●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.183 ●▲■
発行日:2013年8月9日(金)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com
------------------< 目 次 >------------------
●▲■ シングルモルトの聖地、アイラ島を訪問して
その2:<続・ウイスキーと焼酎の比較小論>
ウイスキーと焼酎の統計数字比較
単式蒸留・連続蒸留並存の方法論
(おまけ)スコッチとシャンパーニュ比較
(text = 喜多常夫)
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アイラの蒸留所事情を書かねばならないのですが、
前回に続き、もう少し、
「日本の焼酎とスコッチウイスキーの比較」を続けます。
●▲■ スコッチと焼酎の統計比較 ●▲■
スコッチウイスキー協会の統計と日本の国税庁統計で
「生産量(蒸留量)」を見てみましょう。
インターネットで見ることができる最新データは2011年です。
<スコッチ・ウイスキー>
●モルト(単式蒸留) : 44%(22万7,492KL)
■グレーン(連続蒸留): 56%(29万0,430KL)
合計:51万7,922KL
(2011暦年の生産実績、純アルコール換算)
<日本の焼酎>
●本格焼酎(単式蒸留):53%(47万0,762KL)
■甲類焼酎(連続蒸留):47%(41万0,316KL)
合計:88万1,078KL
(2011年度−2012年3月まで−の生産実績)
生産量でみると、スコッチ・焼酎とも単式・連続がほぼ半々。
それほど違わない構成比率ですね。
しかし、実際に売られる「販売量」は以下の3区分となり、
スコッチ・焼酎で比率は大きく異なります。
<スコッチ・ウイスキー>
●モルト(単式蒸留):15%(5万7,278KL)
▲ブレンデッド(連続・単式混和):83%(31万3,762KL)
■グレーン(連続蒸留):2%(8,131KL)
合計:37万9,137KL
(2011暦年の世界販売量のシェア、純アルコール換算)
<日本の焼酎>
●本格焼酎(単式蒸留):57%(50万7,400KL)
▲甲乙混和焼酎(連続・単式混和):8%(7万2,900KL)
■甲類焼酎(連続蒸留):35%(31万5,000KL)
合計:89万5,300KL
(2011暦年の日本販売量のシェア
注:甲乙混和の統計はないので業界誌の推定を引用し、
甲と乙から該当分を減算して記載)
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[分析1:市場サイズは同じ]
スコッチウイスキーの2011年の販売量は
純アルコール換算で37万9,137KL。
最終製品は40°くらいなので、約95万KL相当。
日本の2011年の焼酎市場は、日本製の89万5,300KLのほかに、
韓国やヴェトナムからの輸入6万3,200KLがあるので
合計すると約95万KL。
偶然ですが、
2011年の世界のスコッチウイスキーの市場サイズと
2011年の日本の焼酎(甲・乙・輸入を含む)の市場サイズは、
同じ約95万KLです!
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[分析2:製造量と販売量の比率]
スコッチの当年販売量/当年蒸留量=73%
スコッチの場合は、
モルトもグレーンも規則上で最低3年以上、
実際にはたぶん平均で5年以上前に蒸留したものを
「ブレンド」(グレーンとモルトの混合)や
「ヴァッティング」(モルトとモルトの混合)して、さらに
「マリッジ」(混合後の安定)期間を設けて壜詰めするので
当年蒸留量と当年販売量は直接の相関がありません。
2011年は73%ですが、この10年の統計を見ると
当年販売量/当年蒸留量の比率は、63〜83%。
蒸留(生産)量が常に2〜4割も多いのは、
「将来の増産のために原酒を積み増している」
という部分もあるのでしょうが、それに加えて、
「樽貯蔵中に[天使の分け前]で年2%減る。
5年だと10%、10年だと20%も減るから多めに原酒を造る」
、、、という解釈で、たぶん正しいのだと思います。
大変なビジネスですね。
焼酎の当年販売量/当年蒸留量=102%
一方、焼酎の場合は、
単式蒸留焼酎では貯蔵する分量がそれなりにありますが、
貯蔵してもスコッチほど長期間ではないことが多いし、
貯蔵なしで販売される量が大きいので、
当年蒸留量と当年販売量はほぼ同じです。
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[分析3:連続蒸留→ウイスキーは混和、焼酎はそのままが基本]
ウイスキーの場合、連続蒸留のグレーンは、
