●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.249 ●▲■
発行日:2019年3月14日(木)
■ アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報 ■

発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com

 

------------------< 目 次 >------------------

<酒ブック紹介> ワイン編

●▲■その1:「歴史の中のワイン」
・・・「ワインの世界史」 と合わせて読むべし
●▲■その2:「日本ワイン誕生考」
・・・山本博さん曰く「率直に言って驚きました」
●▲■その3:「ボルドーでワインを造ってわかったこと」
・・・サブタイトルは「日本ワインの戦略のために」
●▲■その4:「葡萄の涙・ブルゴーニュワイン修業記」
・・・還暦を過ぎた第2の人生でワイン醸造を
●▲■その5:「新ワイン学」
・・・20年前の「ワイン学」と読み比べるべし
●▲■その6:「今夜もノムリエール」
・・・メルローは「頼れる上司」、シャルドネは「アイドル」

                      text = 喜多常夫

 

ご紹介情報●1▲ ブログ「FOODEX2019に出展」
ご紹介情報●2▲ TIPS「日本の清酒・ビール・ウイスキーの
グローバル化実態とその背景」
ご紹介情報●3▲ 「ワールド醸造所訪問記」

 

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久しく、お酒の本のことを書いていなかった。
今回は、去年から今年に読んだワイン関係の6冊の紹介。

 

 ●▲■その1:「歴史の中のワイン」
(山本博著、文春新書、2018年8月第1刷、830円+税)

 

「猿酒伝説はあり得ない」、から書き起こしているのは、
ワイン歴史書として完璧を期している事が感じられる。
次いで
メソポタミア、エジプト、ギリシャ、ローマ、、、とワイン史を俯瞰。

 

 ●「グーテンベルグ印刷機はワイン圧搾機をヒントに発明された」
●「ローマ時代、帰宅した夫は妻にキスをしたが、それは
留守中に妻がワインを飲まなかったか確かめるためだった」
●「ワインにとって画期的発明である木製の樽は、
石造りのアーチ建築にヒントを得たのかもしれない」
など、面白い(本当かなあ、とも思う)エピソードもちりばめられる。

  「20世紀の最後のクオーター(四分の一)に
ワインの世界地図が塗り替えられた」
とは、指摘されて改めてその通り、
ワインの長い歴史で重大なことだ、と合点がいくのだが、
そういった現代史についても独特の視点で分析。

後半は、
著者以外だれも経験しえなかっただろう、
夢のようなワイン醸造所の実地訪問体験を踏まえ、
ロマネ・コンティ、ディケム、ラフィット、モンラッシェなどの逸話を語る。
帯封には「本当の”神の雫”はどのワインなのか?」とある。

世界中で、山本さんしか書けない本だと思った。
同じ著者の「ワインの世界史」(日経ビジネス人文庫、2018年3月第1刷、
2010年出版の「ワインの歴史」の文庫版)と合わせて読むべし。

山本さんは書きたいことがあふれているらしく
どちらの本も文字がぎっしり詰まっていて、
相当ワインの知識がないと読みにくいが、
ワイン通、ワイン好きなら読むべき本。

 

 

 ●▲■その2:「日本ワイン誕生考」
- 知られざる明治期ワイン造りの全貌
(仲田道弘著、山梨日日新聞社、
2018年5月第1刷、2,900円+税)

 

「率直に言って、驚きました」
と、前掲の著者の山本博さんが、あとがきに感想を寄せている。

仲田さんはワイン振興にかかわる山梨県の職員。
ワイン史として初めて引用されるだろう多くの資料をもとに、
山梨を中心とした日本のワイン産業の歴史について、
今まで知られていない新事実を書いている。

従来、ワイン留学の始祖とされる、
明治10年の高野正誠・土屋龍憲のフランス留学前に
桂二郎(のちの大日本麦酒社長)がドイツにワイン留学していたが、
それには山梨県がお金を貸し付けていた。

