●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.220 ●▲■
発行日:2016年7月20日(水)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■

発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com

 

 

------------------< 目 次 >------------------

<続・酒ブック紹介>

 ●▲■その5:「Textbook of Saké Brewing」
・・・サケ醸造の絶好の英文テキスト
●▲■その6:「日本酒の近現代史」酒造地の誕生
・・・「日本酒」という名称の由来
●▲■その7:「日本酒をまいにち飲んで健康になる」
・・・3合くらい飲んでしまう人にうれしい本
●▲■その8:「売れる日本酒・売れない日本酒 その理由」
・・・「売れる銘柄」の実名入り調査報告

 

                (text = 喜多常夫)

 

ご紹介情報●1▲ 「一升びん王冠」や「AZK」に変更された事例
ご紹介情報●2▲ 「お酒のキャップは、きた産業」(ポスター)
ご紹介情報●3▲ 「外国人・日本人に聞いた書道ラベルのイメージ調査」

 

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先週に引き続き、酒ブック紹介を続けます。
今回は日本酒の本、4冊。

 

 ●▲■その5:「Textbook of Saké Brewing」●▲■
(日本醸造協会、井上喬訳、2016年6月発売、2,500円+税)

 

英文の清酒醸造法のテキスト。

訳者の井上喬氏は、元、キリンビール・ビール科学研究所の所長で
「ジアセチル」の著作のあるビールの技術者(ジアセチルの世界的権威)。
英語でのサケの発信に取り組んだ二作目。

前作「Saké」は秋山裕一氏の岩波新書「日本酒」の英訳。2010年出版。
今回の「Textbook of Saké Brewing」は東京国税局の「酒造教本」の英訳。

このような専門書では、
醸造学を知らない人が訳すと、意味がズレる危惧がある。
清酒専門家が訳すと、業界常識が前提になりがちでわかりにくいのではないか。

訳者は「醸造学を熟知」していて「清酒専門の技術者ではない」ので、
学術的に正確で、かつ行き届いた英訳。
正当な清酒醸造の実務を知ろうという者にとって
絶好の英文テキストだと感じた。

 

訳者はPrefaceの部分で、
「relating synthetic saké ・・・ has been omitted・・・」と書き、
「酒造教本」のうち、アルコール添加の部分はあえて英訳を省いている。
(synthetic sakéは、合成清酒のことでなく、
「アルコールが使用されている増醸酒」を指している。)

本にはその意図が書かれていないけれど、この事を訳者に尋ねると、
海外でいろいろな製法の「偽清酒」が造られているが、
それらの製造者に知恵を授けることはない、との思いで省いたそう。

世界にサケ情報を発信していく上で、
日本のいわゆる「普通酒」(多くは二倍増醸酒)は、
なかなか難しい存在であることも改めて感じさせられた。

 

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本書は、タイトルも本文中も、サケを、sakeでなく
saké(eの上に’、アクサン記号)と表記している。

この点も訳者に尋ねたところ、なんと!
アトキンソンの「The Chemistry of Saké-Brewing」にならったそう。
(明治時代のお雇い外国人教師、英国人の化学者。
同書は1881年に東京大学から出された、
清酒の醸造法を初めて海外に紹介した著作)

アメリカの5つのサケ製造会社のうち唯一アメリカ人経営者のサケワン社は
アクサンありのSakéOneと表記しているのを思い起こした。
英語圏ではアクサンありのsakéとアクサンなしのsakeが使われるが、
英語ネイティブの感覚でもsakéのほうがしっくりするのだろう。

またアトキンソンは、長音がはいる「麹」は、
Kohji、Kouji、Koji とせず、
Kôji(oの上に山形、アクサン・シルコンフレックス)と記しているそうで、
本書もそれにならって、
Kōji(oに上に横棒。今ôより一般的)と表記したそう。

英語でサケが情報発信をしていくうえで
英語表記の統一も大変重要であると考えさせられた。

 

酒蔵見学に来た外国人客にテクニカルな説明をする場面、
また、
サケ造りを学びに来た外国人を指導する日本人、
外国でサケ醸造の指導する日本人
は、ずいぶん増えたと思います。
本書は外国人の方はもちろん、
そういった日本人の書架に是非勧めたい一冊。

