●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.283 ●▲■
発行日:2021年11月2日(火)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■

発行:きた産業株式会社 https://kitasangyo.com


------------------< 目 次 >------------------

●▲■ (周年記念の連載)「酒類業界の30年を振り返る」 

<ウイスキー編、その2>
■ 「ウイスキー生産者数」の急増
          10年で、日本2.6倍、スコッチ1.3倍、アイリッシュ6.5倍
■ 日本のウイスキー「リアルかフェイクか?」
■ 「フェイクから生まれるリアル」もある?

text = 喜多常夫


ご紹介情報●1▲ 資材をご採用いただいたウイスキーの商品事例
ご紹介情報●2▲ スペイサイドとアイラ島のウイスキー見学記
ご紹介情報●3▲ 「海外の清酒生産とクラフトサケ事情」・YouTube30分



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前回は、
■ウイスキーが、戦後、需要が反転した初めて・かつ・唯一のお酒であること、
■海外で人気で、2020年、輸出金額は日本酒を追い越したこと、
などを書いた。今回はその続き。





>>>30年を振り返る・ウイスキー編、その2<<<


●▲■ 「ウイスキー生産者」の数の急増


日本のウイスキー生産者数の30年の推移を調べた。
また、ウイスキー蒸溜所の増加は世界的動きであるので、
英国、アイルランド、米国の30年の推移も、合わせて調べてみた。


●■日本の「ウイスキー生産者」の数(場数)の30年の推移(注1)

1990年・・・20(+α※)
(※ 80年代から継続するいわゆる「地ウイスキー」が、
他にも数社存在したと思われるが正確に捕捉できない)
2000年・・・18
2010年・・・19
(ベンチャーウイスキーさんが2008年から蒸留開始で+1)
2020年・・・50程度
(ただし50のうち、2020年時点で商品未発売が7社程度)

海外では基本的には「蒸溜所」であるが、
日本の制度では必ずしも蒸溜所である必要はない。故に、「ウイスキー生産者」と書いた。
2010年代、より正確には2015年以降に一気に増えている。
かつての1980年代の地ウイスキーブーム時代と違って、
ポットスチルを設置して正統的なウイスキー造りをされる方が多いが、
次節で触れる「フェイクウイスキー」に属するものも含まれる。
また、上記の数とは別に、ウイスキー免許は持たないが
アメリカで米焼酎をウイスキーとして販売する焼酎会社が5社程度
海外で日本製ウイスキーブランドを販売するが会社が3社程度ある。


●■「スコッチウイスキー蒸溜所」の数の30年の推移(注2)

1990年・・・ モルト 95+グレーン8=103
2000年・・・ モルト 92+グレーン8=100
2010年・・・ モルト100+グレーン7=107
2020年・・・ モルト129+グレーン7=136
(2020年時点で、129以外に新規モルト蒸溜所計画が23)
スコッチウイスキー蒸溜所も、2010年代から急増している。
20世紀は「ブレンデッド」の時代だったが、
21世紀は「モルト」の時代になった感がある。
2030年には、スコットランドのモルト蒸溜所が150を超えるだろう。
スコットランド以外の英国内でも、蒸溜所は増え続けている。
なお、スコットランドでは1880-1890年代にもウイスキーブームがあって、
たくさんの食品工場がウイスキー蒸溜所に改装されたそうだ。


●■アイルランドの「ウイスキー蒸溜所」の数の30年の推移(注3)

1990年・・・2
2000年・・・2
2010年・・・4
2020年・・・26

世界5大ウイスキーの一つ、アイリッシュウイスキーも、2010年以降急増。
なお、ちょうど、「琉球泡盛が鹿児島に伝わって焼酎になった」ように、
「アイリッシュウイスキーが英国に伝わってスコッチウイスキーになった」というのが歴史。
行き来のない時代であるのに、洋の東西で不思議と似ている。

アイルランドには、1779年には1,228もの蒸溜所があった。
それが100年ほど前(英国から独立したころ)には200くらいまで淘汰された。
(このころ、スコッチ蒸溜所も200くらい。拮抗していたのかもしれない)
ところがアメリカ禁酒法後に評判を落としてスコッチに市場を奪われ、1990年には2つに。
それがウイスキーブームで2010年頃から盛り返して26、という流れ。

因みに日本では、100年ほど前の明治末年、
沖縄に148、鹿児島に485の蒸留所があったが
現在は、沖縄に48、鹿児島に110。




●■アメリカの「クラフト蒸溜所」の数の30年の推移(注4)

1990年・・・6
2000年・・・24
2010年・・・204
2020年・・・2,265

アメリカのクラフトの増え方は、世界でとびぬけている。
クラフト蒸溜所の基本はジンやウォッカだが、
ウイスキーを手掛けるところも非常に多い。

バーボンウイスキーの定義は、
トウモロコシ51%以上、トーストした新樽で2年以上熟成、と思っていたが、
wikipediaで見ると、
4年未満はラベルに熟成期間を表示しなければならないが、
熟成期間の下限はないそうだ。



