●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.210 ●▲■
発行日:2015年7月27日(月)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com
------------------< 目 次 >------------------
●▲■ 「日本酒」の地理的表示について ●▲■
●■ 3つのハードル:「原産国」「%」「由来原料」
●■「ビール純粋令」→「日本酒純米令」?
●■「国名を地理的表示とする国に求められる事」
text = 喜多常夫
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「国産米を使って、日本国内で醸造した清酒」
現在議論されている「日本酒」の地理的表示の要件です。
外国製清酒と、日本製清酒の区別を明確にするのが主目的で、
アメリカ、韓国、中国、台湾などで造られる清酒・サケは、
単にSake、あるいはAmerican Sake、Korean Sake、、、
と呼んでもらう事を念頭においているのでしょう。
今回は、この「日本酒」に地理的表示についての私見を書きます。
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●▲■ 「原産国」の問題 ●▲■
現在、日本で消費される清酒の過半は、普通酒、本醸造酒で、
原料は、米、米麹のほか、醸造アルコールを使います。
吟醸酒も、純米でないものはアルコールを添加します。
米、米麹には、今や括弧書きで
「国産米」とか「XX県産」などの表示される場合が多いのですが、
醸造アルコールには原産国が書かれていません。
醸造アルコールのほとんどは、
ブラジルやアジアから輸入した粗留アルコールを
国内で再蒸留したものだと思います。
最終加工が日本とはいえ、
これを国産と書くのは無理があるように感じます。
(工業製品には付加価値ルールというのがあって、
輸入部品を国内で二次加工した場合、輸入原価よりも
国内加工の付加価値のほうが高ければ国産扱いとなるそうですが、
食品はやはり、作物が採れた国が原産のように思います。)
普通酒、本醸造酒を地理的呼称で「日本酒」とするには、
この部分にやや無理がある、または
理論武装が必要です。
原産国に関して、もうひとつ考えるべき事は、
●日本酒
●日本ワイン
は「国産原料」(国産米、国産ブドウ)を基準にする一方、
■日本ウイスキー
■日本の本格焼酎のうち、麦焼酎
■日本ビール
■日本の泡盛
などは「輸入原料」であっても、
国内外で立派に「日本の酒」として認知されていること。
日本製酒類全般についてのルールを考えるなら、
国産原料限定・輸入原料許容の「線引き」を行う理由の
理論武装も必要でしょう。
麦(焼酎、ウイスキーなど)が輸入でいいなら、
米(清酒)だって輸入でいいのでは、、、
とも言えます。
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●▲■ 「%」の問題 ●▲■
「本醸造酒」は、
「白米1トンにつき100%アルコールで120リットル以下」、
が規則ですが、別の言い方をすれば、
最終製品のアルコール度数の、
「25%くらいまで醸造アルコールの添加が許容される」、
といえるそうです。
国産米、国産米麹の本醸造酒であるなら、
仮に醸造アルコールの原産国が外国でも、アルコール度数で見て
「75%以上が国産品である」といえます。
海外のワイン産地では、
「70%(あるいは80%)がその産地の原料であることが、
産地名をラベルに表示できる条件」
というルールを設けている例がありますが、
その考え方でいけば、間違っていないといえます。
一方、「普通酒」の大多数は、ルールの限度一杯、
すなわち最終製品のアルコール度数の
「50%まで醸造用アルコール由来」だと思います。
国産米、国産米麹の普通酒であるなら、アルコール度数で見て
「50%以上が国産品」です。
多数決で物事を決めるのと同じで、
「過半の構成要素(国産)がその名称(日本酒)を決める」、
という考え方をすれば、これも許容範囲といえます。
ただ、たとえば、
泡盛が、今週末の8月1日から「古酒(クース)」の基準を
「3年以上貯蔵が50%以上」から
「3年以上貯蔵を100%」に
厳格化して実施するのは、参考とすべき事例だと思います。
「仕次ぎ」(シェリー酒のように減った分を次に古い酒で順次継ぎ足す)
という伝統手法がある中で、反対者もいる決断だったと思いますが、
長期的には泡盛の価値を高めると思います。
現代の消費者の期待値、あるいは、
将来の国際マーケットでの日本酒のことを考えると、
「70~80%が国産なら十分」
「50%以上が国産であればいい」
ではなく、
「100%表示通りであるべき」
(「国産」を日本酒の要件にするなら「100%国産」にすべき)
だと思います。
すなわち、添加アルコールを原料として記載している以上、
普通酒の「50%国産基準」はもちろん、
本醸造酒の「75%国産基準」も、
国産と謳うのはなかなか難しいのではないかと感じます。
