●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.235 ●▲■
発行日:2017年11月21日(火)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com
------------------< 目 次 >------------------
●▲■ 北米のクラフトサケ醸造所訪問記
●■ 山田錦60%精米、酵母は協会7号や9号
■▲ 日本製設備は、、、ほぼ皆無
●▲■ 世界のクラフトサケ醸造所の増加
●▲ 2010年4軒 → 2015年16軒 → 2017年11月現在24軒
■● 2020年30軒超え → 2030年(予測)100軒
ご紹介情報●1▲びん内二次醗酵スパークリングの機械と設備一覧
ご紹介情報●2▲フランスの半自動タックラベラー「ニネット」
ご紹介情報●3▲ガラス栓「サケ・ヴィノロック」
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先月末、アメリカ東海岸に出張したついでに
「クラフト・サケ醸造所」を見て回った。
訪問したのは4軒で以下のごとし。
1. ニューヨーク州・NY:
「ブルックリン・蔵」(訪問時点では開業前。近日開業)
2. マサチューセッツ州・ボストン:
「ドーブテール・サケ」(2015年開業)
3. メーン州・キタリー:
「ブルー・カレント・サケ」(2011年開業)
4. カナダのオンタリオ州・トロント:
「オンタリオ・スプリング・ウォーター」(2011年開業)
ボストンはNYから北に飛行機で1時間、ハーバード大学のある大都市。
メーン州は東海岸最北の州、キタリーはボストンから車で1時間の小さな街。
トロントはカナダ最大の都市、NYやボストンから飛行機で1時間。
以下、4軒(4蔵?)をまとめて概観してみます。
原料についてはこんな具合。
■米: 「カリフォルニア米」(カルローズなど)が多いが、
「山田錦」の利用が始まっているのに驚いた。
アーカンソー州で数年前から栽培されていているそう。
■精米:さすがに自社精米はない。
西海岸のCA州(月桂冠、大関、松竹梅などがある)の精米会社のほか、
より東海岸に近いミネソタ州にも酒米を精米する会社がある。
山田錦は60%精米が標準のようだ。
日本の酒蔵でみる精米見本を思いだすと、わずかに割れがあるか。
■麹菌:日本製。
外国でなじみのない粉末菌なので輸入できるのかと思ったが
日本からの輸入通関は特に問題ないそう。
自家製麹菌を試しているところも。
■酵母:日本の醸造協会酵母(7号や9号など)が多いが、
自家製酵母を名乗るところももあった。
ワイン酵母やビール酵母のアメリカの専門業者が
委託培養してくれる。
■水: 市水(水道水)をフィルターで濾して、鉄分除去などは対応。
井戸水のところも。
設備は以下のごとく、洗米機を例外としてほとんど非日本製。
●洗米機:みなさん、大型バケツくらいのサイズの、
水流で洗う方式(日本のマルゼンの製品)を使っている。
概して高評価。
ストップウォッチを見ながら手で洗う人はいなかった。
●甑(こしき):地元の鉄工所に作らせたものや、
市販の厨房用スチーマーの改造。
●麹室:それぞれ温調の効く小部屋(麹室)を作って、
手作りで麹米を作る。
杉の板で作った「麹蓋」もよく使われていた。
なお、NYは州の規則で
麹室の壁に杉板(木材)が使えないといっていた。
●ステンレスタンク:
中国製が多い。アメリカでは安く手に入る。
●ポンプ・壜詰め機・キャッパーなど:
ワイン用の流用。
●びん燗火入れ機:
を持っていることもある。地元鉄工所製の湯煎機。
