●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.329 ●▲■
発行日:2026年5月15日(金)
■ アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報 ■
発行:きた産業株式会社 https://kitasangyo.com
------------------< 目 次 >------------------
●▲■ 伸びる日本酒輸出、その潜在リスクの整理(その2)
● 価格差:国によって輸出単価が違いすぎ+輸出価格と国内価格が違いすぎ
● 欧・米(・中?)の「ケミカル規制」「パッケージ規制」=どんどん進む・個別に進む
● 日本産酒類の「フェイク的要素」=本当に「COOL JAPAN」か?
●▲■ きた産業110周年・創業記念日のご挨拶 ●▲■
NEW!:ビデオ 「お酒のキャップは、きた産業」(1分30秒)
text = 喜多常夫
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日本酒の輸出は順調に伸びているが、
足元をすくいかねない「潜在リスク」として、6項目を指摘したい。
前回メルマガでは、「その1」として以下の3項目を書いた。
● 21世紀2Qは日本食レストラン数の伸びが止まる
● 「カントリーリスク」:5大仕向け国(中・米・香港・韓・台)すべてが高い
● 「モン・シノワ」(中国世界)依存度=約50%
今回は、「その2」として、残り3項目を書きます。
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● 価格差:国によって輸出単価が違いすぎ
+輸出価格と国内価格が違いすぎ
財務省貿易統計の「輸出金額」を「輸出量」で割り算して、
国別の2025年の輸出単価を計算してみた。
■■ 日本酒の「★=6大仕向け国(注1)」と
「■=欧州の主要4か国」の状況(単価の高い順)
★香港 ¥4,277 / 1.8L(注2)
★シンガポール ¥3,941 / 1.8L
★中国 ¥3,596 / 1.8L
■英国 ¥2,577 / 1.8L
★アメリカ ¥2,575 / 1.8L
■フランス ¥2,426 / 1.8L
★台湾 ¥1,600 / 1.8L
★韓国 ¥1,443 / 1.8L
■イタリア ¥1,437 / 1.8L
■ドイツ ¥1,097 / 1.8L
(注1:中・米・香港・韓・台が「日本酒5大仕向け国」だが、
近年はシンガポールが加わって「6大仕向け国」といえる状況)
(注2:「1L単価」とするのが一般的だが、
昔の単位に馴染んでいるので「1.8L単価」。悪しからず。)
韓国価格は香港の約1/3、
アメリカ価格は中国の約2/3、
イタリア・ドイツ価格は台湾・韓国より安い、、、といった状況に問題を感じる。
ヨーロッパ圏内の差(伊・独の価格は、英・仏の約1/2)は、
相互の行き来が自由なだけに、特に問題と考える。
仕向け国による価格差は、基本的に輸出品目の差なのだが、
グローバルなお酒(シャンパーニュ、ボルドーワイン、スコッチワインなど)では、
主要仕向け国によってこれほどの価格差はない。
相手国による大きな価格差がある中で、
日本酒をグローバルなお酒にするのは、難しいのではないか。
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日本国内の価格はどうか。
総務省統計局の物価統計における「清酒」は、現在、
「2L紙パック・普通酒」が調査対象となっている。
すなわち、「2L紙パック」(=いわゆる経済酒)が、
日本国内で一般的に消費される標準の清酒、とみなされている。
先述の貿易統計と比較するために、
2025年の全国物価統計を見てみよう。
2025年は秋に値上げがあったので、2水準ある。
値上げ後の2025年10月時点・・・ ¥1,150 / 2L
値上げ前の2025年9月時点・・・ ¥1,033 / 2L
貿易統計(酒税なし、FOB価格、1.8L単価)と合わせるために、
酒税(100円/1L)を除いて、2Lから1.8Lに換算して、
先ほどのリスト末尾に書き加えると、以下となる。
★台湾 ¥1,600 / 1.8L
★韓国 ¥1,443 / 1.8L
■イタリア ¥1,437 / 1.8L
■ドイツ ¥1,097 / 1.8L
日本(値上げ後) ¥855 / 1.8L
日本(値上げ前) ¥750 / 1.8L
日本の国内価格は、韓国・台湾向けの概ね半額、という低水準である。
物価統計の紙パックはいわゆる「経済酒」で、
それを輸出する日本酒の価格と比較するのはおかしい、
と言われるかもしれない。
しかし、シャンパーニュ、ボルドーワイン、スコッチウイスキーなど、
グローバルマーケットで勝負しているブランドの多くは、
国内向けの経済酒、というものがそもそも存在しない。
それ故、仕向け国による価格差が少ないことにもなる。
「日本国内では紙パック・経済酒を量販し、
世界市場ではプレミアム日本酒を販売する」
という戦略は、無理があると考える。
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● 欧・米(・中?)の「ケミカル規制」「パッケージ規制」
