●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.263 ●▲■
発行日:2020年7月29日(水)
■ アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報 ■

発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com

 

------------------< 目 次 >------------------

<酒ブック紹介>

●▲■その1:「BARへ行こう。」
・・・ 太田和彦さんの本だが、居酒屋本ではない
●▲■その2:「お酒の経済学」
・・・ 清酒・焼酎・ビール・ウイスキーの4酒類を1冊で分析
●▲■その3:「焼酎の履歴書」
・・・ 菅間誠之助さん以来のマスターピース
●▲■その4:「歴史を変えた6つの飲み物」
・・・ 「歴史を変えた6つ」のうち3つはお酒
●▲■その5:「ウイスキーコニサー資格教本・スコッチ編」
・・・ 開業予定を含むスコッチ蒸溜所の完全リスト

                      text = 喜多常夫

 

ご紹介情報●1▲ 醸造所・蒸溜所の殺菌剤・洗浄剤+二酸化塩素「ピュオロジェン」
ご紹介情報●2▲ ワイン向け新情報:メンブランプレス、除梗破砕機、チューブ・ポンプなど
ご紹介情報●3▲ ウイスキーの関連情報:アイラ島の資料

 

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コロナウイルスの影響は深刻だが、
読書の時間が増えたのは、せめてものなぐさみである。

今回は、最近読んだお酒関係の5冊の紹介。
うち3冊は、先月または今月刊行というフレッシュな本です。

 

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 ●▲■その1:「BARへ行こう。」
(太田和彦著、ポプラ新書、2019年12月第1刷、900円+税)

 

コロナウイルス感染拡大以来、帰宅時間が早くなった。
所在なくBSテレビのチャンネルを変えていると、
「居酒屋飲み歩き番組」に不思議によく巡り当たる。
吉田類、太田和彦、それに女性版の「おんな酒場放浪記」もある。

居酒屋テレビ番組がいくつもあるのは意外だが、どれも長く続いている。
吉田さんがやや庶民的、太田さんがやや高尚。
語り方やタイプは違うが、それぞれファンが多いのだろう。

 

知る人は知る通り太田和彦といえば「居酒屋」だが、本書は「BAR」。
和食専門家が書く洋食評論はどんなものか、、、
そんな感じでamazonで注文した。

前半はBARでのたしなみや、BARの体験談。
本書に登場するような銀座のBARは私はほとんど行ったことがないが、
失われていく日本独特のBAR文化を知ることができる。
日本のBARは、NYやロンドンのBARとは全く違うのだと思う。

 

後半は見開き2ページに1つのカクテルが割り当てられている。
ダイキリ、ギムレット、アイリッシュコーヒー、、、などなど
全部で45種類が紹介される。

カクテルの写真もあるので、作り方の解説か、、、と思うとさにあらず。
カクテルにちなんだショートショートである。
「BAR+男+女」の短編小説が45本。艶話もあって、なかなか面白かった。
日本酒や焼酎では、こんな洒脱なエッセイはかけないだろう。
カクテルの妙味、あるいは文化性といえる。

小説以外に、小さめの文字でそれぞれのカクテルの短い解説もあって、
初めて知った知識があった。

 ●ペリーニ:
ベニスの「ハリーズバー」で誕生したのは有名。
●サイドカー:
若いころ時々飲んだカクテル。
知らなかったが、実はこれも「ハリーズバー」で誕生、
ただしパリの「ハリーズバー」であるそうだ。

ベニスのハリーズバーは行ったことがあるが、
パリにもハリーズバーがあるとは知らなかったし、行ったこともない。

Google Mapで見ると日本レストランや日本食材店が多いオペラの近く。
COVID-19が収まってパリ出張ができるようになったら、行ってみよう。

BARではウイスキーばかり飲んでいるが、
次はカクテルも飲んでみよう、、、と思わされた一冊。

 

 

 ●▲■その2:「お酒の経済学」
(都留康著、中公新書、2020年7月発行、820円+税)

 

