●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.302 ●▲■

発行日:2023年5月11日(木)
■ アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報 ■

発行:きた産業株式会社 https://kitasangyo.com



------------------< 目 次 >------------------

●▲■ 「酒類製造免許の数」で見る、日本の酒類産業(その3)

●「清酒」の、「新規」免許・「試験」免許・免許「移転」・「輸出専用」免許
●「その他の醸造酒」と「単式蒸留焼酎」の免許の観察
●新陳代謝は「新規参入」と「生産性の低い既存企業の退出」の2つ

text = 喜多常夫


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ご紹介情報●2▲ 自動タックラベラー「ニネットAUTO」
ご紹介情報●3▲ 「王冠のギザギザtidbit」(おもしろ知識)


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前々回メルマガvol.300では、
「コロナ以降、酒類製造免許の新規取得が急増している事」を書いた。

●コロナ前の3年間(2017-2019年)で488、平均163/年
●コロナ後の3年間(2020-2022年)は833、平均278/年(1.7倍!)  
(清酒、果実酒、焼酎、ウイスキーなどすべての酒類の新規製造免許の合計数で
試験免許、法人なり、免許移転、もろみ免許、酒母免許、免許相続の数は含まない)

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前回メルマガvol.301では、
「酒類製造場の総数は、戦後はほぼ一貫して減少傾向で、
21世紀に入っても減少が続いていたが、2015年から増え始めた、
これは日本の酒類産業のパラダイムシフトだ」と書いた。

■2001年3,254→2014年3,096、13年で▲158(減)、平均▲12/年
■2014年3,096→2021年3,715、7年で+619(増)、平均+88/年
(清酒、果実酒、焼酎、ウイスキーなどすべての酒類の製造場の合計数
複数の品目を製造する場合、製造数量が最多品目の酒類を1場として計上)

さらに、
「増加に転じた要因は6つの免許
「ウイスキー」「スピリッツ」「果実酒」「リキュール」「ビール」「発泡酒」
の増加であって、特にコロナ後の新規免許取得者の増加が著しい事」も書いた。

たとえば、6種の中で増加率が最も高い「ウイスキー」の新規免許数は、以下のように3倍。
■コロナ前(2017-2019)3年で20、平均=7/年
■コロナ後(2020-2022)3年で64、平均=21/年(3倍 !)

6種の中で増加率が最も低い「果実酒」の新規免許数でさえ、以下のように1.4倍である。
■コロナ前(2017-2019)3年で94、平均=31/年
■コロナ後(2020-2022)3年で126、平均=42/年(1.4倍)

コロナパンデミックは、
酒類産業に多大なネガティブな影響をもたらしたが、一方で、
酒類産業の変革を促した(ポジティブな影響もあった)、の如しである

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今回のメルマガvol.302では、
免許数は減り続ける「清酒」、
そして、「その他の醸造酒」、「単式蒸留焼酎」の3つを観察してみる。
(以下で記載する社名は、国税庁が公開している酒造免許取得者からの引用である。)



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言うまでもなく、「清酒」製造場数は一貫して減少を続ける。

「清酒」の21世紀以降の製造場数を見ると
●2001年2,121→2014年1,634、13年で▲487(減)、平均▲37/年
●2014年1,634→2021年1,544、7年で▲90(減)、平均▲13/年

近年、減少度合いはスローダウンしているが、減少傾向に変わりない。


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■■■「新規の清酒免許」
原則として交付されないが、国税庁の公表データによると、
2014年から2022年で以下の14件の新規免許が交付されている。

2014年1:(岩手)南部美人
2015年0
2016年3:(徳島)日新酒類、(福島)花春、(山梨)モンデ酒造
2017年0
2018年3:(山梨)マンズワイン・勝沼、(高知)酔鯨、(鳥取)諏訪酒造
2019年1:(兵庫)キング醸造
2020年2:(北海道)上川大雪・碧雲蔵、(兵庫)萬乗醸造・黒田庄蔵
2021年1:(北海道)上川大雪・函館
2022年3:(奈良)梅乃宿、(栃木)小林酒造・鳳凰美田・惣社蔵、(東京)舞姫・八王子酒造

既存の免許保有者が新清酒工場を建設したり、受託充填をする場合には新免許が交付されるようだ。
萬乗醸造と舞姫では、県をまたいだ工場新設でも交付されている。


■■■「清酒の試験免許」
2014年から2022年で56件の新規免許が交付されている。
内訳は次の通り。
「学校36」+「研究所など19」+「その他1」=56


「学校36」は:
東大、京大、九大、新潟大、愛媛大、帯広畜産大などの大学、
旭川高専、八戸高専、鈴鹿高専、米子高専、長岡高専など高等専門学校。
千葉津田沼高校、岐阜大垣養老高校などの高校。
教育機関における清酒への関心の高まりが感じられる。

「研究所など19」は:
サントリー、キッコーマン、伊那食品、徳島製粉、三菱ケミカルなどの民間大手のラボ、
香川県産業技術センター、奈良県農業研究開発センターなどの公立研究施設など。
大手企業や県などでも清酒への関心が高まっているのがわかる。

