●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.247 ●▲■
発行日:2018年12月26日(水)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■

発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com

 

------------------< 目 次 >------------------

●▲■ 年末恒例、2018年の○と×
■ ビール業界の2018年
■ 2018年の輸出予測:日本酒215億円、ウイスキー150億円
■ 酒の輸出ランキング:5位は「焼酎」から「ジン」に交代
■ 日本酒:総生産に占める輸出比率が5%に
■ ワイン業界の2018年
●▲■ 平成の30年を振り返る:ビール・清酒・ワイン

●▲■ 年の瀬のご挨拶

                      text = 喜多常夫

 

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年末恒例の「2018年の○・×・!」、
お酒・アルコール飲料業界の2017年を振り返って、

     ○(マル:良かったこと)
×(バツ:悪かったこと)
!(ビックリ:驚いたこと)

を書きます。(企業名は敬称略で失礼します。)

 

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●▲■ ●▲■ ビール業界の2018年 ●▲■ ●▲■

 

●▲■ 副原料が認められた2018年

日本の2018年は、
2026年ビール系3種の酒税一本化への10年のロードマップの中で、
ビールの定義が変わった年だった。

オレンジピール、コリアンダーなどの副原料を用いるので、
従来日本では「発泡酒」となっていたベルギービールは、
晴れて「ビール」となった。

かつお節、味噌など驚きのアイテムも許容リストに掲載されたのは、
クラフトビールの先進的実績ゆえ(ヤッホーと金しゃち)。

2018年だけを振り返ると副原料の新製品が多かったわけではなく、
消費者視点では思ったほどのインパクトはなかったが、
これから酒税一本化が進んでいく中で
特にクラフトに利する税制改定だったと思う。

また、山椒、ユズ、日本茶など「日本ボタニカル」が許容されたのは、
(後述するジャパニーズジンの日本ボタニカルでの成功を見ると)
将来の日本ビールのポテンシャルを高めたと思うので、「〇:マル」。

 

●▲■ 日本大手の2018年

大手ビールの2018年の話題としては、
キリンがイオンのPB商品「バーリアル」を引き受けたこと、
(350ml缶で84円。それまでは長く韓国製だった)
また、大手5社のビール酒造組合への自己申告生産量に、
このPBを含めることについて、一般紙でも報じられる論争があった。

一方、キリンが長年継続してきた「バドワイザー」のライセンス生産を
2018年で終了する事も、個人的には印象深いニュースだった。
「巨大ブランド」より「クラフト」の時代、ということだろう。
(余談ながら、バドワイザーの缶には「Beechwood Aged」と書いてある。
バドワイザーの伝統製法で、熟成時にビーチウッド=ぶなの木片を入れる。
クラフトビールで流行っている樽熟成にある種通じて、先んじていたのだと思う。)

 

キリンのクラフト「スプリングバレー」に対抗してか
アサヒは「墨田川」のアピールに力を入れているように見える。
いろいろなクラフトビールブランドを販売するキリンのサーバー、
「タップマルシェ」も注目度が高い。
ビールに限らずジンやウイスキーでも、
また日本に限らず世界的にも、
「クラフト」が注目される時代。
大手だけでなく、多くの人にチャンスがあるという意味で、「〇:マル」。

 

●▲■ 世界大手の2018年

世界の2018年は、
AB InBevによるSABミラー買収(2016年)の影響が一巡。
(チェコのウルケルやオランダのグロルシュなど欧州ビールを、
アサヒが買収したのもその影響の一環だった。)

2018年はハイネケンが中国最大手「華潤」に出資して提携、
というニュースがあったが、
しばらくはこれ以上の世界的大型買収劇が起きにくいだろうから、
世界大手4社のシェアは当分固定された感がある。

  AB InBev=25%強        ハイネケン=10%強
カールスバーグ=5%強   モルソンクアーズ=5%弱

AB InBevとSABミラーの統合を聞いた時は
「すわ、世界シェア40%か、、、」と思ったが、結局は25%強。
ポートフォリオの入れ替え狙いだったのかもしれないが、
シェア拡大はなかなかむつかしいものである。

