●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.299 ●▲■

発行日:2023年2月13日(月)
■ アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報 ■

発行:きた産業株式会社 https://kitasangyo.com



------------------< 目 次 >------------------

<続、酒ブック紹介>


●▲■その7:「沖縄戦と琉球泡盛」
・・・ 戦争で世界一過酷な影響をうけた酒類産業は泡盛
●▲■その8:「焼酎の科学」
・・・ 専門家にもお酒知識を整理するのに好適な一冊
●▲■その9:「日本酒外交 酒サムライ外交官、世界を行く」
・・・ 真の日本酒復権には国内需要喚起が重要」
●▲■その10:「Koji Alchemy」(英語)
・・・ 「麹は錬金術」、日本人でない人が書いた麹の本
●▲■その11:「日本中世の民衆世界: 西京神人の千年」
・・・ 京都の北野天満宮領内で麹業を営んだ人の歴史
●▲■その12:「樹木の恵みと人間の歴史」
・・・ オーク樽の専門家に薦められた本

●▲■(おまけ)映画紹介編2つ:「シグナチャー」、「Vin Japonais」
・・・ 映画になるポテンシャルを持つに至った日本ワイン

text = 喜多常夫


ご紹介情報●1▲ クラフトビールリスト更新、677か所(!)@2022年12月末
ご紹介情報●2▲ 「たまご型のワインタンク」
ご紹介情報●3▲ 日本酒のモロミ搬送に「Ragazziniチューブポンプ」


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前号で6冊紹介しましたが、今回も6冊紹介します。

今回は各紹介文の後に、
勝手な ■■覚え書き■■ を付記しています。





●▲■その7:「沖縄戦と琉球泡盛」
(上野敏彦著、明石書店、2022年7月初版、2,500円+税)

戦争で大きな影響を受けた酒類産業は数多い。
しかし、世界一過酷な影響をうけたのは、泡盛ではないか。

沖縄は第二次大戦で米軍の猛攻撃に遭って県民の4人に1人が犠牲になった。
首里城の地下に日本陸軍司令部があったが故に、
琉球王朝時代に泡盛生産を独占的に担った首里三箇地区は特に壊滅的で、
泡盛の黒麹菌も失われてしまった。

そんな中から泡盛・クース(泡盛古酒)を再興した人々の記録。

戦後、首里の焼け野原でテント生活をしていた佐久本政良(咲本酒造2代目)が、
土の中から覗いていたニクブク(稲わらむしろ、これで米麹を造った)を見つけ
掘り出して炊いた米をまぶして、泡盛の黒麹菌を再生したエピソード。

戦後は、東京・大阪では労働者の安酒と見なされ、
沖縄のウチナーンチュもお金があれば泡盛でなく洋酒をのみたいといった状況の中で
泡盛やクースの価値を信じて、日本に広めようと努力した人々のエピソード。

坂口謹一郎が1979年に発表した「君知るや名酒泡盛」が、
泡盛再興に与えたインパクトや、
戦前に採取した泡盛の黒麹菌が東大に残されていたエピソード、など。


クース居酒屋「うりずん」を開業した土屋實幸と、
「醸界飲料新聞」を創刊した仲村征幸の2人を随所に登場させ、
戦前から、コロナ以降の直近の状況まで、泡盛の足跡を記録する。

タイトルに「沖縄戦」とあるとおり、
戦時下で泡盛関係者がどんな理不尽な体験をしたかも多く語られる。
日本軍の軍人が貴重なクースを勝手に飲んでしまったこと、
飲む酒ほしさの上官に「酒造所までいって泡盛を汲んでこい」といわれ、
天秤棒につるした石油缶に泡盛を満たして帰る途中、空襲に遭ったこと、などなど。


泡盛を知る人にはおなじみの蔵元
咲本酒造、瑞泉酒造、瑞穂酒造、識名酒造、まさひろ酒造
宮里酒造所(春雨)、山川酒造、石川酒造、玉那覇酒造、などなど
の歴史や縁戚関係も興味深い。