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●▲■ 「由来原料」の問題 ●▲■
世界で、輸入品の粗留アルコールを精留して酒類原料に使っているのは、
▲韓国(ジンロや鏡月などの「ソジュ(韓国焼酎)」)
▲日本(「清酒」「甲類焼酎」など)
の2国だと思います。
(中米のラム酒の実態はよく知りませんが、
輸入原料を使っていても、たぶん蒸留前の廃糖蜜だと思います。)
少なくとも「醸造酒」では日本の清酒だけだと思います。
(韓国のソジュと日本の甲類焼酎は「蒸留酒」。
なお日本では、清酒と甲類以外に、たぶん、
スピリッツ、リキュール、洋酒、みりん、などにも使われる。)
「醸造酒」でアルコールを添加しているのは、
■日本の「清酒」(「本醸造」「普通酒」のほか純米でない「吟醸」も)
■スペインの「シェリー」(酒精強化ワイン)
■ポルトガルの「ポート」、「マデイラ」(酒精強化ワイン)
■イタリアの「マルサラ」(酒精強化ワイン)
などですが、世界の醸造酒の中では少数派といえます。
酒精強化ワイン各種のアルコール添加度合いは、
正確には知りませんが、せいぜい25%止まりだと思います。
その意味では、
本醸造酒レベル(25%くらいまで)は、
世界基準で理解してもらいやすいでしょう。
(一方、普通酒の50%は、理解が得にくいと思います。
昔の「三増酒‐67%添加」は論外。廃止になって良かった。)
かつて、酒精強化ワインは、世界中で作られていました。
戦前は、
ナパバレー(アメリカ)のワインも、
バロッサバレー(オーストラリア)のワインも、
酒精強化が主流だったと聞いています。
この時代は、安価に調達できる
トウモロコシ由来などのアルコールも使っていたと思います。
スペイン、ポルトガル、イタリアの酒精強化ワインも
かつて、非ブドウ由来のアルコールを添加していた時代があったようです。
たとえば、
「マデイラ」(酒の名前であり、大西洋上に浮かぶ常春の島の名前でもある)は
島でサトウキビが採れるので、比較的近年(といっても1980年代?)までは
サトウキビ由来のアルコールを添加していたこともあったそうですが、
ある時期からすべてブドウ由来アルコール(ブランデー)に切り替えています。
マデイラだけでなく、
シェリーも、ポートも、マルサラも、
酒精強化ワインに添加するアルコールは、現在すべてブドウ由来です。
「ワインはブドウで出来ている」
という消費者の認識と合致します。
「アルコールを添加しても醸造酒である」とは、
世界の常識では認知しにくいなかで、
酒精強化ワインは自主的にルールを厳しくする事で、
認知を勝ち取ってきたともいえるでしょう。
「SAKEは、米から造る醸造酒」です。
酒精強化ワインがブドウ由来アルコールを使っているように、
清酒(日本酒)も、もしアルコールを使うなら、
米由来のアルコールを使うのが、
長期戦略、あるいは世界戦略では、
有効であると思います。
詳しくは知らないのですが、
過去に清酒の添加用として
米由来アルコールが出回った時期もあったように聞きますが、
酒質のせいか、コストのせいか、今ではあまり聞きません。
一方、柱焼酎の伝統も踏まえ、また、米由来も考慮して、
最近、米の本格焼酎を添加されている清酒蔵元がありますが、
これはあるべき方向性の一つだと共感します。
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関連した事例でご紹介するのですが、
びん内二次醗酵のスパークリングワインには二次醗酵のための糖分を添加します。
シャンパン、カヴァ、スプマンテなどのラベルには
「糖分」は書かれていませんが(そもそも「ぶどう」も書いていない)、
将来、ラベル表示の厳格化で、原材料すべてを記載する可能性があるそうです。
シャンパーニュで添加している糖分は、
地元で採れる甜菜(サトウ大根)由来が主流です。
現地でラベル表示厳格化の流れについて聞くと、
厳格になっても多くは「甜菜から変わる事はない」だろうということでした。
(甜菜が伝統ですから、知られてもおかしくないという姿勢。
「国産米信奉」がある中で、沖縄の泡盛の多くが
「タイ米原料の伝統」を守っているように。)
しかし、ヨーロッパの一部の大手スパークリング生産者は、
ブドウ由来の糖分をテストしているところがあるのは事実です。
ラベル表示厳格化に備えて、
「ブドウ由来糖分に切り替える」ことを考えているようです。
(原材料は全てブドウである事が消費者に理解してもらいやすいという判断。
「国産米信奉」がある中で、
ラベル表示強化に伴って、
九州の本格焼酎の多くが麹米をタイ米から
「国産米に切り替えた」のと似ていると思います。)
姿勢や判断はそれぞれで、
何が正しいのかを決めるのは難しいことです。
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●▲■「ビール純粋令」→「日本酒純米令」? ●▲■
「ビールは麦芽、ホップ、水、酵母のみでつくるべし」
ドイツの「ビール純粋法」は、
来年で施行500年(!)となる古い法律です。
世界のビール市場が、M&Aで大手数社に寡占されていく構図の中で
ドイツビールが独自の地位と付加価値を保っているのは
厳しいルールがあったればこそだと思います。