ロケーションは2種に大別。
■NYとトロント:
多くのショップやレストランがある、
再開発地域(函館や横浜のレンガ倉庫のイメージ)の中で
テナントとしてサケ醸造所を運営。
醸造の様子はガラス越しに見える構造。
観光客も多く、試飲カウンターも備える。
ただ、ショップ直売は僅かで、
基本は、壜詰め製品を地元で販売。
■ボストンとメーン州:
街中の倉庫や工場を醸造所に改装して、
非公開でサケを醸造。
ボストンのほうは住所も非公開。
いずれも2階にベッドがあり、
泊まりこんで醸造する熱心さ。
その他
●杜氏(醸造技術者):
皆さん、Tojiと称しています。
どこも基本的に醸造責任者が1人+手伝う人が1-2人。
サイトを見ると「共同創業者」として2人が現れる場合もあるが、
一方は出資者であったり、マーケッターであったり。
アメリカの3カ所は、アメリカ人杜氏。
2人は日本の複数の蔵元で醸造体験をしていたが、
1人は日本経験なし、ゴントナーさんのスクールで勉強した独学派。
カナダは、創業時は日本人杜氏、次にカナダ人杜氏で、
現在日本人に引継ぎ中。
●販売方法、販売量:
壜詰め販売が基本。容量は300ml、375ml、500ml。
みなさん750mlはサケでは多すぎるという意見。
市内のリカーショップのサケ売り場での価格は
1本15~20ドル程度。
日本製サケと一緒に並んでいるが、概して日本製より高価。
カリフォルニア製大手サケとくらべると容量単価で3~4倍くらい。
各社とも日本食レストランへの直売が一番の柱。
ボストンやトロントでは、多くの日本食レストランのメニューに
「地元のサケ」として掲載される。
販売量は、いずれも3万本以下。石数で言えば100石以下。
作ればもっと売れるが、設備が限界のようだ。
●火入れ:
「びん燗火入れ」(壜詰め後、湯煎で65℃程度でパストライズ)
を実施しているところもあるが、
各蔵とも基本的には「生酒」(パストライズなし)を売りにしています。
●焼酎?:
焼酎(米の焼酎)を準備中、というところが複数ありました。
クラフトディスティラリー(蒸留所)が世界的に増えていることも
影響しているでしょう。
余談ながら、、、
今年のFOODEXで焼酎の嗜好についてアンケートをとったのですが、
日本人は「芋焼酎」が一番人気でしたが、
外国人は「米焼酎」が一番人気でした。
4軒でいろいろな種類のサケを試飲させてもらいましたが、
4軒ともなかなかの出来栄え。
今回の訪問を写真資料にまとめたものは、以下を参照ください。
フランス・ブルゴーニュ:「蔵deブルゴーニュ」(2016年開業)
も9月に訪問したので、併せて掲載しています。
●▲■ アーカイブ資料
「北米とフランスのクラフトサケ醸造所」全11ページ
http://www.kitasangyo.com/pdf/archive/sake-info/craft_sake_us+f.pdf
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当社ではこんな資料も公開しています。
●▲■ アーカイブ資料
「世界のクラフトサケ醸造所+サケ工場マップ」全21ページ
http://www.kitasangyo.com/pdf/archive/sake-info/world_sake_map.pdf
上記は実は、アップデートが追いついていない。
現時点で補足している情報で修正点を書くと:
<リストにないもの>
●英国・ロンドンで「KANPAI LONDON」がサケ醸造を開始
●アメリカ・ミネアポリスで開業準備中の情報
●フランス・マザメで開業準備中の情報
●メキシコにもう1軒ある?
