●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.219 ●▲■
発行日:2016年7月13日(水)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com
------------------< 目 次 >------------------
<酒ブック紹介>
●▲■その1:「琥珀の夢」小説、鳥井信治郎と末裔
・・・7月1日から日経新聞連載中
●▲■その2:「美酒一代」鳥井信治郎伝
・・・初版昭和41年、再刊昭和61年、平成27年5刷
●▲■その3:「キリンビール高知支店の奇跡」
・・・V字回復の本、その1
●▲■その4:「よなよなエールがお世話になります」
・・・V字回復の本、その2
(text = 喜多常夫)
ご紹介情報●1▲ 缶ビール充填機「G-Tron 12-3C」
ご紹介情報●2▲ 卓上のびんビール・缶ビール充填機「BF」シリーズ
ご紹介情報●3▲ びんビール充填機「メヒーン、6ヘッド」
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●▲■その1:「琥珀の夢」―小説、鳥井信治郎と末裔 ●▲■
(日経新聞で連載中、伊集院静著)
2016年7月1日から日経朝刊で連載がはじまった、
サントリー創業者の実名小説。
明治40年、舶来自転車専門店の丁稚小僧が、
当時とびきりの高級舶来自転車「ピアス号」を、
寿屋洋酒店(現、サントリー)に届けに行くところからはじまる。
店で洋酒の壜に見とれている丁稚は、
自転車の持ち主、鳥井信治郎に見とがめられる。
「坊(ぼん)は今、なにを見てたんや」
「す、すんまへん、
こ、この棚の葡萄酒があんまり綺麗なんで、
つい見惚れてもうて」
「坊には見どころがる。
(売り物である)この葡萄酒が綺麗に見えると思えることは、
商いの肝心のひとつや」
そういって信次郎は少年の頭をやさしくなでた。
この少年が実は、経営の神様といわれる松下幸之助。
サントリー社が鳥井信治郎没後20年で銅像を建てたとき、
披露の案内を受け取った松下幸之助はすでに87歳で、
体調を崩し気味だったが押して出席、
74年前、丁稚だったとき自転車を届けに行って
鳥井信治郎から「坊、気張るんやで」と励まされたことを語る。
これに感激した佐治敬三(サントリー2代目社長)は、
後の幸之助の葬儀では、自ら棺を抱えた。
、、、というのがこれまでの話。イントロ部分。
鳥井信治郎と松下幸之助、そして
江崎グリコの江崎利一、中山製鋼の中山悦治らは、
「文無会(もんなしかい)」と称して親しくしていた
(みな大阪で、一文無しから事業を成功させた創業者)
というのは読んだことがある(次に紹介する本による)が、
幸之助が丁稚時代、信治郎に出会っていたというのは、
聞いたことがない。
今後も意外な展開が楽しみである。
「琥珀」というタイトルからしてウイスキーが中心の話だろう。
なお、作者の伊集院静さんは、
夏目雅子が亡くなるときの夫で、今は、
篠ひろ子の夫。
●▲■その2:「美酒一代」鳥井信治郎伝 ●▲■
(新潮文庫、杉森久英著、480円+税)
前掲の「琥珀の夢」と同じく、鳥井信治郎の実名小説。
新しい本ではない。
初版が昭和41年で、20年後の昭和61年に再刊、
そして私が手にしているのは平成27年の第5刷。
これだけのロングセラーであるのは、
鳥井信治郎の魅力のなせる業。
作者の杉森久英は、今はあまり知られないが、
直木賞受賞作もある、実名小説を得意とする作家。
初版の昭和41年は信治郎と交友のある人たちが生きていた時代で、
多くの証言を基にしているので、ほぼ事実に近い小説と思われる。
前半がワイン編、後半がウイスキー編。
様々なエピソードがちりばめられている。
当時、芸者たちは月のさわり(生理)を隠語で
「日の丸」とよんだが、
信治郎は姐さん株を集めて祝儀をはずみ、以後は
「赤玉」と呼ぶよう頼んだ。
この隠語はたちまち、大阪の南や北にひろまった。
これは、赤玉ポートワインの売り込みのためであった。
そのほか、
■「オラガビール」事業の売却は大儲けだったこと
(サントリービールの前に、寿屋時代にもビールを造っていた!)
