●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.177 ●▲■
発行日:2013年2月22日(金)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com
------------------< 目 次 >------------------
●▲■ 酒類における「黒」「赤」「白」:
[カラーブランディング]の歴史調査 ●▲■
●▲■ 「黒」のブランド力 の考察:
プレミアムの[メタファー]としての黒 ●▲■
(text = Sienna K. Emiri シーナ・K・エミリ)
ご紹介情報 ●1▲酒類の「パッケージ・デザイン・アーカイブ」
ご紹介情報 ●2▲ビアパブのための「炭酸ガス・窒素ガス混合機」
ご紹介情報 ●3▲商品を引き立てる「クリアカートン」
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チャオ・チャーオ!
シーナ・エミリです。
近ごろ、焼酎もビールも「黒」が多い。
「黒酢」「黒毛和牛」「黒豆」「黒烏龍茶」etc. etc.
と、食品・飲料の「黒」ブランドもずいぶん多いデス。
21世紀に入ってから、
[プレミアムブランドのメタファーとしての黒]
はニッポン人に広く認知されたようですね。
一方、「黒」「赤」「白」など色による商品区分は、
万国共通でわかりやすい方法として昔から広く行われてきたようです。
今回は、
お酒の「黒」と「色によるブランディング」について調査しました。
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●▲■ 酒類における「黒」「赤」「白」:
[カラーブランディング]の歴史調査 ●▲■
●■<スコッチとジャパニーズのウイスキー>
「ジョニ赤」「ジョニ黒」の俗称があるとおり、
ジョニーウォーカーは、色によるブランディングの代表格。
その歴史は古く、
1909年に「赤ラベル(9年もの)」「黒ラベル(12年もの)」を採用。
当時は「白ラベル(5年もの)」もあって3段階だったそう。
1920年(創業100年め)には「金ラベル」を、
1992年には最上級の「ブルーラベル」を発売。
現在、日本の代理店(キリン)が通常販売するのは、
価格順に「赤」「黒」「W黒」「金」「プラチナ」の各ラベル。
英国では、プラチナの上に最上級のブルーがあるのですが、
日本では、ブルーよりプラチナのほうが高級感アリ、ですよね。
もう一つ、スコッチで色のつくブランドといえば、
その名もズバリ、「ブラック & ホワイト」も思い浮かびます。
1890年代からあの「黒い犬と白い犬(テリー犬)」のラベルだそうで、
当初は別の銘柄名だったそうですが、
みんながラベルの「黒い犬と白い犬」で呼ぶので、
正式名称として「黒と白」を採用したそうです。
ジョニーウォーカーもブラック & ホワイトも、
今はディアジオ社のブランドですね。
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サントリーの前身、寿屋は、
1907年発売の「赤玉ポートワイン」(現「赤玉スイートワイン」)で成功。
(「赤」・・・色を使ったネーミングとしては、
ジョニーウォーカーの赤・黒ラベルより2年早い!)
1924年からウイスキー製造に進出。
1929年に国産初の「白札」(現「サントリーホワイト」)を、
1930年に廉価版の「赤札」(現「サントリーレッド」)を発売。
当初の売れ行きは芳しくなかったそうですが、
1937年発売の「サントリーウ井スキー12年」(現「角瓶」)で地盤を築く。
1970〜80年代に全盛を極め、今も定番商品の
「サントリーオールド」は、黒いダルマ型のびんが特徴。
戦後に本格販売されたものだけれど、
その前身は戦前の「オールドサントリー黒丸」という商品だそうです。
(開戦前夜の奢侈品制限でこの時は発売できなかった。)
[赤]玉→[白]札→[赤]札→[黒]丸、という流れですね。
(考えてみると今の商品も、
芋焼酎「[黒]丸」、第三のビール「[金]麦」、「[黒]烏龍茶」
など、サントリーは色がつくネーミングが多いです。)
一方、寿屋を退職した竹鶴が起業したニッカウヰスキーも
1940年からウイスキーを出荷。
1965年に発売した「ブラック(=黒)ニッカ」は、
今に至るニッカの主要ブランドですね。
●■<ビールとワインの黒ラベル>
ビールで黒と言えば、「サッポロ・黒ラベル」。
1977年に「サッポロびん生」として発売された商品を、
1989年に「黒ラベル」に改名したのだそうで、
お客様の通称を正式名称にしたそうです。
中身は黒ビールではなく、淡色のピルスナービール。
エビス以上に固定ファンの多い、サッポロのフラッグシップです。
(「黒ビール」については後述)