日本だけでなく、主要国のほとんどでビール需要は減少か横ばい。
ビールは世界的に減少時代に入っている。
大手ブランド各社にとって誠に「×:バツ」だろうが、
クラフトブランドにとっては「〇:マル」なのかもしれない。

 

 

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●▲■ ●▲■ 酒の輸出の2018年 ●▲■ ●▲■

 

●▲■ 2018年の輸出予測:日本酒215億円、ウイスキー150億円

例年通り、今年も2018年輸出金額の「ズバリ予想」を書いておきます。
本稿を書いている時点で、貿易統計が発表されているのは10月まで。
それに11月・12月の個人的予測数字を足したもの。

主要酒類について、
「2018年の予測」と合わせて、
「2013年の実績」と「5年間の変化(予測)」を書いてみる。

輸出金額順
1位「清酒」:
2013年105.2億円 → 2018年予測210億円
5年で2倍
2位「ウイスキー」:
2013年39.8億円 → 2018年予測150億円
5年で3.8倍
3位「ビール」:
2013年54.5億円 → 2018年予測130億円
5年で2.4倍
4位「リキュール」:
2013年25.4億円 → 2018年予測55億円
5年で2.2倍
6位「焼酎」:
2013年17.1億円 → 2018年予測16億円
5年で0.9倍(▲6%)

焼酎以外については順調な伸びで、概ね「○:マル」だろう。

 

●▲■ 酒の輸出ランキング:5位は「焼酎」から「ジン」に交代

焼酎を6位と書いたのは間違えではない。
従来5位だった「焼酎」は、「ジン」に追い抜かれた。
これは「!:ビックリ」であった。

 5位「ジン」:
2016年0.15億円 → 2017年6.4億円 → 2018年予測18億円
2年で120倍

ジンは、財務省の貿易統計では、
2015年まで「その他の蒸留酒」に含まれていて個別輸出統計がなかった。
2016年に初めて独立した分類コードがついたので、2年分しか変化が読めないが、
2年で120倍(!!!)
こんなに短期間に輸出が伸びた酒類ジャンルは日本史上初ではないか。
(2016年にジンが伸びると見込んでコードをつけた財務省は慧眼である。)

実際の輸出の多くはサントリーの「ROKU・六」だと思う。
今や、ビーフィーターやゴードンと並んで世界中の空港免税店に「六」が並ぶ。
ただ、その他の日本のクラフトジンも相当量が輸出され、人気のようだ。

日本のクラフトジンの嚆矢である京都の「季の美」をはじめ、
「六」にしても、その他のクラフトジンにしても
「日本ボタニカル」が世界人気の大きな要素。
注:ボタニカル=スピリッツの植物副原料
日本ボタニカル=ゆず、シソ、桜の花、日本茶、笹の葉、等々

高級蒸留酒・クラフト蒸留酒が世界的に伸びていることもある。
「日本ジン」は「日本ウイスキー」に次ぐ世界商品となる可能性があると思う。

サントリーは、ジン「ROKU・六」に続いて、
ウオッカ「HAKU・白」を出すそうだ。
また、サントリーは英国の世界的クラフトジン「シップスミス」を
すでに2016年に買収して傘下に収めている。
サントリーもまた慧眼、あるいは、卓越した戦略家である。

 

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「焼酎輸出は、清酒輸出の10年遅れで同じように伸びる」
と、かつては個人的に予測していた。
ところが、特にこの5年ほど、焼酎輸出は全く低迷している。

同じ蒸留酒でも日本ウイスキーや日本ジンがこれだけ伸びたのは、
「飲むシーン・場所」が世界中に存在するからだと思う。
ウイスキーやジンは、日本製でも英国製でも世界中にあるバーで飲まれる。

日本酒の海外における「飲むシーン・場所」の9割は日本食レストランだが、
世界中で急速に日本食レストランが増加したから、輸出も増えた。
(逆説的に言えば、日本食レストランの増加が止まった時の対策を
今のうちに考えなければ、いずれ清酒輸出は頭打ちになる。)

