●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.269 ●▲■
発行日:2020年12月22日(火)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com
------------------< 目 次 >------------------
●▲■ 年末恒例、2020年の 〇 X ! ?
■ COVID-19の清酒への影響:
国内で紙パックが増加・・・X 海外でネット販売が増加・・・〇
■ COVID-19と関係ない動向:国内外の新しいプレーヤーたち・・・〇
■ 2020年の輸出:ウイスキーが清酒を追い抜く(見込み)・・・!&〇
■ 10年刻みで見るとRTDは2020年がピークか:
2030年にピークが来る酒類は・・・?
●▲■ 年の瀬のご挨拶
2021年は、当社の「東京での事業100周年」
text = 喜多常夫
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年末恒例の「今年1年の 〇X」は、2005年にはじめて16年目。
今年も、その時期になりました。
当社のビジネスとは関係なく、独自の視点で、
お酒・アルコール飲料業界の2020年を振り返って、
○(マル:良かったこと)
X(バツ:悪かったこと)
!(ビックリ:驚いたこと)
?(ギモン:判断に苦しむこと)
を書きます。(企業名は敬称略で失礼します。)
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■ COVID-19の清酒への影響
国内で紙パックが増加・・・X
海外でネット販売が増加・・・〇
人間は習慣の動物である。
一度体験し、慣れてしまえば、継続する傾向があると思う。
出張抑制、テレビ会議、テレワークなどは、
多くの人がコロナ後も継続する(したい)と考えているだろう。
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COVID-19の影響で、清酒の需要は落ちている。
2019年の約260万石から、仮に10%減で収まったとしても、
2020年は約235万石になる。
そんな中で、
清酒の紙パックは落ち方が少ない、または好調であるようだ。
「家飲み需要が増えて、紙パックは持ち帰りやすいから」
という理屈もあるが、実態は、
「価格が安いので家飲みに合う」
「経済的先行き不安で支出を抑制したい」
などが主因のように思う。
(第三のビールが、10月増税後も好調であるのも、
依然としてビールより安いことが大きな理由だろう。
イオンがキリン製PB第三を値上げしなかったという事情もある。)
一度、紙パックの清酒に慣れてしまった人たちは、
コロナが収まったあとも、紙パックを飲む習慣が残るように思う。
1980年ころ始まって今に至る約40年の
「清酒の紙パック増加の歴史」は、
「清酒の総需要減少の歴史」と見事に重なっている。
「紙パックがあったからこそ需要減の度合いは緩和された」とみる人と、
「紙パックが清酒全体の価値を下げ、総需要を減らした」とみる人と、
両方いるだろうけれど、私は後者。
清酒の紙パック比率は、近年50%程度でサチュレーション状態になっていたが、
それをブレークスルーして60%、70%になってしまうと、
日本市場における日本酒の価値観だけでなく、
海外市場における日本酒の「クールジャパン性」も阻害するのではないか。
しかし、一方、、、
容器が時代に応じて変化するのは必然、、、とも思う。
100年前、清酒の容器が、樽からガラス壜に大変革を遂げたときも、
似たようなことだったのかもしれない。
醤油はPETボトル入り、牛乳は紙パック入りが今や普通であるように、
清酒は(焼酎も)紙パック入りが普通になる
(人によってはすでに普通なの)かもしれない。
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今世紀に入って(リーマンショックの2009年以外は)、
2019年まで一貫して伸び続けていた日本酒の輸出額も、
2020年はCOVID-19の影響で1割程度落ち込む見込み。
ヨーロッパで日本酒を販売する方から、
主体の日本食レストラン向けの販売はロックダウンなどで当然減少だが、
いままでごく少量だったネット通販は大きく伸びている、と聞いた。
海外のSAKE消費は、日本食レストラン需要(=外飲み)で支えられていて、
家飲み比率がとても低い。
●日本における清酒は
家飲み比率>少なくとも50%以上(たぶん70%くらい?)
