●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.306 ●▲■
発行日:2023年9月13日(水)
■ アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報 ■
発行:きた産業株式会社 https://kitasangyo.com
------------------< 目 次 >------------------
●▲■ 続・高価なお酒:日本産高級酒の観察
● 空港免税店+お台場で見た「1万円以上の日本酒と日本ウイスキー」
● ワイン「価格と品質に直接的関係がない」、清酒「価格決定要素は精米度」?
● (おまけ)「フェイクの高級品」、「フェイクのお酒」の市場
● (追記)「1本3万円のビール」 by 青島ビール in China
text = 喜多常夫
ご紹介情報●1▲ 「シャンパーニュ訪問記」x3本
ご紹介商品●2▲ シャンパーニュの製造設備
ご紹介情報●3▲ 「スコッチウイスキー訪問記」x2本
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前回メルマガは1カ月ほど前なので記憶の彼方だが、
高級品・高級酒について、以下のような話を書いた。(一部加筆)
<<高級酒の市場について>>
高級酒の世界市場には「自家消費用」のほかに「投資目的」がある。
オークションで落札されるような高価なお酒は投資目的も多い。
ラグジュアリー産業のトップはLVMH(モエ・ヘネシー・ルイヴィトン)、
その時価総額はトヨタ自動車の約2倍もあるそうだ。
「クルマは実業、ラグジュアリー産業は虚業」とは言わないが、
巨大な「砂上の楼閣」産業のようにも感じる。
高級酒類の世界マーケットは1,000億€弱程度(=15兆円弱)
高級酒の平均価格を仮に「1本1万円」とすると、15億本相当。
「1本数万円」のお酒もあることを考慮したら、10億本前後か。
高級酒類の世界マーケット15兆円のシェアは、
フランスが圧倒的で、英、伊、スペイン、ポルトガル、米などが続くのだと思う。
中国製高級酒の「白酒」も、中国国内・中国人向けでは大きな市場。
これは「自家消費」や「投資目的」より、「贈答目的」が大きいと聞いている。
日本製の高級酒類は極僅か、、、たぶんシェアは0.1%(150億円)以下だろう。
内訳は「日本ウイスキー」が主で、
「日本酒」は10億円(1本1万円換算で10万本)もないのではないか。
1本1万円以上の「日本ワイン」、「焼酎」、「梅酒」はもっと少ない。
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<<高級酒代表の「シャンパーニュ」と、
日本代表の「日本酒」の比較>>
●■平均工場出荷額:
●シャンパーニュ:19.3€(約3,000円)/750mlびん(2022年)
■日本酒: 496円/720mlびん(2020年、国内向け、酒税込み)
6倍もの差。日本酒はいかにも安い。。。
●■出荷本数@2022暦年:
●シャンパーニュ: 3.26億本/750mlびん
■日本酒: 5.46億本/720mlびん換算
国内198.2+輸出19.9=218.2万石=720mlx5.64億本、という計算。
日本酒の総量は、シャンパーニュの総量の1.7倍。
日本酒が少ないというべきか、シャンパーニュが意外と多いというべきか。。。
●■総出荷量に占める輸出比率:
●シャンパーニュ: 58%(2022年)
■日本酒: 9%(2022年)
「自国(フランス)向けを4割確保しながら、6割は世界相手に商売」
というシャンパーニュのスタイルは、日本酒の近未来の理想像のように思う。
なお、日本酒の2022年9%は、2020年5%、2021年7%から急増したもの。
9%は数量ベースで、金額ベースの輸出依存度は15%前後ではないか。
●■うち、小売価格が「1本1万円以上」の本数:
●シャンパーニュ: 「数百万本~数千万本」のオーダーだと思う
■日本酒: 前述通り「10万本以下」ではないか
上記は私の推定だが、
高級日本酒の数量と高級シャンパーニュの数量は、2桁以上違うと思う。
シャンパーニュは歴史が浅いのに、今や高級酒の代表、
日本酒は歴史が長いのに、今のところは高級酒としての認知度は低い。
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以上を踏まえ、今回も、高級酒のお話の続き。
世界の高級酒市場ではマイナーな存在である、
「日本酒」と「日本ウイスキー」の価格観察です。
●▲■ 関空免税店で見た1万円以上の日本酒
●▲■アーカイブ資料:
「サケwatching in パリ 小売店編」
https://kitasangyo.com/pdf/archive/sake-watching/Paris2023-B.pdf
最終ページ(7ページ)が、関空免税店での観察。
「1万円以上」の日本酒を書きだすと:
朝日山 「継」 4万円
獺祭 「その先へ」 3万5,000円
山本本家 「鏡」 2万9,900万円
獺祭 「未来へ」 1万5,000円
醸し人九平次 「彼の岸2021」 1万4,920万円
八海山 「金剛心」 1万3,950万円
IWA 5 「Assemblage 3」 1万3,000円
満寿泉 「LINK8」 1万2,000円
●▲■ 関空とCDGの免税店で見た1万円以上の日本ウイスキー