そして、「その他1」は:
はせがわ酒店・東京駅グランプラス店

「利益を上げてはいけない」のが試験免許の建前だが、
2020年に、はせがわ酒店に交付された時には、
同じパターンで小規模の商業清酒醸造が認可されるのか、、、
と思ったが、その後は交付されていない。



  ■■■「輸出専用の清酒免許」
2021年に5件、2022年に1件の、計6件が交付された。

(福島)ねっか、(秋田)稲とアガベ、
(東京)木花之醸造所、(新潟)LAGOON BREWERY、
(島根)台雲酒造、(島根)大根島醸造所

輸出専用免許は、既存の清酒免許保有者に配慮しつつ、
新しく清酒を造りたい人に応える新制度。
この6社がどれくらい清酒輸出を行っているのか、公開データはない。



■■■「清酒免許の移転」
「移転」とは、「新しい場所で清酒蔵を始める」場合もあるが、
「既存の清酒免許が新オーナーに譲渡(売却)されたこと」を意味する場合が多い。

2014年から2022年の9年で35件(試験免許の移転を除く)が移転で交付されている。
コロナ後に活発になっていて、特に2021年は最多の10件で、以下の交付があった。

(北海道)箱館醸蔵、(福島)鈴木酒造店、
(宮城)角星・白山、(神奈川)森山酒造場、
(富山)白岩、(三重)井村屋・福和蔵、
(愛知)伊東株式会社、(京都)日々醸造、
(鳥取)松井酒造、(福岡)鷲頭酒造場

上記リストのうち免許譲渡の場合は、
免許を購入した新オーナーの名称である。
免許を売却した元の清酒蔵元名は国税庁の公開リストにはないが、
ネット情報などでわかる場合が多い。あるいは同業者は知っていることが多い。
他府県の免許を購入して、異なる県で酒造を始める場合も許容されている。



■■■「清酒蔵元の経営交代」
これは国税庁の免許リストには載らない。
しかし、家業で代々引き継がれた蔵元が維持できなくなって、
新オーナーが会社を買収するケースは、上記の「移転」より多いと考える。
全国で年に数件から十数件(あるいは20件以上?)あるのではないか。

たとえば、新潟県下には現在、約80社の清酒蔵元があるが、
うち約20社はこの30年ほどの間に新オーナーになっている。
新オーナーはもちろん、清酒事業に魅力を感じて参入しているはず。
(一方、この30年ほどで、約100社が約80社に減った。
すなわち、4割で業績悪化し、そのうちの2割は廃業、2割は新オーナー、
という計算になるのだろうか。)



以上、いくつかのデータで見た状況は、
清酒の国内市場や製造場数は減少を続けている中ではあるけれど、
「新しい清酒のチャレンジを始める人が多い」ことを物語る。



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次に「その他の醸造酒」を見る。

2014年から2022年の9年で116件の免許が交付されている。
(試験免許、法人なり、移転などを除く)
やはり交付数はコロナ後に増えていて、特に2020年は最多の22件が交付された。

「その他の醸造酒」は、「どぶろく特区」であったり、「ミード酒」であったり、
「リキュールではない様々な新しい醸造酒」を作る目的であったりするが、
特に近年は、「クラフトサケ」が目的である場合も多く含まれる。

以下に、2014年以降の「その他の醸造酒」免許取得者で、
「クラフトサケ」的な醸造所、あるいは「都市型どぶろく醸造所」
に属すると思われるものをピックアップしてみた。
(わかる範囲で抽出。すべてを網羅していないかもしれない。)

(千葉)ドレイコ・カヤマ醸造所、(東京)神田どぶろく蔵(千代田区内神田)
(島根)大根島醸造所、(新潟)LAGOON BREWERY
(秋田)稲とアガベ、(埼玉)やまね酒造・赤沢醸造所
(大阪)高槻酒文化研究所、(東京)木花之醸造所
(福岡)LIBROM Craft Sake Brewery 、(滋賀)ハッピー太郎醸造所
(東京)平和・どぶろく兜町醸造所、(福島)ねっか・只見駅前醸造所
  (徳島)エルミタージュ・バレー酒ブリュワリー

これらのうちいくつかは、
新規の「清酒免許」は取得できないので、
代替え策として「その他醸造酒免許」を取得し、
お酒を濾さずに製品化しているのだと思う。(「濾す」と清酒の要件に該当)
また、国内免許は無理なので、輸出専用清酒免許を取得したところもある。



以上の「その他の醸造酒」のデータは、
清酒免許はない人たちの中にも、
「新しくSAKEのチャレンジを始める人がいる」ことを示している。


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最後に「単式蒸留焼酎」カテゴリーを見る。


単式蒸留焼酎の免許も、清酒免許と同じく、
原則として新規免許は出ないが、
2014年から2022年の9年で31件が交付されている。
(試験免許、法人なり、移転などを除く)
他のケースと同じくコロナ後に活発になっていて、
特に2020年は最多で、以下の7件が交付された。