また、
(甲府の勧業場付属醸造所の)大藤某は
米国カリフォルニアでワイン事業を8年間履修して明治9年に帰国
ともある。

この本では触れられていないが、
のちに「カリフォルニアのワイン王」と言われた
薩摩出身の長澤鼎(かなえ)が引き継ぐワイナリーは、
明治8年からすでに存在していたし、
カリフォルニアでブドウ栽培やワイン産業に従事した日本移民は、
明治初期には多かったのだと思う。

 

明治時代、ワイン醸造に麹を使おうとした事も興味深い。
(現在、台湾の酒類大手TTLは、紅麹ワインを造っている。)

 

山梨のワイナリーを訪れたことのある人、
山梨に土地勘がある人には、より面白く読める。

■甲州葡萄酒→山梨葡萄酒試験所→東洋葡萄酒
→(現)サドヤ醸造場、の所在地の変遷
■甲府城内にあった県立醸造試験所はじめ昔の山梨の写真
■日本ワイン誕生の地「大翁院」の特定とその住所

など、山梨を知る人には興味深い。

 

大正4年(1915年)のワイン生産は
●全国427場、醸造量2,560石(460KL)
と本書に記載されている。

100年を経た現在は
●全国300場くらい、国産ワイン12万KLくらい
生産量は100年で250倍以上になった。
場数は、あと5年くらいで大正4年並みになるのではないか。

 

最終章は「甲州葡萄の伝来」について5節の分量で書いている。
いまや、ロンドンやパリで日本の甲州ワインが売られる。
近年(この5年、10年)の関係者の努力はもちろん大きいが、
150年の夢が結実した、というべきだろう。

 

 

 ●▲■その3:「ボルドーでワインを造ってわかったこと」
- 日本ワインの戦略のために
(安蔵光弘著、イカロス出版、2018年9月第1刷、2,600円+税)

 

著者はメルシャンのワイン醸造技術者。
かつてメルシャンがボルドーに所有していた
Ch.レイソンの畑と醸造所で、2001年から4年2か月働き、
またボルドー大学でワインの勉強をした記録と考察。

前半の「栽培編」「醸造編」「改植編」は、
実際にワインを造る人だからこその専門的な内容。

  ■「3haのブドウ畑区画を24回サンプリングすると
10km以上歩くことになる」
■「梗は徹底的に取り除く」
■「4KLタンクを100L/分のポンプでルモンタージュしたら
40分で全量が循環。強めなら60分、弱めなら20分」
■「クローン全盛に対する反省として、
古い畑で優秀な株を選んで接ぎ木苗をつくる」

など、実務経験のない身には、リアリティーを教えられる。

 

後半の「歴史編」「テイスティング編」「生活編」は前半とは全く違う内容。

「歴史編」を読むと、
1855年万博出品や原産地呼称創設など「慧眼の戦略」と、
フィロキセラ被害や英国王室との婚姻など「偶然の産物」の
両方が今のボルドーの価値を作ったことがわかる。

「生活編」では牡蠣のことも書かれている。
行ったことのない人はピンとこないかもしれないが、
ボルドーの生牡蠣は美味しい。

余談ながら、、、
私はワイン機械の輸入をしている関係もあり
1990年代から10回以上ボルドーに行っているが
ダウンタウンの、とある牡蠣専門店が楽しみだった。
(今は閉店。坂口謹一郎さんが「世界の酒」で1950年代に滞在した、
ホテルツルネー(も今はないが、あっただろう場所)の近所にあった。
Ch.ラグランジュの鈴田さんに教えてもらった)
生牡蠣1ダースに、どいうわけか焼きたてのソーセージがつく。
赤ワインでも牡蠣にあうのは、ボルドー故か。

 

本書は2007年発行の「等身大のボルドーワイン」を改訂したもので、
2015・2016・2017年の日本の収穫実績など、
新しい情報も追加されている。

サブタイトルは「日本ワインの戦略のために」。
現在日本では、何十人もの人がワイン造りを志している。
そんな人はぜひ読むべき一冊。

 

あとがきには、ボルドーに行く直前の麻井宇介さんとのエピソードが書かれる。
麻井さんに薫陶を受けたワインメーカーは多い。
その著作は今も多くの人に愛読される。
麻井さんが日本のワインに与えた影響はとても大きい。

 