●▲■アーカイブ資料:
「日本ウイスキーwatching in パリ+免税店など」
https://kitasangyo.com/pdf/archive/sake-watching/j.whisky2023.pdf
9-10ページが、関空免税店での観察。
昨今の事とて、サントリー・ニッカ以外のジャパニーズウイスキーがたくさんあって、
知らなかった銘柄を含め10銘柄以上あったが、ほとんどが数千円クラス。
「1万円以上」で販売されていたものは以下の2点のみ:
(サントリーとニッカは撮影しなかったので除く)
「倉吉31年」(松井酒造)20万円
「丹頂」(白鶴酒造)3万5,000円
7-8ページが、パリのシャルルドゴール(CDG)空港の免税店での観察。
「60ユーロ(約1万円)以上」で売られていたのは以下:
(こちらは、サントリーとニッカも撮影したので含む)
「倉吉18年」(松井酒造)191 €
「松井 Mizunara」(松井酒造)100 €
「松井 The Peated」(松井酒造)89 €
「白州12年」(サントリー)100 €
「白州(ノンヴィンテージ)」(サントリー)81 €
「山﨑(ノンヴィンテージ)」(サントリー)76 €
「AO碧」(サントリー)72 €
「知多」(サントリー)60 €
「余市(ノンヴィンテージ)」(ニッカ)67 €
「宮城峡(ノンヴィンテージ)」(ニッカ)65 €
「戸河内」(サクラオディスティラリー)80 €
「あかし Japanese Single Malt」(江井ケ島酒造)64 €
●▲■ お台場で見た高価な日本ウイスキー
同じ資料の最終ページ(12ページ)に、東京お台場に2022年暮れに開店した、
高級酒専門店「The Vintage Stock Tokyo」での観察も掲載。
海外からの富裕層ツーリストが主な顧客のようで、並ぶお酒はほぼすべて1万円以上。
ブランド品買い取り店からの商品などを販売しているのだと思う。
高価なジャパニーズウイスキーの事例をピックアップすると:
「山崎18年」(サントリー) 52万円
「竹鶴21年」(ニッカ) 13万円
「秩父 バーボンバレル」(ベンチャーウイスキー) 20万円
「マルスモルト ル・パピヨン」(本坊酒造) 18万円
「2020 かんろ」(厚岸) 8万円
(日本酒もある 高木酒造 「十四代」 5万円)
同じブランド・同じ年数でも相当価格差があって、上記は高い価格例。
箱やラベルの状態などによって価格が違うのだと思う。
上記の商品は、一般に入手困難で、
市場価格がメーカー希望価格の何倍にもなっている商品なので、
ビジネスになるのだと思う。
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●▲■ 高いお酒における、価格の決定ファクター
高いものが売れるのか、高いから売れるのか、、、
高価なお酒には、世界的に相当の需要があるのは確かである。
ジャンシス・ロビンソンさん(著名な英国のワイン評論家)曰く、
「ワインの品質と価格の間には直接的な関係がない」
のだそうだ。
高価なワインでは、品質と価格が釣り合っていないものが多い
価格高騰の原因の一つは「カルト現象」
ある生産者が流行に乗ったワインをつくり始めた途端
信じられないほど価格が高騰するのがカルト現象
カルト現象を後押ししているのがソーシャルメディア
加えてワインにお金をいとわないお金持ちが世界的に増えているのが背景
だそうだ。(日経新聞、2023年3月19日)
日本酒、ウイスキーの価格の決定ファクターは、
■日本酒:精米歩合、ブランド力、市場評価、熟成酒の場合は年数
■ウイスキー:世界的評価、ブランド力、貯蔵年数、樽の種類、流通本数
などだろう。
日本酒の場合、
「高精白であることが高価格の大前提」、の感がある。
30%台の商品は多いし、1%(99%磨き)まであるが、
「精米度合い頼り」の高価格化は限界があるのではないかと思う。
原料(米)の大半を使用しない、という製法も
グローバル視点で見ると、今後は問題かもしれない。
超高級ワインでもブドウの60%くらいは搾汁してワイン造りに使うが、
超高級日本酒はお米の30%、あるいは1%しか使いません、で良いのかどうか。
日本ウイスキーの場合、
「世界的評価」あるいは「世界的人気」によって高価な商品が多い一方、
市場評価がないまま、独自に高価格をつける例もあるようだ。
また逆に、安価に過ぎるクラフトウイスキーが多いのも気がかりである。
日本ウイスキーの価値を毀損しない価格が望まれる。
高いから売れる、という側面もあるにせよ、
高いからには、その正当な理由がなければお客様の信頼を失う。
高級酒とその価格は、難しい。
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●▲■ おまけの話題
「フェイク」高級品、「フェイク」のお酒
前回メルマガで世界の高級品市場は1.4兆ユーロ(約200兆円)と書いた。
(日経新聞の記事、データ出所はBain & Company)
一方、高級品には「フェイク(偽造)」品がある。
「偽ブランド品の市場規模は世界で9000億ドル(100兆円以上) 」
(Digdays 2022/2/11)
「2019年の偽造品および海賊版製品の国際貿易額は4,640億ドル、
これは世界貿易の2.5%に相当」
(OECDのレポート「Global Trade in Fakes」 2021/6/2)
