●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.231 ●▲■
発行日:2017年7月18日(火)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■

発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com

 

 

------------------< 目 次 >------------------

●▲■ 「パストライズ(低温殺菌)に関する小論」その1

  ●■ パスツールは「ワイン」で「びん燗火入れ」
▲● ワイン:パストライズはほぼ消滅(清酒:びん燗火入れが増加)
■▲ コーシャ・ワインとパストライズ

                      text = 喜多常夫

 

ご紹介情報●1▲ きた産業のYouTube「窒素ガス添加サーバー」
ご紹介情報●2▲ きた産業のYouTube「ジロパレット」
ご紹介情報●3▲ きた産業のYouTube「液体窒素低下装置」

 

●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■

 

 

 

   「パスチャライズ」(牛乳)
「ノンホモ」(牛乳)
「ノンチルフィルタード」(ウイスキー)
「びん燗火入れ」(清酒)

 

どれもちょっとヘンな響きの単語であるが、
市販商品の修飾語として使われている一般名詞。

どれも「本来の味を届ける」趣旨で使われている。
ただ、購入者の多くは、
実はあまり意味が解っていないと思うが。

 

日本の多くの牛乳は、
120~130℃で2秒程度の高温瞬間殺菌するのに対し
「パスチャライズ牛乳」は63~65℃の低温で30分程度保持する殺菌方法。
(注:清酒の65℃10~15分にくらべて時間が長い。
なお、酒類業界では「パストライズ」という人が多いように思う。)

多くの牛乳は、
乳脂肪が分離しないよう均質化(ホモジナイズ)をしているが、
「ノンホモ牛乳」は、ホモジナイズしていない牛乳。

ウイスキーや本格焼酎などの蒸留酒は、
低温になると成分が飽和して白濁する場合がある。
通常は冷却濾過(チルフィルター)処理して白濁成分を取り除くけれど、
「ノンチルフィルタード」は、冷却濾過していないもの。

清酒は、
65℃に加熱して壜詰めする「熱酒充填」がスタンダードだが、
この10年ほどの傾向として、
高級酒の場合とくに、
低~常温で壜詰めして、キャップで密封してから
温水シャワー(または湯煎)で加熱して、
中心温で65℃10分くらい保持して殺菌する方法が増えている。
特にそのことを表示しない商品もあるが、
「びん燗火入れ」とラベルに大書してある商品も多い。

 

▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■

 

今も「パスツール研究所」の名前で世界に知られる
ルイ・パスツールは、1862年に「低温殺菌法」を見出した。
パスツールの名前をとって「パストライズ、Pasteurize」という。

「ワイン腐敗の原因を調べてほしい」
という依頼を受けての研究だったそうで、
当然ながら、ワインで低温殺菌法を見出した。

書籍のイラストで見たことがあるのだけれど、
パスツールが行った低温殺菌は、
「加温びん詰め」ではなく「びん燗火入れ(殺菌)」だったようだ。

ワインびんにコルクを打栓して、
コルク栓が飛ばないようにワイヤー(紐?)でゆわえて
お湯につけるイラストだった。

この技術は大いにワイン業者に歓迎されたそうだ。
当時ワインは、いろいろな雑菌で汚染されていたのだろう。

 

ただ、現在、ヨーロッパのワイン製造業者は常温充填を行っていて、
パストライズしている業者はほぼ皆無。
(「イタリアのワインでは加温充填している業者がある、
故にイタリアでは口内径が1mm小さい17.5mmのワイン壜がある」
と聞いたことはあるが、実際に遭遇したことはない。)

 

ボルドーのシャトーもののワインは、
別に精密フィルターを通しているわけではないのに
(0.45μのフィルターで除菌濾過しているわけではないのに)
パストライズなしで何年保存しても腐敗や変質することはない。

 

シャンパーニュは、二次醗酵の後に、
「ドザージュ」(滓を抜いた壜に「門出のリキュール」を継ぎ足す。
門出のリキュールには通常いくらかの糖分が入っている)を行うが、
その糖分が醗酵(三次醗酵?)した、などとは聞いたことがない。

 

ヨーロッパのワイナリーで何度か、

   「いつ頃からパストライズをやめたの?」

と尋ねたことがあるけれど、だれも答えてくれた人はいない。

 

  「ワインでパストライゼーションなどありえない」
「でも、パスツールはワインで低温殺菌したのは知ってるだろ」
「そういえばそうだなァ・・・」

で会話は終わる。

 

 

「清酒はいまだにパストライズが主流」であることの対比として、

  ▲ヨーロッパのワインで実際にパストライズが普及したのか?
▲普及したとしたら、いつから使われなくなったのか??
▲使われなくなった理由はなになのか???

