●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.211 ●▲■
発行日:2015年8月26日(水)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com
------------------< 目 次 >------------------
●▲■ クラフトビールの20年(その1) ●▲■
●■ クラフト by 大手企業 in 日本・アメリカ・オーストラリア
●■ 「中国の時代」→「再編M&Aの時代」→「クラフトの時代」
●■ クラフト in チェコ(日本とほぼ同じ20年)
text = 喜多常夫
ご紹介情報●1▲ ラボ用・小規模生産用のビール缶詰機「Beer Radix」
ご紹介情報●2▲ ガス圧測定器の世界定番「Zahm & Nagel」
ご紹介情報●3▲ ビール樽ディスペンス用の「炭酸・窒素混合機」
●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■
2015年は、
小規模ビール醸造が解禁になって20年の節目。
昨年くらいまで、
「地ビール」という呼び方が一般的だったが、昨今急速に
「クラフトビール」という名称が浸透してきた。
その理由の一つには、2015年から本格的に始まった
大手(キリン、アサヒ、サッポロ、サントリー)の
「クラフト」参入がある。
彼ら大手は流石に「地」ビールと言えないし、
目指す方向も従来の地ビールとは違う。
■キリン
「スプリングバレーブルワリー」を代官山と横浜(横浜工場隣接)に開業。
代官山は「透明(!)の醸造釜とタンク」を備える。
また「SPRING VALLEY BREWERY 496」「Copeland」などの製品を直販サイトで販売。
330mlびんで、12本で4,665円(クール配送、税込)。
以上とは別に、地ビール最大手「ヤッホーブルーイング」に33.4%出資。
■アサヒ
「クラフトマンシップ」シリーズとして、
ドライポーター、ドライペールエールなどをコンビニ限定で順次販売中。
350ml缶で249円(オープン価格だが私が購入した事例、税込)。
またアサヒ本社隣に「クラフトマンシップブルワリー東京」を開業。
■サッポロ
「Craft Label 柑橘香るペールエール」を発売。
350ml缶で、直販サイト価格は24本缶で6,912円(税込)
■サントリー
「クラフトセレクト」シリーズとして、
ブラウンエール、ペールエール、メルツェンなどを順次発売中
350ml缶で、直販サイト価格は12缶で3,084円(税込)
4社の中でも、クラフトの取り組み方や方向性、
それに、設定価格も、
各社各様で相当違うのが判る。
キリンやサッポロは、
過去にも何箇所かの小規模醸造所を運営していたし、
従来からクラフトに近い限定商品・高価格商品を持っていたが、
2015年から4社いっせいに「クラフト」の名称を前面に出してきた格好。
大手のクラフト参入の背景には、
二極化(「第三のビール」と「プレミアム」)による
プレミアムセグメント(プレモル、ヱビス、グランドキリン、ドライプレミアムなど)
の市場顕在化・拡大があって、
さらに上の高付加価値商品を目指した結果、
クラフトがあった、という構図がある。
また、日本独特の事情、
「1社がやると残り3社もやる」
という業界体質(または、性-さが?)も大きい。
(過去、0.00%、プレミアム、プリン体ゼロ、特保などがその例)
●▲■ クラフトby 大手企業 in アメリカ
さて、日本の大手のクラフト参入のお手本は海外にある。
世界シェアトップのAB InBev(ブランドはバドワイザーなど)は、
量的成長の見込めないアメリカ市場での対応として、
クラフトを買収してポートフォリオに加える経営戦略をとっている。
とても不思議だが、
今、世界中ほとんどの地域でクラフトビールが成長している。
なかでもアメリカはとびぬけていて、
2014年の全ビール消費に占めるクラフトは
量で10%越えのシェア、
金額で20%近いシェアを持つにいたったという。
メジャーブランドの
バドワイザーのシェアは必然的に落ちていくので、
それをクラフトで補う戦略である。
AB InBev のクラフトのポートフォリオは今やこんな具合。
●シカゴのGoose Island(2011年買収)
●ニューヨークのBlue Point(2014年買収)
●オレゴンの10 Barrel(2014年買収)
●シアトルのElysian(2015年買収)
アメリカのクラフトビールを知る人にはおなじみの有名ブランドが、
いまやBud(バドワイザー)のブランドである。
主要州でカリフォルニアだけが残っているので、
どこが買収されるかが業界で憶測される状態。
- - - - - - - - - - - - - -
世界の大手ビール企業の経営戦略を俯瞰すると
■「中国市場取り合いの時代」
(1980年代~2010年頃)
中国系企業台頭や、市場伸び鈍化(2014年はついにマイナス)でほぼ終了
中国系中規模以下ブランドの整理のフェーズに入るのだろう
■「再編ドミノ:M&A合戦の時代」
(2002年のSABミラー誕生~2012年頃)
2012年のメキシコ1位のモデロ買収で、もはや大型の買収対象がなくなった
ただ、中規模以下のM&Aは今後も続く
■「クラフトをポートフォリオに加える時代」
(2011年のグースアイランド買収~現在進行中)
個人的には2020年ころまでは続くのではないかと予測
という変遷。
「中国」や「再編M&A」の次は
「東南アジアの時代」「アフリカの時代」だと思っていたが、
「クラフトの時代」が来るとは!