●海外におけるSAKEは
家飲み比率<15%
であると思う。アジアは高いめだが、ヨーロッパでは5%以下かもしれない。
そんな中、今まで日本食レストランでしかSAKEを飲んだことがない人が、
一度、家のみのSAKEを体験すると、
コロナが収まったあとも、その習慣がある程度は残ると期待できる。
スシや日本食のホームパーティ用だけでなく、
白ワインで楽しんでいた食事に吟醸SAKEを合わせる人も出てくるだろう。
海外で、SAKEを自宅で飲むシーンが増えれば、
日本酒の日本食レストラン依存度は相対的に減る。
長い目で見ると日本酒の輸出にとってプラスではないかと思う。
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■ COVID-19と関係ない清酒の動向:
国内外の新しいプレーヤーたち・・・〇
COVID-19とは直接的な関係のない、2020年のトピックスも記録しておきたい。
まず、以下の3つは、海外の出来事。
●ブラジルの「東麒麟」(海外最古の清酒メーカー)の親会社が、
キリンからキッコーマンになった。
(注:東麒麟は、醤油も製造する)
●ディアジオはアメリカでAviation Ginを持つDavos Brandsを買収。
Davos Brandsのサケである「TyKu」もディアジオに移った。
(注:ディアジオは、すでにブラジルで「純大地」というサケを販売)
●ホノルルにクラフトサケ醸造所ができた。
NYのブルックリンに2軒目のクラフトサケ醸造所ができた。
ほかにもクラフトサケ醸造所の計画は多い。コロナでも減っていない。
次の3つは、日本の出来事である。
●東京駅構内に、はせがわ酒店の日本酒醸造所ができた。
試験免許とはいえ、清酒免許が出たのは画期的、とみんなが思った。
●新しい清酒醸造所の事例
鹿児島:焼酎「宝山」の西酒造が、清酒醸造所を新設
兵庫:「醸し人九平次」の萬乗醸造が山田錦の産地に醸造所を新設
北海道:川上大雪酒造が、帯広畜産大学内に清酒醸造所を新設
清酒の全体需要が減る中でも、新しい清酒醸造所は今後も増えそうだ。
●東京浅草に「木花之醸造所」という飲食店併設の醸造所ができた。
清酒免許はないので造るのは「どぶろく」だが、麹室まで持つそうだ。
「街中どぶろく免許」はすでに都内に何カ所かあるし、
東京以外の都市部にも広がっていく様相。
どぶろくで醸造を開始した先駆者、東京港区の「東京港醸造」が、
今は清酒免許を持つことは、象徴的だと思う。
上記のうちのいくつかのSAKE・日本酒・どぶろくを実際に飲んだが、
どれも上々の出来だと思った。
このような国内外の新しいプレーヤーたちからは、
2020年代の新しいSAKE・日本酒の胎動を感じる。
政府が緩和策として打ち出した、
「輸出限定であれば清酒免許を緩和」に該当する事例は、
今のところ出現していないが、
2021年にはこれも現れそうに思う。
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■ 2020年の輸出:
ウイスキーが清酒を追い抜く(見込み)・・・!&〇
2018年に、ジンの輸出が、焼酎の輸出を追い抜いたのに続き、
2020年は、ウイスキーの輸出が、清酒の輸出を追い抜く見通しである。
日本のお酒である「清酒・焼酎」より、
世界のお酒である「ウイスキー・ジン」の方が販路が広い、
という事情は大きいだろう。
しかし、ウイスキーの代表、スコッチウイスキーだって、
2020年の輸出は減少しているはずだと思う。
世界各国の空港免税店が機能していないことからも想像がつく。
ところが、ジャパニーズウイスキーの輸出額は、
2020年10月までの累計で、前年比3割程度プラス。
清酒の輸出額は同時期で、1割程度マイナス。
あと2か月分の統計発表が残っているが、
2020年は、間違いなくウイスキー輸出が清酒輸出を追い越す見込み。
ウイスキーが世界的ブームになっている、というタイミングもあるが、
COVID-19でバーに行けない環境でも、
家庭でジャパニーズウイスキーを愉しんでいる人が多いのだろう。
前回メルマガでも書いたが、
11月末に発表された日本政府の2025年の目標
(農水産物・食品の輸出を2倍以上の2兆円に、という目標の一環)
で定められた金額は
■ ウイスキー 680億円
■ 清酒(日本酒) 600億円
■ 焼酎 40億円
と、日本酒より、ウイスキーが高い目標値になっている。
日本ウイスキーのブランド力は大いに「〇」である。
追い越された日本酒にとっては「X」とも思えるが、
日本のお酒全体のブランド価値が高まる側面を考えれば悪くない。
日本ウイスキーと日本酒が、抜きつ抜かれつで、
2030年には同時に1,000億円達成、とになれば、最高だ。
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■ 10年刻みで見るとRTDは2020年がピークか:
2030年にピークが来る酒類は・・・?
