●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.310 ●▲■
発行日:2024年2月26日(月)
■ アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報 ■
発行:きた産業株式会社 https://kitasangyo.com
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●▲■ 「お酒の基本3法則」に次ぐ、時代ごとの法則
その1 「20世紀4Qからの3法則」
● 20世紀4Q法則、1 「プロダクトライフサイクルの法則」
● 20世紀4Q法則、2 「大手ブランドシェア拡大の法則」
● 20世紀4Q法則、3 「低価格は市場を縮小させる法則」(「価格の逆弾力性」も)
text = 喜多常夫
ご紹介情報●1▲ 「クラフトビールリスト」更新、805か所@2023年末
ご紹介情報●2▲ Tips for BFD 「洋樽市場の変遷と現状 - ウイスキーの樽」
ご紹介情報●3▲ ケース単位で出荷できる「汎用キャップ」のカタログ
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前回メルマガでは、「お酒の基本3法則」
● 基本法則1 「先進国における伝統酒逓減の法則」
● 基本法則2 「グローバル化に伴う酒類多様化の法則」
● 基本法則3 「アルコール摂取量減少の法則」
について、「パーカピタ(1人あたり)お酒消費量」で検証してみました。
今回も、独自見解による、お酒の法則の話を書きます。
「基本3法則」のほかにも、お酒にはいくつかの法則性が認められます。
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自分の経験で語れる「半世紀」を、
●20世紀の4Q(第4四半期=1976年からの25年)
●21世紀の1Q(第1四半期=2001年からの25年)
の二つに分けてみると、
言うまでもなく、前者と後者では市場構造が大きく異なります。
そして、前者と後者にはそれぞれ異なる法則性のようなものがあって、仮にそれを、
●「20世紀4Qから始まった法則」
●「21世紀1Qから始まった法則」
と命名して、考察してみます。
まず今回は、「20世紀4Q法則」について。
これは20世紀4Qから始まったものではありますが、
21世紀1Qの現在も継続する法則性です。
また、日本だけでなく、先進国、あるいは世界マーケットでも
ある程度共通する法則と言えると思います。
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●▲■ 20世紀4Q法則1 「プロダクトライフサイクルの法則」
「プロダクトライフサイクル」:
商品の寿命(「プロダクトライフ」)を4区分して考えます。
「導入期」は売上は少なく、損益は赤字であることが多いですが、
「成長期」は売上が伸び、利益も増加します。
「安定期」は売上は横ばい、でも利益はある程度確保でき、
「衰退期」には売上が減って、赤字状態に。
これは多くの商品に共通の特性で、
縦軸に売上(あるいは販売量や利益)を、横軸に年月をとると、
一般的には「単純な山形カーブ」になります。
商品によって単純山形でないいくつかのカーブパターンも研究されていますが、
総じてこれを「プロダクトライフサイクルカーブ」と呼びます。
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日本におけるお酒の需要(数量や売上)は、
プロダクトライフサイクルカーブが実によく当てはまっていて、
多くの酒類は、「単純山形カーブ」が該当します。
例えば清酒は、
戦後30年ほどは伸び続けました(右肩上がり)が、
1973年がピーク(頂上)となり、
その後半世紀減少を続けています(右肩下がり)。
これをグラフにすると、きれいな単純山形カーブの、
プロダクトライフサイクルに当てはまっています。
清酒がプロダクトライフサイクルカーブに当てはまるのは、
「先進国における伝統酒(=清酒)逓減の法則」
「グローバル化に伴う酒類多様化(清酒以外に需要がシフト)の法則」
「アルコール摂取量減少の法則(そもそも絶対量が減る)」
という「お酒の基本3法則」による帰結、と見ることもできるので、
派生法則とも言えるでしょう。
清酒以外の酒類も同様で、それぞれのライフサイクルカーブのピークを、
10年単位に丸めて書くと、以下のようになります。
1970年:清酒
1980年:ウイスキー
1990年:ビール
2000年:ビール類(=ビール+発泡酒+第三)
2010年:本格焼酎
2020年:ウイスキー(2回目の小ピーク)、ワイン(?)
2030年予測:RTD(?)
