●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.307 ●▲■
発行日:2023年10月25日(水)
■ アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報 ■
発行:きた産業株式会社 https://kitasangyo.com
------------------< 目 次 >------------------
●▲■ 日本のお酒の価格の推移
● 清酒の小売物価:30年で38%値下がり
2022年 → 963円(清酒普通酒、2L紙パック)
● 焼酎の小売物価:30年で1.37倍
2022年→ 1,597円(本格焼酎・麦または芋、1.8L紙パック)
● 清酒の輸出単価:30年で3.45倍
2022年→ 2,381円 / 1.8L
text = 喜多常夫
ご紹介情報●1▲ Design Ref. Book 「サケびん口のお酒」& 「和のスパークリング」
ご紹介情報●2▲ 「K2 ガラスびんカタログ」(全44ページ、2023年9月改定)
ご紹介情報●3▲ 「サケwatching」、パリ・ミラノ・へレス
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講演で話すことがあって、
小売物価統計で、お酒の価格の推移を調べました。
数字が多くて恐縮ですが、今回はそのことを書きます。
みなさんの興味は、今月10月からの酒税変更後の店頭価格にあると思いますが、
そのことは未だ統計に表れません。
今回は、2022年までの変化の俯瞰です。
(記載の金額は、総務省統計局の小売物価統計の公開データで、
すべて「東京都区部」の数字です。)
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●▲■ 10年きざみの「清酒」(=コード2003)の小売物価
■1992年:1,554円(清酒2級、1.8Lびん)
■2002年:1,662円(清酒佳撰、1.8Lびん)
■2012年:1,020円(清酒佳撰、2L紙パック)
■2022年: 963円(清酒普通酒、2L紙パック)
1992年=100とすると、
02年=107、12年=66、22年=62
12年・22年を、02年までと同じ1.8Lあたりに換算した場合
02年=107、12年=59、22年=56
すなわち、清酒の物価は30年前の62%=38%値下がり
同容量の1.8L換算価格では30年前の56%=44%値下がり
という、驚くべき低下です。
この間、清酒の国内出荷量(消費量)は
1992年:約760万石 → 2022年:約200万石
と、30年前の26%=74%減少。
こんなに消費量が減っていく中で、
こんなに値下がりした消費財は珍しいのではないでしょうか。
年代によりサンプル対象が違うので単純比較はできませんが、
ベーシックな清酒として広く飲まれていた(いる)のは
1992年:「2級酒、一升びん」
2022年(現在):「普通酒・2L紙パック」
だと思うので、比較として一定の意味はあると考えます。
近年は、特定名称酒の比率が毎年増えているとはいえ、
「普通酒・2L紙パック」は、やはり「日本で一番売れている清酒」でしょう。
清酒の小売物価統計の統計対象は、
●2002年まで「1.8Lびん」でしたが、
●2003年から「2L紙パック」に変更され、
そこで劇的に価格が低下しました。
そのタイミングの数字を書くと:
■2002年:1,662円(清酒佳撰、1.8Lびん)
■2003年:1,258円(清酒佳撰、2L紙パック)
容量が1割増えたのに、価格は一気に24%下がっています。
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総務省の小売物価統計の統計対象品は、
その時代の「主流消費」に合わせて変更されます。
私の手元のデータでは、清酒の出荷容器は
1990年・・・「1.8Lびん」約65%、「紙パック」約15%
2000年・・・「1.8Lびん」約35%、「紙パック」約40%
と変化していて、そのことが統計対象の変更の背景です。
変更時点では、紙パックの主流は1.8Lでなく、2Lとなっていたのでしょう。
今は、清酒の物価統計には
「普通酒」(=コード2003、かつての佳撰、さらに昔は2級)
しかありませんが、以前は
「特級(=コード2001、その後の特撰)」
「1級(=コード2002,その後の上撰)」
もありました。
が、2007年に廃止。今の「普通酒」のみとなりました。
かつては消費量が多い酒類だったので、清酒で3種の統計の意味がありましたが、
今は清酒以外に実に様々な種類のお酒がでてきたこともあり、
清酒の小売物価統計は「普通酒」のみとなっています。
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次に、比較対象として、焼酎の物価を見ます。
●▲■ 10年きざみの「焼酎」(=コード2011)の小売物価
■1992年:1,167円(焼酎甲類、1.8Lびん)
■2002年:1,601円(本格焼酎・麦、1.8L、容器指定なし)
■2012年:1,610円(本格焼酎・麦または芋、1.8L紙パック)
■2022年:1,597円(本格焼酎・麦または芋、1.8L紙パック)
1992年=100とすると、
02年=137、12年=138、22年=137
本格焼酎だけでみるために2002年=100とすると、
12年=101、22年=100
清酒の小売物価が大きく下がっているのに対し、
焼酎は小売物価を維持していることが読み取れます。
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我々の感覚では焼酎甲類と本格焼酎はベツモノですが、
小売物価統計では「焼酎」は1種のみしか統計に表れず、
●2000年まで「甲類焼酎」
●2001年から「本格焼酎」
