●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.198 ●▲■
発行日:2013年9月10日(水)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com
------------------< 目 次 >------------------
<酒ブック紹介>
●▲■その1:「ヒゲのウヰスキー誕生す」
・・・引き継がれる100年のDNA
●▲■その2:「Sake Today(サケ・トゥデー)」
・・・「サケ・エバンジェリスト」
●▲■その3:「日本のワイナリーに行こう」2015年版
・・・写真やファクトシートのディテールに注目
(text = 喜多常夫)
ご紹介情報●1▲「タンサンロボ」など:ガス飲料の試作装置
ご紹介情報●2▲「ノマセンス2」:非接触の酸素濃度計
ご紹介情報●3▲「メヒーン・ビール充填機」:新型の2ヘッドも登場
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●▲■その1:[ウイスキー]本
「ヒゲのウヰスキー誕生す」
川又一英著 新潮文庫 2014年7月発刊 724円
今月末からNHKの朝の連続ドラマ「マッサン」
(ニッカウヰスキー創業者の竹鶴政孝のニックネーム)
が始まることもあって、
竹鶴やリサに関する興味深い新刊が続々とでているが、
この本は外せない一冊だと思う。
1982年に新潮社から刊行され、永らく絶版になっていた本。
近年はアサヒビール社(ニッカウヰスキーを傘下に持つ)が
非売品として復刻し講演会などで配布していたが、
今年7月に一般書籍として再発刊された。
1918年、大阪高等工業(後の大阪帝大)醸造科を出た竹鶴政孝が、
同じ大学の先輩、岩井喜一郎が役員を努める摂津酒造
(かつて大阪の住吉大社近くにあった、日本有数の洋酒メーカー。
寿屋の委託で赤玉ポートワインの製造も行っていた)に就職。
社命により24歳の若さで単身スコットランドに渡り、
大変な苦労・辛酸をなめながら
門外不出のスコッチウイスキーの技術を学ぶ。
生涯の伴侶となる女性リタと出会い、
帰国後は摂津酒造ならぬ寿屋(サントリー)の山崎蒸溜所、
さらには北海道余市に自分の会社、ニッカウヰスキーをつくり上げる、
というノンフィクション。
筆者の川又さん(故人)という人は
ロシア美術が専門という異色だが、よくここまで調べたと感心する。
竹鶴の没年(1979年)から時をおかない1982年の上梓故だろう。
ノンフィクションと思えない面白いストーリー展開だが、
人名も社名もすべて実名なので、近代産業史としても興味深い。
(NHKドラマの方はフィクション仕立てにしてあって、
摂津酒造等の名前は出てこないと聞いています。)
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これは本書の内容ではないのだが、
鹿児島の本坊酒造の元会長、本坊蔵吉さんは、
竹鶴が入社の時頼ったという岩井喜一郎の娘さんと結婚された。
そんな縁で本坊酒造が1960年に山梨でウイスキーを造り始めたときは
岩井喜一郎(当時、大阪帝大講師でもあった)が指導したそうで、
本坊酒造・マルスウイスキーのポットスチルの形は
竹鶴ノートのイラストと同じ形なのだそう。
(現在、そのポットスチルは本坊酒造信州工場にある。)
また、摂津酒造は1954年に宝酒造に買収されたのだけれど、
宝酒造も現在、ウイスキーを販売しているほか、
傘下にスコッチウイスキーの会社を擁するのはご存知のとおり。
日本ウイスキー黎明期に関わった人々や会社の「DNA」は
ほぼ100年を経た今も、
サントリーとニッカだけでなく他にも様々なところで、
日本のウイスキー産業に遺伝しているといえる。
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実は先月、北海道出張の合間にニッカ余市蒸溜所を見学したのだが、
「ポットスチルの『紙垂(しで)』」が意外であり印象的だった。
紙垂とは、神をまつるため、神棚などにつけるあの白い紙の飾り。
竹鶴の時代から欠かさず飾り、蒸留中も外さないということ。
(別に焦げたりはしないそうだ。)
清酒の蔵では神棚をまつるのは昔からあたりまえ。
出自が清酒蔵元である竹鶴政孝にとって、
「蒸留に神が宿る」という思いはごく自然だったのだろう。
なお余談だが、以前のメルマガでこんなことを書いたこともある。
1本20万円でも売れそうに思う。
スコットランドには100近い蒸留所があるけれど、
モルト原酒を交換する商習慣があって、
それをブレンドするから多様なスコッチウイスキーができるのだそう。
一方、日本の場合、サントリーとニッカが樽を交換するなどありえず、
各社がブレンドに必要な様々なモルト樽、それも
できる限り性格の違うモルトを確保している(せざるを得ない)そうで、
日本のウイスキー造りの難しさがよくわかります。
(独白:竹鶴政孝さん独立80年記念で、
[サントリー+ニッカ]のコラボ・ブレンド、あるいは
コラボ・ヴァッティングが実現すればドリームウイスキーです。)
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●▲■その2:[サケ]の英文雑誌