 

 ●▲■その4:「葡萄の涙・ブルゴーニュワイン修業記」
- 還暦の挑戦
(榎本登貴男著、幻冬舎、2016年12月第1刷、1,300円+税)

 

ブルゴーニュの畑と醸造所で実習し、
ボーヌやモンペリエでワインの勉強をした、
2012年から2年9か月の記録とエッセイ。

ご夫婦で滞在してワインに取り組むのは前掲本と同じだが、
この本の著者と、前掲の安蔵さんとは全く境遇が違う。

ワインやお酒とは何の関係もない大手企業を、定年目前に退職し、
60歳代の第2の人生で、ワイン醸造を志した。
(普通なら、日本でやるべきところ)
渡仏してブルゴーニュで修業を始めた、という変わり種。

経験も専門知識もゼロの還暦の日本人が、
いきなり2012年の秋の収穫シーズンから
若い人たちと畑仕事に入り、授業を受ける。
年齢的にとても大変。
まさに涙が出そうになる日々をこなしていく奮闘記。

 

半分は、ブドウ栽培、ワイン醸造の実務事情で、大いに参考になる。
半分は、アパート探し、トイレ事情、学食での交流、バカンス旅行、、、
などの生活エッセイで、読み疲れない。

著者は写真好きなのだろう、畑や醸造現場の写真以外に、
風見鶏、カタツムリ、野菜などの美しい写真、
そして多くの犬の写真がある。(筆者は日本から老愛犬を連れてきている)

 

余談ながら、、、
「ぶどうのなみだ」という映画が以前あった。本書と同名である。
北海道でピノ・ノワールを作る話。

映画ついでに書くと、
「おかえり、ブルゴーニュ」という映画を昨年見た。
ドメーヌを営む父親が亡くなって、10年ぶりに実家で再会した3兄妹。
3人はそれぞれ問題を抱え、葛藤しながらワイン造りに挑む、という物語。
ブルゴーニュの自然の美しさが際立って感じられる作品だった。

 

前掲本はボルドー、この本はブルゴーニュ。
ボルドーかブルゴーニュか、、、ワイン好きにとって志向や嗜好が二分するところだ
が、
年齢とともに、ブルゴーニュの魅力にひかれるのかもしれない。

 

 

 ●▲■その5:「新ワイン学」
(戸塚昭・東條一元 編集幹事、ガイアブックス、
2018年12月第1刷、3,400円+税)

ちょうど20年前の1998年12月に前身の「ワイン学」が出版されている。
書架から取り出してみると表紙デザインは同じ。

リベロ・ガイヨンさん(ボルドー大学教授)のフランス語前書きが原文で掲載され、
鈴田健二さん(Ch.ラグランジュ)が和訳している。
日本ワインの精鋭40人ほどが分担して執筆しているが、
その中には、今回の「新ワイン学」の編集幹事のお二人もいる。

 

「ワイン学」「新ワイン学」の新旧2冊を見比べると、
栽培や醸造の20年の進歩や、変化を読み取れる。

旧本では「ブランデー」に1章が割かれているが、
新本ではブランデーの記述はなくなり
「スパークリングワイン」のページ数が2倍に増えている。

(20年前はシャンパーニュの参考書がほとんどなかった。
はじめてシャンパーニュに行ったときは
旧本の該当ページを切り取って持参し、繰り返し読んだものだ。)

ブドウ品種についても、
旧本では甲州種についてはほとんど触れられず
CS、メルロ、シャルドネと並んで、セミヨンが取り上げられている
新本は甲州の遺伝子の研究やベーリーAについて書かれている。

醸造技術についても、
新本では日本の技術や日本的解釈を多く盛り込んでいる。
20年の日本ワイン産業の進歩だろう。

醸造機械情報も20年分アップデートされているが
ほぼすべて外国製機械の紹介である。
20年後の2038年に出る「新々ワイン学」では
日本製のワイン醸造機器が出現しているだろうか。

なお、
旧本は429ページ、4,660円、執筆者40人弱
新本は291ページ、3,400円、執筆者20人弱
内容を絞ったこともあるが、20年後の新本の方が価格が安いのは驚く。