どの酒類も、ほぼ前年割れする中、
RTDだけは、前年比プラスになるのは確実と伝えられる。
第三のビールが増税値上げで、RTDに移った需要もあるようだ。
ソースによって数字が違うが、
2020年のRTDの総量は「150万KL強」くらいの見込みで、
ビール類(ビール+発泡酒+第三)の総量「500万KL弱」の
1/4もの規模に達する様相。
日本では、
日本コカ・コーラは2019年から檸檬堂でRTDに参入しているが、
アメリカでも、
「ハードセルツァー」(日本のRTDに相当、ただしAL度数は低い)
が家飲みで急成長していて、
米国コカ・コーラが2021年に参入するそうだ。
ただ、2021年以降も増えるだろうRTDも、
2020年代のどこかで減少に転じるだろうと思う。
「人口減少+高齢化」が続く中で当然である。
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過去、10年刻みで見ると
いろいろなお酒が順番に販売量のピークとなっている事実に気づく。
1970年:清酒がピーク(160万KL)
(注:実際のピークは1973年の177万KLだが、
1970年、80年、90年、、、といった10年刻みで見ると
1970年の160万KLがピーク。以下同様。)
1980年:ウイスキーがピーク(33万KL)
1990年:ビールがピーク(650万KL)
2000年:ビール類(ビール+発泡酒+第三)がピーク(720万KL)
2000年:国産ワインもピーク(12万KL)
2010年:本格焼酎がピーク(50万KL)
このパターンでいうと、
2020年にピークになるのはRTDではないかと思う。
では、2030年にピークが来るのはなにか。
個人的には、
「クラフトビール」、「スパークリング・サケ」、「日本ワイン」
などの可能性が高いと思う。
ただし、量としてはせいぜい数万KL(10万未満)だと思うが。
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2030年はどうなっているのか、、、。
話は飛ぶが、100年前のスペイン風邪の場合は、
1920年頃の流行収束のあと、
世界恐慌、1923年の関東大震災、と続いた。
今回のCOVID-19も、
単純にコロナ収束で終わらないのではないか、
2020年代はコロナよりもっと大きな脅威が来るのでは
、、、という不安を感じているのは、私だけではないだろう。
気候変動による惑星レベルの脅威
地震が多い国(日本を含む)では国家レベルの脅威
政治的・国家間的・人種的・宗教的、、など人間レベルの脅威
人口増加、食糧危機、、、など生物レベルの脅威
原爆戦争、原発事故、、、など軍事的・原子力的脅威
他にも、これはたぶん素人の杞憂にすぎないと思うが、
ちょうど人間社会にとってのCOVID-19のように、
インターネット上にワクチンのないウィルス感染が広がって、
ネットが機能しなくなったら、世界はどうなるのだろうか、、、
といった恐怖感もある。
今、ネットやデジタルが崩壊したら、社会も崩壊しそうに思う。
どれも、とても深刻な脅威であるけれども、
逆境のなかにチャンスを見出して、乗り切らねばなりません。
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毎年勝手なことを書いています。
放言、ご容赦ください。
今年も押し詰まりました。暮れのご挨拶を申し上げます。
http://www.kitasangyo.com/2021message/message_2021.html
(↑「5か国語クリスマス&年賀のカード、
それに、年末年始の休日のご案内」)
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来年2021年は、当社の「東京での事業100周年」にあたります。
きた産業(当時、喜多鐵之助商店)は、
1921年に中央区・日本橋小伝馬町に東京出張所を開設。
すぐに現所在地の千代田区岩本町(当時は神田材木町)に移り、今に至ります。
100年のご愛顧に、心から感謝いたします。
そして、2021年は「きた産業の創業105周年」でもあります。
より一層、皆様のお役に立つ企業を目指してまいります。
2021年も、なにとぞ宜しくお願いいたします。
きた産業株式会社 代表取締役 喜多常夫
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