2040年予測:No-Lo(ノンアル、ローアル)
ウイスキーは、1983年のピークのあと減少していましたが、
近年、再度小さいピークを描くカーブで、他の酒類と異なるパターンです。
(「サイクル・リサイクルカーブ」というライフサイクルカーブの範疇に属する)
ワインとRTDに、「?」を付けています。
すこし前まで私は、「ワインのピークは2030年」と思っていましたが、
前回調べたパーカピタ消費量で、今やワインは清酒に拮抗している事を考えると、
10年単位に丸めたワインのピークは2020年かも、、、
また、「RTDのピークは2020年」と思っていましたが、
まだ若干は伸びて、RTDのピークは2030年かも、、、
、、、と考えを暫定的に変えたので、「?」を付したものです。
ただ、ここで言うワインは、「国産+輸入」の消費総量で、
国産ワインに包含される「日本ワイン」を見ると、今後も伸びるでしょう。
「日本」や「クラフト」といった接頭詞のつくサブカテゴリ―は、
今後も伸びると思われ、その個人的な予測を書くと:
2030年:「日本」ワイン、「クラフト」ビール
2040年:「日本(クラフト)」ウイスキー
いずれにせよ、お酒の需要にはライフサイクルカーブが当てはまり、
それは、「20世紀4Q に顕在化してきた法則」であり、
「21世紀1Qの現在も継続している」と言えます。
ただ、以上は、「日本国内市場」についての話で、
「輸出市場」、あるいは「国内+輸出の総市場」でいえば話は違います。
クラフトウイスキーは元々、日本より海外を意識して起業した方が多いし、
清酒も、輸出では(2023年は一頓挫でしたが)今から伸びるでしょう。
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●▲■ 20世紀4Q法則2 「大手ブランドシェア拡大の法則」
以下、実名の社名で失礼します。
清酒の大手3ブランドは、「白鶴」、「松竹梅」(宝酒造)、「月桂冠」です。
2023年の「国内の課税移出量」でみれば、ランキングはこの順番ですが、
3社とも、相当量の輸出があり、相当量の海外生産もあり、
「世界生産量」でみたランキングは異なるかもしれません。
ここでは、日本国内のシェア(課税移出のシェア)をみることにします。
3社合計のシェアは、大きく丸めていえば、
1970年=10%
2000年=20%
2023年=35%
と、時代とともにシェア拡大を続けています。
清酒の場合、「国内消費量が減り続ける中でのシェア拡大」です。
一方、清酒と違って、本格焼酎の場合は、
2007年まで消費量が増加し、その後は減少傾向です。
大手2ブランドの「霧島」、「いいちこ」(三和酒類)は、
「増加局面でも、減少局面でも、シェア拡大」を続けています。
過去のデータを持ち合わせていないのですが、
現在の2社合計のシェアを大きく丸めていえば、
2023年=40%
となります。
「芋焼酎」、「麦焼酎」という区分で見ればさらに高いシェアでしょう。
以上のような、「大手ブランドシェア拡大の法則」は、
「20世紀4Q に始まった法則」といえます。
この法則は現在も概ね継続していますが、
21世紀1Qに始まる「クラフト化」のなかで多少の変貌が見られます。
(クラフト化については次回書きます。)
なお「大手ブランドシェア拡大の法則」は、
ブランド数が多い酒類に適用されるようで、
キリン、アサヒ、サントリー、サッポロ、オリオンで95%以上を占める
ビール業界などでは成立しないようです。
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●▲■ 20世紀4Q法則3 「低価格は市場を縮小させる法則」
「低価格は市場を縮小させる」とは、
「安い商品」そのものは売れるけれど、
「全体量」は縮小が始まる、という状態を示します。
全体量縮小は、典型的には「5年以内にはじまる」ように見えます。
以下、3つの証例を書きます。
●証例 1: <清酒の紙パック>
1980年ごろ、一升壜に替わる新たな容器として「紙パック」が登場。
安価と、増量(2L)で、紙パックはシェアを伸ばしました。
それとともに、清酒全体の出荷量は減少を続けています。
2010年以降、清酒総出荷量にしめる紙パックの比率はほぼ50%の水準。
総出荷量の減少に加え、
ほぼ50%を占める安価な紙パックが清酒の平均出荷価格を押し下げ、
清酒産業の国内市場規模(総出荷量x平均出荷価格)は激減しました。
紙パックがなかった場合でも市場縮小はあったはずですが、
ロングスパンでみた場合、
安価で増量の紙パックが清酒業界に貢献したといえるのか疑問です。
比較事例として本格焼酎があります。
紙パック比率は清酒以上(50%を優に超える)だと思いますが、
本格焼酎の紙パックは安売りが少ないし、1.8L(増量なし)が主です。
既に述べたように、本格焼酎の市場は縮小局面に入っていますが、
清酒に比べると売上規模の縮小度合いは少ないといえます。
●証例 2: <ビールの発泡酒&新ジャンル>