(千葉)飯田本家、(神奈川)熊沢酒造、
(北海道)上川大雪・緑丘蔵、(愛知)杉浦味醂、
(山梨)山梨銘醸、(宮城)新澤酒造店、
(宮崎)千徳酒造

上記からわかる通り、清酒・味醂メーカーが、
かす取り焼酎(たぶん)の免許を取得する場合は交付されるようだ。



ただし、清酒の「輸出専用免許」と同じく、
単式蒸留焼酎にも「特産品しょうちゅう免許」という緩和措置がある。

以下に、2014年以降の「単式蒸留」免許取得者で、
「特産品しょうちゅう免許」に属すると思われるものをピックアップしてみた。
(特に「特産品免許」と公表していない場合が多いので、正確でないかもしれない。)

(福島)ねっか、(奈良)曽爾村・ゆめの里かずら、
(鹿児島)みしま焼酎、(東京)檜原村じゃがいも焼酎、
(福島)奥久慈塙蒸留所、(京都)サンフェステ亀岡蒸留所

単式蒸留焼酎についても、清酒と同じく、
「もしも新規免許が出れば参入したい」と思っている人は一定数いるのだと思う。



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5月5日の日経新聞に、
「既存企業の退出促進も重要」というタイトルで、以下のような論説があった。

日本の企業数の99%以上を占める中小企業は
「新陳代謝の低さ」が常に指摘されてきた。
新陳代謝は「新規参入」と「生産性の低い既存企業の退出」の2つによる。

政府の創業支援政策の効果で新規参入は2010年代上昇傾向だった。
一方、2010年代、廃業率は低下していて、既存企業の退出は減る一方。
これは新陳代謝の妨げになっている。
  日本と欧米の差は大きく、
2020年時点で、日本の廃業率は3%台、アメリカの廃業率は9%台。

この背景には、中小企業支援金が生産性の高い企業より
低い企業に向きやすい面があることが理由の一つになっている。
コロナ禍で金融支援はコロナ以前から業績の悪かった企業に多く向かい、
本来は退出すべき企業を延命させている可能性がある。


酒類産業についても当てはまる場合があるように感じた。
さらに、この論説から連想して個人的に思ったこと:

酒類産業に限って言えば、
様々な補助金や支援を受けて新規参入した企業の中に、
生産性や付加価値が高いとは思えない企業も見られるように思う。

生産性や付加価値が高くなくても、
経済的・社会的・地域的な貢献があれば企業の存在価値は認められるだろう。
ただ、民間企業の場合は、利益が出なければ存続が難しい。
せっかく新規参入しても、短期間で退出すべき既存企業になりはしないか、、、
と、危惧する場合もある。


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国税庁の公表する酒類製造免許取得者をエクセルにコピーして、
いくつかのやり方でソートして行った考察を3回書いた。
ウイスキー、ビール、発泡酒、ワインなどの分野では新規参入が増え、
清酒、単式蒸留焼酎など、原則として新規免許がでない分野でも変革が進むことを
数字で
実感した。

「新規参入」や「既存企業の退出」については上述のような危惧を感じるにせよ、
日本の酒類産業が変わる時代になったことは、とても歓迎すべきと思う。

合わせて、国の免許行政は、民間産業の消長を大きく左右することも実感した。


text = 喜多常夫



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さて、商品や情報のご紹介です。


●▲■ ご紹介商品 その1  :ROOTS ディヴィジョン ●▲■
「モロミの搬送に、Ragazziniのチューブポンプ」
https://kitasangyo.com/Products/data/brewing/ragazzini-sake.pdf

イタリア・ラガツィーニ社のチューブポンプはワインポンプの世界トップブランド。
日本でも多くのワイン醸造所でご採用いただいていましたが、
有力な日本酒蔵元でご採用いただき、大変好評をいただいています。
超低回転で、固形分をつぶさず、やさしく搬送。
日本酒だけでなく、本格焼酎の各種モロミにも、ぜひご検討ください。




●▲■ ご紹介情報 その2 ROOTS ディヴィジョン ●▲■
自動タックラベラー「ニネットAUTO」
https://kitasangyo.com/pdf/machine/seamer-capper-labeler-etc/NINETTE_labeler.pdf

フランスCDa社の、超コンパクト、コストパフォーマンスに優れたタックラベラー。
清酒・焼酎・クラフトビール・ワイン・ジンなど、多くのお酒で実績があります。

展示会のYouTube動画:

https://youtu.be/T6HLDLPBFQE




●▲■ ご紹介情報 その3 :eアカデミー情報 ●▲■
 「王冠のギザギザtidbit」(おもしろ知識)
https://kitasangyo.com/pdf/e-academy/caps-and-corks/crown2022.pdf

王冠のギザギザは21とは限らない。22、24、29の紹介。
かつての、キリンやサッポロの栓抜きなしで開けられる王冠など。

王冠の特許が成立したのが1892年。
今年で131年の、「超長寿」工業製品です。




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