優秀なMBA経営者でも、
クラフトのこんな展開は予測できなかったのではないか。
- - - - - - - - - - - - - -
■解説1:AB InBev=アンハイザーブッシュ・インベヴ
ベルギーのインベヴが2008年にアンハイザーブッシュを買収して誕生した、
世界最大のビール会社。
シェアは、世界で25%くらい、アメリカで50%弱。
韓国トップ(2強の一方)のOBビールも、2014年に買い戻した。
アニュアルレポートによればビール生産量は4,590万KL(2014年12月期)で、
日本のビール消費量(550万KLくらい)の8倍以上という巨大さ。
世界最大のビール消費国、中国の2014年消費量が4,940万KLだから、
1社で中国分に近い生産量。
因みに、世界2位のSABミラーは3,240万KL(2015年3月期)。
キリンやアサヒは、日本での生産量がともに200万KLくらい、
傘下の海外ビールを入れても数百万KLである。
日本企業にとって世界上位の背は余りにも遠い。
■解説2:アメリカのクラフトビール市場
2014年のアメリカのクラフトの生産量は
2,216万バレル=259万KLで前年比18%増加。
米国の全ビール販売にしめるシェアは
数量で11%(2013年の7.8%から初の2ケタ乗せ)
金額(小売価格ベース)で19.3%とのこと。
クラフトビール醸造所の数は3,464箇所。
成功者として有名なボストンビールカンパニーは、
今や全米5位のビールメーカーだそうである。
(以上、アメリカのBrewers Associationによる。
シェアの数字は、個人的にはやや過大さを感じるが。)
なお、日本の地ビールの2014年の統計はないが、
比較のために推定値を書くと、
生産量は2.5万KLくらい(大手4社のクラフトを除く)、
量的シェアは0.5%くらい。
醸造所数は220か所程度。
(国税庁の「地ビール等製造業の概況・平成25年度」では、
ビール1万8,568+発泡酒2,496=合計2万1,064KL。
調査対象者はビール166者、発泡酒119者)
●▲■ クラフトby 大手企業 in オーストラリア
オーストラリアでも、クラフトは重要な位置づけになっている。
オーストラリアのビール産業は2強状態で、
ライオン社(2009年から日本のキリン傘下)
CUB社(昔のFoster、2011年からSABミラー傘下)
の2社で90%以上のシェア。
数年前までCUBがシェア50%越えでトップだったが、
近年、ライオンがトップシェアとなった。
シェア逆転は、ライオンが、
クラフトをポートフォリオに加えたことが大きいそうだ。
ライオンのクラフトのポートフォリオはこんなブランド。
●James Squire(1998年傘下)
●Kosciuszko(2009年傘下)
●Little Creatures(2012年買収)
●その他
トップシェア獲得の要素になるとは、
クラフトのポテンシャルはオーストラリアでも大きい。
●▲■ クラフトby クラフト in 香港・シンガポール
香港にいって初めて知ったのだが、
香港のクラフトビール「Hong Kong Beer」は
シンガポールの人気クラフトビール「Brewerkz」が
2013年に買収したそうだ。
「大手がクラフトを取り込む」だけではなく、
「クラフトがクラフトを取り込む」というパターンも、
今後はありそうに思う。
クラフトをクラフトとして発展させるには、
大手の買収よりむしろこの方が自然に感じる。
●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■
●▲■ クラフトin チェコ
話は飛ぶが、チェコである。
チェコは、
「世界で一番、一人当たりのビール消費量が多い国」。
(年々減少とはいえ、万年圧倒的1位。
2013年は147.1L/人・年で、2位以下を大きく引き離す。
ドイツの約1.4倍、アメリカやベルギーの約2倍である。
:キリンビールの2014年の調査)
余談ながら、チェコは、
「世界で一番、無宗教者の割合が多い国」でもあるそうだ。
(「無宗教人口」はチェコが76%で世界1位。
以下、北朝鮮71%、エストニア59%、日本57%。
:アメリカのピューリサーチの2012年の調査)
2014年にチェコに行く機会があって、
クラフトビールを何社か見た。
チェコのプラハには
どの観光ガイドにも必ず載っている名物ブルワリーレストラン、
「ウフレク」がある。
500年以上生き抜いてきた老舗クラフトビール醸造所である。
ウフレクのビールはとてもストイックで、
「自家製の1種類のみ、容量0.4Lのみ、59CZK(=約300円)」、
すなわちバリエーションはまったくなし。
驚くべし、ブルーマスターは40年以上同じ人が勤めている(2014年現在)。
共産政権下、および共産政権崩壊の1989年からしばらくの間は、
チェコのクラフトビール醸造所は、このウフレク1軒だった。
- - - - - - - - - - - - - -
それが、いまや、
プラハ市内にはクラフトビール醸造所が数箇所あって、
観光客向け醸造所ツアーがあるし、
チェコ全体では
250軒以上のクラフトビール醸造所があるそう。
日本の地ビールの数、220社ほど(2015年3月現在)
と似た数字である。
チェコとスロヴァキアが分離したのは1993年なので、
クラフトビール醸造所増加の歴史はそれ以降。
つまり、年数も日本の地ビールの歴史(1995年解禁)とほぼ同じ。
チェコで巡った何軒かのクラフトビールでは、
ファミリービジネスでやっている醸造所、
たった1人で休みも惜しんで醸造しているところ、
などの小規模事業者たちの姿を見て、
パッション(情熱)とアーネストネス(まじめさ、ひたむき)を感じた。
20年前のアメリカのクラフトビールの雰囲気、あるいは、
古き良きクラフトビールの雰囲気、あるいは、
クラフトの原点、を見た思いだった。
写真資料は、アーカイブ資料をご覧ください。