1994年にサントリーが発泡酒「ホップス」を発売し、その後各社が追従。
2004年にサッポロが第三のビール「ドラフトワン」を発売し、その後各社が追従。
「節税商品」=「より安い商品」として登場した発泡酒と第三のビールは、
「ビール(税制上、本物のビール)」のシェアを奪いました。
それとともに、ビール+発泡酒+第三=ビール類全体の市場規模は縮小しています。
去年10月の税制改正で、直近ではビールが50%以上を回復していますが、
2010年以降、ビール類総出荷量にしめる発泡酒+第三の比率は概ね50%の水準。
総出荷量の減少に加え、
ほぼ50%を占める発泡酒と第三は平均出荷価格を押し下げ、
ビール類の国内市場規模(総出荷量x平均出荷価格)は大きく減少しました。
発泡酒と第三がなかった場合でも市場縮小はあったと思いますが、
ロングスパンでみた場合、
発泡酒と第三の登場がビール産業に貢献したといえるのか疑問です。
●証例 3: <ウイスキーの減税>
英国サッチャー首相の要請もあって1989年に酒税法の抜本改革が行われ、
特級~2級という酒税が廃止され、リッターxx円という従量税に変更。
酒販小売り免許の自由化も同時に行われました。
輸入ウイスキー価格は一気に下がり、
並行輸入業者の出現でさらに価格は急落。
高価であったが故の消費や贈答品需要がなくなってしまい、
国産ウイスキーも一挙に落ちました。
ウイスキーの場合、「低価格は市場を縮小させる法則」も成立していますが、
それを上回る、「価格の逆弾力性」も認められます。
「価格弾力性」とは商品価格を下げると販売数量が増えることです。
清酒やビールの場合は、
価格を下げた紙パックや発泡酒・第三は販売量が増えました。
すなわち、「価格弾力性」があります。
ウイスキーの場合は、
突然安くなった輸入ウイスキーは(一時的には売れましたが、5年ほどで)売れなくなりました。
すなわち、「価格の逆弾力性」が認められます。
1983年をピークに下げ続けた日本のウイスキーの消費量は、
2014年ごろから再度拡大しています(80年代に比べると50%以下の規模ですが)。
再拡大の理由ではハイボールブームも指摘されますが、
日本ウイスキーの世界における高評価→プレミアム化が始まり、
「高価になったこと」が消費増に貢献しているようにも見えます。
「高いものが売れる」ということは、やはり
ウイスキーの「価格の逆弾力性」を示していると言えます。
長々、文章を書きましたが、
「お酒の基本3法則」に次ぐ、「20世紀4Qからの3法則」を認識することは、
酒類産業を考える上で大事なことだと思います。
(次回の「21世紀1Qからの3法則」に続く)
text = 喜多常夫
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さて、当社情報のご紹介です。
●▲■ ご紹介情報 その1 :アーカイブ ●▲■
「クラフトビールリスト」更新、全国で805か所@2023年末
https://www.kitasangyo.com/beer/MAP.html
地ビール解禁の1995年から、当社が独自に継続している調査です。
2021年12月末時点 559 ケ所
2022年 12月末時点 677 ケ所
2023年 12月末時点 805 ケ所
年間100社以上のクラフトビールが設立され、ますます増加傾向です。
●▲■ ご紹介情報 その2 :アーカイブ ●▲■
Tips for BFD 「洋樽市場の変遷と現状 - ウイスキーの樽」
https://www.kitasangyo.com/pdf/e-academy/tips-for-bfd/BFD_63.pdf
酒うつわ研究誌に掲載された、ウイスキー樽の資料。
昨年から、オークバレル社がきた産業のパートナーとなっています。
ウイスキー樽、ワイン樽、焼酎樽など、洋樽の事ならご照会ください。
●▲■ ご紹介情報 その3 :KKディビジョン ●▲■
ケース単位で出荷できる「汎用キャップ」のカタログ
https://www.kitasangyo.com/package/index.html
トータルパッケージとしてのデザインで、
無地のキャップ、自社ロゴのないキャップを採用される商品が増えています。
ケース単位で出荷できる「汎用キャップ」を様々取り揃えています。
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https://kitasangyo.com/Archive/mlmg/BN_top.html
2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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http://blog.goo.ne.jp/kita-slow_blog/
2006年4月以来、きた産業のトピックスを写真で収録。
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