「Sake Today(サケ・トゥデー)」
編集ジョン・ゴントナー編集、2014年創刊、700円 +送料
今年、新しく創刊された英文のサケ雑誌。
インターネットで購入できる。
創刊号の内容は、
「サケの選び方・3つのルール」
「おつまみ」(すなわち、酒の肴の話)
「東京・サケ愛好家向けバー(居酒屋)ガイド」
「ノルウェーで清酒を造るジキュウンさん」
「ニューヨークのサケ専門店・SAKAYA」
など。A4版フルカラーで60ページほどの冊子。
年4回の定期刊行の予定で、ネットでは第2号近日発売とでている。
「ワイン」の雑誌・メディアは各国に山ほどあるが、
「サケ」の英文の定期刊行誌は珍しいと思うので、
英語文化圏に向けての発信として重要なマイルストーンになると思う。
日本語文化圏の我々にとっても、
ノルウェーやニューヨークのサケ事情は得難い情報で興味深い。
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広島の体育館で行われる新酒鑑評会の利き酒会で、
大勢の杜氏さんや清酒関係者の列に混じって、
真剣な顔つきで利き酒をするゴントナーさんを見かけたことがある。
「Sake Today」誌のゴントナーさんのプロファイルを見ると
Sake writer, educator and evangelist
とある。エヴァンジェリスト、というのは「伝道師」の意味。
(マンガのエヴァンゲリオンと同語源)
ゴントナーさん、まさに「サケ伝導師」にふさわしい活躍。
彼の継続的なサケ情報の発信は、
日本製プレミアム・サケの輸出拡大に大きく貢献していると思う。
また、アメリカ人によるマイクロサケ醸造所が続々と出来ているけれど、
(この1年ほどで3箇所増えて6箇所に)
これもゴントナーさんの影響によるところが大きいと聞く。
ゴントナーさんのさらなるエヴァンジェリストとしての活躍と、
「Sake Today」誌が発展することを期待するものです。
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なお「Sake Today」について、
英語不如意が一般的日本人の立場で希望を言えば、
和文併記であればもっとありがたい、と思う。
(日本の地ビールの英文情報誌で「Japan Beer Times」というのがあるが、
これは英文・和文併記なので、日本人定期購読者も多い。)
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●▲■その3:[ワイン]ムック誌
「日本のワイナリーに行こう」2015年版
石井もと子監修・著 イカロス出版 2,100円、2014年8月発行
2005年に第1号が出て以来、
2年に1回のペースで出版され、本書が第6号。
同じタイトルで10年も続くのは、
日本ワインに興味を持つ読者が多いこと
現地取材主義で構成される内容が充実して面白いから
2年単位で刻んでも日本ワインがどんどん変化しているから
の三位一体の賜物だろう。
掲載されるワイナリーが180以上というから、
日本全国のほとんどすべてのワイナリーを網羅。
写真を仔細に観察すれば、業界人にとって興味深い情報が満載である。
たとえば、、、
<新規醸造設備>に関しては:
北海道ワインの比重による自動選果装置
サントリー登美の丘の新型除梗機と選果設備
サントリー塩尻ワイナリーの選果設備
マンズワイン小諸の回転する500Lオークバット
マンズワイン勝沼の選果コンベア
ヴィラデストワイナリーの新しい壜詰め装置
<人>に関しては(実名は記さないけれど):
Aワインにいた彼が、独立してBワインを作った
Cワインに東大出のワインメーカー志望の女性が入った
Dワインオーナーに娘さんが2人いたとは知らなかった
E社にいたはずの彼は、F社の顧問になっている
G社の社長さんは、相変わらずお元気だ
H社には、将来開業希望の人がワイン研修に入った
などなど。
なお、写真に登場するほとんどの皆さんが、
笑顔である(微笑でなく、結構本気で笑っている)のがとてもいい。
みていて清清しい。
(書架に2007年版があったので取り出して比べてみると、
2015年版のほうが圧倒的に笑顔率・笑顔度が高くなっている。)
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一方、ムック誌では写真に目が行きがちだが、文章も興味深い。
目立たないが各ワイナリー毎に「Fact Sheet」が付いていて、
たとえば日本最大の栽培面積の「北海道ワイン」のところを見ると、
年間生産量 250万本
自社管理畑 447ha
契約栽培面積 400ha
ブドウ品種 白 MT KN WB Ch・・・・(略)
といった具合。
年間本数(720か750mlびん換算)を拾ってみるとこんな感じ。
「池田町・十勝ワイン」90万本
「高畠ワイナリー」70万本
「シャトーメルシャン」60万本
「岩の原葡萄園」40万本
「神戸ワイン」30万本
「都農ワイン」22万本
ブティックワイナリーならこんな具合。
「サッポロ勝沼」6万本
「酒井ワイナリー」3万本
「ヴィラデスト」1万7千本
「セイズファーム」1万7千本