■■覚え書き1■■
「琉球王朝が許可した限られた酒造所で造られていた泡盛は、琉球処分とともに終わる。
1893年時点で、泡盛製造者は447戸、うち100戸が首里」と書かれている。
現在は47。およそ1/10。

→ 似た状況:菅間誠之助の名著「焼酎のはなし」には、
「1901年時点で鹿児島県下の焼酎製造場は3,696」とある。
現在は110前後。およそ1/30。


■■覚え書き2■■
「戦前は、南洋のサイパン、パラオ、テニアンに6軒の泡盛製造所があった
戦中は、ビルマでも軍属として派遣され泡盛をつくった」と書かれている。

→ 他に、ロタ島(サイパン、テニアンより南小島)にもあったのではないか。
戦前ロタ島に暮らした沖縄の人たちの会「沖縄ロタ会」がまとめた、
ソンソン村(ロタ島最大の街)の住宅図に、
「大峰酒造所」の記載があるのを知っている。
これはたぶん泡盛酒造所だろうと想像する。





●▲■その8:「焼酎の科学」
(鮫島吉廣、高峯和則著、講談社ブルーバックス、2022年1月初版、1,000円+税)

通り一遍のお酒入門書とは異なる。
科学的裏付けや、著者が実体験された焼酎産業の近代史が書かれていて、
知識欲のある「お酒アマチュアの方」向けに好適。

焼酎だけにフォーカスするのでなく、
麹、モロミ醸造、アロマ、蒸溜などの特徴について、
「清酒・ビール・中国白酒・ウイスキーなど他の酒類」と「焼酎」との比較で語られる。
そのことが、「お酒専門家」向けにも知識を整理するのに好適な一冊だと思った。


意外なこと、認識不足だったこと。
かつて、鹿児島では米焼酎が、沖縄では芋焼酎が多く造られていた時代がある
(今、鹿児島は芋で、沖縄の泡盛は米)

「単式蒸留酒=本格焼酎」ではない
国税庁の定める49品目以外も単式蒸留焼酎としては使用可能


言われてみれば、、、のこと。
モロミの度数が低いウイスキーは2回蒸溜が必要で、原酒は荒々しくて熟成が不可欠
モロミの度数が高い焼酎は1回蒸溜でOK、出来立ての新酒がうまい
、、、なるほどそういう事か。

本格焼酎のモロミは度数12-14度くらい、それを蒸留してアルコール度数を高め、
割水して25度にして販売、飲まれるときにはお湯割りやロックで
結局、蒸溜前のモロミより低い度数で飲用される
、、、言われてみれば、不思議。


今、海外開拓を意識して「アルコール度数40度前後の焼酎」が注目されるが、
むしろ、「日本基準の25度・20度+食中酒の蒸留酒」を
推すべきではないか、と考えさせられた。

著者のお二人は鹿児島大学の焼酎・醗酵学の先生なので、主に芋焼酎を意識した内容。
今、最も売れている本格焼酎は芋で、麦を僅差でしのいでいる。
芋焼酎生産量で宮崎が鹿児島を追い越したのは2014年と記されている。
熾烈な競争とたゆまぬ研究が、麦より芋を強くしているのかもしれない。


■■覚え書き■■
個人的体験の範囲で「この40年で激変したお酒トップ2」は
「芋焼酎」と「日本ワイン」である。
20歳代のころ鹿児島・天文館や枕崎で飲んだ芋焼酎の味は忘れがたい。
今と全く別物で、ロックは不可、お湯割りにしても臭くて飲みにくいものだった。
(地元の人は「これが旨い」と言っていたが)
その芋焼酎がこんなに素晴らしい品質に変貌するとは、本当に驚きだ。





●▲■その9:「日本酒外交 酒サムライ外交官、世界を行く」
(門司健次郎著、集英社新書、2023年1月初版、920円+税)

著者は外務省の役人・外交官で、
1980ー2000年代にオーストラリア・ベルギー・英国で大使館勤務、
2007年からイラ・カタール・ユネスコ(フランス)・カナダで大使を務め、
2017年に退官された方。
現在、約100人いる「酒サムライ」のおひとり。
「ブルゴーニュワイン騎士団」の騎士、「クラ・マスター」の名誉会長でもあるそう。

