●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.278 ●▲■  
発行日:2021年6月28日(月)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■

発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com



------------------< 目 次 >------------------

●▲■ (周年記念の連載)「酒類業界の30年を振り返る」 

<日本酒・Sake編、その3 - 海外市場>
■■■ エピソード#1 「30年前のパリにて」
■ 輸出は30年で、平均単価が3倍、総生産に占める比率が10倍
■ コロナで鮮明になった日本食レストラン依存度:「香港<中国<アメリカ」
■■■ エピソード#2 「30年たった現代のホノルルにて」

text = 喜多常夫


ご紹介情報●1▲ 「サケびん口規格の王冠」:ツバ厚のある「JST」と 「jZK」
ご紹介情報●2▲ 「刻印入り」の王冠・キャップの事例
ご紹介情報●3▲ 「スパークリング・サケ」の資材・設備、「500-520ml」のシャンパンびん



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2021年は、当社が大阪で創業して105周年、東京に出て100周年。
周年記念で「酒類業界の30年を振り返る」と題した連載を書いています。


ネットで調べた事ではなく、自分の体験で振り返る30年の変遷。
今回は「日本酒・Sake編」の3回目、海外市場について。



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>>>30年を振り返る・日本酒・Sake編、その3<<<


●▲■ 海外での日本酒販売の30年 ●▲■


■■■  エピソード#1  「30年前のパリにて」


30年前、パリの街を歩いていたときの事。
偶々通りがかった店に、日本酒のボトルがずらりと並んでいて驚いた。
「カーブ・フジ」という日本酒専門店で、パリにそんな店があるのは知らなかった。
日本でも珍しい、レアな地酒ブランドがたくさんあった。
(カーブ・フジ:日本名門酒会のパリのお店。1990年暮れ~2004年)


当時でも、
例えばアメリカ西海岸の日本食品の老舗UwajimayaやNijiyaには
日本酒はあったが、今と違って地酒銘柄は少ないし、そもそもサケ専門店ではない。
NYやサンフランシスコにサケ専門店ができるのは21世紀になってから。
カーブ・フジは、世界初の、海外の日本酒専門店だと思う。


30年前、海外で消費される日本酒の8割は、
日本人(現地居住者・ツーリスト)と、
日系人(日本生活の影響が色濃く残る、第一世代・第二世代)の需要だった。

当時からパリには日本人(居住者・ツーリスト)がとても多く、
各種の日本食レストランがたくさんあったが、それでも、
「パリでサケのお店が成り立つのかなあ、、、」と思ったのをよく記憶する。


日本酒の海外店舗を考えるとき、ハワイやサンフランシスコならわかるが、
パリを狙うとは、、、そもそもどういう戦略だったのか。


フランスのジャポニズム(日本趣味)は、
江戸幕府と薩摩藩がパリ万博に出展して以来、百数十年の歴史がある。
30年前も、日本文化好き・日本びいきのフランス人はとても多かった。
それに、アメリカ人と違って、フランス人は文化や伝統に価値を感じる国民性。
その辺が狙いめか、、、
それでもさすがに、
「フランス人は日本酒を飲まないだろう」、と思ったのを覚えている。


余談ながら、、、この記憶が30年前と特定できるのは、
この日の、カーブ・フジ近くのレストランでの記憶から。
隣のテーブルにユーゴスラビア人女性と英国人男性のカップルがいて
「流血の内乱がはじまった、死んだチトー大統領が偉大だった」など
母国の惨状を(英語で)話したあと、最後には泣き始めたのを覚えている。
(ザグレブ在住の人を知っていた私も少し会話に加わった)
悲惨なユーゴスラビア内戦が始まったのが、30年前の1991年。
内戦は10年続き、クロアチアやセルビアなど7か国に分裂した。
今はそれなりの平和を取り戻し、クロアチアなどはツーリストに人気の国だ。

30年とはそのくらい長い歳月である。



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30年後の今、
「カーブ・フジ」はなくなったが、日本酒はパリで立派に根付いた。