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ワインの黒ラベルといえば「ウルフブラス」の「ブラックラベル」。
オーストラリアワインの最高峰の一つ、
アイコニックなワインとして有名。
多くのメダル受賞歴を誇ります。
1973年が「ブラックラベル」のファーストヴィンテージ。
それまでのラベルの色はイエローやグレーで、
単純にそれと区別するためだったようですが、
今やウルフブラスの代名詞。
バロッサやマクラーレンの広大なヴィンヤードの中から
その年の最高の赤ブドウを選んでブレンドするそうで、
カベルネやシラーズが多いけれど、
他にも様々まぜることがあるそう。
1998年に上位ブランドの「プラチナラベル」も導入するも、
やはり「ブラック」の方が人気のようデスね。
現在、ウルフブラスは
「赤」「イエロー」「金」「グレー」「黒」「プラチナ」
の6段階のラインナップです。
●■<清酒・焼酎の白と黒>
フィリップ・ハーパーさんの「THE BOOK OF SAKE」には、
サケに多い銘柄名として、
1. 植物(菊、桜、松竹梅、、、)
2. 動物(鶴、鹿、麒麟、、、)
3. 人名(弁慶、達磨、写楽、、、)
4. 地域(秋田、白川、越、、、)
5. Local Pride, Health and Good Fortune
(寿、誉、福、錦、自慢、盛、、、)
の5分類が記載されています。
けれど、別の角度で見ると「白」が多いことにも気付きます。
「白鶴」「白鹿」「白雪」「白鷹」 ←灘
「白瀧」「白龍」「白牡丹」 ←地酒
「白波」「白岳」「白金」「白露」 ←本格焼酎
などなど。
一方、白に比べて「黒」は少数派(清酒では)ですが、
「黒龍(黒龍酒造)」「黒帯(福光屋)」 ←ブランド
「黒松白鹿」「黒松剣菱」 ←主銘柄「白鹿」「剣菱」
のなかの上級ブランド
などがあります。
これらの名称は100年、200年、
あるいはそれ以上の歴史がある場合があります。
歴史をさかのぼれば、平安時代の「延喜式」(900年代の編纂)に
宮中の新嘗祭(にいなめさい)の酒は
「白酒(しろき)」
「黒酒(くろき)」
だったと書かれているそうです。
「黒酒」は灰を入れる灰持酒(あくもちざけ)で、今も熊本の
「赤酒(あかざけ)」
がその伝統製法を受け継いでいます。
最近のブランディングでは、
宝酒造の「白壁蔵(清酒)」「黒壁蔵(焼酎)」がありますね。
(本格焼酎の「黒」については後述)
●■<番外編:クレジットカードは、黒が最上級>
1950年代にダイナースとアメックスが始めたのが最初だそうで、
VISAやマスターは1970年代に参入した後発組だそうです。
1966年にアメックスが、
審査基準が厳しい「ゴールドカード」を発行。
当時、普通のクレジットカードは銀色だったそうで、
ゴールドカードはその名の通り金色にして区別したそうです。
その後、アメックスは1984年に「プラチナカード」、
1999年に「ブラックカード」(最上級、使用限度額なし)を発行。
カード会社各社が追従していますが、
「ゴールド」「プラチナ」、そして最上級が「ブラック」
という順番は、各社共通になっていますね。
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●▲■ 「黒」のブランド力 の考察:
プレミアムの[メタファー]としての黒 ●▲■
▲●<黒の食品、パッケージの黒>
そもそも「黒」を「口に入れる」ことには抵抗感があったと思います。
けれど、2000年代になってから、
■「黒=健康」−黒ゴマ、黒酢、黒豆などのアントシアニンに抗酸化作用
■「黒=プレミアム」−黒豚、黒毛和牛などの高級品
というイメージが完全に定着。
2003年(「黒豆ココア」など)
2007年(「黒酢」「黒豆」「黒ゴマ」など)
2012年(「黒烏龍茶」「のど黒飴」「ブラック缶コーヒー」など)
と、周期的に黒ブームがあります。
「黒酢にんにく(サントリー)」「黒セサミン(DHC)」など、
健康サプリメントでも黒人気です。
今年、2013年になって新発売された
「カップヌードル・ブラックみそ(日清食品)」も好調のようです。
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以上のような黒系食品のパッケージは、たいてい黒基調。
しかし、黒系食品以外でも
黒色のパッケージは印象深いですね。
2012年にヒットしたプレミアムビールの
「グランドキリン」は黒いびんが特徴。
コカコーラもペプシコーラも、
人気のZEROで黒いラベルを採用しています。
長寿商品「サントリーオールド」も、
発売以来黒いびんが特徴で、
黒がプレミアム感を演出しているように思います。
人気のゆるキャラ「くまモン」は、
私は黒が魅力だと思うのですが、そう思いませんか?
