●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.297 ●▲■
発行日:2022年12月22日(木)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■

発行:きた産業株式会社 https://kitasangyo.com

------------------< 目 次 >------------------


●▲■ 年末恒例、2022年の 〇と×

■パッケージ資材業界の苦戦と混乱・・・×
■「クラフト」の醸造所・蒸溜所、ますます増加・・・○
■NOLOが本流に・一方High Alcoholの蒸留酒もブーム・・・○

●▲■ ジョンレノン・オノヨーコの「Happy Christmas」に想う
●▲■ 年の瀬のご挨拶
text = 喜多常夫


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年末恒例2022年の〇×、
独自の視点で、お酒・アルコール飲料業界の1年を振り返って、

〇=マル:よかった
×=バツ:NG
!=ビックリ:驚いた

を書きます。企業名は敬称略で失礼します。



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■パッケージ資材業界の苦戦と混乱・・・×


今年(2022年)10月に発表されたニュース、

「製缶大手の『北海製罐』が、
飲料用スチール缶から撤退、2023年3月で生産終了」

には驚いた。(規模は違うが、当社も同じ金属加工業、ズシンと来た)
去年(2021年)に発表された、

「ガラスびん大手の『石塚硝子』が、
2022年12月で姫路工場でのガラスびん生産終了」

にも驚いたが、より影響が大きいように思う。

酒類業界の方には「飲料用スチール缶」はピンと来ないかもしれないが、
缶コーヒーなどによく使われている缶である。
数量減に加え、原料価格やエネルギーコストなどの上昇分を
製品価格に転嫁できないので、赤字事業なのだという。


ビール、清酒、ワインなど、酒類の主な缶である「アルミ缶」についても
去年から今年にかけて、以下のニュースがあった。

「アメリカのファンド会社、アポロが、
昭和アルミと三菱マテリアルのアルミ事業を買収(2021年)
各子会社の『昭和アルミ缶』と『ユニバーサル製缶』もアポロ傘下となり、
2022年7月、両社は『アルテミラ』と『アルテミラ製缶』に社名変更」

従来の「日本的」な経営スタイルから、
「外資流」の採算重視・ロット重視の合理的経営になるのだと思う。


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■原料価格・エネルギーコスト・流通コストの大幅上昇
■「パラダイムシフト」的な、パッケージ間の急激な変動
(例:ガラスびん→PETボトル・缶・紙容器、スチール缶→アルミ缶、など)
■中・長期的には絶対需要量の減少(人口減)

以上のような「地殻変動」ともいえる環境変化に対し、
パッケージ資材を製造する会社の多くは大苦戦している。

前掲の、北海製罐・石塚硝子・アルテミラ・アルテミラ製缶は、
「回復困難な不採算部門は事業停止」
「生産拠点を減らして縮小市場に対応」
「新体制で事業再構築」
に踏み切った事例だが、
多くの会社はそこまでの対応はできないので、
「社内で吸収できない分は値上げをお願いする」
ということになる。
生産拠点を減らしても事業再構築でも、値上げは欠かせない状況。


2022年は価格対応に追われた1年だった・・・×(バツ)


一方で、価格対応に追われる結果、本来重視しなければならない、
以下のような要素への対応は、相対的に後回しされているように感じる。

■プラスチック削減・マイクロプラスチック汚染対応
   ■バイオプラ化・生分解性プラ化
■あふれるほどの使い捨て包材を見直す
■容器リユース化への取り組み
■小容量化容器の増加(単位食品当たりの包材使用量増)の問題

もちろん、これらのことは資材メーカーも資材ユーザーも気にかけているし、
EUでは「2040年の包装廃棄物15%削減」
(例:野菜の使い捨て包装禁止、ホテルのシャンプーミニボトルの禁止など)
の法制化も検討されているが、
やはり、会社は目先の対応(値上げ)が優先になってしまう。

本来、再生可能エネルギー重視でなくてはならないのに、
当面の対応で、石油、LPG、原発などに頼らざるを得ない、、、
という、今の世界情勢に似ている。

存続のための「目先の対応」は必要だが、
「時代や環境が求める対応」を常に忘れないようにせねば、と思う。



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酒類業界で使われるほとんどのパッケージ資材は
(恐縮ながら当社の王冠・キャップや機械類も)
「値上げのお願い」が現在進行形であるが、
2022年は、併せて別の大きな問題も起きている。

それは「ガラスびんの供給不足」という問題・・・2022年の×(バツ)である。

清酒・焼酎でも、ワインでも、クラフトビールでも、
ガラスびんが思うように入荷しない方は、多いと思う。
当社にご用命いただいているお客様でも、
値上げをお願いしたにもかかわらず、注文通り納入できないケースがある。
ガラスびん業界は、既存のお客様向けで手いっぱいで、
新規のお客様からのガラスびんの引き合いはお断りするような状況。