■戦争中は芋を原料にブタノール(航空燃料)を造る工場を、
大分の臼杵に作ったこと
■早世した信治郎の長男の奥さんは、
阪急電鉄創業者の小林一三の娘だったこと
■本格ウイスキーの前に作っていた「ヘルメスウイスキー」は
グレーンアルコールに香料を入れたものだったこと
■それを炭酸で割った缶詰「ウイスタン」を出したが、
まったく失敗だったこと
■酒類だけでなく「スモカ」(愛煙家用歯磨き)、「レチラップ」(紅茶)、
「トリスソース」、「トリスカレー」など、さまざま作ったこと
、、、など、興味深いエピソードが数多い。
再刊では「美酒二代」と称して
佐治敬三(サントリー二代目)と杉森久英の対談がついているがこれも興味深い。
●サントリーがビール参入の時、
アサヒビール社長、山本為三郎に助けられたこと
●その時の指定保証人が東洋製罐創業者の高崎達之助だったこと
●キリンのシェアは45%だったけれど
サントリー参入の影響で(?)60%にまでなったのでは
●山本為三郎はサッポロとアサヒの合併を二度意図したこと
など、結構驚かされる話がサラッと書かれている。
サッポロとアサヒは、元は同じ「大日本麦酒」だったが、
戦後、財閥解体にともなう集中排除法で別れた。
余談ながら、、、
東洋製罐(日本のパッケージ業界最大手)は今年、
ホッカンホールディングス(元の北海製罐)と経営統合する。
この2社も元は同じ会社で、集中排除法で別れた会社。
国内外の厳しい市場変化への対応のために、
これからはそんな意外な展開がある時代だろう。
(個人的な覚書)
「明治28年度全国酒造家造石高見立」という、
相撲の東西番付表のような蔵元一覧表を持っているのだが、
その東之方の最上段(石数規模が大きいところ)に、
辰馬喜十郎(「白鹿」)、嘉納治郎右衛門(「菊正宗」)、
西宮企業(「日本盛」)、小西新右衛門(「白雪」)などに混じって
鳥井合名会社(「春駒」、大阪・堺の鳥井駒吉)という、
今はない清酒会社が書かれている。
鳥井信治郎は、大阪の両替商・米穀商の鳥井忠兵衛の次男だが、
鳥井合名会社・鳥井駒吉の血縁だったのか、無関係だったのか、、、
以前から疑問に思っている。
もし血縁関係があったのなら、
信治郎が酒の商売を始めたきっかけのひとつではないか、と。
●▲■その3:「キリンビール高知支店の奇跡」●▲■
(講談社、田村潤著、2016年4月初版、780円+税)
かつて大日本麦酒は70%近いシェアだった。
集中排除法でサッポロとアサヒが分かれたのが1949年。
その後しばらくした1954年から、
ほぼ半世紀、キリンがトップシェアだった。
上記の「美酒二代」の部分に記載している通り、
特に1970~80年代はキリンは60%超えの圧倒的シェアを保った。
その間、アサヒとサッポロはシェアを下げ続けた。
ところが、1990年代後半から、
アサヒスーパードライの躍進で逆転劇が始まり、
21世紀に入ってアサヒがトップとなった。
さらに発泡酒や第三のビールもできて話はヤヤコシイが、
現在もアサヒが1位、キリンが2位である。
1995年に本書の著者が支店長として赴任した高知でも、
キリンビールのシェアは低下、
96年にアサヒにトップを奪われ、
97年に37%まで落ちた。
さらに、「ラガー」の味を変えたことで大苦戦。
(キリンは現在、オールモルトの「一番搾り」に注力しているが、
本書は「ラガー」が主体だった時代の話。)
しかし、そんな状況を、
「高知が、いちばん」
「高知の声で、ラガーの味を元に戻した」
など、地元を大事にする営業で、
01年に44%までV字回復、
06年に60%近くを実現した。
地元の声、現場の実態を大事にする営業手法が
いかに大事であるかを説いた本。
「キリンは、発泡酒や第三のビールを含めたビール類では苦戦が続くが、
ビールでは「東京づくり一番搾り」、「大阪づくり一番搾り」などの
各地限定の「47都道府県の一番搾り」が好調」
という報道を目にする。
地元をターゲットにした商品はやはり強い。
7月10日の日経新聞では、
ベストセラー2位(福岡・丸善博多店)
4月の発売直後は四国で人気だったが全国に広まり8万部に
と紹介されていた。
著者の田村潤氏はキリンビール元営業本部長で、
代表取締役副社長まで勤めた人。
前掲の鳥井信治郎氏と共通する部分もある一方、
より近代的な営業哲学を感じさせられた本。
●▲■その4:「よなよなエールがお世話になります」●▲■