90年代の外務省勤務時代は、
10時に退庁出来れば早い方であるのに、
仕事が終わると半時間かけて豊島区の気に入りの居酒屋に行き
終電の内回り山手線で帰宅した、という強者。

イラ勤務が決まった時、外務省安全配慮で新聞に顔写真を載せなかったが、
酒好きで有名な門司さん、写真を載せなくてもみんな知ってる、と話題になったそうだ。

様々な銘柄の日本酒一升壜14本を前にした筆者の写真が表紙に使われているが、
これは本書のために撮影したものではなく、カタール大使時代に、
外交官にも酒類持ち込みを認めていないカタールで撮影したそうだ。


赴任した各国でのお酒体験がとても面白い
ベルギーでは4年で25のビール醸造所を訪問
英国に赴任したら直ちにCAMRA(リアルエールの会)の会員に
ロマネ・コンティで水平テースティングを体験(垂直だったらもっとすごいが)
禁酒の国イラクでは日本から持参したシェーカーで大使館員にカクテルを作った

知らなかったこと・意外だったこと
フランスで学校のカフェテリアで14歳未満にワインを出すのをやめたのは1956年
高校(リセ)の食堂でワインを出さなくなったのは1981年
英国ではパブで親と一緒に食事の場合、ビールやシードルに限り16才から飲用可
オーストラリアでBYO(ワイン持ち込み可)が多い背景には、レストランのアルコール免許が取りにくいことがある
レストランの数:東京13.8万軒(!)、パリ3.8万軒、NY2.7万軒

前段で書かれる世界の酒体験とても面白
後段の日本酒外交の現場の記述も、とても興味深い。
大使館勤務者として各国のお酒にかかわった経験は他の誰もできないもの。
勤務経験のない、中国、韓国などの酒事情にも触れられる。
半世紀以上前に書かれた坂口謹一郎さんの「世界の酒」は私の座右書だが、
この方は「世界の酒2」を書けるのではないかと思った。


日本酒を世界に拡げることが本書の趣旨だが、
著者は輸出だけを勧めているわけではない。

   日本酒の海外輸出も大事だが、
   真の日本酒復権のためには国内需要喚起が重要
という指摘に重みを感じ



■■覚え書き■■
1980年代のオーストラリアの「カスクワイン」(バッグインボックス=BIBのワイン)について、
日本向け輸出ワインに小容量を奨めたが実現しなかったことが書かれている。

 余談になるが、BIBは実は日本でも70年代から存在したことを記しておきます。
1970年代末から80年頃にかけて
  - キンシ正宗など=1.8L 「紙パック」(凸版印刷)
  - 大関=1.8L 「BIB」(大日本印刷)
  - 日本盛=1.8L 「PETボトル」(吉野工業)、
の「三つ巴(どもえ)・清酒の次世代容器戦争」があった。
凸版・大日本・吉野という超大手3社だけに、バトル熾烈だった。
個人的には、空気が入らないBIBか、既存壜詰めラインが応用できるPETが勝つと思ったが、
ご存知の通り、紙パックが勝ち残り、大日本印刷も清酒は紙パックに乗り換えた。

「低価格+2L増量」戦略が「紙パック」の勝因だと思うが、
 今となっては清酒にとって良かったのか、疑問が残ると言わざるを得ない。
食品・飲料の主流の容器は、必ずしも必然性があるわけではない。 
醤油はPETボトルで、ミルクは紙容器だが、これらもある意味マーケティングの産物と言える。





●▲■その10:「Koji Alchemy」(英語)
(R. Shie、J. Umansky著、Chelsea Green Pbg.、2022年4月初版、27.99英ポンド、
Aamazonの日本語サイトで買ったら、送料込み5,120円で英国から送られてきた)

英文の麹の本。タイトルを和訳すれば、「麹は錬金術」。
サブタイトルはRediscovering the Magic of Mold-Based Fermentation。
ハードカバー本で厚さ3cmくらい。

