●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.251 ●▲■
発行日:2019年4月24日(水)
■ アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報 ■
発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com
------------------< 目 次 >------------------
「アメリカとカナダ」、「東海岸と西海岸」のクラフトビール観察記
●▲■アメリカ・東海岸の「ザ・ボストン・ビア・カンパニー」
売上・利益は、「霧島酒造」+「三和酒類」=「サムアダムス」
●▲■アメリカ・西海岸の「レッドフック」(の工場跡地)
30%以上をAB InBevが保有ゆえ、クラフトの定義に合致せず
●▲■カナダ:東の「スチーム・ホイッスル」と西の「パラレル49ブルワリー」
text = 喜多常夫
ご紹介情報●1▲ 缶ビール充填機「G-Tron」と「Beer Radix」
ご紹介情報●2▲ 「Z&Nエアテスター」「スプンド弁」「ラボ用製麦機」など
ご紹介情報●3▲ K2「ガラスびんカタログ」、ビールびん一挙20種掲載
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2017年に東のアメリカ・ボストンとカナダ・トロントで、
2018年に西のアメリカ・シアトルとカナダ・バンクーバーで、
北米のクラフトビール醸造所を訪問した。
ずいぶん時間がたったが、記録をまとめたので、その紹介。
日本と北米のクラフトビールは
「市場サイズ」 は桁違いだが、
「全体としては活発・個々には明暗」 というのは共通である。
●▲■アメリカ・東海岸のボストン:
「ザ・ボストン・ビア・カンパニー」
(銘柄は「サミュエル・アダムス」、略して「サムアダムス」)
Jim Koch(ジム・コックまたはコッチ)さんが、1984年に創業。
銘柄名の「サミュエル・アダムス」は、
アメリカ人なら知っているボストン出身の18世紀の政治家のフルネーム。
日本で言えば、「山口県にできた伊藤博文ビール」という感じか。
サムアダムスは、クラフトビールながら、
NY証券取引所に上場している。
2017年のアニュアルレポートによれば、
売上9億2,200万ドル=1,000億円強
純利益9,900万ドル=約110億円
($1=\110換算)
売上と利益は、ほぼ、
「芋焼酎トップの霧島酒造」+「麦焼酎トップの三和酒類」=「サムアダムス」。
といえば、
酒類関係者なら、その優良ぶりがわかるだろう。
(注:本校執筆時点で、2018年のアニュアルレポートはまだ未公開)
2017年の生産量は380万バレル=44.6万KL
「サッポロ」の、2018年の日本国内の生産量は
ビール37.9万+発泡酒3.2万+第三15.4万=合計56.6万KLなので、
「生産量で日本のサッポロの8割規模」という巨大さでもある。
アメリカのBA(Brewer’s Association、クラフトビールの団体)が公表した
2018年クラフトビールランキングでは「サムアダムス」は全米2位である。
1位は「イングリング」という19世紀初頭から続く老舗醸造所だが、
「クラフト」という概念ができた1980年代以降の醸造所として
「クラフトの実質1位はサムアダムス」というのがアメリカ人の共通認識。
サムアダムスは、大手を含めバドワイザーから数えても9位につけている。
ボストンで、サムアダムス醸造所見学ツアーに参加した。
見学できるのは創業した場所の小さな醸造所のみ
(大規模工場は見学謝絶)、ということもあるが、
巨大企業ぶりは全く感じさせず、「クラフトそのもの」であった。
ボストンには、20年以上前、
1996年にもCBC(クラフト・ブルワーズ・カンファレンス)で来たことがあるが、
その時点ですでに、サムアダムスはクラフトビール成功譚の筆頭格で、
創業者のジムはアメリカンドリームだった。(IT産業がなかった時代だから余計)。
その頃、日本の日経新聞に顔写真入りで紹介されたこともあったのを記憶する。
20年以上、成功譚を継続しているとは誠に見事である。
アニュアルレポート(決算書)に毎年必ず、
「ジム本人が創業以来何杯のボストンラガーを飲んだか」
を記している。
「2017年現在で、2万5,000杯(!)」
飲んだそうだ。
(例えば、、、本田宗一郎氏が存命のころは、
ホンダのバイクや自動車を、自分で毎年何万kmも運転していたに違いない。
その距離数が、ホンダの決算書に毎年書かれているようなものだ。)
毎年およそ800杯、自分で飲んで品質を確認することを30年以上継続。
そんな一途さ、熱心さが、クラフトとしての成功継続の源泉かもしれないと思った。
成功したら事業を売って悠々自適、というアメリカ的パターンとは相当異なる。
●▲■アメリカ・西海岸のシアトル:
「レッドフック」(の工場跡地)
西海岸のシアトルは世界に冠たるアマゾンやスターバックスの本拠だが
クラフトビールの聖地でもある。
早速シアトルの街中で、昔から有名なブルーパブ、「エリシアン」に入った。
ツーリストが多い場所からやや離れたキャピトルヒルという場所だが、
平日の昼間にもかかわらず、地元客中心でほぼ満席。
「ワシントン州ビールガイド2018年版」という冊子が置いてあった。
ブルーパブとクラフトビール醸造所ぎっしりと書き込まれている。
その軒数を数えると、
シアトルだけで68
シアトルを含むワシントン(WA)州全体では374
もある。
374は、日本全体のクラフト醸造所数より多い。
(2018年現在、日本のクラフト醸造所は300強)
シアトルも20年ほど前にCBC(クラフト・ブルワーズ・カンファレンス)で来たが、