著者は、一橋大学の経済学の名誉教授で、
新潟大学が開校した日本酒学の非常勤講師も務める方。

清酒、焼酎、ビール、ウイスキーという異なる4酒類を1冊で取り上げ、
これだけ実務的に分析した書籍は初めてではないか。

記述は、実名入り、データ―付きで、具体的である。
清酒、焼酎、ウイスキー、ビールの実名(社名や銘柄)が、
優に100以上登場するのが、業界人にとって実にわかりやすい。
月桂冠、サントリー、三和酒類、霧島酒造などへの聞き取り調査もある。

本書は今月(7月)の発行だが、先月(6月)のNYタイムズの記事
「ジャパニーズ・ウイスキーには日本産でないものや、
中にはウイスキーでさえないものもある」
の引用がある。
直前まで推敲されていたことがうかがえる。
と同時に、業界人に辛辣な指摘を書き漏らしていない証左でもある。

 

お酒の消費量は、飲む人の数に制限される。
本書は冒頭で、
「2020年の日本の飲酒年齢人口は
1970年代半ばの水準にまで落ち込んでいる」
と書いている。半世紀前と同じとは、、、愕然とする。

そして、終章では
「経済予測は外れることが多いし、
COVID-19で将来予測を書くことは不可能だ。
しかしほとんど外れることのないのは、将来の人口推計」
と指摘する。
飲酒人口はさらに減り続ける、という前提条件で
日本の酒類業界はどうすべきなのか。。。

 

著者は、清酒については、製造免許の自由化を主張している。
業界人はご存知の通り、新規の清酒免許は事実上取得不能、
廃業する蔵の免許を買ったり移したりするしかない。長年そうだった。

ところが、まさに今月(7月)になって、日経新聞が、
東京駅構内のはせがわ酒店に清酒免許がおりたと報じた。
試験免許とはいえ、場所がら販売前提の新免許だろう。
今後の国税庁の方針はわからないが、
本書の主張は、実現可能な方向性なのだと思った。

酒類業界の将来ビジョンを考える上で、参考とすべき一冊。

 

 

 ●▲■その3:「焼酎の履歴書」
(鮫島吉廣著、イカロス出版、2020年6月第1刷、2,182円+税)

冒頭に2編の対談が掲載されるが、特に、
三和酒類(いいちこ)社長の下田さんと、著者の鮫島さんの対談が、
意外な組み合わせで、興味深かった。

お二人は、とても似た経歴。
焼酎と異なる酒類企業(清酒・菊正宗、ニッカウヰスキー)に就職、
その後、郷里の焼酎大手(三和酒類、薩摩酒造)に転職、
お二人とも技術者故に、研究所を任された、という。

  さつま白波(芋)次いでいいちこ(麦)が急成長した逸話
焼酎の品質の変遷
麹へのこだわりと可能性
蒸留酒でありながら食中酒であること、
グローバル市場に向けたビジョン
など、対談の話題は含蓄深い。

「いいちこの歩んだ道の一つは、デザイン」
との下田さんのコメントも印象に残った。

 

独特の視点や、意外な記述がある。
「西洋の蒸留器は錬金術・化学実験で生まれたが、
東洋の蒸留器は台所で(炊飯甑の延長で)生まれたように見える」
「本格焼酎のモロミは、泡盛由来でなく清酒由来、
いまのような二次仕込みになったのは大正・昭和である」
「(日本では鹿児島独特の)ツブロ式蒸留器は
中国・福建省や古式の琉球芋焼酎にもあった」

全く知らなかったことも多い。
「江戸時代、幕府に献上された泡盛はアルコール度数が高かった
当時は(中国のような)固体醗酵だったのかもしれない」
「沖縄では(今は泡盛だけだが、かつて)芋焼酎が広く造られていた、
鹿児島では(今は芋中心だが、かつて)米焼酎が広く造られていた」
「(25度が一般的だが宮崎・大分で多い)20度の焼酎は
1949年、密造酒対策のための酒税改正で誕生した」

直接的に焼酎ではないが、関連する技術として
清酒の菩提もと(クエン酸酸性による醗酵の安定化)
熊本の赤酒(灰添加による醗酵の安定化)
についても、言及されている。

   中国の蒸留器や曲子(固形麹)についての現地情報
朝鮮-対馬・壱岐ルートについての実地調査
などアジアの蒸留酒との関連も取り上げている。

 

