●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.267 ●▲■
発行日:2020年11月19日(木)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com
------------------< 目 次 >------------------
●▲■ コロナの酒類輸出への影響、その2
■ 清酒は、日本酒類の輸出品1位でなくなる
■ 1位ウイスキー、2位清酒、3位リキュール、4位ビール、5位ジン、6位焼酎
■ ウイスキーには、「コロナ耐性」がある?
■ 2030年の夢:日本酒輸出+日本ウイスキー輸出で1,400億円
text = 喜多常夫
ご紹介情報●1▲ ガラス栓「ヴィノロック」
ご紹介情報●2▲ キャップの「刻印デザイン」
ご紹介情報●3▲ 全く角のないワインタンク、「コンクリート・エッグ」
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前回、「日本酒輸出」へのコロナの影響について、
「香港がアメリカを抜き、金額で輸出先1位(見込み)」などと書いた。
では、ウイスキーやビールなどはどうなっているのかな、、、
と思ってちょっと調べてみると、こちらも大きな変化がある。
貿易統計をいろいろ調べるのはなかなか手間で根気がいるのだけれど、
現時点での、「酒類全般」へのコロナの影響を調べてみた。
●▲■ 日本酒類の輸出状況@2019年
まずは、コロナの影響がなかった2019年の状態を確認。
2019年の日本酒類の輸出は総額662億円だった。
その内訳は、、、
1位清酒 234億円(前年比+5%)
2位ウイスキー 194億円(前年比+30%)
3位ビール 92億円(前年比▲29%)
4位リキュール 64億円(前年比+14%)
5位ジン 23億円(前年比+15%)
6位焼酎 16億円(前年比+2%)
(その他 39億円(前年比+42%))
韓国向けの激減で29%も減ったビール以外は
すべてのジャンルで前年の2018年から増加。
政府は去年まで、
「日本の農水産物・食品の輸出を2019年に1兆円に、
うち、清酒は2%の200億円に」
という目標を掲げていた。
「1兆円」は未達だったが、清酒の「200億円」は達成した格好。
ご存知の通り、「國酒」として国が力を入れてくれていることも大きい。
ビールと同じく清酒も韓国向けが大きく落ち込んだが、
それでも全体として増勢を保ち、日本の酒類輸出の不動の1位。
2位以下の順位は21世紀になってから変転があって、
ウイスキーが彗星のように2位に登場したり
ジンが2018年に焼酎を追い越して5位になったりしたが、
1位は常に清酒である。
4位のリキュールは、ほとんどが梅酒。
ゆず、みかん、桃など、清酒ベースの「和のリキュール」も増えている。
6位の焼酎は、甲類も含まれるが、ほとんどが本格焼酎。
2%増加しているが、実はこの5年ほど似た水準で上下している。
本格焼酎も「國酒」であるが、清酒に比べ苦戦が続く。
●▲■ 3Q実績から2020年通年を予測する算式
前回書いたが、
本稿での「2020年予測値」の出し方を再掲しておく。
こメルマガを書いている時点で、財務省貿易統計では、
2020年9月末まで(=3Q分まで)の輸出実績が公表されている。
世界レベルで見ると、コロナの影響は4月ころから(1Qは通常)だった。
1Qは、ほぼ従来の延長上にある輸出実績だが、
2Q・3Qは、コロナの影響を反映した輸出実績と言える。
「4Qは2019年と同じ比率を維持する」という仮定で、
(2020の年間予測値)
=(2020年1Q-3Q実績)x(2019の年間実績)/(2019年1Q-3Q実績)
という算式で、コロナの影響を読み込んだ2020年の年間「予測値」とする。
あくまで「予測値」であって、通年では改善する可能性もあるし、
コロナの感染状況次第でさらに落ちる可能性もある。
●▲■ 2020年予測(コロナの日本酒類の輸出への影響)
2020年の年間の予測値を、前掲の予測式で算出して、
多いものから並べてみると、こうなる。
1位ウイスキー 233億円(前年比+20%)
2位清酒 200億円(前年比▲20%)
3位リキュール 84億円(前年比+31%)
4位ビール 51億円(前年比▲44%)
5位ジン 18億円(前年比▲22%)
6位焼酎 10億円(前年比▲36%)
不動の1位だった清酒は、2位に。
4-5年前から、講演などで話す機会があると、
「東京オリンピックの頃には、
ウイスキーが清酒を追い越して1位になるかもしれない」
と言ってきたが、、、嗚呼、、、現実になるようだ。
しかしそれは、
「日本酒もウイスキーも両方が伸びる中で、
ウイスキーの伸びが勝って日本酒を追い越すかも」
という構図を考えたものであり、
コロナで日本酒輸出が減ることなど、想定したものではなかった。
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■「ウイスキー」の輸出は、3Qまでの実績で前年同期+20%。
コロナ禍でも増加している。
(注:2019年3Q=162.5億円、2020年3Q=195.5億円)
しかも、不買運動のある韓国向けさえ、前年比プラスである。
(注:韓国向けウイスキー輸出は
