●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.295 ●▲■

    発行日:2022年9月22日(木)
  ■ アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報 ■

発行:きた産業株式会社 https://kitasangyo.com



------------------< 目 次 >------------------

●▲■ お酒とガラスびん

●ガラスびんの市場サイズは約1,000億円、うち「酒類」向け350億円程度
●ビールのガラスびん:コロナでシェアが6.3ポイント減
●清酒の720mlびん:史上初めて1.8Lびん出荷を上回る+「サケびん口」の増加

text = 喜多常夫

ご紹介商品●1▲ 「清酒・焼酎のモロミの搬送に、Ragazziniのチューブポンプ」
ご紹介商品●2▲ 「サケびん口」びんのデザイン・レファレンス・ブック
ご紹介商品●3▲ 「清酒・焼酎・ビール・ワイン・ウイスキー・ジン」の王冠・キャップ・栓



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先日、「日本酒とガラスびん」という演題で講演する機会があって、
現状や統計データなどを調べた。

「ガラスびん」は、日本酒でも本格焼酎でもビールでも、大変苦戦している。
(「ガラスびん詰め商品が量的に減少」、という意味での苦戦。)




日本の「ガラスの全体市場」は建築用、自動車用、液晶用などがあって巨大。
代表格のAGC社は世界的企業でもあり、 1社で売上1兆7,000億円である。
(AGC社=TVコマーシャルでおなじみ、旧社名は旭硝子)

一方、その中の「ガラスびん市場」は、酒類・食品・薬品用などすべてのびんを含んで、
市場サイズは1,000億円程度(2021年、工場出荷額ベース)と比較的コンパクト。
ガラスびん市場はコロナ以前から縮小を続けていて、5年で20%以上減少した。

1,000億円のうち「酒類」向けが一番多くて約35%=350億円程度。
「酒類」の中で「清酒」向けが一番多くて約40%=140億円程度。
コロナ後は特に減少度合いが大きい。


日本のガラスびんは、NY社・T社・I社の大手3社で80%程度のシェア。
近年の需要減と今後の見込みを踏まえ、
I社が2つあるガラスびん工場のうち1つを、今年末で閉鎖すると決めた。
中期的・マクロ的に業界全体を見た冷静な判断だが、
短期的・ミクロ的には足元の需給バランスが崩れて、現在混乱気味。

本来なら、新しいガラスびんを投入して需要増につなげたいところだけれど、
「キャパがいっぱいで新しい金型のびんは造れない」、、、というような現状。
ちょうど今、あらゆる工業製品が値上げを迫られているが、
ガラスびんも値上げするタイミングと重なって、複雑な状況になっている。

当社、きた産業もガラスびん販売を事業の大きな柱としているが、
日本のガラスびん市場は当分の間、むつかしい局面が続きそうである。


因みに、欧米のガラスびん需要もコロナで一度は減ったが、
日本と状況が違って2021から22年にかけて急回復、
供給が足りなくて、新工場増設計画(グリーン化した工場)もあるくらい。

「脱プラ」の潮流に対する反応がガラスに来ていることもあるし、
仏サンゴバン(Verallia)社、米O-I社、米Ardagh社、仏Saver社など
ビッグプレーヤー(巨大企業)がガラスびん市場を仕切っていることも大きい。

コロナでワクチンびんの巨大ガラスびん特需が発生したはずだが、
これも製造は欧米の会社で、
残念ながら日本ではコロナワクチン用のびんを製造していない。



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●▲■ <ビール>大手4社の総量とパッケージを観察
(注:大手4社=アサヒ、キリン、サントリー、サッポロ
ビール=発泡酒や第三のビールを除く、本来のビール)

コロナ前の2019年:4社総量232万KL
ガラスびん14.7%+缶49.7%+樽35.6%

コロナ1年目の2020年:4社総量181万KL
ガラスびん10.0%+缶61.8%+樽27.3%

コロナ2年目の2021年:4社総量180万KL
ガラスびん8.4%+缶71.1%+樽20.4% 
(※以上の数字は、酒類食品統計月報による)

コロナの2年で「ガラスびん」は6.3ポイント減、「樽」は15.2ポイント減、
一方、「缶」は21.4ポイントの大幅増である。

コロナが「缶」に順風なのは感覚的に頷けるが、
想像以上のシフトが起こっている。


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当社は(ビール王冠は製造していないが)王冠・キャップ製造業なので付け加えると、
2010年ごろは大手4社でビール用王冠をゆうに10億個以上使っていた。
2021年の「びんは総量180万KLの8.4%」を王冠数にすると3億個もない。

10年で1/3以下。
ビールびんの激減は、
「ガラスびん生産者の工場再編」のきっかけになったが、
「王冠生産者の再編」も間近かもしれない。



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●▲■ <清酒>総生産量と主要ガラスびんの観察
(注:総生産量=国内向け+輸出分)