日本コンセプトの居酒屋で和のツマミとサケを楽しむフランス人
ミシュラン星付きの日本人シェフの店でサケペアリングを楽しむフランス人
生のオイスターを(シャブリでなく)サケで楽しむフランス人

30年前には想像できなかった光景が日常になった。
絶対的な消費量は多くはないが、
なんと!フランス人がサケを飲むようになったのである。

30年前のカーブ・フジのパリ出店は、時間がかかったが
まことに慧眼の戦略だった。


さらに今や、
フランス国内に3カ所のクラフト・サケ醸造所ができている。
うち2つはフランス人経営、そのうち1つは醸造もフランス人である。
こんなことは、30年前には、誰も想像できなかっただろう。


現在、海外で消費される日本酒の8割以上は、
日本人や日系人以外の需要であるが、
このことも、30年前には誰も想像できなかった。



注)
カーブ・フジ - Cave à Saké FUJIは、以下の8ページ参照
https://kitasangyo.com/pdf/archive/sake-watching/sake_Paris2017.pdf

カーブ・フジはなくなったが、日本名門酒会のサケの販売は、
パリの有力日本食品店「京子」に引き継がれている。




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●▲■●▲■  データでみる30年


●▲■清酒の輸出量・金額の30年の推移

1990年    3.83万石     27億円
2000年    4.12万石     30億円
2010年    7.65万石     85億円
2020年   12.09万石    241億円



30年で、量で3.2倍、金額で8.9倍。
という事は、「平均単価は30年で約3倍」(!)である。


国内市場の清酒の平均単価は、
前々回メルマガで書いた通り、たぶん30年前より下がっている。

「全販売量のほぼ半分が紙パックの経済酒」である国内市場にくらべ、
「平均単価が30年で3倍」の海外市場は、
「価格の面」で日本の清酒産業にとって、とても大事になった。


そして、次の通り
「量の面」でも欠かせない存在になっている。




●▲■清酒の全生産に占める輸出量の比率、30年の推移

1990年     0.5%
2000年     0.7%
2010年     2.3%
2020年     5.0%



今や、輸出比率は全国平均で5%。
造った酒の10%程度を輸出する蔵元も珍しくない。
輸出比率50%以上の蔵元も何社かある。

そして30年で、0.5%から5%へ
「日本の清酒生産に占める輸出比率は10倍」(!)になった。

特に2%を超えてから伸び方が早い。
今は5%だが、私は、2030年には10%を超えていると考える。


ニュージーランドのワインを引用して説明してきた。

かつてニュージーランドワインは全くの国内商品で、
1981年の輸出比率は2%だった。
それが、既存ブドウ樹を伐根、世界品種に植え替えて品質を高め、

国を挙げて輸出にドライブをかけた事で、
30年後の2011年には、輸出比率は70%(!)となった。
「2%超えから30年で70%」である。

サケはワインほどグローバル商品ではないのでワイン並みは無理だが、
ニュージーランドの半分はいける、すなわち
「2%超えから30年で35%」と思っている。

Sakeの輸出比率が2%を超えたのは2010年。
その30年後の2040年には35%となる、という推測。
その通過点として、2030年の輸出比率は10%越え、と考える。




●▲■(参考)海外の日本食レストランの数、30年の推移

1990年※       <1万店 (数千店)
2000年※       ≒1万店 
2010年         3.0万店
2019年※※     15.6万店 
(※農水省が調査結果を発表しだしたのは2006年から。
1990年と2000年は、筆者の体験からの感覚的推測。
※※ 2020年の数字はなく、直近の発表は2019年。)



30年で15倍以上だろう。
起点の1990年1万店以下は私の推測だが、
90年代に欧米・アジアを旅した記憶と、
今の欧米・アジアを頭の中で比較すると、15倍以上だと思う。


30年前、海外の日本食レストランは、
ほとんどが日本人の経営で、
ほとんどが日本人(現地居住者やツーリスト)や日系人のための店だった。

欧米人が食事をしている場合、ほぼ、日本人と一緒だった。
箸を使える欧米人は珍しく、言わなくてもナイフとフォークをだしていた。

アジアでは今、特に中国や韓国で日本食レストランが多いが、
30年前は、中国はまだ経済的に貧しかった時代だし、
韓国は戦後の日本文化規制をようやく解除し始めたころで、
日本食レストラン・日式居酒屋はごく少なく、ほぼ日本人専用だった。