そのときもエリシアンに入ったように思う。
LGBTを支持する「レインボーフラッグ」が店にかかること
メニューに「YUZU(柚子)エール」があること
などは今風で、20年前にはなかったことだけれど、
概ね20年前と同じような店内装飾、醸造設備に見えた。
20年変わらなくても店が流行っているのは、
フレッシュなクラフトビールの魅力だろう。
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話は飛ぶが、2019年3月にBA(クラフトビールの団体) が公表した、
「2018年クラフトビール生産量ランキング、トップ12」は以下のごとし。
1位:D. G. Yuengling & Son (PA州)
2位:(前掲の)The Boston Beer Company (MA州)
3位:Sierra Nevada Brewing (CA州)
4位:New Belgium Brewing (CO州ほか)
5位:Duvel Moortgat (CA州ほか。ベルギーが本拠)
6位:Gambrinus (TX州ほか)
7位:Bell’s Brewery (MI州)
8位:CANarchy (CO州ほか)
9位:Stone Brewing (CA州)
10位:Deschutes Brewery (OR州)
11位:Artisanal Brewing Ventures (PA州ほか)
12位:Brooklyn Brewery (NY州。キリンが出資)
昔は上位グループにシアトル発祥のRedhook (レッドフック)があったはずだが、、、
今は見当たらない。
20年前にCBCでシアトルに来た当時の「東西横綱番付」は、
東の「サムアダムス」(MA州)
西の「レッドフック・エール」(WA州)と「シェラネバダ」(CA州)
といった感じだったので、CBC見学コースに、
シアトル郊外の「レッドフック」の大きな醸造所も組み込まれていた。
三角屋根が印象的な大規模な工場だったのをよく覚えている。
場所は、シアトル市街から車で30分ほどのウーディンヴィルという場所。
ウーディンヴィルは、今やワイナリーとクラフト蒸留所で有名な街で、
今回、クラフトウイスキー見学の目的で訪問したのだが、
その途中、かつての「レッドフック」の工場の横を通ると、、、
三角屋根の工場は閉鎖され、タンクを搬出する準備中だった。
帰国後、調べてみたところ、、、
レッドフックは2008年に、同じく有力なクラフトブランドのウィッドマーと合併して
CBA(クラフトブリューアライアンス)という会社となっていた。
現在は複数のクラフトブランドを傘下に持つ会社として、NASDAQに上場している。
CBA社の生産量(71万9,000バレル@2018年)からすると、
上記の「2018年クラフトビール生産量ランキング」で
4位のNew Belgiumと5位のDuvel Moortgatの間に来るはずが、
リストに入っていない。。。。
事情を調べてみると、CBA社の株の30%以上を
AB InBev(世界最大手バドワイザーの、アンハイザーインベブ)が持っている。
故に、BAのクラフトの定義(「大手酒類企業の持ち分が25%未満」)に合致しない、
したがってBAはCBA社やレッドフックをクラフトとは見なしていないのだ。
サムアダムスとCBA社(レッドフック)は両社とも、
株式上場をはたした成功者で、上場後もしたたかに経営しているものの、
サムアダムスと比較すると、レッドフック単独ブランドとしての勢いは衰えたよう
だ。
レッドフックのウーディンヴィル工場の稼働率は思わしくなく、
それが工場売却の一因らしい。
資金効率にシビアであろう、AB InBevの意向もあったのかもしれない。
CBA社の現在の主力ブランドはハワイの「コナ」と書いてある。
レッドフックは、先述のエリシアンのある場所、キャピトルヒルの、
小規模なブリューパブ注力に回帰するそうだ。
時代はめぐる。。。
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アメリカで最近クラフトビールを飲むと、
ビンをさかさまにしたデザインの
「インディペンデント・クラフト」の共通ロゴマークをつけたものがある。
サムアダムスのビン製品もこのマークを付けている。
有力なクラフトビールが、AB InBevなど大手に次々買収される中、
独立資本を守っているという意味で、BAが定めたマーク。
レッドフックは当然、マークがつかない。
サッポロが2017年、100%買収した、
サンフランシスコの「アンカースチーム」もマークが使えないのだと思う。
因みに、上記のランキング表12位の「ブルックリンブルワリー」への
キリンの出資は有名だが、その出資比率は24.5%。
故に、ブルックリンはBAの定義でクラフト範疇とみなされる。
どこまでがクラフトなのかはむつかしい問題である。
消費者から見れば、
レッドフックもアンカーもブルックリンも、すべてクラフトだ。
一方、「サッポロの8割規模」で「全米のどこでも飲める」
サムアダムスは、クラフトなのか?と思う人もいるだろう。
クラフトビールは
「20年で大きく変わった」こと
「規模が大きくなればブランド維持戦略が難しくなる」こと、
「全体としては活発・個々には明暗がある」こと、
などを痛感させられた訪問だった。
●▲■カナダ東部のトロント:「スチーム・ホイッスル」
●▲■カナダ西部のバンクーバー:「パラレル49ブルワリー」
日本ではあまり知られていないブランドだと思うが、
どちらもカナダで中~大規模に属するクラフトブルワリー。
(日本の大手、エチゴ、ヤッホー、コエド、木内さんクラスの生産規模)
「スチーム・ホイッスル」では一般見学者に交じってのツアー。
