●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.179 ●▲■
     発行日:2013年4月19日(金)
  ■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■

発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com

 

------------------< 目 次 >------------------

<酒ブック紹介>

●▲■ [居酒屋]本x2冊 ●▲■
「呑めば、都」「居酒屋の世界史」

●▲■ [ウイスキー]本x2冊+映画1本 ●▲■
「ウイスキーは日本の酒である」「ウイスキーの科学」「天使の分け前」

●▲■ おまけ:高峰譲吉+麹でつくるカナダのウイスキー

                (text = 喜多常夫)

ご紹介情報●1▲「ビデオライブラリー」:充填機・缶詰機など
ご紹介情報●2▲「eアカデミー」:N2-CO2-O2ガス関連技術
ご紹介情報●3▲「パッケージ・デザイン・アーカイブ」

 

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     ●▲■ [居酒屋]本x2冊 ●▲■

 

 ●▲■その1:「呑めば、都」 マイク・モラスキー著
    2012年6月初版発行 筑摩書房 2,100円+税

  本文300ページ、註釈30ページ、
   文字ばかりで、イラストも写真もない、、、

というと、読む気をそがれるかもしれませんが、
読みだすと止まらない、面白い本。

著者は一橋大学教授で、ジャズピアニストでもある。
年齢は50代半ば。アメリカ生まれ。
二十歳の学生の時に日本でホームステイして以来、
30年以上居酒屋通いをしているという変わり者。

いわゆる「居酒屋紹介本」ではなく、
赤羽・十条・吉祥寺・大森・平和島・洲崎・木場・クニタチ、など、
東京の「辺境」(著者の弁。お住まいの方、失礼)の、
「お酒一杯250円」というような居酒屋のお話しです。

そんな居酒屋に、アメリカ人である著者がひとりで入っていって、
日本酒、肴、オヤジや地元常連客との会話を楽しむ。
無論、対応がマニュアル化されたチェーン居酒屋は対象外。

  ●賭に負けて居酒屋でヤケ酒を飲む人をみて、
    競馬や競輪に実際にいってお金をかけてみた話
   ●I字型、L字型、コの字型など居酒屋の客席構造と、
    オヤジ・客とのコミュニケーションの分析
   ●一晩で8軒の居酒屋をハシゴした話

など、アメリカ人とは思えないユニークさ。

東京「辺境」の赤提灯・縄のれんは、
遊郭があった地帯や、戦後の闇市・赤線地帯にできた場合も多く、
社会学の先生だけに、地域の歴史分析も奥深い。

  ●「駐留米軍基地と赤線の関係」
   ●「赤線」(公娼)とは別に半公認の私娼街「青線」もあった
   ●「国立(著作ではクニタチ)は国分と立川の間にあるから」

といったことは、私は知らなかったのだけれど、
日本人ならぬアメリカ人の著作で初めて知るのは意外でした。

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英国では、多くのパブが大手ビールの系列下だそうですが、
メニューの定型化やサービスのマニュアル化はないと思います。
一方日本では、どこの駅前にも同じ名前のチェーン居酒屋ができて、
メニューやサービスがどんどん画一化されていく。

日本食がユネスコ世界遺産に登録されそうですが、
旧式赤提灯居酒屋は日本食文化に欠かせません。
頑固オヤジが経営する旧式赤提灯がなくならないことを祈ります。

 

 

 ●▲■その2:「居酒屋の世界史」 下田淳著
    2011年8月発行 講談社現代新書 740円+税

「金銭を払って酒類を提供する営業空間」
と居酒屋を定義して、ギリシャ、ローマ、ヨーロッパ中世・近世の
居酒屋の発達史をまとめた、まじめな本。

筆者はヨーロッパが専門分野のようですが、
イスラム圏、中国、韓国、日本の居酒屋史にも触れています。
(いまやイスラム圏ではお酒を飲めない国が多いけれど、
歴史的にアラブはアラック-蒸留酒-の発祥地である。)

ヨーロッパの居酒屋は歴史上、
銀行、病院、集会所、賭博場、賃金支払い所、エンターテイメント、
など様々な機能を兼ね備えていた、というのは興味深い。
現代日本の「コンビニの多機能化」を想起させます。

そしてもちろん洋の東西で、居酒屋は売春の拠点でもありました。
売春が主要国で違法になったのは近代のこと。
今の常識とは違って歴史的には職業として認められていた時代が長い。