 

 

 

 ●▲■その6:「日本酒の近現代史」酒造地の誕生
(吉川弘文館、鈴木芳行著、2015年5月発行、1,700円+税)

 

著者は現在、中央大学の非常勤講師だが、その前は
国税庁税務大学校の租税史資料室に勤務された方なので、
客観的情報、数字情報が豊富。

たとえば、、、

■「酒造家の老舗度合」
(全1788社の創業年分布。明治時代創業が667社で最も多く、
次いで江戸後期創業426社。
昭和戦後は94社、平成は20社など。)

■「醸造設備の状況」
(全1,530蔵のうち、57の四季醸造蔵が全醸造石数の53.8%を生産。
132の三季蔵が22.1%、冬期蔵が1,341で24.1%)

■「元禄時代の酒造統計」
(全2万7,251場の醸造石数は91.9万石。畿内が18.8万石で最も多く、
次いで西国の16.1万石、出羽奥羽二国の15.7万石など)

■「近代の腐造量の推移」
(明治35年は330.1万石のうち1.8万石が腐造。
以降毎年、数字が記載されていて、
昭和10年は378.4万石のうち腐造300石まで低下)

など、なかなか得難いデータがちりばめられていて興味深い。

 

●灘や伏見だけでなく、
●広島、福岡、信州、岡山などの酒産地の歴史、
●越後杜氏の関東での活躍、江戸新川のことなど、
全国をコンパクトに概観しているのがいい。

●竪型精米機、連続蒸米機、自動製麹機など機械設備の進化
●小印(飛切、特撰、黒松、別吟など)によるマーケティング
●戦中・戦後のアルコール添加技術の経緯
●各時代の酒税制度や免許制度
など、切り口も多彩。

 

タイトルは「近現代史」とあるが、
江戸時代から約500年にわたって
日本酒酒造業の歴史を俯瞰した本。
大変勉強になりました。

 

なお、前書きに「日本酒」という名称の由来について、

 蒸留酒並みだった日本の酒に関する英国の税率を下げるため、
イギリス人工業デザイナーのドレッサーが提案を行い、
その翻訳を明治10年に内務省博物局の石田為武という人物が公刊、
そのなかで「日本酒」と訳出したのが初例とみられる、

とあるのは初耳だった。

 

 

 

 ●▲■その7:「日本酒をまいにち飲んで健康になる」
(キクロス出版、滝澤行雄著、2015年5月初版、1,200円+税)

 

「清酒なら1日1合程度が適性飲酒」、
と一般的に言われるが、本書は
「1日2~3合に健康効果がある」、
という記述が随所にある。

私もそうであるが、
3合くらい飲んでしまう「サケ好き」にはうれしい本。

 

 がん予防
動脈硬化を防ぐ
血液をサラサラにする
心臓病を予防する
糖尿病を予防する
骨粗鬆症に期待される
認知症に役立つ
など、ちょっと、できすぎの内容ではあるが、
多くの健康効果をいろいろな調査結果に基づき記載している。

 

「梅干をまいにち食べて健康になる」
「海苔をまいにち食べて健康になる」
などのシリーズ本ではあるが、
著者はWHOやOECDの仕事をした経験もある医学博士で
英文の「サケ―健康と長寿」という著作もあるそう。

 

清酒そのものではなく、
ワインなど海外の調査事例の記述が多いのがやや気になったが、
日本酒など麹菌を使う日本の酒類・食品には、
麹由来の健康要素があるのだろう。

前立腺がんや乳がんは今、日本で増えているがんだが、
元来日本に少なかったのは、
麹の影響が大きいのでは、という話を聞いたことがある。

赤ワインがポリフェノールで世界ブレークしたように、
サケも健康効果で世界ブレークする局面が来るやもしれない、、、
と思う。

 

 

 

 ●▲■その8:「売れる日本酒・売れない日本酒 その理由」
調査・分析報告書2016年版
(株式会社フルネット発行、2016年6月発行、10,000円+税)

 

