●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.308 ●▲■
発行日:2023年12月25 日(月)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
発行:きた産業株式会社 https://kitasangyo.com
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●▲■ 2023年の〇と✕
■ 焼酎:アメリカで「Soju」から「Shochu」に・・・〇(マル)
■ 日本酒・ウイスキー・リキュールなどの輸出減・・・✕(バツ)
■ 日本の酒類の「モンシノワ」依存度拡大・・・△(サンカク)
■ サントリー「山崎25年」、125%値上げ・・・!(ビックリ)& 〇(マル)
●▲■ 年の瀬のご挨拶
text = 喜多常夫
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年末恒例、2023年の〇✕(マル・バツ)、
独自の視点で、お酒・アルコール飲料業界の1年を振り返って、
〇=マル:よかった
△=サンカク:ちょっと問題アリ
✕=バツ:NG
!=ビックリ:驚いた
を書きます。企業名は敬称略で失礼します。
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●▲■ 焼酎:アメリカで「Soju」から「Shochu」に・・・〇(マル)
アメリカで売られる日本の本格焼酎の多くは
「Soju(ソジュ・焼酒=韓国焼酎)」とラベルに表示している。
CA州で1998年から、NY州では2002年から、
「AL度数24%以下のSoju」について
「ソフトリカーライセンス」で販売可能になっている。
(蒸留酒のソジュは本来、ハードリカーライセンスが必要だが、
この免許を持つレストラン・バーは多くはない。
ソフトリカーライセンスで販売できればより多くの店舗で提供可能。)
韓国が州政府に働きかけた結果である。
日本の多くの「Shochu」(焼酎)ブランドは実利を得るため、
アメリカでは24%にして(日本標準より1%下げて)
ラベルに「Soju」と表示して販売している。
(独白:韓国は日本にクレームしない。度量、と思う。
韓国焼酎がShochuと表記したら、日本はクレームしそうに思う。)
Soju表記の焼酎を見るたび、個人的には
「ShochuはSojuではないのになあ、、、」
「Coolじゃない(カッコよくない)なあ、、、」
と思っていた。
が、ついに解消されるようだ。
去年2022年6月、先行してNY州が法律を変更していたが、
今年2023年10月、大消費地のCA州も法律を変更、
ShochuもAL24%以下であればソフトリカーライセンスで販売可能になった。
Shochuと書けるようになったのはうれしい。
2023年の大きな〇(マル)である。
Sojuに25年遅れ、とは不思議だが、まことに良かった。
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なお、焼酎の課題として、
「甲類」も「本格」も英文表記で「Shochu」、という問題は残る。
国内以上に、海外で区分を理解する人は少ないだろう。
財務省輸出統計のHSコード(貿易品目コード)では
2008年から「その他の蒸留酒」から「しょうちゅう」が独立、甲乙の総量はわかっていた。
2022年からさらに「甲類・混和」と「本格焼酎・泡盛」が個別コードになったので、
輸出実態が良くわかるようになった。
別項で記載している直近の焼酎輸出データで見ると、
甲類:本格=1:3(金額ベース)、2:3(数量ベース)。
かつて甲類は、焼酎輸出の1割程度だったと思うので、
相対的に安い甲類(と混和)の輸出が拡大しているのだと思う。
海外でShochuの価値を認知してもらうためには、