過去、日本でも何人かに聞いていみたけれど、
明確な答えはわからない。

  ●醸造所の衛生管理がよくなったからか?
●ボルドー液(ブドウ樹の殺菌剤、19世紀後半から普及)のせいか??
●亜硫酸の適正使用が一般化したからか???

実際のところを知りたいものだ。
(ご存知のかた、ぜひ教えてください。)

 

▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■

 

ちなみに日本では、
特に古くからワインを作っている地方のワイナリーでは、
加温充填している場合もある。

戦後の国税当局の醸造指導の影響が残っているのではないかと思う。
かつて、日本は甘味果実酒が多かったこともある。

日経新聞連載中の「琥珀の夢」でも、先月くらいに、

 「他社の果実酒で壜が破裂する事故が度々あったが、
摂津酒造が造る赤玉ポートワインは全く破裂しなかった」

という記述があった。
破裂は(当社はガラスびんを販売しているので、その視点で言えば、
びん品質にも問題があったはずだと思うが、一義的には、)
酵母か雑菌の再醗酵によるものだろう。

(注:寿屋-現、サントリー-は大阪工場ができるまで、
赤玉ポートワインを摂津酒造などに製造委託していた。
摂津酒造で赤玉を調合していたのはニッカの創業者の竹鶴。
なお、摂津酒造は、1962年に宝酒造に吸収合併された。)

 

世界的に珍しい日本のワインの熱充填は、
より安全とは言えるかもしれないが、
ワイン品質面(熱劣化の可能性)のほか、実務的にも問題が多い。

当社はワインの機材を輸入販売しているが、
ヨーロッパでは65℃などという充填温度を想定していないので、
コルク栓ではバキューム発生、
充填機ではシーリングガスケットの連続耐熱性、
など問題となる場合がある。

ワイン壜の入り味線は、
ヨーロッパでは55mmと63mmが標準なのに、
日本独特の720mlワイン壜は77.5mmもあるのは、
歴史的に熱充填が多かった影響だと思う。
(加温時に液面が上昇するから、より大きな空寸が必要)

 

▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■

 

一方、つい最近、フランスのアルザスの醸造家から、

 「時々パストライズする」

と聞いた。

「コーシャ・ワイン」のためだそうで、
非ユダヤ教徒が醸造したり、サービスする(コルク栓を抜くなど)場合
そのワインは「加熱」されなくてはならないのだそうだ。

(英文のWikipediaでKosher wineを引くと難解だが解説がある。
正確にはKosher Mevushal wineというカテゴリーで、
Mevushalはヘブライ語で「調理された、煮沸した」)

 

日本では、近年、
「ハラール」(イスラム法で許された食品加工法)ビジネスが盛んだが
アメリカでは、相当前から、
「コーシャ」(ユダヤ教で定める食品加工法)食品が大きな市場。

ハラールはムスリムの需要だけだが、
コーシャはユダヤ教徒の需要だけではない。

アメリカの「ホールフーズ」など高級スーパーでは
コーシャ食品のコーナーがあって、
安心な食品として富裕層を中心にユダヤ教徒以外の需要がある。
いわば「オーガニック食品コーナー」に似た性格でとらえられている。

 

なお、ご存知の方が多いと思うが、
日本の清酒蔵元でもコーシャの認定をとっているところは多い。
http://www.kitasangyo.com/pdf/e-academy/tips-for-bfd/BFD_37.pdf

 

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

 

日本は、
「清酒の火入れ技術はパスツール以前から」
が自慢である。

明治時代、東大のお雇い外国人教師、アトキンソンは、
「酒の液面に手で「の」の字がやっと書ける程度」(60℃くらい)
で清酒を火入れすることを全国の蔵元で見聞し、
「温度計なしで適切な低温殺菌を行っている」
と、驚きをもって報告している。

 