黒色の訴求力が高まっているように思います。
▲●<本格焼酎の黒と、ビールの黒>
2000年時点、すなわち20世紀末時点では
「麦106万石・芋38万石」
と麦が圧倒的多数派、本格焼酎の過半は麦でした。
ところが21世紀に入って芋焼酎が急速に伸びる。
2011年は
「麦112万石・芋113万石」
2012年は
「麦112万石・芋116万石」
1998年に登場した「黒霧島」(霧島酒造)がトップブランドで、
現在、芋焼酎の3割以上のシェア。
焼酎市場全体の大きな牽引力になりました。
その影響も大きいと思いますが、
焼酎では「黒」が人気。
ラベルに「黒」を表示したもの
(黒麹で造った焼酎、ネーミングに黒を取り入れた焼酎)
がとても多くなっています。
本格焼酎には黒のほか、赤や白もあって、
やはり霧島酒造の、「赤霧島」が有名ですね。
ウイスキーの黒・赤・白は概ね「価格の差」ですが、
焼酎の黒・赤・白は価格でなく「原料や造り方の差」です。
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日本ではスタウトビールを「黒ビール」と呼びます。
ドイツには「シュバルツ」(Schwarz=黒)ビールがありますが、
その他の国ではblack beerとはあまり言わないと思います。
シュバルツは下面醗酵、スタウトは一般的には上面醗酵。
日本の黒ビールは上面醗酵も下面醗酵もあるようです。
2012年から日本は「黒ビール」ブームで、現在進行中。
アサヒが「ドライブラック」、
キリンが「一番搾りフローズン黒」、
サントリーが「プレミアムモルツ黒」
と、続々新製品を投入。
黒に強いサッポロからは、
「ヱビス ザ・ブラック」のほか、
「ヱビス スタウト クリーミートップ」(泡の出る特殊な缶蓋つき)
「麦とホップ 黒」(第三のビール)
「プレミアムアルコールフリー ブラック」(ノンアルコール)
と、変化球も登場。
日本の黒ビールは元々ニッチで、ごく小さなマーケットサイズ
(2011年は1万KL強―ビール類全体560万KLの0.2%)だったのが、
2012年は一気に6倍以上に拡大、と専門紙は伝えています。
ビールにおける黒ブームの背景には、
食品の黒ブーム、焼酎の黒ブームもあるのだと思います。
それにしても日本のビール4社の、
必ずそろって同じ市場に参入する競争心、
ごく短期間で競合商品を準備する対応力、には驚きますね。
▲●<番外編:ファッションの黒、リクルートスーツの黒>
80年代、日本は黒やグレーのモノトーンファッションが
一大ブームだったそうです。
黒が特徴のデザイナーズブランド、
「コムデギャルソン」「ビギ」「ワイズ」が大人気で、
「カラス族」という呼び名が生まれました。
私の故郷・ミラノでも、
10年ほど前にモノトーンブームがあって、
カラフルさが売り物のベネトンでさえ黒が多かった。
今では日本もイタリアもモノトーンブームは去りましたが、
日本のシューカツのリクルートスーツが
男女とも黒1色なのはどういう事情なのでしょう?!
(text = Sienna K. Emiri)
(各社のホームページ、各社の社史、Wikipedia、
酒造組合のデータ、などを参考に作成。
きた産業の情報誌「酒うつわ研究」13/II掲載の
「シーナズ・ウォッチング」に加筆修正したものです。
記載内容に沿った商品写真は「酒うつわ研究」で見てください。)
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さて、情報紹介です。
●▲■ ご紹介情報 その1:KK & K2ディビジョン ●▲■
酒類の「パッケージ・デザイン・アーカイブ」
http://www.kitasangyo.com/Archive/Package-design-archive.html
包装材料に当社が関与したものを中心に写真資料を集積しています。
パッケージデザインや商品企画のご参考にどうぞ。
●▲■ ご紹介情報 その2:ROOTSディビジョン ●▲■
ビアパブのための「炭酸ガス・窒素ガス混合機」
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/gas/g_blender_analyzer_ed3.pdf
ケグからビールを押しだすのに、
混合ガスを使うことはヨーロッパでひろくおこなわれています。
様々な種類のビールを提供するビアパブや地ビールブルワリーに、
英国のBSLガステクノロジー社の
ガス・ブレンダー(混合機)をお届けしています。
研究所向けブレンダーもご照会ください。
ビールにおける混合ガスに関しては、以下の解説をどうぞ。
http://www.kitasangyo.com/e-Academy/Gas/data/Nitrogen_for_Quality_of_Beer.pdf
●▲■ ご紹介情報 その3:K2ディビジョン ●▲■
商品を引き立てる「クリアカートン」
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/package/Clearcarton_ed05.pdf
当社の「K2びん」対応はもちろん、
その他多くのびんに対応する「クリアカートン」を準備しています。
小ロット対応はお任せください。
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●▲■バックナンバー閲覧可能!「メルマガ・クロニクル」
http://www.kitasangyo.com/Archive/mlmg/BN_top.html
2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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http://blog.goo.ne.jp/kita-slow_blog/
2006年4月の以来、きた産業のトピックスを写真で収録。
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