また、こんな事情も初めて知りました。
  「アメリカの禁酒法はピューリタン勢力によるものではなく
   飲酒による労働力低下を防ぎたいためだったのでは」
  「英国で禁酒法が成立しなかったのは
   アルコール度数の低いエールビールがあったから」
  「(時刻表で有名な)トーマス・クックが旅行業を創始したのは、
   禁酒運動の人たちに娯楽を提供するためだった」

本書はギリシャ・ローマ時代から1900年前後までの記述だけれど、
その後の歴史(この50年ほどの「居酒屋近代史」)も面白そう。
居酒屋文化に興味は尽きません。

 

 

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  ●▲■ [ウイスキー]本x2冊+映画1本 ●▲■

 ●▲■その3:「ウイスキーは日本の酒である」 輿水精一著
   2011年8月初版発行 新潮新書 700円+税

著者はサントリーのチーフブレンダー。
味覚や体調を一定に保つため、
「昼食は必ずてんぷらうどん」で有名。(テレビや新聞で紹介されて)

 ■ポットスチルで(連続蒸留でなく)グレーンウイスキーをつくる
  ■竹炭で濾過して和食に合う味に仕上げる
  ■樽の鏡(側板)に杉、檜、山桜等を使ってみる
  ■梅酒樽にウイスキーを貯蔵する

などなど、
スコットランドでは思いもよらないだろう取り組みが、
実際の商品に活用されているとは! とても興味深いです。

スコットランドには100近い蒸留所があるけれど、
モルト原酒を交換する商習慣があって、
それをブレンドするから多様なスコッチウイスキーができるのだそう。

一方、日本の場合、サントリーとニッカが樽を交換するなどありえず、
各社がブレンドに必要な様々なモルト樽、それも
できる限り性格の違うモルトを確保している(せざるを得ない)そうで、
日本のウイスキー造りの難しさがよくわかります。
  (独白:竹鶴政孝さん独立80年記念で、
   [サントリー+ニッカ]のコラボ・ブレンド、あるいは
   コラボ・ヴァッティングが実現すればドリームウイスキーです。)

その結果、サントリーでは約80万樽もの貯蔵をしているそう。
  (独白:一体いくらに相当するのか、、、
   シャンパーニュの地下カーブとどちらが高いのか、、、)

21世紀に入って、
世界におけるジャパニーズウイスキーの評価はとても高くなりましたが、
長年の蓄積と哲学があってこそ、という事がわかる一冊。

なお、台湾やインドでもウイスキーがつくられています。
次の映画紹介の前段として引用するのですが、
いわゆる「天使の分け前」(樽貯蔵中の減少)は、
通常、年に1〜3%(日本でもスコットランドでも)だけれど、
台湾では8%、インドでは13%、だそうです。

 

 

 ●▲■番外:「天使の分け前(The Angel's Share)」
    ケン・ローチ監督の映画
    4月13日から東京・名古屋・大阪などでロードショー公開中
    2012年カンヌ映画祭審査員賞受賞作

犯罪を犯し、かろうじて禁固刑を免れ、
300時間の社会奉仕を命じられた主人公が、
自分はウイスキーの官能に極めて鋭敏であることに気付く。

一方、今はなくなった蒸留所の幻のモルト樽が、
別の蒸留所で1樽だけ見つかり、
オークションで100万ポンド(1億5,000万円!)の値がつく。
(先の本で書かれていた「交換する商習慣」によるのでしょう。)

あるきっかけでそのことを事前に知った主人公が、
同じく社会奉仕を命じられた仲間たちと、
「天使の分け前」をせしめる、というストーリー。

台湾やインドの話でなく舞台はスコットランドなので、
せしめた天使の分け前は1%くらい(びん4本分)。

1本は10万ポンドに換金、1本は恩人の手元に、そして、
樽は無事落札者の手に、というハッピーエンド。

いい映画でした。
(ドイツ語?と思うくらい聞き取りにくい英語も印象的。)

 

 

 ●▲■その4:「ウイスキーの科学」 古賀邦正著
   2009年11月初版発行 ブルーバックス 900円+税

著者は東海大学教授で、元サントリーの技術者。
3部構成で、1部・2部はウイスキーの歴史や製法の概論。

 ●アーリータイムスはバーボンなのに「Whisky」と表記
  ●軽井沢、宮城峡、御殿場、白州に蒸留所ができた年
  ●ウイスキーの醗酵に2種の酵母を混ぜる理由
  ●醗酵後半で活発になる乳酸菌はカゼイ株(ヤクルトと同じ種類)
  ●連続蒸留機は単式蒸留機の釜容量税を逃れるために考案された