フルネットは日本酒関連の書籍やイベントを手掛ける会社。

 

本書は全国の名酒居酒屋71店にアンケートを取ってまとめたもの。
71の過半は東京で、多少東京寄りのバイアス傾向があるだろうが、
日本のサケの市場はやはり、
東京の実態を参考にすべきと思う。

 

71店で実際に人気のある
「売れる銘柄」の実名をリストにして書いてある。

10点以上の高得票があった「売れる銘柄」は5つ。
具体的な名前を書くのは差し控えるが、
三重、山口、秋田、山形、福島の銘柄である。
(本書の前書きに、灘や伏見のナショナルブランドは除く、
地酒についてのリサーチ、とある。)

 

また居酒屋71店の視点で
「これなら売れる」という、

  原料の米の種類
酵母の種類(協会XX号)
精米歩合
日本酒度
搾り方
火入れ回数

などが極めて具体的に得票数順で記述されている。

 

著作権もあるから具体的結果は書きにくいが、
一つだけ、当社(きた産業)の仕事にも関係する項目を書くと
「これなら売れる」壜の色は
「緑」と「黒」が高得票だった。

また、フルネットは2005年にも同じ調査を行っているが、
10年前と比べて今回は、
好みが甘口化している傾向が明確に出ている。
(余談だが、個人的には、ビール各社が力を入れている
プレミアムビールも甘口化しているように感じる。)

 

さらに
「売れない日本酒」の原因についての意見、
「キレ」とはどういうことかについての意見、
また、
全71店のすべての回答も店名入りで掲載されている。

 

1万円もする本だが、
他の調査会社が手掛けたら、もっと高い値段をつけるかもしれない。

購入者のほとんどはビジネスの参考として買うのだろうが、
10年レンジでこのような調査を継続するのは
マーケット分析としても意義深いと思う。

2026年も是非、調査を実施してほしい。

 

 

 

以上、今回はサケ書籍だったので、サケ映画も紹介しておきます。

 ●▲■おまけ紹介:「カンパイ」世界が恋する日本酒
(サケの映画、2015年、米・日合作の映画)

 

日本酒に魅せられた3人、
京都・木下酒造の杜氏、フィリップ・ハーパーさん
神奈川在住のジョン・ゴントナーさん
岩手・南部美人の5代目蔵元、久慈浩介さん
のドキュメンタリー映画。

在米22年の小西未来さんという方が監督、撮影、編集。
昨年アメリカで公開され、
この7月9日から東京や岩手で上映が始まったそう。

まだ見ていないが、是非見てみたい。

 

                    text = 喜多常夫

 

 <酒ブック紹介>は、さらに次号も続く、かもしれない。

 

 

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さて、情報紹介。

 

●▲■ ご紹介情報 その1:KKディビジョン ●▲■

「PPキャップ」から「一升びん王冠」に変更された事例
http://www.kitasangyo.com/Archive/PDA/PDA_246.pdf
「KT(冠頭)」から「AZK」に変更された事例
http://www.kitasangyo.com/Archive/PDA/PDA_245.pdf

 

720mlびんで一升びん口規格を採用される日本酒が増えています。

 

 

●▲■ ご紹介情報 その2:KKディビジョン ●▲■

「お酒のキャップは、きた産業」(ポスター)
http://www.kitasangyo.com/Archive/CM_Library/Closure_of_Sake2015.pdf

「戦前・戦後のお酒王冠の銅板ミュージアム」(ポスター)
http://www.kitasangyo.com/Archive/CM_Library/MUSEO_VETULUS_SAKE_FUTA2015.pdf

きた産業は、
全国の日本酒の王冠・キャップを製造しています。

 

 

●▲■ ご紹介情報 その3:アーカイブ情報 ●▲■

「外国人・日本人に聞いた書道ラベルのイメージ調査」
http://www.kitasangyo.com/Archive/SUR/sienna_pdf/SUR_1505_SW.pdf

 

FOODEX2015で外国人・日本人205人に聞いた調査結果。

 

 

ラベル、王冠・キャップ、びんなど、
日本酒のパッケージなら、きた産業にお任せください。

 

 

 

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