単独で販売されることは稀で、
基本的にはブレンド原料になります。
冒頭記載の統計数字のとおり販売量は、
「ブレンデッドは83%、グレーンは2%」です。
(グレーンの2%は、ほとんど小売でなくバルク販売。)
同じ連続蒸留の焼酎甲類の場合は、
単独で売られることが基本。
ただ近年、甲乙混和の原料に向けられる量が増えてきました。
冒頭記載の数字は注記のとおり「推定」ですが、
「甲類が35%程度、甲乙混和が8%程度」のシェア。
混和(5%以上で表示必要)というのは昔からあったと思うし、
表示しなくていい5%未満の混和も相当あるのだろうけれど、
「甲乙混和」という言葉が消費者に身近になったのは近年のこと。
乙類市場の伸張に対抗するために、
主に甲類陣営や大手資本が「甲乙混和」に力をいれた結果、
今日では、
酒販店やスーパーの棚に必ず並ぶアイテムになっています。
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[分析4:単式蒸留→モルト15% vs 本格57%]
「シングルモルト」は、
2000年頃の資料には「スコッチの7%程度」とかかれています。
前記のとおり2011年で「15%」ですから、
この10年ほどでシェアは倍増したことになります。
たぶん、20年前に比べると3〜4倍だと思います。
世界的なシングルモルトブームですが、
この10年でとくに「品質が変わったわけではない」と思います。
ウイスキー愛好家側が、
特徴のある味を求めるようになった、または、
シングルモルトの存在を知るようになったのだと思います。
ただそれでも、モルトウイスキーとして販売されるのは
「スコッチ全体の15%に過ぎない」、と言えます。
スコッチウイスキーの主流はあくまで「ブレンデッド」です。
ウイスキーのシングルモルトに相当する「本格焼酎」は、
戦前の「旧式焼酎」と呼ばれた時代を乗り越え、
戦後も甲類に押されながらも、僅かずつ伸び続けてきた。
90年代から増勢を強め、
2003年に甲類を追い越して、焼酎の主流は甲乙が逆転しました。
今では本格焼酎が「焼酎全体の57%」です。
(甲乙混和の登場でやや下がって57%)
記憶の中では昭和50〜60年代ころの乙類焼酎は確かに飲みにくかった。
その後、本格焼酎メーカー各社の努力で
「品質が大きく改善された」ことが
需要拡大の大きな理由だと思います。
●▲■ スコッチと焼酎の近世史比較 ●▲■
グレーンウイスキーは、
1830年代に、連続式蒸留器(パテントスチル)の発明で生まれた産物。
当時、モルトウイスキー業者から、
ポットスチルでないものはスコッチウイスキーではない、
との訴訟もあったそうです。
しかしながら味に厚みがないのが欠点で、
安価に大量生産できるけれど、当初はそれほど人気もなかった。
ところが1860年代にモルトとグレーンをブレンド(混合)したものが登場して
「適度な味わいと飲みやすさ」で人気となり、
ブレンド用原酒としてその存在意義が確立しました。
「パテントスチルをブレンドしないウイスキーは重すぎて、
かえって一般人の嗜好に適さず、
僅かに山間の労働者などがストレートを賛美するに止まること、
あたかもわが国の焼酎が、
明治の末年以来、次第に純酒精化の一途をたどって現在に至り、
僅かに田舎の地方などで味の強い焼酎が悦ばれるというのと
よく似た傾向である。」
(坂口謹一郎「世界の酒」1951年出版)
ウイスキーが世界の酒になったのは、
「グレーンとモルトを混ぜたブレンデッドが生まれたから故」、
といえます。
言葉をかえれば、
「グレーンがなかったら今日のスコッチはなかった」
といえるでしょう。
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グレーンウイスキーと同じく甲類焼酎は、
明治時代にヨーロッパから連続蒸留器が入ってきて生まれた産物。
実際に製品が出たのは明治43(1910)年のことだそうです。
グレーンと違って単独で(混和されることなく)販売され、
「新式焼酎」という名称で大人気となり、
従来からある単式蒸留焼酎にどんどん取って代わりました。
単式は「旧式焼酎」というありがたくない通称をもらったし、
税務区分でも「乙類」と名づけられてしまう。(乙は甲の次)
甲・乙の酒類統計が分かれたのは
だいぶ年数が経過した昭和24(1949)年だけれど、
その時点でシェアは甲:乙=15万KL:2万KL。
坂口謹一郎博士の文章のとおり
甲類が圧倒的に強い時代が半世紀近く続きましたが、
先述のとおり
2003年に甲類は乙類に追い越されます。
しかし、こうやって歴史を俯瞰すると、
「乙類が今の地位を築いたのはライバル甲類との競争があったから」
言葉をかえれば、
「甲類がなかったら今日の本格焼酎はなかった」
ともいえるのではないでしょうか。