「Kojiはアスペルギルスオリゼーである」、とは書かれているが
「Kojiは麹で日本語である」、といったことは書かれていない。
Kojiは、Sake、Bonsai、Futon、Ramenなどと同様すでに英語である。

二人の著者は日本人ではない。
一人はアジア系、NYなどで活躍する麹料理研究家。
一人は白人でオーナーシェフ、やはり麹を使った料理や醗酵の研究家。

巻末に執筆協力者が40人ほど掲載されているが、ほぼ海外の方。
日本人で名前が掲載されるのは、
樋口松之助商店(大阪の有力麹製造企業)の樋口弘一さんと、
NY在住のAkiko Katayamaさん(Food Writer)のお二人のみである。
(因みにAkikoさんのポッドキャスト(ラジオのように聞く)「JAPAN EATS!」はとても面白い)

味噌・コチュジャンなど「ペースト系」、
醤油・たまりなど「ソース系」、
サケ・焼酎・泡盛など「アルコール系」、
など、ベーシックな話題はもちろん、
麹の育て方、塩麹の作り方、ステーキ肉のエージング、
大根やニンジンなどのエージング、麹ドライフルーツ、
などなど、様々な食材への応用について非常に実務的に書かれる。
「塩こうじバーガー」「こうじソルベ
「ポップコーンこうじ」「ホット味噌ミルク」
など、ちょっと試してみたいと思う料理コラムも多い。


「Koji(麹)ビール」の部分の記述を紹介するとこんな感じ。
オハイオ州で実際にKojiビールをつくっている方の文章である。

麹をクラフトビールに利用する方法は様々あるが、
一つは「米麹をマッシュに直接投入」すること。
アルファアミラーゼが大幅に増えるので、以下の効果が期待できる。
- 多糖が単糖にすばやく分解するので醗酵期間が大幅短縮
- 残糖が減って最終製品は軽快な味になる
- 麹由来のフルーティーなエステルの形成、吟醸サケのようなアロマ
ただ、ウォートを煮沸したらアロマは飛んでしまう。
それを回避する方法としては、
「発酵終了直前に味醂または甘酒を添加」することが有効。
フルーティーなKojiエステル香の形成に有効である。

アミラーゼの説明など、なんだかちょっと?な気もするが、
海外で「Kojiクラフトビール」を飲んだ経験では、確かに香りが印象に残っている。
原材料名「麦芽・ホップ・米・スターチ」の大手ビールは昔からある。
原材料名「麦芽・ホップ・米・米麹」のビールがあれば、売れそうに思う


「麹Kojiは錬金術」というタイトルに含蓄を感じる。
錬金術が蒸留器・アランビックを生み出したことはよく知られる。
それが世界各国の蒸留酒や、様々な商品を生み出した。
麹Kojiは今、日本やアジアのものであるが、
やがて世界の醸造酒や食品産業に変革をもたらすかもしれない。


日本語訳を出版してほしい一冊。


■■覚え書き1■■
「Kojiビール」について、軽快な味、フルーティーなアロマ、との記述があった。
連想したのは、奄美大島だけに許容される黒糖焼酎。
本来、原料が黒糖なので糖化工程は必要ないが、
ラムとの区別のために米麹を使用することが条件になっている。
黒糖焼酎の米麹も同じような役割を果たしているのだろうか。。。


■■覚え書き2■■
(テロワール志向のワインメーカー諸氏には麴など無用の事と思うが)
「Kojiビール」があれば「Kojiワイン」もありだろう。
台湾のTTL(ビールや清酒も作る台湾の酒造最大手)は
「紅麹ワイン」をつくっているが、その鮮やかな赤色は印象的。
(日本ワインの品質が目覚ましく向上したが、赤の色の薄さは今もネックである)
なお、高峰譲吉が1890年にアメリカ・シカゴに渡って実現しようとしたのは
「Kojiウイスキー」だったことも想起する。





●▲■その11:「日本中世の民衆世界」
(三枝暁子著、岩波新書、2022年9月初版、880円+税)