(東洋経済新報社、井手直行著、2016年4月刊、1,500円+税)
「よなよなエール」のヤッホーブルーイング社は
地ビール黎明期の1996年設立。
96~98年ごろは全国的に地ビールブームで設立が相次いだが、
2000年ごろからブームは急激に衰退。
多くの地ビールが大苦戦で、撤退廃業も相次いだ。
ヤッホーブルーイング社も赤字だったが、
そこから盛り返し、2004年から11年連続増収増益。
現在は日本のクラフトビールで生産量首位。
前掲書と同じく、どん底からV字回復、の本である。
しかし営業スタイル・経営思想は相当違う。
V字回復の手法はネット通販、そしてコンビニ。
97年から楽天に店舗を持っていたが、
実際にネット通販に目覚めたのは2004年。
営業担当だった著者が、長年放置していた未開封の郵便物の束から、
7年前の楽天・三木谷社長直筆の手紙を発見したのが
そのきっかけ、という変り種である。
楽天ショップオブザイヤーの授賞式では
楽天の三木谷社長(スーツ姿)の前に、
井手氏は「インベーダーの仮装」をして登場するという奇行ぶり。
しかし、その奇行・奇抜にも哲学があることが語られる。
なお、本書では触れられていないが、
2014年からヤッホーはキリンと資本・業務と提携を行っている。
キリンの磯崎社長(もちろんスーツ)との記者会見のときは、
さすがに仮装はせず、Tシャツだった。
キリンがヤッホーの株式の1/3を取得したのだが、
キリンにとっては「成長するクラフトの取り込み」、
ヤッホーにとっては「国内シェア1%達成の手段」だろう。
著者は久留米の高専を卒業後、定職に就けず、
電気機器、環境アセスメント会社、タウン誌、などを転々。
パチンコで生活費を稼いだ時期もあるそう。
それが、星野リゾートの星野佳路氏と出会って人生が変わる。
星野氏の言葉を聞き、醸造所を見て、直感的に「ここだ」と思ったそう。
ヤッホーブルーイング社に設立当初から参画し、
2008年から社長。
独特の考え方・スタイルで会社を牽引する井手氏に驚くと同時に、
この人に任せた星野氏の慧眼にも驚いた一冊。
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井手直行氏、田村潤氏、鳥井信治郎氏は、
「苦労の末に事業を成功させた酒類企業の経営者」
という点で同じである。
が、営業スタイルや、経営思想はまったく異なる。
時代とともに、
実にいろいろなスタイルや思想がある。
(いや、案外、、、鳥井信治郎氏は井手直行氏のように
仮装して登場するようなこともしていたのかもしれないが。)
text = 喜多常夫
<酒ブック紹介>は次号も続く。
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さて、情報紹介。
●▲■ ご紹介情報 その1:ROOTSディビジョン ●▲■
「G-TRON 12-3C」:2000cph缶ビール充填機
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/machine/G-Tron.pdf
●▲■ ご紹介情報 その2:ROOTSディビジョン ●▲■
卓上のびんビール・缶ビール充填機「BF」シリーズ
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/machine/BFIV_wop.pdf
●▲■ ご紹介情報 その3:ROOTSディビジョン ●▲■
びんビール充填機「メヒーン、6ヘッド」
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/machine/Meheen.pdf
クラフトビールの「びん」と「缶」、
そして、その「びん・缶充填機」のことならお任せください。
ルーツ機械研究所のビールびん充填機・缶充填機は
全国のクラフトビール醸造所の過半で使用されています。
また、大手ビール各社の研究所でも使われています。
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2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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