「フェイク品」は予想以上に巨大市場である。
「フェイクニュース」、「フェイク画像」、「スパン(=フェイク)メール」なども増える一方。
残念ながら、人類は「フェイク好き」なのだろう。
フェイクではLVのバッグやオメガの時計などの偽物がすぐ思い浮かぶが、
お酒のフェイクも相当な規模になっている。
中国では貴州茅台酒の偽物が相当出回っているそうだし、
ロシアや東欧やでは有名ブランドのウオッカのイミテーションがある。
犯罪組織の資金源になっているケースもあるし、飲用の安全性の問題も大きい。
こういう、組織的なフェイク品製造のほか、
空きびんを利用した詰め替え、バーカウンターの下で中身を入れ替え、など
個人レベルのフェイクは世界中で(たぶん日本でも)横行している。
余談ながら、当社が代理店をしている、イタリアのキャップメーカーのGuala社は、
Safety Cap(逆止弁内蔵の詰め替え防止機能付きキャップ)の大手で、
中国、インド、東南アジアでは相当な規模でこの種のキャップを販売しているし、
英国のスコッチウイスキーでも、仕向け地によってSafety Capを採用している。
また、韓国のウイスキーの多くはキャップにICチップを入れて偽造防止を図っている。
(韓国では、バルク輸入のスコッチを国内びん詰めして独自ブランドにしている)
さらに、
「EUに輸入されるインド製ウイスキーには、EUのウイスキー定義に合致しないものがある」
など、別の意味合いのフェイク問題もある。
「樽貯蔵した米焼酎が、米国ではウイスキー基準に合致するので
ジャパニーズウイスキーとして販売」されているケース(これは適法だが)、
なども想起させられる。
高級酒にはいろいろな課題があるが、
目先の利益でなく、
世界で通じる価値、長く継続する価値を創り出すことが大事だと思う。
世界の高級酒市場で、日本製品のシェアが増えることを期待したい。
(今回メルマガは個人的意見が多く、異論を危惧しますが、ご容赦ください。)
text = 喜多常夫
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(9月13日朝、追記)
「中国でビール高級化、本物志向1本3万円も」
という写真入り記事が、今朝の日経新聞に出ていた。
青島ビール(中国2位の大手)が2022年から限定販売する「一世伝奇」で、
1.5Lびん、AL度数10.5%、1,399元(=3万円弱)だそうだ。
中国では白酒(パイチュウ)でも高価格品が多い。
世界の高級酒マーケットで、中国市場はとてもおおきい。
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さて、当社情報のご紹介です。
●▲■ ご紹介情報 その1 :アーカイブ資料 ●▲■
「シャンパーニュ訪問記」x3本
https://kitasangyo.com/pdf/archive/world-winery-travelogue/WJ_Champagne_2018.pdf
https://kitasangyo.com/pdf/archive/world-winery-travelogue/WJ_%20Champagne_2014.pdf
https://kitasangyo.com/pdf/archive/world-winery-travelogue/WJ_%20Champagne_2_2014.pdf
メルマガ本文でシャンパーニュの話が出ていたので、
当社出張者の過去のシャンパーニュメゾンの訪問記、3本です。
●▲■ ご紹介情報 その2 :ROOTS ディヴィジョン ●▲■
シャンパーニュの製造設備
https://kitasangyo.com/pdf/machine/for-sparkling-cider-and-brandy/ch_equipment3r.pdf
当社はシャンパーニュの設備を輸入販売しています。
清酒のスパークリングでも多くご採用いただいています。
ご照会ください。
●▲■ ご紹介情報 その3 :アーカイブ資料 ●▲■
「スコッチウイスキー訪問記」x2本
https://kitasangyo.com/pdf/archive/world-alcoholic/Speyside_whisky.pdf
https://kitasangyo.com/pdf/archive/world-alcoholic/Islay_whisky.pdf
スコッチウイスキーも高級酒の代表格。
スペイサイドとアイラ島の訪問記です。
「スペイサイドと鹿児島」、「アイラ島と奄美大島」の比較考察付き。
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●▲■バックナンバー閲覧可能!「メルマガ・クロニクル」
https://kitasangyo.com/Archive/mlmg/BN_top.html
2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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http://blog.goo.ne.jp/kita-slow_blog/
2006年4月以来、きた産業のトピックスを写真で収録。
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