タイトルからは、お酒関連の書籍に見えないが、
京都の北野天満宮の領民で
「西京神人(にしのきょうじにん)」と呼ばれる、
代々、独占的に酒の麹を製造販売していた一族の話。

すでに麹業は営んでいないが、「西京神人」末裔の川井家が今も存続、
1467年建造という川井家のお宅は、つい最近2018年に取り壊されたそうだが、
解体跡地の発掘で地下にあった麹室の土壁が見つかったほか、
「かうじ(麹)」の看板や「麹甕」は残っているそうだ。


よく知られるように、北野天満宮は、菅原道真の鎮魂のためつくられた。
道真が左遷先の九州・大宰府で貧しい暮らしを強いられて亡くなったあと、
京の都で、左遷に関わった藤原家の屋敷に落雷(!)死者が出た。
天皇家でも死者が相次ぎ、市中で疫病がはやった。
これは道真の怨霊と恐れられ、鎮魂のため947年につくられた神社。

その北野天満宮は、麹とは一見何の関係もないが、
天満宮のある西の京一帯はにぎやかな東の京と違って人家も少なく、
毎年のように川の氾濫があったそうだ。
そのため収穫した稲が濡れて自然に黄黴が発生し、麹業ができたのだそうだ。


「西京神人」は北野天満宮に貢納する代わり営業税は免除され、
麹業の独占権を得ていた。
京の街に百軒以上もあった造り酒屋は高い麴を買わされて当然に反発。
他から麹を調達したり、自分で麹をつくった造り酒屋もあったが摘発されたそうだ。
「西京神人」あるときは北野天満宮に立て籠り、
あるときは武装までして麹業の独占権をまもった。

2023年の現在、酵母を自社培養する蔵元はあるが、
麹を自社培養する蔵元はないのではないか。
日本全国、清酒も焼酎も、麹は麹業者から購入していると思う。
(灘で近年まで自社麴をつくるところがあったが、もうやめていると聞く)
麹業と清酒業は分離する必然性あるのだと思う。

人文学的著作で、当時の技術的な記述はないが、
麹業の発生の経緯、実際どうやって麹を培養したのか、
味噌・醤油の麹はどうしたか、京都以外はどうだったのか、、、といった興味もわいてくる。


■■覚え書き■■
京都の麹屋さんと言えば「菱六」さんだが、
これは京都の西でなく、京都の東、清水寺にのぼる坂の入口にある。
 菱六さんは三百数十年の歴史があるそうなので、
 「西京神人」の麹ギルドと時代が重なるが、
「菱六」さんが勝ち残ったのはどんな事情だったのだろう。





 ●▲■その12:「樹木の恵みと人間の歴史」
(W.B.ローガン著、築地書館、2022年5月初版、3200円+税)

オーク樽(ウイスキーやワインの樽)の専門家の方から薦められた本。
著者はニューヨーク植物園で教鞭をとり、樹木の再生などを請け負う会社も営む。
子供に詩を教える授業も受け持ったりするようで、文章は詩的。

前掲書と同じく、直接お酒に関係するではない。
樹木と人間の生活や歴史、あるいは樹木自体の生態について、
アメリカ、英国、スペイン、日本などでの体験や想いをつづったもの。

2つ引用しておくと、、、

CA州のセコイヤは、
1本の親木を中心に見事に環状に生えた次世代の新木を見ることができる。
種でなく、「リグノチューバ」という親木の自己保存増殖によるもので、
1本の樹齢をはるかに超えた、何万年も続くセコイヤがあるかもしれない。

日本では、
岩手の古い木造人道橋の構造が西洋的発想と全く違う事、
「となりのトトロ」と「平成狸合戦ぽんぽこ」を引用して、
戦後大きく毀損した里山の再生活動に取り組む人々の話など。

一見、バラバラな内容だが、樹木は
「伐(き)られても萌芽が出てくる」
「枯れても次の世代の樹が生える」ことが底流にある。
「木々は、わたしたちよりも神に近い」と述べられる。