コロナ前の2019年:総生産量273万石
1.8Lびん=6,541万本(=65.4万石:総生産量の24%)
720mlびん=1億1,930万本(=47.7万石:総生産量の18%)

コロナ1年目の2020年:総生産量244万石
1.8Lびん=5,223万本(=52.2万石:総生産量の21%)
720mlびん=9,800万本(=39.2万石:総生産量の16%)

コロナ2年目の2021年:総生産量242万石
1.8Lびん=4,382万本(=43.8万石:総生産量の18%)
720mlびん=1億2,3000万本(=49.2万石:総生産量の20%)
(※びん本数は、1.8L壜再利用事業者協議会、ガラスびん協会)


コロナの2年で、「1.8Lびん」の本数は25%減。
一方、「720mlびん」の本数は、いったん減ったが、2年で3%増である。

1.8Lびんによる出荷は年々減り続けて、
2021年の清酒総出荷に占める割合は18%。
720mlびんによる出荷は年々増えていたが、
2021年は清酒総生産の20%に達して、1.8Lびんを上回った。

戦前から80年以上、清酒の主要ガラスびんは1.8Lびんだった。
2021年は「史上初めて720mlびんが清酒の主要ガラスびんとなった年」である。

「1.8Lびん」は日本酒の「アイコン」として今後も継続するだろうが、
世界市場を考えても、今後の清酒の主要ガラスびんは「720びん」になるだろう。

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清酒の720mlびんではもう一つ変化が起こっている。
かつては「PPキャップ口」規格がほとんどだったが、
「サケびん口(=一升びん口)」規格の720mlびんが増加している。

2019年: 720mlびん1億1,930万本のうち、
サケびん口は推定1,400万本(12%)

2020年: 720mlびん9,800万本のうち、
サケびん口は推定1,500万本(15%)

2021年: 720mlびん1億2,3000万本のうち、
サケびん口は推定1,800万本(15%)
(※以上の数字は、KT+KS=冠頭・替栓やAZK、MZKなど、
サケびん口用の王冠・キャップの当社出荷量からの推定)



「サケびん口の720mlびん」は、

八海山、真澄、獺祭、黒龍、奥の松、而今、
十四代、新政、作、人気一、風の森、南部美人、、、

などの有力ブランドが採用されている。
また、灘・伏見の大手でも、

白鶴、月桂冠、剣菱、菊正宗、黄桜、大関、、、

などが一部の720ml商品(主にプレミアム商品)で採用されている。
さらに、本格焼酎でも、

富乃宝山(西酒造)、㐂六・中々(黒木本店)、、、

などが、720mlびんで採用されている。




これは、国内市場だけでなく、急成長する海外市場にドライブされた結果でもある。

「数十ユーロのプレミアム・サケにPPキャップ(スクリューキャップ)は不似合い、
ジャパニーズサケにはサケびん口キャップが相応しい」
と考える人は多い。

「数十ユーロのボルドーのシャトーものワインにスクリューキャップは不似合い、
ボルドーのワインは天然コルク栓であるべき(あってほしい)」
という考えと似ているかもしれない。

清酒にとって輸出は今や最重要市場の一つである。
総生産に占める輸出は2021年には7%に達し、ますます増える。
「サケびん口」は、サケの国際化に貢献すると思う。

本格焼酎の輸出はこれからが本番だが、
これもサケびん口キャップなど、PPキャップ以外の選択肢を検討すべきだと思う。
(参考情報:下記の「ロンドンのビーフィーター・ジン見学記」の6ページ参照)
https://kitasangyo.com/pdf/archive/world-alcoholic/gin&botanicals.pdf


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当社はサケびん口用の王冠・キャップの製造を主要な事業にしているので付け加えると、
2010年ごろは1.8Lびん用を中心に、清酒+焼酎で2億個程度が使われていた。
2021年の「サケびん口720」が増えたとはいえ1億個を大きく下回る。
「1.8Lびん」の激減が大きく影響している。

ビール王冠は「10年で1/3以下」で「王冠生産者の再編も間近かも」、と書いたが、
「10年で1/2以下」の清酒・焼酎のサケびん口用王冠・キャップの生産者も似た状況。

AZK、MZK、jZKなど、サケびん口キャップの近年の新製品は増えているが、
KT+KS(冠頭・替栓)など、既存のサケびん口王冠は激減である。

清酒・焼酎の王冠・キャップ生産者の再編・淘汰もありうる状況だが、
当社は生き残って、
AZK、MZK、jZKなど好評いただいている新製品キャップを軸に、
KT+KSなど既存王冠も改良を重ね、
「サケびん口720」の世界市場への浸透に貢献していかねば、と思っている。



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●▲■ <紙パック>の現状を観察


<清酒>出荷量上位3社、T社・H社・G社の、
課税移出総量は70.5万石(2021年)で、
うち、紙パックは46.8万石=上位3社平均紙パック比率66%。

<本格焼酎>出荷量上位2社、K社・S社の、
課税移出総量は83.2 万石(2020年)で、
うち、紙パックは約71.1万石=上位2社平均紙パック比率85%
(※いずれも、酒類食品統計月報による)