焼酎は、海外で飲まれるシーン・場所が定まっていない感がある。
日本食レストランで日本酒と合わせて焼酎がもっと飲まれると思っていたが、
実際には焼酎はそれほど飲まれていないようだ。
また、海外のバーでウイスキーやジンと並ぶ蒸留酒として飲まれるわけでもない。
今後、戦略を考えて取り組むことが必要だ。

 

●▲■ 日本酒:総生産に占める輸出比率が5%に

清酒輸出2018年予測は、金額で210億円と書いたが
量では15万石くらいの着地だと思う。

日本の清酒総生産量は300万石弱なので、15万石は5%強となる。
つい最近まで3%と言っていたのに、一気に高まった。

 

輸出比率を%刻みで見て、1、2、3、4、5を超えた年を書いてみる。

   2003年4.6万石         =1%
2010年7.7万石         =2%
2015年10.1万石        =3%
2017年13.0万石        =4%
2018年予測15万石      =5%

すなわち、総生産に占める輸出のシェアが1ポイント増えるのに

 7年 → 5年 → 2年 → 1年

分母の総生産量が毎年微減という事情があるにせよ、加速的伸びである。
この調子はまだ続くと思うので、
オリンピックイヤー(2020年)には7%くらいになるのではないか。
全国の半数強の蔵元しか輸出していないことを考えると
輸出している蔵元では輸出比率10%が当たり前になるかもしれない。

 

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●▲■ ●▲■ ワインの2018年(と2019年) ●▲■ ●▲■

 

●▲■ 表示ルールの厳格化

ワイン業者の2018年の大きな話題は、
10月から実施された産地表示ルールの変更(厳格化)。

ラベルに産地名を名乗るには原料がすべて国産で、
その産地で収穫したブドウ原料を85%以上使わねばならなくなった。
これは世界的な基準に沿うものである一方、
従来名称を変えなくてはならないワイナリーや
従来原料調達ルートを変えざるを得ないワイナリーがあって、
業界で賛否があった。が、とにかく一歩踏み出した。

サッポロ・アサヒ・サントリーがブドウ畑を拡大したり、
メルシャンが塩尻や椀子(まりこ)に醸造所を作るなど、
大手の2018年動向も産地表示ルール厳格化の影響が大きいといえる。

なお、あまり話題になっていないが
「オーク・チップの使用解禁」も今の世界的な流れに沿うとはいえ、
2018年の大きな変更だったと思う。
(清酒の樽酒はどうなっているのか知らないのだが。)

 

●▲■ 2019年の日欧EPA発効のインパクト

2007年のチリとのEPA発効でチリ産ワインの輸入は大きく伸びた。
来年2019年の日欧EPA発効で、
欧州からのワインが無税になることはもっと大きなインパクトだと思う。

日本では、ワインはまだこれから伸びる余地の大きいと思うが、
国産ワインが伸びるのか、輸入ワインが伸びるのか。
それとも両方が伸びるのか。。。

輸入は、単純にびん製品が増えるのか、
英国がたどったようにバルク輸入で国内びん詰めが増えるのか、
大手プレーヤーの動向をよく注視していかねばならない。
(あるいはPETボトルとか紙容器が増えるのかもしれない)

 

 

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●▲■ ●▲■ 平成の30年間 ●▲■ ●▲■ 

 

平成最後の年越しであるので、
平成の30年を簡単に俯瞰しておこう。
明治維新からの150年の節目でもあるが、
その150年の中で、この30年の変化はとても大きかったと思う。

 

■ビール系の30年
サントリーが発泡酒「ホップス」を出したのが1994年。
サッポロが第三のビール「ドラフトワン」を出したのが2004年。
地ビール(今のクラフトビール)が解禁になったのが1995年。
いずれも平成の出来事。

スーパードライ、次いでプレミアムモルツがヒットしたのも平成。
0.00%ノンアルコールが出現し定着したのも平成。

いろいろな取り組みがあったが、
ビール単体のピーク1994年の710万KL、
ビール系総量のピーク1998-99年(平成元年)の720万KLが
2018年は
ビール単体で260万KLくらい、
ビール系総量で500万KLくらい。

総量としては30年で30%くらい縮小した。
これから2026年にかけてビール系3種の税金差がなくなるわけだけれど、
今後も総量が増えるとは考えにくい。

 