一方、コーシャは、基本的には紀元前の旧約聖書に由来し、
古代イスラエルからあるそうだ。
Kosher Mevushal wineは、コーシャより歴史は新しそうだが、
日本酒と同じくずいぶん古くから、
低温殺菌を利用していたのかもしれない。

ユダヤの人がいつどのような経緯でワインの加熱を規定したのか?
興味深いテーマである。

 

           text = 喜多常夫

  ※「パストライズ小論」は、その2に続く(予定)。

 

 

▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■

 

 

6月のFOOMA展示会では、
当社ブースに多くのお客様にご来場いただきました。
ありがとうございました。

今回は、その時のユーチューブ動画をご紹介します。

 

 

●▲■ご紹介情報 その1 きた産業のYouTube情報 ●▲■
「コーヒー・ビールへの窒素ガス添加
by "Ni Tron"サーバー @FOOMA 2017」(50秒)
https://www.youtube.com/watch?v=Z8DPReCZPZM

 

展示会で発表した新製品「ナイトロン・サーバー」。
日本のDIC社のホーロー・ファイバー・メンブラン技術を使用して
ルーツ機械研究所が制作した店舗用サーバーです。

展示会では、サービング直前のコーヒー液中に、
窒素ガスを直接添加するデモ運転をしました。
もちろん、炭酸ガスや、炭酸・窒素混合ガスにも利用可能。

 

 

●▲■ご紹介情報 その2 きた産業のYouTube情報 ●▲■
「びん内二次醗酵ワイン・サケの動壜機
"ジロパレット" @FOOMA 2017」(38秒)
https://www.youtube.com/watch?v=u-qezhaEH5I

シャンパーニュで広く使われる動壜機、
「ジロパレット」は日本の展示会では史上初展示。
フランスのエノコンセプト社の製品。

スパークリング「ワイン」だけでなく、
スパークリング「サケ」にも採用実績があります。

 

 

●▲■ご紹介情報 その3 きた産業のYouTube情報 ●▲■
「ワイン・ビール・サケの酸化防止と容器加圧のための
"液体窒素滴下装置" @FOOMA 2007」(20秒)
https://www.youtube.com/watch?v=89BpUx6h_58

 

これは、実はちょうど10年前のFOOMA展示会のビデオ。
アメリカのVBC社の液体窒素滴下装置のデモ運転。

その後、この10年の間に、
●ワインのPETボトル生産ライン
●清酒のアルミ缶生産ラインとボトル缶生産ライン
●焼酎のボトル缶生産ライン
●ビールの研究所の試験缶詰め機
などでVBCの施工実績を積み重ねてきました。

アイルランドのギネスビール研究所に、
液体窒素滴下装置付きのラボ用ビール缶詰機の納入実績もあります。
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/BRX_jpn_.pdf

 

液体窒素滴下技術なら、きた産業にお任せください。

 

 

 

●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■
●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■

 

__________________________

●▲■バックナンバー閲覧可能!「メルマガ・クロニクル」

http://www.kitasangyo.com/Archive/mlmg/BN_top.html

2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
__________________________

●▲■ブログもやってます!「スローなブログ」

http://blog.goo.ne.jp/kita-slow_blog/

2006年4月の以来、きた産業のトピックスを写真で収録。
__________________________

 

●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■

 

紹介商品に関するお問い合わせは、営業部まで。
西日本担当:大阪営業部
tel.06-6731-0251 mailto:osaka@kitasangyo.com
東日本担当:東京営業部
tel.03-3851-5191 mailto:tokyo@kitasangyo.com

__________________________

●本メールがうまく表示されない場合  ●登録内容の変更や、
配信停止希望の場合  ●メルマガに関するご意見・ご要望など、
は、メールアドレス:mailto:info@kitasangyo.com まで 。
__________________________

このメルマガは、「ご登録いただいたお客様」、
及び「当社営業担当で登録させていただいたお客様」に、
お届けするサービスです。
ご要望があってもお届けできない場合がございます。

発信専用アドレスから送付しております。このアドレスに返信
いただきましても回答できませんので、予めご了承ください。

__________________________

記載された記事を許可なく転送・複製・転載することを禁じます。
Copyright 2002-2017. Kita Sangyo Co., Ltd. All rights reserved.
きた産業株式会社 ニューズレター担当:企画・開発グループ

__________________________