それが、、、

アメリカにおける「スシブーム」や「日本食=健康食ブーム」 
ヨーロッパにおける「回転すしブーム」
アジアの「丼ブーム」
世界的な「ラーメンブーム」

などをへて、世界中で急激に日本食レストランが増えた。
今や日本人経営でない店が普通で、客の9割は現地人。
欧米人の多くが箸を使うようになった。
中国と韓国の日本食レストランは、数万店規模になった。


そして、
日本人経営でない日本食レストランで、
日本食と合わせて日本酒・Sakeを飲む人が増えた。
客の9割である現地人が、日本酒・Sakeを飲むようになったのである。


すなわち、海外の日本食レストラン数の増加こそが、
清酒輸出のこの30年の成長ドライバーであったといえる。


言い方を変えれば、
清酒輸出には「日本食レストランの呪縛」がある。



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今世紀に入って19年間、量・金額とも日本酒輸出先1位だったアメリカが、
コロナの2020年は大幅減で、
金額では、香港、中国に次ぐ3位になった。
(注:1990年代から2000年までは、台湾が日本酒輸出先1位だった。)

アメリカ、香港、中国は「三大日本酒輸出国」で、
この3か国だけで
日本酒輸出の、量で58%、金額で71%をしめる(2020年)。

3か国向けの2019年と2020年の輸出の増減は、
以下のように、くっきり3つに分かれた。


アメリカ    量=減    金額=減
中国     量=減    金額=増
香港     量=増    金額=増


アメリカのサケ市場が、量、金額とも大きく減らした理由は、
「サケの日本食レストラン依存度」が極めて高い証左。
「コロナで日本食レストランが閉店したので、日本酒の需要も減った」
、、、という構図。


一方、香港や中国は、コロナ感染が少なかったこともあるが、
「サケの日本食レストラン依存」がアメリカよりも低いことが大きい。


香港のCity Superなど、有力な日本酒売り場を見ると、
自家用に様々な日本酒ブランドを購入する一般消費者や富裕層はとても多い。


中国は、コロナ以降、急激にネット販売が増えていて、
「越境EC」(アリババやテンセントの海外品の国際通販)で、
単価の高い日本酒を買う人が増えているそうだ。



サケをアメリカで、あるいはグローバル市場で伸ばしていくためには、
香港や中国のように、日本食レストラン依存度を下げること、
すなわち、
「日本食レストランの呪縛」から脱することが、一つの重要戦略になる。




しかし、アメリカでも、
少しずつ、日本食レストラン依存度は下がっているように思う。
いつも長文になって恐縮だが、締めくくりに、そのエピソードを述べる。




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■■■ エピソード#2 
「(ホノルル酒造の、ハワイでの最後の醸造が終わってから)
30年たった、現代のホノルルにて」


少し旧聞に属するが、
2017年、ホノルルのJoy of Sakeに行ったときの体験を
「30年後の現代」の範疇のこととして書く。

「全米日本酒歓評会」の出品酒の、有料の利き酒イベントで、
数百銘柄の日本酒や海外製Sakeが、
ハワイの人気レストランの料理とともに楽しめる会。
実に多くの人々がサケを愉しんでいるのに驚いた。

チケットは95ドル(1万円以上)と高価だが、1,500人が参加。
参加者はホノルル市民で、日系人でない人も多い。
出来るだけ多くのサケブランドをテースティングしようとする人は多かった。
若いカップルでサケを愉しむ姿も多かった。
和食だけでなく、洋食とのペアリングも体験できた。


Joy of Sakeはニューヨークでも毎年開催され、
ニューヨーカーたちで大盛況であるそうだ。



Joy of Sake は2001年に始ったイベント。
そのルーツは、ホノルルでサケを製造していた「ホノルル酒造製氷」にある。
同社の副社長だった二瓶孝夫さんを「囲む会」が、
彼の没後に「顕彰する会」となり、そして「ジョイ・オブ・サケ」につながる。

