●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.254 ●▲■
発行日:2019年8月19日(月)
■ アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報 ■
発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com
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北欧にて、、、
●▲■ 「アルコール度数4.7%、3.5%、5.5%、2.25%」 「ビール75年間禁止」
●▲■ 「ノルウェーとスウェーデンでの日本酒体験+インポーター観察」
●▲■ 「恁筅」「神息」「冬」「不死身」「名聲」:ジャパニーズ・ウイスキー
text = 喜多常夫
ご紹介情報●1▲ 「K2ガラスびんカタログ 2019年版」
ご紹介情報●2▲ 「炭酸ガスボリューム測定器と炭酸飲料試作機」
ご紹介情報●3▲ 「日本の清酒・ビール・ウイスキーのグローバル化実態とその背
景」
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●▲■ 「アルコール度数4.7%、3.5%、5.5%、2.25%」
この数字は何か?
わかる方は、世界の酒類規制事情に相当詳しい。
たいていの国ではお酒の販売はライセンス制である。
日本では、21世紀になって大幅に規制緩和され、
ビールも清酒も焼酎もワインもウイスキーもRTDも、
今や街中のスーパーやコンビニで24時間買えるので、
規制なしが如しだが、酒販免許制度はちゃんとある。
レストランやバーでお酒を出すのも免許が必要な国も多い。
アメリカでは、州によっても違うが、
ビールやワインは出せても(ソフトリカー免許は取れても)、
ウイスキーや焼酎を出せない店は多い(ハードリカー免許は取りにくい)。
だが我々は、
少なくとも欧米先進国では、免許さえ取得すれば、
民間企業・お店がお酒を販売できるのは当たり前、
と考えがちである。
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あまり知られていないのではないかと思うが、
北欧5か国のうち4か国では、
お酒は「専売」で1社独占、民間経営の酒販店はない。
レストランやバーで、ビール、ワインなどは飲めるけれど
自宅持ち帰り用のお酒は、政府系専売店でしか買えない。
たとえばノルウェーでは、
「4.7%以上」のアルコール度数のお酒は、
「ヴィンモノポレット」という政府系専売店でしか買えない。
(語感からわかる通り、「ワイン独占店」の意味)
首都オスロのスーパーやコンビニに行くと、控えめに、
缶ビールや缶シードルを置いているが、手に取ってみると
アルコール度数は4.5%、すなわち規制値以下。
ハイネケンやカールスバーグなども置いてあるが、
オリジナルの5%から4.5%に落としてある。
そして専売店は平日18時まで、土曜15時まで、日曜は閉店。
スーパーでも、日曜や夜間はアルコール含有飲料は買えない。
他の北欧3か国でも専売制度になっていて、
各国の専売の基準は
スウェーデン:「3.5%超え」
フィンランド:「5.5%超え」(2018年に4.7%から緩和)
アイスランド:「2.25%以上」
つまり冒頭記載の数字は、
「北欧4か国のお酒専売の基準」というのが正解。
オランダ・デンマークでは5%のハイネケンやカールスバーグは、
ノルウェーのスーパーでは4.5%、
スウェーデンのスーパーでは3.5%で売っている。
(独白:飲み比べするのを忘れていた、残念!)
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「専売」というと、
日本の「専売公社」を思い出す人もいるのではないか。
戦前と戦後、タバコ、塩(樟脳も)は専売公社だけが売っていた。
1985年に、現JT(日本たばこ)に移行して解散した。
お酒は、日本国内では専売でなかったけれど、
戦前の台湾総督府でお酒の専売制度を実施していた。
台湾総督府専売局は、戦後は台湾政府公売局として受け継がれ、
今は民営化され、TTL(台湾タバコリカー社)という会社となり、
台湾市場で圧倒的シェアをもつ。
これら日本の専売制度の主目的は
「利益の独占管理」と「徴税効率化」だった。
ただ、最終販売は民間の店舗が行なっていた。
一方、北欧のお酒の専売は事情が全く違う。
「アルコール消費を減らす」ことが目的である。
最終販売も自社の直営店に限定している。
19世紀後半から20世紀初頭、北欧4か国では
市民の大量飲酒による社会的・健康的弊害がとてもひどかった。
その反動で、国として禁酒法やアルコール制限を実施した。
その歴史的経緯が、今のお酒の専売制度につながっている。
北欧4か国の禁酒法や制限法は1910年代に始まっていて、
有名なアメリカの禁酒法prohibition-1920年から-より早い。
ノルウェーでは、
1916年から1927年まで蒸留酒が禁止
1917年から1923年まで酒精強化ワインとビールが禁止
1922年に専売店の「ヴィンモノポレット」が設立
された。
戦後に台湾政府に引き継がれた「台湾公売局」は、