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以上の、各国の2010年→2020年の増え方を抜き書きすると以下

●■日本の「ウイスキー生産者」:19 → 50 (2.6倍)
●■スコッチウイスキー蒸溜所:107 → 136 (1.3倍)
●■アイリッシュウイスキー蒸溜所:4 → 26 (6.5倍)
●■アメリカの「クラフト蒸溜所」:204 → 2,265 (11.1倍)

こうしてみると、特別、日本だけが異常なわけではない、といえるかもしれない。

日本の「ウイスキー生産者」の増加は、
ジャパニーズの人気の高さに加え、世界的ウイスキーブームが重なった賜物と言える。
実際、ジャパニーズウイスキー(ジンも)の多くは、
日本市場より世界市場を狙って設立されている。


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(注1)日本ウイスキーの30年の推移は以下の当社のリスト
https://kitasangyo.com/list/whiskey.html
からのカウントで、商品が未発売でも、商業的蒸留を開始しているところは含めている。
2020は50としたが、直近の2021年10月現在では54に増えている。

2020年は50「程度」と書いているのは、
どこまでカウントをするかの判定が難しいから。
ウイスキー免許を取得した会社はもっと多いが、
「商品未発売だが自社の蒸留器で商業蒸留を開始しているところ」
「蒸留していないが輸入品などで自社ブランドを商品化しているところ」
までを当社の認識の範囲でカウントしたもの。誤差もあるかもしれない。

なお、リンク先リストの欄外に参考情報として記載しているが、
ウイスキー免許は持たないが
アメリカで米焼酎をエージングしてウイスキーとして販売する会社が5社程度
欧米で日本製ウイスキーブランドを販売するが会社が3社程度ある。


(注2)スコッチウイスキーの30年の推移は
「ウイスキーコニサー資格試験教本2020」(土屋守著)の各蒸溜所の解説文から、
各年代ごとに「活動している(休止していない)と考えられる蒸留所」を私がカウントしたもの。
蒸留していなくてもストックがあって製品を販売している場合、
蒸留していてもまだ製品を出していない場合など、
どこで区切るかによって数が変わるので正確な判定は困難。あくまで概数。

2000年時点のモルト蒸溜所は「92」と書いたが、
「ストックのあるうちは一つの蒸溜所として数える」
というのが一般的なようで、その場合「110くらい」となる。
(2000年発行の新潮選書「ウイスキー三昧」土屋守著)

また、2020年は「136」と書いたが、  
Scotch Whisky Associationの直近のFacts & Figuresでは、
「活動中のスコッチウイスキー蒸留所は134」とある。


(注3)アイリッシュウイスキーの30年の推移は
IBECやIrish Whiskey Associationなどによる。


(注4)アメリカのクラフト蒸溜所の30年の推移は
American Craft Sprits Associationによる。




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●▲■ 日本のウイスキー:「リアルかフェイクか?」


一つの事例として、以下の英文のサイトを引用させていただく。
https://www.nomunication.jp/2018/07/06/infographic-japanese-whisky-real-or-fake/ 

タイトルは、
「INFOGRAPHIC: JAPANESE WHISKY, REAL OR FAKE?」
訳すと:
「図解・日本ウイスキー、本物かフェイク(偽物)か?」

世界各国で売られる日本のウイスキー、約120くらいの銘柄を

●Japanese Whisky=リアル(本物)日本ウイスキー
■World Whisky=世界からの輸入モルトで造ったウイスキー
▲Fake Japanese Whisky=フェイク(偽物)日本ウイスキー
▲Shochu Labeled as Whisky=ウイスキーのラベルを貼った焼酎

の4種に分類して公開。
ペンネーム「ウイスキー・リチャード」さん(東京在住アメリカ人)という方のサイト。
全く、個人の判断の分類であるが、
こういう見方もある、という事例として紹介するものである。


日本国内でも以前から問題意識は強く、
2021年2月に「日本ウイスキー」の定義ができた。
スコッチと同じく、「貯蔵3年以上」としたのは良かったと思う。

ただ、実情として現状では、様々な商品が世界で出回っている。

英国にはフェイクウイスキーはないし、
フランスにはフェイクワインはないが、
日本にはフェイクウイスキーがある。。。
(「合成清酒」もある、と付け足すべきかもしれない。)



●▲■ フェイクから生まれる真正ウイスキー


地ウイスキーブームのころからのウイスキーブランド、
その昔は一升壜に入ったウイスキー2級だったようなブランドは
前掲の英文サイトでは「フェイク」に分類している場合が多い。
蒸留を行わず、輸入モルトをブレンドして製品化している場合も「フェイク」である。

一方で、それらの生産者が本格的なポットスチルを導入し、
3年以上の樽貯蔵を経て本格的なウイスキーを販売されるケースもある。
その場合は、ウイスキー・リチャードさんは、「リアル」に分類。