 

出版元のガイアブックス(元の産調出版)は、マニアックな翻訳本を多く出してい
る。
ワイン関係の書籍は多く、代表格はヒュー・ジョンソンの「世界のワイン」。
最新版第7版の和訳がでていて、こちらは1万2,000円。

 

 

 ●▲■その6:「今夜もノムリエール」(マンガ)
(イセダマミコ著、星雲社、2016年2月第1刷、980円+税)

 

著者は山梨在住の女性漫画家。
四国から上京して漫画家になったが、
出版不況で連載が減って、経済的に楽な山梨に移住したそう。

ノムリエールとはソムリエール(女性ソムリエ)に引っ掛けた、
ワイン好き女性の意味だろう。

ワインバーやワインに合う料理などをマンガで表現。
キャラクター表現は、ちびまる子ちゃん的。

「品種をキャラで妄想してみた」では、
メルローは「頼れる上司」、シャルドネは「アイドル」
とワイン品種を紹介。

ワイン通がみたらツムジを曲げそうだが、
ワインに詳しくなくても、
楽しくおいしくワインが飲める事が大事ではないか
と気づかせる一冊。

「神の雫」や「ソムリエール」など、
ワインのマンガは「シリアス」で「プロフェッショナル」なものが多いが、
「チャラけた」(失礼)のワインマンガも、可能性を感じさせる。

この本は山梨で話題になって、
甲府商工会議所からの依頼で新しく描いた
「甲府でもノムリエール」はネットで公開されている。
実名で甲府のレストランやワイン(清酒も)を紹介・PRしている。

 

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ネットを見ているとAmazonの書籍紹介には
「売れ筋ランキング」というのがついているのを見つけた。
同じカテゴリー内で売れた数でランク付けをしているのだと思う。

出版時期の影響が大きいと思うが、
今回紹介した6冊の、
2019年3月13日現在の「ワイン本」の中でのランキングは

              「歴史の中のワイン」                143位
「日本ワイン誕生考」               282位
「ボルドーでワインを造ってわかったこと」   57位
「葡萄の涙・ブルゴーニュワイン修業記」   306位
「新ワイン学」                                    24位
「今夜もノムリエール」               242位

因みに、Amazon「ワイン本」売れ筋ランキングベスト3は:

              1位 「酒好き医師が教える最高の飲み方」
2位 「教養としてのワイン」
3位 「図解ワイン1年生」

ワイン本には様々な切り口があるが、
やはり、健康系や入門書系が売れ筋なのだろう。

 

 

<酒ブック紹介>は、次回も続く予定。

                      text = 喜多常夫

 

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さて、商品紹介です。

 

●▲■ ご紹介情報 その1  ●▲■

ブログ「FOODEX2019に出展」
https://blog.goo.ne.jp/kita-slow_blog

 

恒例の会場アンケートは「世界のクラフト・サケの試飲」。
スペインの「絹の雫」、カナダの「OSAKE」、シアトルの「タホマ富士」の
利き酒クイズを行いました。

当社ブースにお立ち寄りいただいた皆様、ありがとうございました。

 

●▲■ ご紹介情報 その2  ●▲■

 

TIPS「日本の清酒・ビール・ウイスキーの
グローバル化実態とその背景 I (日本酒)」
http://www.kitasangyo.com/pdf/e-academy/tips-for-bfd/BFD_49.pdf

 

当社のPR誌「酒うつわ研究」最新号に掲載されたTIPS。
「全国の清酒蔵元の35%が従業員3人以下」
というデーターにはちょっと驚いたが、
「その家業化がかえって新しいブランド価値や競争力を高める」
という分析は興味深い。

 

●▲■ ご紹介情報 その3  ●▲■

 

ワールド「醸造所訪問記」
http://www.kitasangyo.com/archive/world-winery-travelogue.html

 

当社社員が出張で訪問した世界のワイン銘醸地の記録。
機械屋なので、醸造設備の写真を多く掲載。
ボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュなどの情報は数本あり。

 

 

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http://www.kitasangyo.com/Archive/mlmg/BN_top.html

2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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