「パラレル49ブルワリー」では、
ブルワーを務める日本人の塚田さんに丁寧に案内していただいた。
カナダの醸造所は、アメリカとは、なんとなく雰囲気が違う。
カナダの醸造所2軒のこと、および、前述のボストン、シアトルの醸造所については
以下の写真資料で見てください。
●▲■ アーカイブ資料
「アメリカとカナダ、東海岸と西海岸のクラフトビール」 全11ページ
http://www.kitasangyo.com/pdf/archive/world-alcoholic/us-can_beer.pdf
上記資料に写真があるのだけれど、当方設備屋なので、
「びん詰め機」「缶詰め機」「樽洗浄・充填機」のメーカーを抜き書きしておきま
す。
「スチーム・ホイッスル」は:
ドイツの「KRONES」、ドイツの「KRONES」、ドイツの「M+F Keg Technik」。
「パラレル49ブルワリー」は:
イタリアの「KOSME」、アメリカの「Wild Goose」、アメリカの「IDD」。
なお、KOSMEは現在、KRONESの傘下、
Wild Gooseは日本でもおなじみメヒーンと経営統合している。
また、「パラレル49ブルワリー」では、
試験用ブリューハウス(釜)が中国の「LEHUI」製、
タンク類も中国製が多かったのが印象的だった。
ビールも、ワインも、蒸留酒も、そしてクラフト・サケでも、
北米では「中国製設備」が本当に多い。
設備の分野も、移り変わりが激しい。
そのほか、アーカイブ資料には、
「窒素ガスコーヒー」:シアトルのスターバックスと、日本の2か所
「ビア・インフューザー」:パラレル49と、日本のスプリングバレー
ブドウ畑がないのにワイナリー集積地になった「ウーディンヴィル」
等の情報も含みます。
<窒素の関連資料>
ビールの「ウイジット」参考情報
http://www.kitasangyo.com/pdf/e-academy/n2-o2-co2-gas/Widget_info_ed03_1.pdf
「ビールへの窒素ガス利用」
http://www.kitasangyo.com/pdf/e-academy/n2-o2-co2-gas/Nitrogen_for_Quality_o
f_Beer.pdf
窒素ガス・コーヒーサーバー「ナイトロン」
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/gas-lab/Nitron_server.pdf
text = 喜多常夫
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さて、商品紹介です。
●▲■ ご紹介商品 その1 ROOTSディビジョン ●▲■
缶ビール充填機「G-Tron」
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/G-Tron.pdf
缶ビール充填機「Beer Radix」
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/Beer_RadixIV_J.pdf
ルーツ機械研究所製の缶詰機。
最近の納入実績:北海道Aビール、京都Kビールなど。
ビールの缶詰めはお任せください。
●▲■ ご紹介商品 その2 ROOTSディビジョン ●▲■
Zahm&Nagelの「エアテスター」
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/gas-lab/Zahm&Nagel-Airtester_ed03-hq.p
df
Zahm&Nagelの「主な消耗品パーツリスト」
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/gas-lab/ZN_Parts_ed03wop.pdf
「エアテスター」のデジタル版
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/gas-lab/BQSL_DGV1.pdf
ビールタンクの「スプンド弁」
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/gas-lab/supund.pdf
ラボ用製麦機「マイクロモルティング・システム」
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/gas-lab/Phoenix_seibaku.pdf
「エアテスター」は、クラフトビール醸造所の必需品。
大手ビール各社でも使用。
「スプンド弁」は、ドイツB+K社のものを販売。
各種の仕様を準備。
ラボ用精麦機は、オーストラリアのフィニックス・バイオシステム社の製品。
大手精麦メーカー、大学、研究所などに納入実績。
ビール関連の器具・設備もお任せください。
●▲■ ご紹介商品 その3 K2ディビジョン ●▲■
K2「ガラスびんカタログ」、ビールびん一挙20種掲載
http://www.kitasangyo.com/ebook/
K2「ガラスびんカタログ」を更新しました。
39~43ページに、最新のビールびんのラインナップ20種を掲載しています。
プレミアム、スタンダード、軽量など、
クラフトビールの330mlびんの選択肢が多くなりました。
ビールの資材、充填機の事なら、きた産業!です。
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2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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