Shochu KO、Shochu KONWA、HONKAKU Shochu、AWAMORI-Shochu
など、英文表記の自主基準があっても良いと思う。
その方がCoolである、とも思う。
(関連独白:一時、清酒でも「純米」と「アル添」のHSコードを分ける、
という議論があったと思うが、立ち消えになったのだろうか。
区分があったほうが良いように思う。)
●▲■ 日本酒・ウイスキー・リキュールなどの輸出減・・・✕(バツ)
清酒の輸出金額は、21世紀に入って以降、
リーマンショックの2009年にわずかに減ったことを除けば、
コロナパンデミックの2000年も含め、2022年まで一貫して増えてきた。
しかし、2023年は初めて状況が変わる見込み。
現時点で公表されている2023年10月までの貿易統計を見ると、
■清酒輸出339.7億円、対前年比▲14%
と減少している。
特定国の減少が原因でなく、複数の国で減少。
10月時点の▲14%を、11月・12月で挽回するのは困難で、
2023暦年で減少見込みである。
2022年に輸出が多すぎた反動、という方もいる。
農水省が2年毎に発表する「世界の日本食レストラン数調査」では
北米の日本食レストラン:2021年31,200店 → 2023年28,600店
と2,600店も減少したそうだ。
減少は農水省調査が始まって以来、初だと思う。
アメリカ向けの減少は、それが影響しているのかもしれない。
(北米以外の日本食レストラン数は2021年 → 2023年で増加)
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実は、清酒以外も多くの酒類で輸出が減っていて、
以下のような状況である(10月時点)。
■ウイスキー455.8億円、▲6%
■リキュール102.5億円、▲8%
■ビール137億円、+57%
■本格焼酎&泡盛10.2億円、▲27%
■焼酎甲&混和3.4億円、▲25%
■ワイン4.2億円、▲26%
ビールは韓国向けが復調(2019年の日本製品不買から回復)して好調だが、
それ以外は軒並み減少。
2023年の✕(バツ)である。
来年以降、いろいろな分析がされると思うが、
清酒も含めた日本酒類の世界市場が、踊り場に来ているように感じる。
(以下は個人的意見:日本政府は「Cool Japan戦略」を掲げるが、
日本酒類にはグローバル視点で「実はCoolでない」要素があると思う。
前掲の焼酎の事例のほか、清酒、ウイスキー、ワインなどにも課題が多い。
変革を進めて日本の酒類の本来の価値を発信できれば、
2030年に向けて世界市場を拡大させていくことができると思う。)
●▲■ 日本の酒類の「モンシノワ」依存度拡大・・・△(サンカク)
フランスのシャンパーニュの協会「CIVC」は、毎年、
生産状況や輸出状況などをまとめた統計資料(CIVC Bulletin)を公表する。
2022年版Bulletinによれば、輸出先ランキング(金額)は、
1位アメリカ、2位英国、3位日本、
以下、イタリア、ドイツ、豪州、ベルギー、スカンジナビア諸国、
「モンシノワ」、スペイン、カナダ、、、
となっている。
「モンシノワMonde Chinois」とはChinese World=中国世界の意。
CIVCでは2016年からランキング表で「モンシノワ」という区分を採用。
「中国+香港+台湾」の数字、と小さく注記されている。
(書かれていないが、たぶんマカオも含むのだと思う。
中国、香港など個別国のデータも記載されるが、まずモンシノワが出てくる)
香港とマカオは、返還されて20年以上たった今も、
国際的取り決めの貿易国区分で中国とは別コードになっている。
(中国とは関税も違うので当然か)
したがって、どこの国でも貿易統計で香港・マカオ・中国は独立している。
が、今や中国の一部であるので合算するのはわからなくもない。
しかし、台湾まで合算するとは。。。
「台湾は中国の一部」、と主張する「中国に忖度(そんたく)」して?
あるいは「中国の好感」を得るため??
