●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.224 ●▲■
発行日:2016年11月28日(月)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com
------------------< 目 次 >------------------
●▲■ お酒のネダンに関する一考察
●■ 4,000円ワインから売れる@ブティックワイナリー
●■ 「ビール類の酒税統一」vs「逆進的価格弾力性」?
●■ ワイン・清酒の増・減税について
text = 喜多常夫
ご紹介情報●1▲ 神社仏閣のお酒
ご紹介情報●2▲ 炭酸ガス量やヘッドスペースエア量の測定
ご紹介情報●3▲ ガス飲料の試作:パイロットプラント
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先日、長野県に行く機会があり、
とあるブティックワイナリーに立ち寄りました。
北海道と並んで長野は、近年、新ワイナリーの設立がとても多い
訪問したのは数年前に設立された新しいワイン醸造所。
原料はすべて自園のブドウ、ワイン専用品種のみ。
年間生産量は数千本(750ml壜)、直売とネット通販が基本。
価格は、2,000円、3,000円、4,000円の3種。
試飲させてもらったのですが、
樹齢10年足らずと思えない味わいに感心。
オーナー兼ワインメーカー曰く、
「4,000円のワインがまず売れ、今は売り切れ。次に、
3,000円のワインがよく売れ、完売間近。お客様には、
2,000円のワインも良い出来栄えで
コストパフォーマンスが高いと説明しても、高いものから売れる」
のだそう。
日本だけでなく、
いまや世界中で一般化した感のある表現ですが、
「消費の二極化」、あるいは
「プレミアムマーケット」の、好適事例でしょう。
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「ビール、発泡酒、第三のビールの酒税が
10年後の2026年に統一される見込み」
と、11月下旬から盛んに報道されています。
去年見送りになった話なので、
「ようやく!」というのと、
「10年もかけるの?」というのが、素人の感想。
ビール大手4社は、現状で:
アサヒさん、サッポロさん:ビール比率が高い
キリンさん:発泡酒・第三の比率が高い
サントリーさん:ビール強化中
と事情が違うので、受け止め方や戦略は異なるでしょう。
話は変わりますが、、、
「価格弾力性」:
製品の価格変動によって需要・供給が変化する度合い
10%値下げしたとき需要が10%増えたら、価格弾力性は「1」
10%値下げしたとき需要が5%増えたら、価格弾力性は「0.5」
新聞では、わかりやすいよう350ml缶の税額で解説しています。曰く、
ビール77円、発泡酒47円、第三28円の現行酒税が、
10年後に55円(見込み)に統一される
机上計算では缶ビールの価格は22円下がる、
すなわちまさに約10%下がる見込みなのですが、
果たしてビールの価格弾力性はどのくらいでしょうか。
「ビール」の価格弾力性は、瞬間的には
「1」くらいありそうに思う一方、2~3年で
「0」になるのではないか、、、
実際には「一気に10%」ではなく「3段階で10%」の予定だし、
営業最前線ではその都度熾烈な競争があるので、
各社のシェアは増えたり減ったりするのでしょうが、
マクロ(日本のビール産業の総和)を考えれば、そんな気がします。
ビールより安い発泡酒がでた直後、
さらに安い第三のビールが出た直後は、需要が増えましたが、
そのあとは総量減に転じた実績からの推測です。
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戦後モノ不足の時代、またその後の経済成長期には、
多くの消費財に明確な価格弾力性があり、
価格が下がればより多く売れるのが普通でした。
それでも、酒類は例外的商品であったと思います。
英国のサッチャー首相の影響で、
1980-90年代に日本の蒸留酒の酒税が変わりました。
ウイスキーは値下がり
→その後、需要は増えず、長期にわたって低迷
本格焼酎は値上がり
→案に相違して、21世紀初めまで需要が漸増
すなわち、嗜好品であるお酒は、20世紀末からすでに、
「値下げすれば需要がかえって減る」
「値上げしたものがかえって売れる」
つまり
「逆進的価格弾力性」があったと思います。
レギュラービールに比べて
10%高いプレミアムビール
20%以上高いクラフトビール
が成長商品で、今やマーケットの数%をしめる現状、
あるいは
4,000円ワインが3,000円ワインより売れる
というのは、
「値上げしたら売れる」のとは意味は違いますが、
「逆進的価格弾力性の要素」があることを物語るように思います。
いまの日本経済、ましてや10年後の日本を考えると
「値下げが需要を増す」、
という図式は期待しにくいと思います。
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ビール類3種の酒税統一の記事と合わせて、
「清酒とワインは同じ醸造酒なので酒税を統一
清酒が減税、ワインは増税」
という記事もでていました。
清酒の価格が安くなるのを歓迎しないわけではありませんが、
今でも低価格紙パックが幅を利かせる清酒で、
さらに価格が安くなるのは、
需要を削ぐことになりはしないかと危惧します。
自宅近くのCOOP(生協)のお酒売り場で日本酒を見ると、
「1,000円以下紙パック経済酒」が一番棚どりが多く、次に、
「1,000円以下720mlびん吟醸酒」が多くて、棚1列を確保しています。
安い価格で飲めることは歓迎すべきと思う一方、
「1,000円以下紙パック経済酒」が今より数十円安くなり、
「1,000円以下720mlびん吟醸酒」がさらに安くなったら、
日本酒の根本価値を毀損しないだろうか、、、
値下げはいい結果を生まないのではないか、、、と思います。
一方、酒税が上がるワインの皆さんは当然、
反対だと思いますが、、
90年代の本格焼酎の事例を見れば、
値上げ環境にはプレミアム需要を拡大するチャンスがある、
といえるかもしれません。
かつて「インフレ(物価上昇)は好くない」と思われていましたが、
今や日銀が「2%インフレ目標」を標榜する時代。
日本ワイン、日本清酒、日本ビールとも、
10年先には今よりも価格が上がっているほうが、
消費者にとっても生産者にとってもいいように思います。
日銀のインフレ目標並みに、実現が難しいかもしれませんが。。。
text = 喜多常夫
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さて、情報紹介。
●▲■ ご紹介情報 その1:アーカイブ情報 ●▲■
「神社仏閣のお酒」(19ページ)
http://www.kitasangyo.com/Archive/Data/Sake&Shrine.pdf
ヨーロッパでは修道院のビールやワインがある。
日本の神社仏閣のお酒と、比較文化論をしてみたいものです。
●▲■ ご紹介情報 その2:e-アカデミー情報 ●▲■
「炭酸ガス量やヘッドスペースエア量の測定実務」(18ページ)
http://www.kitasangyo.com/e-Academy/Gas/data/gas_measure.pdf
ビール、スパークリング・ワイン、スパークリング・サケなど、
炭酸ガス含有飲料の品質管理の基本。
●▲■ ご紹介情報 その3:e-アカデミー情報 ●▲■
「ガス飲料の試作:パイロットプラント・タンサンロボ」(16ページ)
http://www.kitasangyo.com/e-Academy/Gas/data/Gas_beverage_shisaku.pdf
炭酸ガス飲料の試作装置の技術解説。
タンサンロボは、シャンパン並みの高ガス含有飲料にも対応。
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