「日本酒は純米酒にかぎるべし」
というようなルールをつくることは
今の日本では非現実的ですが、
せめて方向は、できるだけピュアな原料にしていくのが、
付加価値高い酒類として
世界市場で生き残っていく要件ではないかと考えます。
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67%添加(三増酒)をやめるのに何十年もかかったのだから、
とても無理だとあきらめずに、
日本酒が世界に飛躍するこのチャンスを逸さないように、
この数年のうちに、せめて、
■50%添加(2倍増量)許容の普通酒をやめて、
■25%限度の本醸造規格以上にして、
■米(できれば国産米)由来の添加アルコールをえらべるようにする
ような状態になればいいなと思います。
そして、
■合成清酒は計画的に縮小、または名称から清酒をはずす
ことが必要と考えます。
長くなりますが、合成清酒の事を次に書きます。
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●▲■ 国名を地理的表示とする国に求められる事 ●▲■
フランスやイタリアは、
「ボルドー」「シャンパーニュ」
「バローロ」「キアンティ」
などの地域名を地理的に保護していても
「フレンチ・ワイン」
「イタリアン・ワイン」
など国名を冠したものは地理的保護対象とはしていない(と思います)。
また、それを保護する必要もあまりないように思います。
一方、イギリスは、
「スコッチ・ウイスキー」
を保護しています。
「日本酒」を地理的表示とするのなら、
(具体的にはNihonshuではなく、Japanese Sakeになるのだと思いますが)
イギリスの事例に近いと思います。
ただ、日本と英国では違いがあります。
英国には「合成ウイスキー」はなくて、
日本には「合成清酒」があることです。
合成清酒(国税庁の英語名Sake compound)は輸出も行われています。
平成25FY(2013年4月~14年3月)の課税数量は:
清酒: 587,411kl (326万石)
合成清酒: 37,774kl (21万石)
同じ期間の輸出免税数量は:
清酒: 16,600kl(9万2,200石)
合成清酒: 390kl (2,200石)
ブレンデッドもあればモルトもあるけれど、
「スコットランドで造るウイスキーはすべてスコッチウイスキー」で、
「英国からの輸出はすべてスコッチウイスキー」です。
彼らは正面きって、
インド製など一部の擬似ウイスキーについて
ウイスキーの名をかたるべからず、と批判できます。
一方、日本では、
清酒もあれば合成清酒も造られるので、
「日本製のサケはすべてJapanese sakeというわけではない」
「日本からの輸出は日本酒のほか合成清酒もある」
という状態です。
日本は正面きって、
ブラジルや中国の一部で造られる合成サケを、
イミテーションのサケと批判できる立場にありません。
(日本の合成清酒と同じようなものですから)
国名を地理的表示とする国には、道義的に、
その国から輸出するものはすべて地理的表示に適合する
ことが求められるように思います。
合成清酒やアルコール添加技術は
背景があって開発された優れた技術ですが、
世界マーケットで「日本酒」をアピールするのなら、
世界マーケット(主に欧米)の常識にあわせて変えるべきだと思います。
今がそのタイミングでしょう。
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以上、反対意見も多いと思いますが、
素人の視線で私見を書きました。
日本酒・清酒のことを書きましたが、
日本のアルコール飲料は、
ワインも、焼酎も、ビールも、、、
世界基準で見ると異端の要素を含んでいるように思います。
「クールジャパンをよくよく見れば、
実はクールにあらざるなりけり」
などと海外で言われないように、
日本の酒類を変えていく必要があると思います。
text = 喜多常夫
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さて、情報紹介です。
資料を改定しました。
お酒の新型キャップ、3種です。
清酒、本格焼酎、泡盛の王冠・キャップはお任せください。
●▲■ ご紹介情報 その1:KKディビジョン ●▲■
サケびん口(一升壜口)対応の「AZK」キャップ
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/closure/AZK.pdf
●▲■ ご紹介情報 その2:KKディビジョン ●▲■
サケびん口(一升壜口)対応の「JST」キャップ
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/closure/JST.pdf
●▲■ ご紹介情報 その3:KKディビジョン ●▲■
30スタンダードびん口対応の「スマートスクリュー」
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/closure/smart_screw.pdf
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