お酒に関係するワインやウイスキーの樽材、
あるいはコルク樹、ブドウ樹への言及はないが、
樹木の恵みを再認識させられる一冊。


■■覚え書き■■
樹木の著作に絡めて、
個人的体験で「醸造所で印象的だった樹木」、2つを書いておきます。

ナパの「コッポラ」ワイナリー(フランシス・コッポラ監督の)と、
スペインの「ゴンザレスビアス」(シェリーのTio PePe)で見た、
「1本でレモンの実とオレンジの実を同時につける樹」
挿し木で作った樹だろうが、黄色とオレンジ色が同時に実っているのは忘れられない。
アメリカとスペインという離れた醸造所で、同じ樹をみたのも印象的。
この2カ所以外では見たことがない。

オーストリア・ヴァッハウの「ニコライホフ」ワイナリーと、
ベルギーの「デュベル・モルトガット」(ビール)で見た、
「菩提樹(リンデンバウム)」
ニコライホフは前庭の1本の古樹で、まるで「中国系菩提樹」のようだった。
デュベルは「西洋菩提樹」。何本か植えられいるがとても大きく立派だった。

「中国系菩提樹」:
日本では、東大寺・飛鳥寺・黄檗山万福寺、百済寺、真如堂など歴史ある寺にしかない。
それも、ほぼ、各寺1樹という希少さ。容易には増えないのだと思う。
「西洋菩提樹」:
銀座並木通りにも使われているし、ヨーロッパ北部の寒冷地では街路樹でみられるが、
(英)エジンバラ城入口、(伊)スカラ座前広場、(仏)サンジェルマンデプレ寺院前
など、高貴な場所に植えられる。

ヘンな趣味だが、私は「菩提樹好き」で、
訪問先で菩提樹を見つけると、その葉を記念に持ち帰って保存している。
いつか、日本と世界の菩提樹マップを作ろう、、、と思っている。





●▲■(おまけ)映画紹介編2つ:「シグナチャー」、「Vin Japonais」

両方とも、2022年秋の作品。
日本ワインは映画になるポテンシャルを持つに至った
と書きたくて紹介するものです。


「シグナチャー」は、メルシャンの安蔵さんの半生を描いたもの。
ワイン関係者にはおなじみの実在人物が多数出演。
丸藤葡萄酒の大村さんは、辰巳琢郎が演じる。
「感動的+実際の人と演じる役者さんのギャップが面白かった。」

「Vin Japonais(ヴァン・ジャポネ)」は、
2人のフランス人の視点で見た日本ワイン。
山梨、長野、北海道、新潟など、多数の現地取材のドキュメンタリー。
「映像が美しい+神社が出てきたりする構成が面白かった」


上記コメントは、映画館で観たワイン関係者聞いた感想で、
実は私はまだ観ていない。
気づいた時点で、すでに阪神間の上演は終了していた。
また、上映が回ってきたら是非見たい2本である。



text = 喜多常夫



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さて、情報のご紹介です。



●▲■ ご紹介情報 その1  ●▲■
クラフトビールリスト更新、677か所@2022年12月末
https://www.kitasangyo.com/beer/MAP.html

2021年末559か所 + 2022年開業124か所 ー 2022年閉店6カ所
= 2022年末時点で677か所
1年で124か所開業は、ブーム(バブル?)だった1997年の125か所開業に並ぶ水準。
清酒蔵元数の半分以上の数にまで増えました。



●▲■ ご紹介情報 その2  ●▲■
 「たまご型のワインタンク」
https://www.kitasangyo.com/pdf/machine/wine-beer/eggtank-2202.pdf

「コンクリート・エッグ」と「プラスチック・エッグ」。
内側に全く角のない空間で、自然な対流。
「たまご型・オーク製タンク」についてもご照会ください。



●▲■ ご紹介情報 その3  ●▲■
 日本酒のモロミ搬送に「Ragazziniチューブポンプ」
https://www.kitasangyo.com/Products/data/brewing/ragazzini-sake.pdf

「重力式レイアウト」に近い、やさしい搬送で、
ワイン醸造所のスタンダードになっている(伊)ラガツィーニのチューブポンプ。
有力な日本酒蔵元でもモロミ搬送などの目的でご採用いただき、
高評価をいただいています。





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