など、初めて知りました。

第3部の「熟成の科学」はやや専門的だけれど、
蒸留酒の熟成の様々な要素を科学的に解説。
カプロン酸エチル、ベータ・ダマセノン、ポリフェノールなど、
清酒やワインでおなじみの術語がでてくるのは、
インスピレーションを刺激されます。

ウイスキーは(焼酎と違って)単式蒸留を2回おこなうので、
アルコール60%程度で貯蔵に入るのだけれど、
その60%が熟成に貢献している、というのも意外。
(エタノールと水を混ぜて最も体積が小さくなるのが60%程度)

「ウイスキーの美味しさについて説明し尽くすのは難しい。
  しかし、貯蔵中に起きる様々な現象を明らかにし、
  そのことと熟成との関わりを考えることで
  ウイスキーの「美徳」である香味が現れる不思議さに感嘆したい」

と、著者は記しています。
ウイスキーに興味ある方だけでなく、
酒類の熟成に興味ある方は是非読むべき一冊。

 

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 ●▲■おまけ:高峰が研究したウイスキー
            +麹でつくるカナダのウイスキー

書評ではないのですが、ウイスキーについて、、、

ほとんどの書籍で日本のウイスキー産業史は
1920年代の山崎蒸留所や竹鶴政孝の記述から始まりますが、
高峰譲吉がウイスキーに麹を使う研究のため渡米したのが1890年。
モルトでなく麹を使う特許を米国で出願したのはそれ以前です。

反対者に研究所を放火され実現こそしませんでしたが、
  日本で麹とモルトの比較試験を行わずして特許は出せなかった、
  ウイスキーの実際の製造工程を知らずして渡米などできなかった、
だろうと私は想像します。

大正時代の山崎蒸留所での商業生産開始以前に、
明治時代にもウイスキーへの取り組みがあったのだと思います。
高峰は1880年から3年間英国グラスゴー大学へ留学しているので、
その間にウイスキーについて相当勉強したのではないでしょうか。

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「高峰譲吉先生もびっくり」
と、ある方に教えていただいたのですが、
カナダのライ麦ウイスキーではモルトと麹を併用するほか、
麹だけでつくる(!)蒸留所もあるようです。

以下はDavin de Kergommeaux氏という、
カナディアンウイスキーの著作もある専門家のウェブサイトのコピー。

 ●most rye distillers add commercially produced enzymes
  to help quickly break the rye starches down into sugars...
  enzymes are made by culturing Rhizopus or Aspergillus fungi

 ●ほとんどのライ麦蒸留所で市販酵素を添加
  酵素はリゾープスまたはアスペルギルス菌(=麹菌)でつくられる

 ●Alberta Distillers, which uses 100% unmalted rye,
  has developed its own proprietary strain of Aspergillus fungus
  that specifically converts rye starches into sugars.

 ●アルバータ蒸留所ではまったく麦芽を使わず、
  独自のアスペルギルス菌でライ麦のデンプンを糖化(!)

日本だと「麦焼酎」に分類されそうです。

                   (text: 喜多常夫)

     <酒ブック紹介>は次回も続く予定。

 

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さて、情報紹介です。

●▲■ ご紹介情報 その1:ROOTSディビジョン  ●▲■

「ビデオライブラリー」:ビール・清酒・ワインの充填機・缶詰機など
http://www.kitasangyo.com/video-library/video-top.htm

半自動の卓上充填機から、
2000〜3000本/時間程度までの充填機器をラインナップ。

ハイガスボリュームのカウンタープレッシャ充填、
液体窒素滴下、
ボトル缶など、様々な対応の実績を持っています。

ビデオでご覧下さい。

 

●▲■ ご紹介情報 その2:ROOTSディビジョン  ●▲■

「eアカデミー」:酒類のN2-CO2-O2ガス関連技術情報
http://www.kitasangyo.com/e-Academy/Gas/Gas.htm

「シャンパーニュの製造技術」と
「発泡清酒・発泡リキュールの製造技術(びん内醗酵編)」
を、新しく掲載しています。

炭酸ガスのほか、窒素や酸素に関しても豊富な経験を持っています。
ビール、ワイン、清酒、リキュールなどのガス関連技術はお任せください。

 

 

●▲■ ご紹介情報 その3:K2ディビジョン  ●▲■

「パッケージ・デザイン・アーカイブ」
http://www.kitasangyo.com/Archive/Package-design-archive.html

当社が資材を納入させていただいた製品を中心に、
様々なパッケージ・デザイン事例を写真で記録しています。

商品企画にお役立てください。

 

 

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