2002年の台湾のWTO(自由貿易促進の国際機関)加盟とともに、
民営化されてTTL社になった。
「公営」や「専売」は自由経済の精神に反するからである。
北欧の酒類専売制度も「公営」「専売」であるので、
1990年代、EUやEEAから自由経済の考え方に反する、
と再々指摘されたそうだが、こちらは結局生き残っている。
(スウェーデン、フィンランドはEUの加盟国。
ノルウェー、アイスランドはEU非加盟だが、
EEA欧州経済領域としてEUと自由に経済活動ができる。)
酒類販売が政府管轄になってるのは、
私の知る限り、主要国では、ほかにカナダがある。
BC州:BCリカーストア、オンタリオ州:LCBO、ケベック州:SAQなど、
英語圏・フランス語圏にかかわらず、お酒の販売は州政府の管轄。
「自由経済・自由社会」を標榜する欧米人にとってさえ、
「お酒は社会的に規制するだけの合理性がある」
ということだろう。
酒類産業に携わる者としては常に意識すべき要素であると思った。
(酒類ビジネスの将来を考えるうえでは、
WHO(世界保健機関)のお酒規制拡大の可能性も織り込まねばならない。)
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●▲■ 「ビール、75年間禁止」
因みに、、、
アイスランドの禁酒法の歴史をしらべると、やや奇妙である。
1915年に禁酒法を施行したが、
7年後にワインを許可、
20年後には蒸留酒も許可した。
しかし、何故かビールに限って
1989年まで75年間(!)も禁止を続けたそうだ。
いかにも違和感がある。
これには、
真夏でも最高気温10℃台で、ビール向きでない環境
ビールは安いので解禁したら大量飲酒を招くという議論
などの事情もあったが、決定的には
アイスランドは歴史的にデンマークの支配下にあったが、
デンマークはカールスバーグを擁するので、それへの反発
が背景らしい。
(独白:日韓、日中の関係がよくないことを想起させる。
日本酒にとって韓国・中国は大事な輸出先である。
香港・台湾の緊迫した情勢も連日報道されるが、
日本酒輸出先ベスト5は、米・香港・韓・台・中。
何か事あれば、主要市場の4/5にネガティブな影響が出かねない、、、。)
北欧5か国のうち、唯一デンマークだけは禁酒の歴史がないが
世界4位のビール会社、カールスバーグが国の有力企業であるので、
当然といえば当然だろう。
カールスバーグ社は20世紀初頭、様々な社会貢献をしている。
美術館設立のほか、有名な人魚像もカールスバーグの寄贈。
それは、
「デンマークで禁酒法を回避する戦略でもあった」
のかもしれないなあ、と思った。
全く個人的な憶測だが。
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●▲■ 「ノルウェーとスウェーデンでの日本酒体験+インポーター観察」
6月にノルウェーとスウェーデンにいくことがあって、
日本酒を飲む機会があった。
ノルウェーの首都オスロでは、
非日系の「ルル」というアジアンフュージョンのお店で
秋田清酒「刈穂」と「ぬぐた丸」
木下酒造「玉川・生?」
無手無冠「無手無冠」
人気酒造「人気一・純米大吟醸」
などを楽しんだ。
(お店の日本人客濃度≒0%、日本酒オーダー比率≒30%)
スウェーデンの首都ストックホルムでは
日系の「ブルーライトヨコハマ」という居酒屋で
人気酒造「人気一・純米大吟醸」
天吹酒造「天吹・純米」
豊国酒造「豊国・純米」
北川本家「富翁」
などを楽しんだ。
(お店の日本人客濃度≒20%、日本酒オーダー比率≒30%)
そのあたりのことを写真資料にまとめたのでご覧ください。
●▲■ アーカイブ資料
「サケwatching in オスロとストックホルム」 全8ページ
http://www.kitasangyo.com/pdf/archive/sake-watching/scandinavia.pdf
北欧4か国のお酒の専売制についても、
最後のページに、表でまとめてあります。
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ノルウェーのルルで、飲んだ日本酒の裏ラベルを観察すると、
3つのインポーターがあった。
(飲食店も、酒類はすべて前述のヴィンモノポレット社から仕入れる。
インポーターは、ヴィンモノポレット社に売る格好)
「玉川」は、オランダの「YOIGOKOCHI(酔い心地)」社から、
オランダ経由でノルウェーに入る
「人気一」は、スウェーデンの「World of Sake」社から、
スウェーデン経由でノルウェーに入る
「秋田清酒」は、ノルウェーの「Bonum Beverages」社が、
直接ノルウェーに入れている
すなわち、
オランダやスウェーデンに輸出された日本酒は、必ずしも
オランダやスウェーデンで消費されるわけではない。
財務省貿易統計で2018年の3か国への清酒輸出実績を見ると、
オランダ:223KL(1,240石)、1億6,100万円
スウェーデン:33KL(180石)、4,310万円
ノルウェー:2.5KL(14石)、315万円
量の比率を、ざっくり丸めると、
[オランダ:スウェーデン:ノルウェー] = [100:10:1]
ノルウェーは、サケSakeの市場サイズとしては小さいのは事実だが、
直輸入以外のルートもあることには留意すべきである。