個人的には、焼酎の書籍のマスターピースと言えば、
菅間誠之助の「焼酎のはなし」(1984年刊)が思い浮かぶ。
本書はそれに比肩すべき一冊だと思った。
(菅間の「見直される第三の酒」(1975年刊)が有名だが、
古くて入手できず、読んだことがない。)

 

なお、本書末尾に14ページにわたって焼酎の年表が記載されている。

    連続蒸留機の日本導入、白麹菌発見、
減圧蒸留器初見、回転円盤式製麹機導入、
など、技術的な視点の出来事だけでなく、
雲海そば・二階堂麦・いいちこの発売年、
ロクヨンの宣伝開始、焼酎かすの海洋投棄禁止、
など、マーケット的視点での出来事も網羅されていて、
焼酎の産業史として非常に有益な資料であると思った。

 

 

 ●▲■その4:「歴史を変えた6つの飲物」
(トム・スタンテージ著、楽工社、2017年6月第1刷、2,700円+税)

 

2005年が英文原書の初版、2007年に合同出版から和訳が出て、
2017年に楽工社から新装で再出版されたもの。
私が買った本は2019年11月第3版なので、よく売れているのだろう。

歴史を変えた6つの飲み物とは、
ビール、ワイン、蒸留酒
コーヒー、紅茶、コーラ

お酒と、お酒でない飲料を一冊にするというアイデアがよい。
5つは納得。コーラは意外だが、まあそうなのかな、思う。

うち、3つはお酒であるのも納得。
ウイスキーとかジンとか言わず、
蒸留酒とひとまとめにしているのが、ややずるい気もするが。

 

  ビールについては、メソポタミアから、
ワインについては、ギリシャ・ローマから、
蒸留酒については、植民地時代から、
書き起こして、かかわった歴史を綴る。

  ピラミッド建築、アンフォラ容器、ローマに通じる道、、、
呪術、キリスト教、イスラム教、、、
錬金術、奴隷制、アメリカ先住民、、、
など、お酒と関係した事柄を切り口として取り上げる。
読みやすく、お酒の歴史を概観するのに好適な一冊である。

アメリカの蒸留酒のことでは、以下の記述
「1791年、ペンシルバニア州西部だけで、
ポットスチルが5,000以上あった」
が印象に残った。
日本でも、明治時代、
「自家用焼酎が認められていた時代、鹿児島県だけで、
約30,000の生産者がいた」
と言われる。人間の性(さが)はどの国も同じだなあ、と思った。

 

個人的には、
(アメリカンフードカルチャーの代表であるコカ・コーラやマクドナルドは、
この10年以上、口にしたことがないが、)
コーラの章が興味深かった。

まず、18世紀に薬局で薬としてソーダ水を売る商売が始まった。
(炭酸水素ナトリウム=炭酸ソーダでつくるので、ソーダ水)
19世紀末、ソーダ水に加えるシロップとしてコカノキのエキスが販売され、
よく売れたレシピがコカ・コーラの始まりだそうだ。

コカ・コーラは原液で各国に供給され、
各国各地のフランチャイズ企業でびん詰めされて商品となるが、
それは、コカ・コーラのそんな出自にもよるのだそう。
(アトランタのコカ・コーラ博物館に行ったことがあるが、
派手なデザインの展示ばかりで、そんな歴史解説はほとんどなかったと思う)

世界1位のコカ・コーラと世界2位のペプシ・コーラは、
戦前から世界各国でシェアを争っている。
国や時代によって、ペプシのシェアが高いのだが、それは
商品力やマーケティングの結果というより、
戦争、反米運動、東西冷戦、ユダヤとアラブなど、
政治対立や民族対立の結果である場合が多いそうだ。

 

 

 ●▲■その5:「ウイスキーコニサー資格認定試験
教本2020中巻 スコッチ編」
(土屋守執筆・監修、ウイスキー文化研究所、
2020年6月発行、3,000円+税)

ウイスキー文化研究所主宰の資格のための、参考図書。
従来は上巻・下巻で、何回か改定を重ねていたものだが、
この度、スコッチ部分を独立させて中巻とし、最新情報を盛り込んだそう。

 

スコッチの本では百数十箇所ある蒸溜所のマップが不可欠。
近年は蒸溜所が増えて、本が発行された時期によってマップが変わっていく。
この本でも、まずはマップを眺めてみる。