なお、前号の2013年版までは「Fact Sheet」に
「国産ブドウ比率」というデータも記載されていたのだが、
今号からなくなったのはやや残念。
「国産ワイン」(バルク輸入の壜詰め含む)と
「日本ワイン」(国産ブドウで作る)とは、日本固有の難しい問題だ。
正確な公表統計はないようだが、
2013年のスティルワインについて個人的推測を書けば、
「国産ワイン」:9万2,000KL
うち「日本ワイン」:1万1,000KL(国産ワインの10%程度)
すなわち、国産ワインの90%は国外ブドウ由来という、
消費者目線、あるいは国際目線で理解しにくい状態。
日本のワイン産業は、国産ブドウ化を目指しながらも、
ビジネスとしてはバルク輸入に依存している実態も
認識せねばならない。
(大手ばかりでなく、中堅・中小ワイナリーの多くも依存)
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本書冒頭には、
「新しいワイナリー」(前号以降に出来たワイナリー)として
写真入りで掲載されているのがこんなにたくさんある。
(北海道)TAKIZAWA WINERY
(北海道)農楽蔵
(北海道)リタファーム &ワイナリー
(北海道)10R(トアール)ワイナリー
(北海道)ベリーベリーファーム &ワイナリー
(山形) ウッディファーム &ワイナリー
(福島) ふくしま農家の夢ワイン
(栃木) Cfa Backyard Winery
(山梨) ヴィンテージファーム
(山梨) KISVINワイナリー
(新潟) カンティーナ・ジーオセット
(岐阜) アズッカ エ アズッコ
(大阪) 島之内フジマル醸造所
(長崎) 五島ワイナリー
北海道の新規開業の多さには目を見張るものがあるし、
今後も余市や空知(そらち)で新規ワイナリーが計画されている。
また、巻頭特集では長野の信州ワインバレー構想
(玉村豊夫さんが推進協議会会長)について書かれている。
長野でも新規開業希望が多くいて、
新しいワイナリー立ち上げを支援するための
「アカデミープロジェクト」が紹介されている。
これからの2年間も日本ワインは大きく変化するはず。
「日本のワイナリーに行こう」2017年版も楽しみである。
(text: 喜多常夫)
<酒ブック紹介>は次回も続く予定。
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さて、情報紹介です。
●▲■ ご紹介情報 その1:eアカデミー ●▲■
「パイロットプラント」と「タンサンロボ」:ガス飲料の試作装置
http://www.kitasangyo.com/e-Academy/Gas/data/Gas_beverage_shisaku.pdf
先月末発行の情報誌「酒うつわ研究」に掲載した
ガス飲料の試作装置の紹介。
パワーポイントで16ページ。
小型(18リットル)から大型(150リットル)まで、
様々な試作装置を取り揃えています。
炭酸ガス入りの水は、酒類や飲料だけでなく、
洗髪、洗顔、入浴剤、窓拭き、など、
意外な用途展開も広まっています。
ガス添加の試作装置、関連装置ならお任せください。
●▲■ ご紹介情報 その2:ROOTSディビジョン ●▲■
「ノマセンス2」:非接触の酸素濃度計
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/brewing/NomaSens.pdf
ワインやビールの容器内酸素量を
「容器を開封せずに」測定する装置。
従来の「ノマセンス」から「ノマセンス2」に進化。
小型化して扱い易さ大幅向上。
測定した「HO(ヘッドスペース酸素量)」と「DO(溶存酸素量)」から、
自動的に「TPO(トータルパッケージ酸素量)」を算出するプログラム搭載。
価格も大幅値下げ。
先月、北海道大学で行われた日本ブドウ・ワイン学界で
実物展示をして好評いただきました。
●▲■ ご紹介情報 その3:ROOTSディビジョン ●▲■
「メヒーン・ビール充填機」:新型の2ヘッドも登場
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/machine/Meheen.pdf
メヒーンはアメリカのクラフトビールびん詰め機の定番。
年間100台程度を出荷しています。
「A」から20年の改良を重ねて、
現在はシリーズ「M」。
6ヘッドの「M6」が標準。
今年から新形の2ヘッド「M2」も登場。
来月の「東京パック」展示会の当社ブースで
「メヒーンM2」を展示予定です。
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http://www.kitasangyo.com/Archive/mlmg/BN_top.html
2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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2006年4月の以来、きた産業のトピックスを写真で収録。
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