
しかし、同じ「長寿DNA」を持っていると直感します。

 ●清酒・焼酎製造業は「長寿DNA」を持っている

そのことに気付いたことを2012年の○(マル)とします。
(このことは稿を改めて書こうと思います。)

 

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●▲■ (おまけ)2012年に驚いたこと

<驚いたこと:その1>
夏ごろの日経産業新聞でこんな記事があった。
  「中国の白酒(パイチュウ、伝統蒸留酒)の上場会社、
   貴州茅台酒、江蘇洋河酒廠、宣賓五糧液は、
   売上ではキリンやアサヒの1/5〜1/10しかないのに、
   株の時価総額は2〜4倍(!)」

聞いたことのないような会社(失礼)ばかりなのに、
キリンやアサヒより株が高いとは信じがたい、、、と思っていたら、
年末の12月になってこんな新聞記事がでた。
  「白酒から基準を超える可塑剤が検出されて、
   業界14社の時価総額が1兆3,200億円(!)失われた」
  「中国新政権移行に伴う公務員の接待抑制で
   売上が前年比80%減の白酒もある」
、、、なんとも極端で、中国は難しそうだ。

 

<驚いたこと:その2>
ボジョレーヌーボーは日本では毎年人気である。
2012年の数字はまだ出ていないと思うけれど、
2011年の出荷の実績が雑誌に載っていた。
  「フランスからの総輸出は1,680万本。
   輸出先1位は日本の790万本で総輸出の約半分!
   2位米国240万本、3位ドイツ130万本、4位ベルギー64万本」

かつてはドイツやアメリカがもっと買っていたと思うのですが、
いまや日本だけがダントツ1位と知って驚きました。
  「韓国ソジュの輸出先=ダントツ1位が日本」
と似た状態になっているなあ、とも思いました。
、、、なんだか日本も極端で、少々変わった市場である。

 

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●▲■ きた産業の2010年の○と×

例年この時期に思う「×」:

 ×納期通り進められず、積み残した事案が多い
  ×機械設備や製品に関するクレームが多かった
  ×力不足で受注できなかった設備案件があった

2013年は挽回を期し、社を挙げて取り組みます。

一方「○」としては:

 ○工場の清浄度向上のため、
   大阪、奈良の全工場に入り口エアシャワーをつけ終わったこと
  ○キャップ品質向上のため60トンプレス機を導入したこと
   (今まで最大は45トンプレスだった)
  ○節電に取り組み夏期電力の対前年比10%減を達成
   年末には事務所の蛍光灯をLED照明に切り替えて節電

2013年はより優れた品質をお届けするよう努めます。

 

      ●▲■ むすび ●▲■

 「清酒、焼酎、泡盛、ビール、ワイン、
   ウイスキー、リキュールなど酒類産業の全方位で、
   高い存在価値・存在意義のある企業を目指す」

これは、ここ数年の経営方針の最重点項目で、
2013〜2014年はその仕上げの年と位置付けています。

よりすぐれた品質、付加価値の高い提案で、
「酒類業界になくてはならない企業」を目指したいと思います。
 
2013年も、なにとぞ宜しくお願いいたします。

 

           きた産業株式会社 代表取締役 喜多常夫

 

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