一度行ったことのあるアイラ島を見てみると、、、
(注:アイラ島は、スコッチウイスキーで有名な島。面積は奄美大島の半分くらい。
ビームサントリーの世界的ブランド、ボウモアと、ラフロイグがある。)
蒸溜所マークが11個もある。

8個のはずでは、、、
と思って本文を読むと、知らない蒸溜所が3つ書いてあった。

 

アードナッホー
2018年、新規開設済み
スチルはランタンで2基、ラインアームは約7.3m(!)
発酵槽はオレゴンパイン、仕込み水はアードナッホー湖の水

エリクサー
開業準備中
ここは詳しい情報の記載がないが、
地図で見ると場所はラフロイグとポートエレンの間

ポートエレン
これは有名ブランド、閉鎖したかつての蒸溜所
本文を読むと、1983年に閉鎖したが、
ディアジオが2020年に再稼働させる予定だそう

 

ポートエレンは今も流通しているし、飲ませるBARもある。
とても高価だが、スコッチ愛好家なら一度は飲んでみたいブランド。
再開するとは驚き。誠に楽しみである。

 

本書では「新規開設準備中・再開準備中の蒸溜所」が
スコットランド全体で20くらいも地図上にプロットしてある。
そのいくつかについては、ポットスチルの予定や建物計画まで記載されている。
日本では、免許取得前の酒造所計画や場所を把握するなど至難の業。
英国は多少事情が違うのかもしれないが、本書の情報収集力には驚かされる。

もちろん「稼働中のすべてのスコッチ蒸溜所」の解説が記載される。
さらに「閉鎖したスコッチ蒸溜所」のリストもある。
また「ジンも作っているスコッチウイスキー蒸溜所」のリストまである。

 

資格試験の参考図書を書評で取り上げるのはちょっと躊躇したが、
スコッチ好きの独酌の友に最適の一冊である、
しかも、圧倒的な情報力であるので、紹介した次第。

 

 

 

<酒ブック紹介>は、次回も続く予定。

                      text = 喜多常夫

 

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さて、商品紹介です。

 

●▲■ ご紹介情報 その1  ●▲■

醸造所・蒸溜所におすすめする殺菌剤・洗浄剤ed.6.2
http://www.kitasangyo.com/pdf/chemicals/sanitizer.pdf

二酸化塩素の除菌剤「ピュオロジェン」 ed.2.1
http://www.kitasangyo.com/pdf/chemicals/purogene.pdf
http://www.kitasangyo.com/pdf/chemicals/purogene-guide.pdf

殺菌剤、洗浄剤の内容をアップデートしました。
1個単位で出荷可能。

全国のビール醸造所でご利用いただいている「ピュオロジェン」についても、
活性化や希釈方法について具体的に解説しています。

 

 

●▲■ ご紹介情報 その2  ●▲■

ワイン醸造所の皆さん、主力機器の情報をアップデートしました。

DIEMMEのメンブランプレス(2020年6月 New !)
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/winery-and-brewery/diemme-p.pdf
DIEMMEの除梗破砕機(2020年6月 New !)
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/winery-and-brewery/kappa.pdf
RAGAZZINIのチューブ・ポンプ(2020年7月 New !)
http://www.kitasangyo.com/Products/data/brewing/ragazzini.pdf 

 

こんな、マニアックな新製品も追加しています。

EPDMのヘリカル・ローブ・ポンプ
http://www.kitasangyo.com/Products/data/brewing/oenopompe.pdf
醸造所のホース巻き
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/winery-and-brewery/MODULO.pdf
DIEMMEのハイテク・バスケットプレス
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/winery-and-brewery/vintage.pdf

 

 

●▲■ ご紹介情報 その3  ●▲■

昔つくったアイラ島の資料
http://www.kitasangyo.com/pdf/archive/world-alcoholic/Islay_whisky.pdf

ウイスキー本を取り上げたので関連情報として。
アイラ島と奄美大島の比較、焼酎とウイスキーの比較もあるので、
焼酎本の関連としても。

 

 

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http://www.kitasangyo.com/Archive/mlmg/BN_top.html

2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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