全体でみても、
清酒の2021年全出荷量242万石の約5割、
本格焼酎の2021年全出荷量218万石の6割以上は、「紙パック」だと思う。
(注:全出荷量=国内向け+輸出分)

すなわち、清酒も本格焼酎も、「量の面で見た」主要パッケージは、
「ガラスびん」ではなく「紙パック」であると言える。



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総務省統計局の小売物価統計で観察対象に定める「清酒」は、
2002年まで「1.8Lびん」(かつては2級、級別廃止後は佳撰か佳撰)
だったが、
2003年から「2L紙容器入り」(普通酒)
となって、物価統計上も2L紙パックが清酒の標準容器である。

なお、焼酎(しょうちゅう)も、小売物価統計の現在の観察対象は、
「麦またはさつまいも、25度・1.8L紙容器入り」
で、同じく紙パックが標準容器。

だが、よく見てもらうとわかる通り、容量は
清酒=2リットル
焼酎=1.8リットル
である。

そして、小売物価統計の直近価格は
清酒=959円(2022年7月全国平均)
焼酎=1,571円(2022年7月全国平均)

清酒を1.8L換算すると863円で、焼酎のほぼ半値である。
経済酒でない紙パック清酒も増えているが、
清酒の紙パック製品の価格立て直しはなかなか難しい。



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●▲■ まとめ:ガラスびんの価値

酒類・飲料の主要パッケージは、ガラスびん・紙容器・缶・PETボトルの4種。

ガラスびんは、紙や缶やPETボトルに比べて大きく減っているが、
清酒や焼酎の海外展開のうえで、鍵となるパッケージである。
特にプレミアムセグメントを展開するうえで、重要である。

国内向けは、現状は紙パックが主流であるが、
今後、世界的潮流としてアルコール飲料の量的縮小が起こるなかで、
高付加価値市場を育成しなければならない。
ゆえに、国内でもガラスびんの役割は大きい。



text = 喜多常夫

(本稿はできるだけ正確を期してまとめたものですが、
誤りなどお気づきの点があれば、是非、ご連絡ください。)




<追記:一口知識> 「壜」と「瓶」と「びん」

本文ではほとんど「びん」という平かな表記を使ったが、
「1.8L壜再利用事業者協議会」という名称を引用した。
この「壜」と言う漢字は正しい用法で、協議会の正式名称である。

今、新聞などでも「瓶」の漢字を使う場合がほとんどだが、本来は
「瓶」:広口のびん、英語の「jar」  「へい」の読み方が語義に近い
「壜」:狭口のびん、英語の「bottle」
という使い分けが正しい。

新聞などで一般化したとはいえ誤った用法で「瓶」を使いたくないので、
業界では「びん」と平かな表記をすることが多い。
大手6社の会「ガラスびん協会」、中堅7社の会「ガラスびんフォーラム」
も平かな表記である。




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さて、商品のご紹介です。


●▲■ ご紹介商品 その1  ROOTS Div. ●▲■
「モロミの搬送に、Ragazziniのチューブポンプ」
https://kitasangyo.com/Products/data/brewing/ragazzini-sake.pdf

イタリア・ラガツィーニ社のチューブポンプはワインポンプの世界トップブランド。
日本でも多くのワイン醸造所でご採用いただいていましたが、
このたび、有力な日本酒蔵元でご採用いただき、大変好評をいただきました。
超低回転で、固形分をつぶさず、やさしく搬送。
日本酒だけでなく、本格焼酎の各種モロミにも、ぜひご検討ください。




●▲■ ご紹介商品 その2  KK+K2 Div. ●▲■
「サケびん口」びんのデザイン・レファレンス・ブック
https://kitasangyo.com/pdf/archive/package-designs/DRB22_sbk.pdf

AZK、MZK、jZK、KT+KS(冠頭・替栓)など、
サケびん口キャップをご採用いただいている
720mlのびんを収載したレファレンスブックです。




●▲■ ご紹介商品 その3  KK+K2 Div. ●▲■
「清酒・焼酎のキャップのバリエーション事例」
https://kitasangyo.com/pdf/archive/package-designs/sake-cap.pdf

「クラフトビールの王冠・キャップのバリエーション事例」
https://kitasangyo.com/pdf/archive/package-designs/craftbeer-cap.pdf

「ワインのキャップ・栓のバリエーション事例」
https://kitasangyo.com/pdf/archive/package-designs/wine-cap.pdf

「ウイスキー・ジンのキャップ・栓のバリエーション事例」
https://kitasangyo.com/pdf/archive/package-designs/Whisky-cap.pdf

当社から、王冠・キャップ・栓を納入させていただいた事例で、
キャップの様々な選択肢が確認できます。
「お酒の、キャップは、きた産業」です。











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2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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