ただ、2022年版Bulletinによれば、
シャンパーニュのモンシノワ依存度は「2%」に過ぎない。
(金額ベースの「依存度」=「対象国・地域への輸出額」/「総輸出額」
ちなみに、アメリカ依存度15%、英国依存度9%、日本依存度7%)
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日本のお酒のモンシノワ(=中国+香港+マカオ+台湾)依存度はどうか。
(同じく、2022年、金額ベース)
■「清酒」輸出総額475億円のうち、
モンシノワ向けが238億円で、依存度「50%」。
■日本の「ウイスキー」輸出総額561億円のうち、
モンシノワ向けが249億円、依存度「44%」。
■日本の「ワイン」輸出6.9億円のうち、
モンシノワ向けが5.4億円、依存度「79%」。
清酒(日本酒)の、モンシノワ依存度の10年の推移をみると、
2012年「27%」 → 2017年「34%」 → 2022年「50%」
と、近年急速に高まった。
仮に中国世界向けが止まった場合、
フランスのシャンパーニュ輸出は2%減
と、影響軽微だが、
日本の清酒輸出は50%減
日本のウイスキー輸出は44%減
日本のワイン輸出は79%減
となる。
<事例1:オーストラリアのワイン>
2020年、COVID発生源の調査をオーストラリアが中国に迫ったことに対し、
事実上の報復措置として、中国は豪州ワインの関税を0%から200%以上に引き上げ。
豪州ワインの中国向け輸出は激減。
豪州のワイン輸出先1位は中国だったのでワイン産業は大打撃を受けている。
現在も継続中で、2024年春にようやく解消するような話だ。
<事例2:日本の水産物>
2023年8月の原発処理水放出で、
中国が日本からのすべての水産物輸入禁止を発令。
香港は、東京を含め10都県の水産物の輸入禁止を発表。
日本の水産物輸出先1位は中国。水産業は大打撃を受けている。
ただ、中国がその気になれば、香港も、中国と同じ「全面禁止」にできただろうし、
規制対象を処理水と関係ないお酒にすることもできただろう。
前掲のオーストラリアの例では、COVIDとワインは何の関係もない。
中国依存度が高いのは、酒類に限ったこと・日本に限ったことではない。
中国経済の巨大化に伴い、多くの産業・多くの国が中国に大きく依存している。
ただ、特定の国への依存率が高い状況は、リスクを内在する。
「モンシノワ」がたくさん買ってくれるのはありがたい=〇マルだが、
依存度が大きすぎることは、△サンカク、である。
●▲■ 「山崎25年」の125%値上げ・・・!(ビックリ)+ 〇(マル)
11月にサントリーが、
ウイスキー「山崎25年」、「白州25年」、「響30年」について
希望小売価格16万円(税別)→ 36万円(税別)
という値上げを発表。(実施は2024年4月から)
125%値上げにはちょっと驚いた。
2023年の!=ビックリだった。
ただ、「山崎25年」は、アフターマーケットでは、優に、
100万円以上(日本)
1万ドル以上(アメリカ)
1万ユーロ以上(EU)
の価格で流通している。
値上げ率200%、300%でも受け入れられる、といえるかもしれない。
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世界の銘酒、ボルドーワイン、スコッチウイスキー、ドイツビールは、
その世界的名声を確立するのに数百年かかっている。
2023年は山崎蒸溜所(日本初のウイスキー蒸溜所)開設100年だそう。
100年でここまでの世界的評価を獲得したお酒は、
世界で「日本ウイスキー」だけではないか。
2023年の大きな〇=マル、ともいえる。
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今年も押し詰まりました。暮れのご挨拶を申し上げます。
https://kitasangyo.com/2024message/message_2024.html
(↑「クリスマス&年賀のカード、それに、年末年始の休日のご案内」)
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昨年の年末メールで書いたメッセージを、今年も再掲しておきます。
この季節、いろいろなクリスマス・ソングが流れますが、
クリスマスのスタンダード曲、ジョンレノン・オノヨーコの「Happy Christmas」が、
今年は特に心にしみ入ります。
これは、半世紀前、ベトナム戦争の時につくられた曲で、
サブタイトルは「War is Over(戦争は終わる)」。
曲の最後は「If you want it, War is Over, Now」
「(パンデミックや天災と違って)戦争は、みんなが望めば、今すぐ終わる」
この曲のような世界を、せつに願います。
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きた産業は、より一層皆様のお役に立つ企業となるよう努めてまいります。
2024年も、なにとぞ宜しくお願いいたします。
きた産業株式会社 代表取締役 喜多常夫
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