など
<リストの修正>
●アメリカ・ナッシュビル「PROPER SAKE」は
expectedと書いていたがサケ醸造を開始済み
▲アメリカ・「オクトパサケ」は断念
▲英国・「グッドネスサケ」は計画中断の模様
▲英国・「アランブルワリー」は計画中断の模様
など
なかには断念や閉鎖もあるが、
世界におけるクラフトサケ醸造所は着実に増えている。
海外に於けるクラフトサケ醸造所の嚆矢は、
カナダ・バンクーバーの「アーティザン・サケ・メーカー」で
2007年開業。
それ以降、増え続けていて、
上記の当社リストから年代別に軒数をおうと以下の如し。
■@2010年4軒
(カナダ1+アメリカ1+台湾1+ノルウェー1)
■@2015年16軒
(カナダ3+アメリカ11+台湾1+ノルウェー1)
■@2017年11月現在24軒
(カナダ3+アメリカ12+台湾1+ノルウェー1
+フランス2+スペイン2+英国1
+メキシコ1+ニュージーランド1)
以上は、「クラフト」や「マイクロ」の範疇のもので、
アメリカ西海岸、ブラジル、オーストラリア、
ベトナム、韓国、中国など
にある「清酒工場」の範疇のものは含んでいない。
クラフトサケ醸造所は、
■2020年には30軒を越えるのは確実、
■2030年には100軒になるのではないか、
、、、と思う。
世界中で多くの人が
「ワイン醸造」や「ビール醸造」に情熱を傾けるように、
「サケ醸造」に情熱を感じる人も増えていくと思う。
ワインは、
ヴィンヤード(ブドウ栽培)が必要だが、
ビールとサケは、
麦や米を買ってくるので、
都市部でできるのも魅力である。
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最後にアメリカのクラフトサケ醸造所のレポートの続きを少々。
醸造所で説明を聞いていて4蔵とも、
清酒のことに非常に詳しくて驚いたが、
事実と違う点もあるなあ、
と思った説明が二つあったので記しておきます。
事実と違う・その1
「吟醸サケはとても貴重で原価も高い。
日本では最低でも30ドル、40ドルする」
→ご存知の通り、大手NBのサケなどで、
720mlびんで1,000円(9ドル)を切る大吟醸が多数出ていて、
売れ筋商品となっている。
世界市場でワインと肩を並べるためにも、
アメリカの説明のようになるべきだなあ、
と思いました。
事実と違う・その2
「ヒイレ(英語でHi-ireといっていた)、
すなわちパストライズはフレッシュな風味を損なう。
日本から運ばれてくるサケは高品質なものであっても、
長期の流通に備えて火入れされている。
当クラ(蔵)では火入れしない高品質なサケを
出来立てでフレッシュなまま地元に提供する」
→「火入れしない」=「高品質」というのは誤りでしょう。
清酒のパストライズは、ビールやワインのパストライズと異なり、
「火落ち対策(腐敗防止)」だけでなく、
「酵素活性を止めて品質を安定させる」効用がある。
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以前、6月と7月のメルマガで、
●▲■ 「パストライズ(低温殺菌)に関する小論」
として、
その1:ワインのパストライズ
その2:ビールのパストライズ
の話を書いた。
その3:清酒のパストライズ
を書こうと思っていて、テーマが重すぎて滞っています。
アメリカで
「パストライズはフレッシュな風味を損なう」
と聞かされて、この際、書くことにします。
次回に続く。
text = 喜多常夫
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さて、情報紹介。
●▲■ご紹介情報 その1 ROOTSディビジョン ●▲■
「びん内二次醗酵スパークリングの機械と設備一覧」(全2ページ)
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/for-sparkling-cider-and-brandy/ch_equipment3r.pdf
スパークリングワイン用の設備の多くが、
スパークリング清酒の設備としても、
使用され始めています。。
●▲■ご紹介情報 その2 ROOTSディビジョン ●▲■
フランスの半自動タックラベラー「ニネット」(全4ページ)
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/seamer-capper-labeler-etc/NINETTE_labeler.pdf
超コンパクトなタックラベラー。
清酒、焼酎、ワイン、クラフトビール、飲料などで
採用実績があります。
●▲■ご紹介情報 その3 K2ディビジョン ●▲■
ガラス栓「サケ・ヴィノロック」(全2ページ)
http://www.kitasangyo.com/pdf/package/closures/SVL.pdf
サケびん口(一升壜口)規格の
ヴィノロックです。
スーパープレミアム商品にお勧めします。
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