そして私が一番驚いたのは、
「一升びん(1.8Lびん)が足りない」・・・!(ビックリ)& ×(バツ)

一升びんは年々減り続け、
清酒・焼酎で一番の「閑職」のパッケージである。
そんな一升びんが足りない事態は、夢想だにしなかった。

半世紀前、清酒・焼酎の総量の9割がたが「一升びん」詰めで販売されていたが、
現在の主役は「紙パック」(総量の5-6割)、
ついで「720mlガラスびん」(総量の2割程度)である。

10年前、一升びんは1億3,000万本ほど使われていたが、
今は6,500万本ほど。(清酒+焼酎、新壜+回収壜の数字)
10年で半減である。

一升びんは、過去から継続的に毎年数千万本の新壜が投入されている。
一升びんは「洗びん」したら10回程度は再利用できるのだから、
仮に1-2年は新壜の吹製ゼロでも影響ないのでは、、、と思っていた。

その一升びんが、今、地方の蔵元で不足している。
今や「一升びんは新壜で利用するモノ」になってしまった大手蔵元は多い。

多少高くても一升びんがあれば買いたい蔵元は多いと聞くが、
新壜も回収壜も供給が足りないそうだ。

石塚硝子・姫路工場が止まるインパクト(供給減)は、
一升びんの1割程度、ガラスびん全体で見ても1割程度。
日本ではガラスびん需要は年々減少しているので、
残る9割の各社のガラスびん工場の供給力で需要に見合う計算、、、
なのに、個々には供給不足が起きる。



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ガラスびんは、日本だけでなく、世界的に値上げと供給力が問題になっている。
参考までに、欧州の某大手ガラスびんメーカーの事例をご紹介すると、、、


2022年1月から全製品一律9.5%値上げ
2022年4月からサーチャージ+9%
2023年1月から全製品一律22%値上げ
2023年1月からサーチャージは+14.5%
2023年1月から今まで請求のなかった保管料1パレ・1月当り1,000円強を加算


2021年価格に比べ、2023年価格は1.5倍以上となる。

日本だと「値上げのお願い」で、通常はネゴシエーションのプロセスがあるが、
欧米の大手資材メーカーだと「値上げの通告」であって、ネゴの余地などない。

かつ、欧米の大手ガラスびんメーカーも、
大手クライアント向け生産・出荷を優先するので、
モノによって欠品したり、コンテナ1本2本の少量供給は渋られる状況になっている。

似たような状況は、アメリカのビール用アルミ缶でも起こっている。
コロナの影響もあってビールの缶ビール化が進んで需給がひっ迫、
2022年、大手製缶メーカーが受注最低ロットを大幅に上げて、
クラフトビールのような小ロット(といっても十万缶以上)の発注には応じない、
といった問題も起きた。


ガラスびんも、缶も、プラボトルも、紙容器も、、、
パッケージ資材業界の苦戦と混乱は、2022年の×(バツ)だった。

残念ながら、2023年も苦戦と混乱は継続すると思う。



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■「クラフト」の醸造所・蒸溜所、ますます増加・・・○


当社は長年、日本のクラフト醸造所・蒸溜所の開業・閉店をウォッチし、

営業中の醸造所・蒸溜所の全国リストを維持している。


2021
年末→2022年末の軒数と、
2022年の1年間の増加数を書き出すと、以下のようになる。
(当社によるカウント、2022年末の確定版はまだできていないので数字は概数)

●クラフトビール
2021年末:560か所程度 → 2022年末:670か所程度
1年で約110か所増加・・・この数字は2022年の!!(ビックリx2)

●ワイン醸造所(ブドウのワイン)
2021年末:400か所程度 → 2022年末:450カ所程度
1年で約50か所増加

●ウイスキー・ジンの蒸溜所(免許取得ベースでなく、蒸溜を開始しているところ)
2021年末:120か所程度 → 2022年末:140か所程度
1年で約20か所増加

●シードル醸造所(シードルの製造がメインの醸造所。ワインが主の兼業はカウントせず)
2021年末:80か所程度 → 2022年末:90か所程度
1年で約10か所増加


ワインやシードルも「クラフト陣営」に含めるとして
以上の2022年末の醸造所・蒸溜所を合計すると、1,350か所。
一方、商業活動を行っている清酒・サケの蔵元は、1,300か所程度。(推定値)

数の面では「クラフト」は「サケ」をしのぐ勢力になった。
因みに、清酒免許は持っていないが、
「クラフト・サケ」も増えている。
どぶろく特区的な醸造者は除くとして、概ね以下のような数字だと思う。

●クラフト・サケ醸造所(自称・他称のクラフト・サケ)
2021年末:10か所程度 → 2022年末:15か所程度


参考に、アメリカの状況も書くと、以下のような数字。

●アメリカのクラフト蒸溜所
2021年末:2,450か所→2022年8月:2,687か所
8カ月で237か所増加
(出典:American Craft Spirits Association)