2019年3Q=1.9億円、2020年3Q=2.5億円)
ジャパニーズ・ウイスキーは、
「コロナ耐性」がある(「日本製品不買耐性」さえある?)酒類といえる。
ウイスキー輸出は、海外のバーやレストラン需要にも依存するが、
自宅で楽しむ愛好家も多いのだろう。
そもそも蒸留酒は、コロナ禍のような状況で強い酒類なのだと思う。
■「日本酒には日本食レストランの呪縛がある」
世界各国で、日本食レストランの数は急増している。
(注:農水省によれば、
2015年8.9万店、2017年11.8万店、2019年15.6万店)
そして、輸出された日本酒の大部分は、海外の日本食レストランで消費される。
近年の日本酒輸出の急増は、
世界の日本食レストラン数の増加に支えられる部分が大きい。
(注:日本酒の輸出は、
2015年10.1万石、2017年13.0万石、2019年13.8万石
韓国の不買運動がなければ2019年は16万石程度を予測
前掲の日本食レストラン数と、見事な相関がある。)
海外では、「日本食レストラン以外の需要」、
すなわち、「自宅の日本酒需要」は、まだまだ少ない。
コロナの影響で、世界中でレストランの営業がままならない状況下では、
清酒輸出が減ることは、いまのところいかんともしがたい。
200億円を維持する見込みは、むしろ善戦というべきだろう。
■「ビール」は前年比▲44%で、リキュールに追い越される見込み。
ビール輸出は、韓国向けが過半だった。
または、
「韓国向けが急成長したからこそビールが主要輸出酒類の一つとなった」
といえる。
アサヒのスーパードライほか、キリン、サッポロ、サントリーの、
日本の大手4ブランドは、2019年前半まで韓国で大人気だった。
2018年:ビールの総輸出額128億円
内、韓国向け79億円(総輸出の61%)、韓国以外49億円
2019年:総輸出額92億円
内、韓国向け49億円(44%)、韓国以外43億円
2020年予測:総輸出額43億円
内、韓国向け5億円(11%)、韓国以外38億円
2018年は絶好調だったが、一転、
2019年8月からの日本製品不買運動と、
2020年4月からのコロナの影響で、韓国向けは激減である。
2021年は、減少はこのくらいで止まると思うが、
韓国が以前のレベルに回復するには年数(政治環境の変化)が必要だろう。
(追記:2018年にイオンがPB第三のビール「バーリアル」を、
韓国製からキリン製に切り替えたとき、
韓国から日本へのビール輸出は激減しただろう。
さらに連想だが、、、
焼酎の麹米がタイ米から国産米に一斉に切り替わった時は、
タイの日本への米の輸出は激減しただろう。
「不買」ではないが、実は日本も海外で「激減」をやっているのだ。)
「大手ビール」の海外戦略は、欧米では「現地での委託生産」が基本で、
「日本からの輸出」は近い国(輸送費が安い国)が基本となる。
韓国が激減した後は、
台湾、中国、オーストラリア、香港、シンガポールなどが主な対象国となる。
(ただし、「天然水」がウリのサントリーは日本製にこだわるので、
海外委託はしていない。欧米へも日本製のプレモルを輸出)
オリオンビールやクラフトビールの輸出も増えているが、
これはアメリカ、シンガポール、EUなどが多いようだ。
■「リキュール」は、ウイスキーと同じくコロナ禍でも増えている酒類。
3Qまでの実績で、金額で+31%とウイスキーより伸びている。
(注:2019年3Q=44.7億円、2020年3Q=58.4億円)
量では、なんと+99%である。
(注:2019年3Q=8,800KL、2020年3Q=1万7,500KL)
主要輸出国は台湾、香港、中国で、これら3国が大きく伸びている。
(追記:近年、高付加価値商品として国内でも商品化される、
「焼酎を樽貯蔵して琥珀色になった、酒税法上リキュール規格の蒸留酒」
が、貿易統計のHSコード上でもリキュールなのかどうかは、不勉強で知りません。
「樽でエージングした穀物焼酎」がアメリカではウイスキー規格に該当し、
ジャパニーズウイスキーとして販売される場合があるけれど、
これは日本から輸出されるときの貿易統計では、ウイスキーではないのだと思う。)
■「ジン」は、ウイスキーと違って、輸出金額は減っている。
(注:2019年3Q=16.0億円、2020年3Q=12.5億円)
ただ、量は増えている。
(注:2019年3Q=1,400KL、2020年3Q=1,800KL)
サントリー「六」が、
日本のジン輸出の大部分を占めているのが実態だと思うが、
「量が増、金額が減」という事は、
それ以外の製品で価格競争や低価格化が始まっているのかもしれない。
■「焼酎」は、3Q時点で大きく減らしている。
(注:2019年3Q=11.9億円、2020年3Q=7.6億円)
近年は年間で15-17億円の範囲だったが、
2020年は10億円まで減ると見込む。
業界ではフランスなどEUへのアピールに努めているが、
現状での実際の焼酎の主要輸出先は中国とアメリカで、
この2国で、金額でも量でも、総輸出の過半になる。
■6位までのランク外だが、「日本ワイン」も調べてみた。
「山梨のKOJを英国やEUに」
「和食に合うのは清酒ばかりではない、日本ワインが相性がいい」
といったアピールで、輸出に注力している。
調べてみると増加傾向ではあるが、まだまとまった金額にはなっていない。
(注:2019年3Q=1.3億円、2020年3Q=1.9億円)