1つの会社で「フェイク」ウイスキーと「リアル」ウイスキーの
両方の製品がある状態になっている。




サントリ―さんの事例を想起する。

寿屋さん(現サントリー)が山崎蒸溜所(1923年着工)以前、
最初に出したウイスキーは「ヘルメスウヰスキー」といった。
1911年(明治44年)のことで、混成ウイスキーだった。
また1920年(大正9年)には壜詰めウイスキーハイボール「ウヰスタン」
(たぶん「ウイスキー炭酸」を短くしたネーミング)を発売した。
1919年、偶々樽詰めで長期保管されていたリキュール用アルコールが
まろやかな味になっていることを見つけ
「トリスウヰスキー」として限定販売したものが好評だった。
これらの、いわば偽物製品での経験があってこそ、
鳥井信次郎さんが本物(山崎蒸溜所)に取り組むことになったのだと思う。


日本では終戦後まで、ウイスキーだけでなくワインも清酒も、
混成や合成の商品が多かった。
「合成清酒」は今も一定の市場規模で残っている。


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似た事例を一つ。ブラジルのサケ「Thikara(力)」:
ブラジルでは「東麒麟」が清酒を造るのが有名。
しかし、それ以外に何社か「サケ」をつくる企業があって、
その最大手がSakeria Thikara(サケリア・チカラ)社である。
(Chikaraでなく、Thikaraがポルトガル語の綴り)

ここはかつて(10年ほど前は)、「麹を使用していないのでは」と言われた。
しかし、偶々ネットで見ると、最近の新製品は「40%精米の純米酒」を謳う。


フェイクからスタートして、やがて本物を造る、
最初のフェイクがなければ、今のブランドはなかった、
というケースがある事も、見過ごせない。

フェイクが必ずしも悪ではないのかもしれない。
難しい問題だ。



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ウイスキーについては、他に、、、

●海外のオークションで日本ウイスキーが非常に高額で取引されていること
●2011年に閉鎖された「軽井沢」蒸留所の製品が、
今も継続的に海外向けに1本数十万円でリリースされていること
●日本語ラベルの、カリフォルニア製ウイスキーのこと
●ウイスキー消費大国のフランスで、サントリーよりニッカが強いこと
●日本ウイスキー・日本スピリッツ・日本酒に、
世界の酒類大手(ペルノリカール、ディアジオ、LVMH)が出資したこと

、、、なども書きたいトピックスだけれど、
長くなるので、今回はここで終わることにします。


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世界に冠たるスコッチウイスキーの2020年の輸出は38億ポンド。
コロナで前年比23%減。
137.1円/ポンド(2020年平均TTM)で換算すると5,210億円。

日本ウイスキーの2020年の輸出は271億円。
コロナにもかかわらず前年比39%増。

30年前の1990年の正確なデータがないが、
日本ウイスキー輸出はスコッチ輸出の1/200程度だったと思う。
30年後の2020年、1/20くらいまで追いついた。

日本政府の2025年輸出目標680億円が達成されれば、
日本ウイスキーはスコッチの1/10くらいの規模になる。
楽しみである。

text = 喜多常夫






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さて、商品や情報のご紹介です。



●▲■ ご紹介情報 その1  K2ディビジョン ●▲■ 

資材をご採用いただいたウイスキーの商品事例
https://kitasangyo.com/pdf/archive/package-designs/PDA_293-02.pdf
https://kitasangyo.com/pdf/archive/package-designs/PDA_293-01.pdf
https://kitasangyo.com/pdf/archive/package-designs/PDA_293-03.pdf

びん、キャップ、栓、ラベルなどを当社から納入させていただいた事例です。
ウイスキーのパッケージは、きた産業にお任せください。




●▲■ ご紹介情報 その2 ●▲■
スペイサイドのウイスキー見学記
https://kitasangyo.com/pdf/archive/world-alcoholic/Speyside_whisky.pdf
アイラ島のウイスキー見学記
https://kitasangyo.com/pdf/archive/world-alcoholic/Islay_whisky.pdf

■竹鶴政孝と佐治敬三の足跡
■ウイスキーの「グレン」は、清酒の「正宗」?
■スペイサイドと鹿児島(ともに蒸溜所の最大集積地域)の比較
■アイラ島(蒸溜所8か所、当時)と奄美大島(蒸溜所10か所、当時)の比較
など、マニアックな内容です。




●▲■ ご紹介情報 その3 ●▲■ 
「海外の清酒生産とクラフトサケ事情」(YouTube30分)
https://youtu.be/uDbGLFj_x7s

日本酒造組合中央会の「日本酒フェアONLINE」で、
10月15日に喜多が話した内容が、アーカイブにアップされています。
直近の海外クラフトサケ事情をアップデートしたスライドで解説。
7分目くらいから、30分間が喜多の講演です。








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