チェコのクラフトは6・7ページに掲載。
「ドイツとチェコのビール醸造所訪問記」
http://www.kitasangyo.com/Archive/Data/Beer_DE&CZ_2014.pdf
- - - - - - - - - - - - - -
チェコにはいくつかの大きなビールメーカーがある。
最大手はご存知、世界に冠たる
「ピルスナー・ウルケル」社(チェコ語で「プルゼニスキ・プラズドゥロイ」)。
これは、現在「SABミラー」(世界2位)の傘下。
アサヒビールがヨーロッパ向けスーパードライを委託生産している
「スタロプラーメン」社も大きい。
こちらは「モルソンクアーズ」(世界6位)の傘下。
世界1位の「AB InBev」が2014年に、
「ピヴォバル・サムソン」社を買収したことも業界の話題になった。
この会社はブディヨビツェという地域にあり、
この地名のドイツ語読みが、
「バドワイザー」(AB InBevのメインブランド)の語源。
ピルスナービールの故郷、チェコも、
いまや世界大手の競争の中に組み込まれている。
何年か後にはチェコのクラフトも、
大手ビールのポートフォリオになる時代が来るのだろうか。。。
(「クラフトビールの20年」は、次号に続く)
text = 喜多常夫
●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■
●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■
さて、情報紹介です。
●▲■ ご紹介情報 その1:ROOTSディビジョン ●▲■
ラボ用・小規模生産用のビール缶詰機「Beer Radix」
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/machine/Beer_RadixIV_J.pdf
日本の地ビールと大手ビール研究所のほか、、
「ミラー・クアーズ」の研究所(米国のミルウォーキー)でもご利用いただいています。
ラボ用で液体窒素滴下装置搭載のビール缶詰機「BRX」
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/machine/BRX_jpn_.pdf
日本の大手ビールの研究所のほか、
「ギネス」の研究所(アイルランドのダブリン)でもご利用いただいています。
●▲■ ご紹介情報 その2:ROOTSディビジョン ●▲■
BCOJビール分析法にも記載されるガス圧測定器の世界定番、
「Zahm & Nagelの器具」をご紹介しています。
穿孔式の炭酸ガスボリュームやエア量の測定器
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/gas/Zahm&Nagel-Airtester.pdf
ボリュームメーター
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/gas/zn_vm_new_thermo.pdf
ピュアリティーテスター
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/gas/zn_purity_tester.pdf
●▲■ ご紹介情報 その3:ROOTSディビジョン ●▲■
ビール樽ディスペンス用の「炭酸・窒素混合機」。
イギリスのBSLガステクノロジー社の製品をご紹介しています。
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/gas/g_blender_analyzer_ed3.pdf
__________________________
●▲■バックナンバー閲覧可能!「メルマガ・クロニクル」
http://www.kitasangyo.com/Archive/mlmg/BN_top.html
2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
__________________________
●▲■ブログもやってます!「スローなブログ」
http://blog.goo.ne.jp/kita-slow_blog/
2006年4月の以来、きた産業のトピックスを写真で収録。
__________________________
●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■
紹介商品に関するお問い合わせは、営業部まで。
西日本担当:大阪営業部
tel.06-6731-0251 mailto:osaka@kitasangyo.com
東日本担当:東京営業部
tel.03-3851-5191 mailto:tokyo@kitasangyo.com
__________________________
●本メールがうまく表示されない場合 ●登録内容の変更や、
配信停止希望の場合 ●メルマガに関するご意見・ご要望など、
は、メールアドレス:mailto:info@kitasangyo.com まで 。
__________________________
このメルマガは、「ご登録いただいたお客様」、
及び「当社営業担当で登録させていただいたお客様」に、
お届けするサービスです。
ご要望があってもお届けできない場合がございます。
発信専用アドレスから送付しております。このアドレスに返信
いただきましても回答できませんので、予めご了承ください。
__________________________
記載された記事を許可なく転送・複製・転載することを禁じます。
Copyright 2002-2015. Kita Sangyo Co., Ltd. All rights reserved.
きた産業株式会社 ニューズレター担当:企画・開発グループ
__________________________