ヨーロッパ向けは少なく、香港、台湾、中国向けが主体である。
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<日本酒vsフレンチワインの10年>
2010年の日本酒輸出金額85.0億円は、
当時のフランスワイン輸出7,190億円の1/85だった。
(注:62.0億EURを、2010年の平均レート116円/EURで換算)
2019年の日本酒輸出金額234億円は、
フランスワイン輸出1兆1,340億円の1/50に迫った。
(注:92.9億EURを、2019年の平均レート122円/EURで換算)
<ジャパニーズウイスキーvsスコッチウイスキーの10年>
2010年の日本ウイスキー輸出金額17.8億円は、
当時の英国のスコッチウイスキー輸出4,620億円の1/260だった。
(注:34.5億ポンドを、2010年の平均レート134円/£で換算)
2019年の日本ウイスキー輸出金額194億円は、
英国のスコッチウイスキー輸出6,830億円の1/35にまで迫った。
(注:49.1億ポンドを、2019年の平均レート139円/£で換算)
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感覚的な予測だが、今後10年で、
●日本酒はフランスワインの1/20、
●ジャパニーズウイスキーはスコッチウイスキーの1/10
にまでできる潜在力(世界商品力)があると思う。
ブランド戦略を適切に行えば、2030年には
●日本酒輸出で700億円
●ジャパニーズウイスキー輸出で700億円
●梅酒、ジン、焼酎、泡盛など合わせて300億円
日本酒類合計で1,700億円(=2019年実績の約3倍)
というのは、十分実現できる目標だと考える。
焼酎・泡盛の輸出は低迷しているが、10倍くらいにできると思う。
酒類産業は、人口減の国内需要を考えると、海外を重視せざるを得ない。
2020年・2021年はコロナで苦しい局面であるが、
日本の酒類を世界ブランドにする道程を踏み外さないよう、
苦しい時こそ、
低価格戦略は避け、品質を高め、国際商品力を磨かねばならない。
原料・年数・添加物・製法などの規格を厳格化・明文化することも重要だ。
ひとたび、
「クールジャパンのお酒は、実は全然、クールではない」
という評価になれば、
すべてが水泡となるリスクがある。
サケも、ウイスキーも、梅酒も、焼酎も、ジンも、
ジャパン製品のくくりでは一蓮托生であることも認識すべきだろう。
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日本の輸出は、自動車や電気製品などの工業製品が柱であって、
トヨタの自動車や、ソニーの電気製品は、日本の誇りである。
しかし、
日本酒、ジャパニーズリキュール、焼酎、泡盛、
ジャパニーズウイスキー、ジャパニーズジン、、、
はある意味で、自動車や電気製品以上に付加価値があるし、
日本の誇りとすべき商品であると考えます。
(数字が多すぎるメルマガですいません。)
text = 喜多常夫
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さて、商品紹介です。
●▲■ ご紹介商品 その1 K2ディビジョン ●▲■
ガラス栓「ヴィノロック」
http://www.kitasangyo.com/pdf/package/closures/vinolok.pdf
http://www.kitasangyo.com/pdf/package/closures/vldeco.pdf
ウルトラプレミアムの、日本酒、ウイスキー、ワイン、焼酎に最適。
●▲■ ご紹介商品 その2 KKディビジョン ●▲■
キャップの「刻印デザイン」
http://www.kitasangyo.com/pdf/package/closures/kokuin.pdf
当社製のキャップに「刻印」(凸または凹)を入れた事例です。
ブランドのオリジナリティーを高めます。
●▲■ ご紹介商品 その3 ROOTSディビジョン ●▲■
全く角のないワインタンク、「コンクリート・エッグ」
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/winery-and-brewery/concrete_egg.pdf
世界のワイン醸造所で評価の高い、卵型のコンクリートタンク。
ステンレスタンクではありえない全く角のない内部空間。酸素透過性と断熱性。
日本には7HLのものをご紹介しています。
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●▲■バックナンバー閲覧可能!「メルマガ・クロニクル」
http://www.kitasangyo.com/Archive/mlmg/BN_top.html
2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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2006年4月以来、きた産業のトピックスを写真で収録。
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