特にロッテルダム港を擁するオランダは、
EUやEEA圏内に再輸出される商品が多い。
近年、日本ウイスキーのEU圏の輸入基地にもなっていて、
英国向けなどもオランダ経由が多いようだ。
(ブレグジットで2020年から様変わりするのだと思うけれど)
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●▲■ 「恁筅」「神息」「冬」「不死身」「名聲」、、、
ヴィンモノポレットのホームページで、
「サケSake」を検索すると、
ノルウェーで売られる全銘柄がわかるので、
興味のある方は一度ご覧ください。
日本酒ばかりでなく、カリフォルニア製サケもある。
(ノルウェーでは、ヌグネというクラフトビール醸造所が
「裸島」というノルウェー製サケも醸造していたが、
残念ながら2018年に生産終了。したがってもう売っていない。)
ヴィンモノポレットでは、
日本の「梅酒」「クラフトビール」「甲州ワイン」も売られているが、
残念ながら日本の「焼酎」は見当たらなかった。
その他の北欧3か国も、
それぞれのお酒専売会社のホームページで、
国内で売られるSakeや日本製品の全銘柄を見ることができるで、
リサーチには便利であるし、興味深い。
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サケの話題からそれるが、ウイスキーにも興味があって
ヴィンモノポレットのホームページで、
「ジャパニーズ・ウイスキー」を検索してみた。
(以下は2019年8月10日時点のホームページ情報による)
意外や「サントリー」の商品はまったくない。
品薄でノルウェーまで回らない、ということか。
「ニッカ」は、
「コフィ―グレーン」「フロムザバレル」「デイズ」があるが、
「余市」「宮城峡」などはない。
一方、こんな「ジャパニーズ・ウイスキー」が売られている。
「恁筅」(That Boutique-Y Whisky、英国の会社)
「神息」(Kamiki Distillery)
「冬」(旭川蒸留所)
「倉吉」 「不死身」 「鳥取」(松井酒造)
「あかし」 「名聲」 「刻の香」(江井ケ嶋酒造)
「山桜」(笹の川酒造)
「戸河内」(中国醸造)
「くら」(ヘリオス酒造)
1つ目のブランドは日本の常用漢字ではないので
文字化けしている方もいるかもしれないが、ネイシェンと読むそう。
英国の会社が日本のウイスキー原酒を使って商品化したもの。
2つ目の神息は、吉野杉の樽でエージングしたもの。
最近更新されたと思しきネット情報によれば、
生産地は奈良だそう。
世界的な日本ウイスキーブームの拡がりに驚くとともに、
北欧ノルウェーで、
実にいろいろな日本ウイスキーが売られていることにも驚いた。
text = 喜多常夫
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さて、情報紹介です。
●▲■ ご紹介情報 その1 K2ディビジョン ●▲■
「K2ガラスびんカタログ 2019年版」
http://www.kitasangyo.com/ebook/HTML5/pc.html#/page/22
ページ数が多いので、冊子の中央付近のリンク先です。
左右にめくってご覧ください。
●▲■ ご紹介情報 その2 ROOTSディビジョン ●▲■
「Z&N社とBQSL社の炭酸ガス含有量・エア量の測定器」
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/gas-lab/Zahm&Nagel-Airtester_ed03-hq.p
df
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/gas-lab/BQSL_DGV1.pdf
「Z&N社とルーツ機械研究所の炭酸ガス飲料試作装置」
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/gas-lab/pilotplant_ed2_1.pdf
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/gas-lab/TAN3ROBO_50_30.pdf
酒類の炭酸ガス技術のことなら、当社にお任せください。
●▲■ ご紹介情報 その3 アーカイブ情報 ●▲■
「日本の清酒・ビール・ウイスキーのグローバル化実態とその背景」
http://www.kitasangyo.com/pdf/e-academy/tips-for-bfd/BFD_49.pdf
http://www.kitasangyo.com/pdf/e-academy/tips-for-bfd/BFD_50.pdf
当社「酒うつわ研究」誌に2回にわたって寄稿いただいた文章。
日本経済研究所の佐藤淳氏、一橋大学経済研究所の都留康氏、
早稲田大学大学院経営管理研究科の伊藤秀史氏の共著です。
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2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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