となっています。(コード2011は甲類から本格焼酎に引き継がれています)
これは、焼酎消費の主流が、甲類から本格焼酎に移ったことが理由です。
本格焼酎に変わったタイミングの数字を書くと:
2000年:1,421円(焼酎甲類、1.8Lびん)
2001年:1,606円(本格・麦、1.8L容器指定なし)
と、13%上がっています。
さらに、
●2011年までは「本格・麦」
●2012年からは「本格・麦または芋」
となっていますが、これも芋焼酎の伸長による変更です。
同じタイミングで、容器についても
●2011年まで「1.8L・容器指定なし」
●2012年から「1.8L・紙パック」
と変更されています。
清酒と同じく本格焼酎でも、紙パックが増えたことによりますが
清酒は「2L・紙パック」であるのに、焼酎は「1.8L・紙パック」です。
(ご存じの通り、本格焼酎の紙パックは2Lでなく、1.8Lが主流)
焼酎が紙パックになったタイミングの数字を書くと:
2011年:1,678円(本格・麦、1.8L容器指定なし)
2012年:1,610円(本格・麦または芋、1.8L紙パック)
と、若干(4%減)下げていますが、
清酒が紙パックになったときの
「容量が1割増えて価格は24%減」に比べると、はるかに軽微です。
以上の、清酒と焼酎の小売物価統計を比較すると、
●清酒は、量的収縮のなかで、価格も大きく低下したこと
●本格焼酎は、価格を維持していること
●紙パックがかならずしも安売り商品でないこと
などが、わかります。
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清酒の名誉挽回に(?)、値上がりしている価格も記載しておきます。
●▲■ 10年きざみの「清酒の輸出単価」
(注:財務省貿易統計から1.8Lあたり単価を計算
貿易統計は酒税を含まないFOB価格)
■1992年: 690円 / 1.8L
■2002年: 845円 / 1.8L
■2012年:1,140円 / 1.8L
■2022年:2,381円 / 1.8L
1992年=100とすると、
02年=122、12年=165、22年=345
すなわち、清酒の輸出単価は30年で3.45倍まで高くなった。
清酒の国内の小売物価が30年で56%になった(1.8L)のと対照的です。
再度、2022年現在の状態を抜き書きすると:
▲国内:酒税込み・消費税10%込みでの物価統計963円(2L紙パック)、
●海外:酒税なし・消費税無しで、輸出単価2,381円(1.8Lあたり)
輸出単価の上昇はまことにありがたい限りだけれど、
今後、海外市場を安定して拡大していくためには、
内外格差(安すぎる国内価格)は改善しなければならない課題と考えます。
日本人としては、安い酒、安く飲める居酒屋文化もわるくありませんが、
世界の潮流では、「酒を安く売る」ことは過去のものになりつつあります。
プレミアムサケを買ってくれる海外のサケ愛好家が日本に来て、
スーパーの酒売り場を見て幻滅しない環境も重要です。
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日本の醸造産業は、自動車産業や電機産業以上に、
世界市場での付加価値と競争力を秘めた、「未来産業」だと考えます。
清酒は(焼酎も)、その潜在的付加価値の大きさだけでなく、
世界に冠たる日本の食文化を支える産業でもあります。
それだけに一層、価格は解決すべき課題です。
(今回のメルマガ、とくに末尾のほうは、思い込みもあるかもしれません。
門外漢の放言、ご容赦ください。)
text = 喜多常夫
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さて、当社情報のご紹介です。
●▲■ ご紹介情報 その1 :アーカイブ資料 ●▲■
Design Ref. Book 「サケびん口のお酒」
https://kitasangyo.com/pdf/archive/package-designs/DRB22_sbk.pdf
Design Ref. Book 「和のスパークリング」
https://kitasangyo.com/pdf/archive/package-designs/DRB23_sparkling-s.pdf
「サケびん口」のびん・王冠は、お酒のプレミアム感を演出します。
「スパークリング清酒」については、設備からパッケージまでお任せください。
●▲■ ご紹介情報 その2 :K2ディヴィジョン ●▲■
「K2 ガラスびんカタログ」(全44ページ、2023年9月改定バージョン)
https://kitasangyo.com/pdf/K2glassbottle_ed5.pdf
新しいガラスびんも盛り込んで、9月にマイナーチェンジしました。
清酒・焼酎・ビール・ワイン・ウイスキーなど、お酒のガラスびんなら、お任せください。
●▲■ ご紹介情報 その3 :アーカイブ資料 ●▲■
「パリのサケwatching - 小売店編」
https://kitasangyo.com/pdf/archive/sake-watching/Paris2023-B.pdf
「ミラノとへレスでサケwatching - 居酒屋編」
https://kitasangyo.com/pdf/archive/sake-watching/milan-jeres+sherry2023.pdf
コロナ後のヨーロッパ出張でのサケの観察記録です。
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●▲■バックナンバー閲覧可能!「メルマガ・クロニクル」
https://kitasangyo.com/Archive/mlmg/BN_top.html
2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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