「ホノルル酒造製氷」が、宝酒造に買収されたのは1986年だが、
ハワイでの清酒の醸造は1992年まで続いた。
Joy of Sakeがはじまって約20年だが、
ハワイでの醸造が終わってから数えると約30年である。



ホノルル酒造がサケ醸造を始めたのは1908年。
その後、禁酒法時代や太平洋戦争時代を除いて、
1992年までハワイで醸され続けたサケは、基本的に
「日系移民のためのもの」だった。


ところが、Joy of Sakeに参加して、
ハワイでの醸造が終わってほぼ30年たった今、サケ・日本酒は、
「(日本をしらない第三世代・第四世代の)日系人を日本文化に回帰させ、
日系人でない人をも含むホノルル市民を魅了するもの」となりつつあると思った。

そして、アメリカにおけるSakeの日本レストラン依存度は、
徐々にではあるが下がりつつある事も感じた。


2020年、ホノルルに新しく、クラフト・サケ醸造所
「Islander Sake Brewery」が開業したのも、大きな変化だ。



注)
2017年に、ホノルルのJoy of Sakeは、以下の資料参照
https://kitasangyo.com/pdf/archive/sake-watching/sake_hawaii.pdf

Joy of Sakeでは、二瓶孝夫さんの奥さん、二瓶美佐代さんにもお会いでき、
ハワイの清酒製造の貴重な歴史資料をいただくことができた。
残念ながら、美佐代さんはその後、故人となられた。

なお、ホノルル酒造のブランド「宝正宗」は、今もCA州バークレーの宝酒造で生産される。
歴史あるブランドは失われていない。

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資料の4~9ページは、100年以上のハワイのサケ製造の歴史をまとめている。
近年のサケを取り巻く状況の劇的な変化は、
この30年の取り組みの成果ばかりではなく、
100年以上の、ほとんどは失敗だった多くのサケ挑戦者たちの取り組みの上に
花開いたと言える。



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「清酒の30年の国際化」で、もう一つの欠かせない要素、
「海外生産」は次回に。


text = 喜多常夫





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さて、商品のご紹介です。



●▲■ ご紹介情報 その1  KKディビジョン ●▲■ 
サケびん口規格の王冠「JST」:ツバ厚のある替栓+天面フラットの冠頭
https://kitasangyo.com/pdf/package/closures/JST_KT.pdf
サケびん口規格の王冠「jZK」:ツバ厚のある替栓+AZK
https://kitasangyo.com/pdf/package/closures/JZK.pdf

「サケびん口の王冠」(一升びん口規格の王冠)の採用が増えていますが、
従来の替栓KSはツバが薄く、特に海外の方に開けにくい傾向があります。
ツバ厚があるJSTは、世界標準のTトップ栓です。




●▲■ ご紹介情報 その2  KKディビジョン ●▲■ 
「刻印入り」の王冠・キャップの事例
https://kitasangyo.com/pdf/package/closures/kokuin.pdf

刻印は、商品のブランド化戦略になります。
当社は刻印デザインのノウハウと、多くの実績を持っています。




●▲■ ご紹介情報 その3 K2ディビジョン ●▲■ 
「スパークリング・サケ」の資材のご採用事例
http://www.kitasangyo.com/pdf/archive/package-designs/PDA_288.pdf

シャンパンびん、シャンパンコルク、ワイヤー、29mm王冠、
ラベル、アルミフォイル、、、などをご採用いただいた事例です。

飲みやすい容量として、「500-520ml」のシャンパンびんを新発売しています。
(パストライズするサケには500、ワイン・シードルには520)


びん内二次醗酵の「スパークリング・サケ」の設備
https://kitasangyo.com/pdf/machine/for-sparkling-cider-and-brandy/ch_equipment3r.pdf

「Sake」のスタンプがあるものが清酒でご採用いただいている実績。
スパークリングの事なら、資材も、設備も、お任せください。






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2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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2006年4月以来、きた産業のトピックスを写真で収録。
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