アメリカのクラフトビール醸造所のほうは、2022年末の数字が出るのは来春だが、
2021年末の9,247か所から200~300は増加していそうに思う。



2022年はコロナの影響が続いただけでなく、
国家間情勢・経済情勢・社会情勢・自然災害などあらゆる面で厳しい1年で、
新規に事業を始めるのは厳しい環境だった。

にもかかわらず、日本でもアメリカでもクラフトは増え続けている。
「クラフト」は新しい推進力を持っている・・・2022年の○(マル)です。



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■NOLOが本流に・一方High Alcoholの蒸留酒もブーム・・・○


NOLO:外国メディアでよく見かけるが
NO Alcohol(ノンアル)、LO Alcohol(低アル)の略称。

■NO Alcohol(ノンアル)
サントリーさんが公表する「ノンアル飲料レポート2022」では、
「2022年見込みは対前年比+4%、4,171万ケース」
4,171万ケース=約35万KL=約194万石。
清酒の約220万石に肉薄してきた。

■LO Alcohol(低アル)
市場サイズに関するデータは持っていないが、
将来、酒税のない1%以下だけで、ノンアルに並ぶ市場になるのではないか。
代表銘柄であるアサヒさんのアルコール0.5%の「ビアリー」は、
店頭でずいぶん見かけるようになった。
リピーターは確実に増えているのだと思う。


日本の成人一人当たりの酒類消費量は、
90年代をピークに減り続けている。

2000年以降に生まれた「若い世代」では、目に見えて飲まない人が増えている。
多くの欧米の先進国でも、同じ傾向だと感じる。
欧米の若者でビーガン比率が増えているそうだが、飲酒量減と相関があると思う。

主要な酒類消費者層で、市場トレンドを作る層でもある
「ミレニアル世代」(1980~1990年代生まれ)では、
健康意識や倫理意識の高まりと、NOLO市場の拡大が相関しているように思う。

コロナによる移動制限や、世界的な不景気も、
直接・間接にNOLO市場の拡大につながっているだろう。


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NOLOの対極にあるHigh Alcoholの蒸留酒もブームである。


ウイスキーやジンは世界的なブームで、
日本だけでなく、イギリスやアイルランドでも新しい蒸溜所が次々設立される。

アメリカのクラフト蒸溜所が年々増え続け、
2022年8月現在2,687か所にも達した事は前述した。
(2,687は、日本の清酒蔵元数の2倍!)

メキシコでは、テキーラ・メスカルの生産量が急増している。
伝統酒回帰による国内需要拡大のほか、
アメリカ向けのプレミアム品の輸出がけん引しているそうだ。

日本の大手ビール各社は、海外のクラフトビールブランドを買収しているが、

中国のビール最大手、華潤は、白酒(パイチュウ、中国の伝統蒸留酒)ブランドを買収し、
成果をあげている、という。

世界を俯瞰すると、確かに高アルコールの蒸溜酒が伸びている。


NO LO Alcoholが世界の本流になってくる一方、
High Alcoholの蒸留酒も世界的ブームなのはとても不思議な感じだが、

両方とも2022年の○(マル)、としておきます。



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今年も押し詰まりました。暮れのご挨拶を申し上げます。

 

https://kitasangyo.com/2023message/message_2023.html
(↑「クリスマス&年賀のカード、それに、年末年始の休日のご案内」)


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この季節、いろいろなクリスマス・ソングが流れますが、
クリスマスのスタンダード曲、ジョンレノン・オノヨーコの「Happy Christmas」が、
今年は特に心にしみ入ります。
これは、半世紀前、ベトナム戦争の時につくられた曲で、
サブタイトルは「War is Over(戦争は終わる)」。

曲の最後は「If you want it, War is Over, Now」
「(パンデミックや天災と違って)戦争は、みんなが望めば、今すぐ終わる」

この曲のような世界を、せつに願います


▲ウクライナ戦争(日本では「侵攻」と言うが、海外メディアは「War in Ukraine」)
▲3年目のCOVID-19と、徐々に進行する規制緩和
▲世界的な、エネルギー価格の高騰、流通コストの高騰、生活物資のインフレ
▲中国ゼロコロナ政策とその緩和、日本の円安、米中対立
▲世界的な、電子部品の不足、食料の不足
▲日本の地震や豪雨災害・豪雪、世界の猛暑や大規模な山火事

思い返すと、2022年は本当に大変な年でした。


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2023年も困難が予測されますが、
きた産業は、
「多様な事業分野」「独自ノウハウ」「100年以上のDNA」を活かし、
「酒類産業界になくてはならない資材・機械サプライヤー」を目指して、
皆様のお役に立つよう努めてまいります。

2023年も、なにとぞ宜しくお願いいたします。

きた産業株式会社 代表取締役 喜多常夫




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