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統計数字や歴史を見ると、
スコッチと焼酎は、ある部分では似た経過をたどりながら、
現在ではこれだけ異なる性格になっている、ということがわかります。
世界的に認知された酒類カテゴリーで、
「同じ名称のなかに、
単式蒸留と連続蒸留の2種が並存する蒸留酒」
は珍しい。
焼酎の国際化は今後必須ですが、そのためには、
スコッチのように世界の消費者の視点で見て納得できる
整合性のあるルールつくりが
重要だと思います。
(ウイスキーの話でなく、焼酎論になってしまってすいません。)
●▲■ 英・スコッチと仏・シャンパンの共通性 ●▲■
焼酎との比較は以上でおしまい。
以下、シャンパンとの比較も少々書いておきます。
<ピートの山、サトウダイコンの山>
アイラ島で
「ピートの野積みの山」
の絵葉書が売っていました。
その写真が、以前フランス・シャンパーニュのランス近郊でみた
「サトウダイコンの野積みの山」
とあまりにそっくりなので驚きました。
黒(ピート)かホワイトグレーか(サトウダイコン)の、
色の違いだけで、見た目は同じ。
「ピート(泥炭)」はモルトの加熱に使用して、
ウイスキーにスモーキーな香りをつけるために用います。
もともと大麦(ウイスキーの主原料)が採れないのアイラ島で、
ウイスキーが作られる大きな理由のひとつは、
独特のピート(ヨウ素臭のあるピート)が自由に採れるからです。
「サトウダイコン(甜菜)」から精製してつくるサトウは
一次醗酵の補糖や、二次醗酵の時に酵母とともに添加する、
シャンパンに欠かせない材料。
シャンパーニュ地方のサトウダイコン栽培面積は、
ブドウ栽培面積の3倍だそうです。
どちらもラベルには表示されない、
とても重要な原材料です。
なお、地名もなんとなく似ている(ように思います)。
Islayと書いて「イスレイ」ではなく「アイラ」と読む。
Reimsと書いて「レイムス」ではなく「ランス」と読む。
(ヒースロー空港のカウンターではイスレイ、って言っていましたが。)
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<隣国(とアメリカ)は大事なマーケット>
ところでこの英仏のプライドであるお酒の輸出先を見ると、
お互いに重要な依存関係にあることがわかります。
●英国のスコッチ:1位フランス、2位アメリカ
●フランスのシャンパーニュ:1位英国、2位アメリカ
(量による輸出先ランキング)
英国の一番の得意はフランス。
フランスの一番の得意は英国。
隣国どおしで支えあう構造ですね。
実は日韓でも同じようなことがあります。
以下のように互いの国が1位や2位に名前を連ねています。
■韓国のソジュ(焼酎):1位日本、2位アメリカ
■韓国のビール・麦芽発泡酒・第三のビール:1位日本、2位(未調査)
▲日本のビール:1位韓国、2台湾
▲日本の清酒:1位アメリカ、2位韓国
(量による輸出先ランキング)
隣国はとても大切なマーケットであることを再認識させられます。
ちなみに日本の焼酎の輸出では韓国は4位となります。
(1位中国、2位アメリカ、3位香港)
あと、アメリカが、たいていの酒で
(スコッチでも、シャンパンでも、サケでも、焼酎でも、韓国ソジュでも、
たぶん他の世界の多くの酒類でも)
常にランキング上位に出てくることには、つくづく感心します。
隣国と同様、アメリカ市場はとても大事です。
(次号に続く。
次こそ、必ずアイラウイスキーのことを書きます!)
(text = 喜多常夫)
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さて、情報紹介です。
●▲■ ご紹介情報 その1:KKディビジョン ●▲■
汎用デザインの一升びん王冠(最新版のed.11、全5ページ)
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/closure/hanyo_cap_1.8L_ed11.pdf
●▲■ ご紹介情報 その2:KKディビジョン ●▲■
汎用デザインのAZKキャップ(推奨キャッピング条件を含む、全2ページ)
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/closure/AZK_hanyo.pdf
●▲■ ご紹介情報 その3:KKディビジョン ●▲■
汎用デザインのPPキャップ(清酒・焼酎・泡盛)(ed.8、全1ページ)
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/closure/PP_hanyo_s_ed08.pdf
汎用デザインのPPキャップ(カラー無地)(ed.8、全2ページ)
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