■清酒の30年
級別が廃止されたのが1993年。
三増酒が禁止されたのは2006年。
いずれも平成の出来事。

吟醸酒や精米度合いが重要になり、地酒が注目され、
輸出が伸びたのも、平成(というより21世紀)の出来事。

30年前は、清酒輸出はほぼ大手によるもので地酒は稀だったが、
今や量で半分、金額では7割が地酒による輸出である。
地酒の蔵元が世界を旅する時代になった。

容器としては紙パックが大きく増えた。
一升びん:それ以外の容量のびん:紙パックの推定比率は、
30年前= 50%:30%:10%強
現在=     7%:38%:51%
紙パックが安価に販売される戦略だった影響で、
清酒の平均実売価格は下がっただろう。
世界的に見て、ワインやウイスキーに比べて、
清酒はガラスびん比率が極めて低い酒類となった。

課税数量で見ると
1973年のピークの年が980万石、
1989年(平成元年)が750万石、
2018年は300万石以下。
ピークから1/3以下、平成の30年間で1/2以下となった。
蔵元(清酒免許保有者)の数も、
平成元年で2,400くらいあったものが
いまは1,600くらい。800以上減少した。

まだしばらくは国内需要の減少傾向が続くと思うけれど、
海外市場の成長もある。
2030年頃までには国内生産は増加に転じるのではないかと、
個人的には思っている。

 

 

■ワインの30年
1990年代が助走期間、21世紀に入って飛躍した、
というのが日本のワインの30年史。
醸造技術、栽培技術が飛躍するのを目の当たりにし、
合わせて日本ワインの国内市場も形成された30年だった。
また少量とはいえ、世界に向かっても甲州が輸出される時代が来るとは
30年前には想像できなかった。

多くの人がワインづくりに夢を持って取り組んでいる。
正確な数字を持ち合わせていないが、
30年間で100以上の新規ワイン醸造所が立ち上がったと思う。

びん内二次醗酵(シャンパーニュ)方式のスパークリングを製造するワイナリーは
30年前にはなかったと思うけれど、
今では30程度が製造に取り組んで、高い品質のものができている。

ワインの国内需要(国産+輸入)は、
30年前の1989年(平成元年)が10万KL程度だったものが、
1998年にいったん30万KLまで急成長した後、
2004年頃にかけて22-23万KLまで減少し
その後再び増加傾向に転じて2018年は38万KL程度。
輸入:国産は7:3程度、
日本のブドウによる日本ワインは全体の数%だろう。

食生活の変化を考えると
ワイン消費はこれからも伸びると考えるが、
輸入か、国産か、日本ワインか、
どのセグメントがもっとも伸びるのかは、予測がむつかしい。

 

■本格焼酎の30年
■ウイスキーの30年
■梅酒・和のリキュールの30年
■シードルの30年
なども大きな変化があったが、長くなるので割愛。

 

たった30年間だが、
どの酒類にとっても平成の30年間は、
予測できなかった意外な展開の連続だったように思う。

 

 

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勝手なことを長々書きました。放言、ご容赦ください。

今年も押し詰まりました。暮れのご挨拶を申し上げます。

 http://www.kitasangyo.com/2019message/message_2019.html

 

(↑「5か国語クリスマス&年賀のカード、
それに、年末年始の休日のご案内」)

 

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 従来からの会社方針、

  「清酒、焼酎、泡盛、
ビール、ワイン、ウイスキー、リキュールなど
酒類産業全方位で高い存在価値のある企業を目指す」

  「[他社と違う独自の技術や商品企画]を志し、
[アカデミック]で、[デザイン力]で勝負できる企業」

 をさらに高いレベルで実現して、
皆様のお役にたつよう取り組んでまいります。
2019年も、なにとぞ宜しくお願いいたします。

 

 そして、毎年書きますが、
2019年は、アメリカ、ヨーロッパ、アジア、そして世界が、
政治的・経済的・環境的・気象的・・・いろいろな意味で、
穏やかで、平和であることを願っています。

           きた産業株式会社 代表取締役 喜多常夫

 

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