どんどん進む・個別に進む
国によって法律・規制は異なる。
輸出する場合、当然、仕向け国の法律・規制に適合しなくてはならない。
清酒輸出では、古くは「サリチル酸」、
近代では「カルバミン酸エチル」などが、
仕向け国の化学品規制に抵触した事例である。
日本規制が、海外規制に比べて緩い、という事情が背景にある。
2010年ころ以降、欧米の化学品規制や包材規制は、
新しいステージに入ったように感じる。
■「フタル酸」:
かつてはずいぶん話題になったが、
対応が進み、近年はあまり話題にならなくなった。
ただ、たくさんの種類があって、
国や規則によって規制物質が異なることに注意しなくてはならない。
■「BPA」(ビスフェノールA):
日本では缶やキャップの塗料に関する規制がないが、欧米では規制が進む。
「意図的添加なし(not intensively added)」という言葉が定着したが、
「完全フリー」が求められる場面もある。
「接液面のみ」の規制が主流(日本の「ポジティブリスト」もしかり)だったが、
CA州の「Prop65」規制やEUの「PPWR」規制では、
非接液部を含む「パッケージ全体」の規制になっている点も対応が難しい。
■「PFAS」(有機フッ素化合物、特にPFOS/PFOA):
EUとアメリカの規制のニューフェース。
日本でも水道水や井戸水から検出されたことがニュースで度々とりあげられるが、
多くの紙製の包材や印刷インキなどで利用されているのが現状。
当社のキャップの場合も印刷インキに含まれていたが、対応品に順次切り替え中。
■醸造設備も対応必要:
上記のような規制対象の化学品は移行・残留する。
すなわち、包装材料だけでなく、
お酒の生産工程における、醸造設備、コンベアベルト、ホース、パッキン、手袋、原料プラ容器など、
すべてについて、フタル酸、BPA、PFASなどの対応が必要である。
そのことを意識している清酒蔵元は少ないのではないか。
■「リサイクルプラ」:
EUの「PPWR」規制では「リサイクルプラの利用」や
「輸送梱包・ガラスびんなどのリユース」を指定している。
日本では、「バイオプラ」は広く利用されるが、
「リサイクルプラ」はPETボトル以外ではほとんど実用されていない。
清酒の一升びんやビールの大中小びんなどの「リユース」も、減少する一方である。
■中国の「GB規制」:
(注:中国語の「国標」の表記がGuóbiāoなのでGB。英国ではない)
EUやアメリカへの輸出については、現地から証明書や宣誓書の提出を求められるが、
中国向け輸出は現状では何も言ってきていない(と思う)。
が、突然、適合性の証明を求めてくる可能性はあると考える。
現状では、中国輸出でGB規制を考慮していない企業が多いのではないか。
清酒輸出の中国依存度の高さについては、前回メルマガに書いた通りである。
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日本の包材メーカーにとって国内規制を遵守するのは当然だが、
輸出品のための海外規制に適合する仕様をつくることは、
コストが合わない・手が回らない場合のほか、
技術的に困難な場合もあって、対応が後手になることが多い。
輸出先国の様々な規制をクリアするのは大変だが、
いい加減な対応だと、清酒輸出の足をすくいかねない潜在リスクになる。
そもそも、
人体への有害リスクや、環境負荷低減の観点から、
世界潮流として規制される物質が、
業界事情、有害性が明らかでない、対応困難、、、などの理由で、
日本は規制していない
という構図が多いように思う。
一消費者の視点で見ると、日本より欧米のような規制強化の方が安心できる。
次に述べる、
日本は本当に「COOL JAPAN」なのか?
に通じる要素と言える。
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● 日本は本当に「COOL JAPAN」か?
日本産酒類の「フェイク的要素」
▲「フェイク・ジャパニーズ・ウイスキー」:
とある英文サイト、「図解・日本ウイスキー、リアルかフェイクか」では、
日本のウイスキーの様々なブランドを
●「Japanese Whisky」
■「World Whisky」
▲「Fake Japanese Whisky」
▲「Shochu Labeled as Whisky」
の4種に分類して実名で公開している。
多くのウイスキー生産者が出現すると玉石混淆は必然だし、
この2-3年は一時より状況が少し改善したように感じる。
とはいえ、
▲「フェイク・ジャパニーズ・ウイスキー」
▲「ウイスキーのラベルを貼った焼酎」
と評される日本製のお酒が海外に出回ることは、日本全体を毀損する。
日本政府は「COOL JAPAN」を推進しているが、これはCOOLではない。
▲「合成清酒」:
フランスに「合成ワイン」はないし、英国に「合成ウイスキー」はないが、
日本には「合成清酒」がある。
国内では、清酒の概ね5%程度の合成清酒が消費されている。
(2024年度の課税数量:清酒=209万石、合成清酒=10万石)
輸出では、清酒輸出の概ね1%程度の合成清酒が輸出されている。
(2024年度の輸出免税数量:清酒=17.2万石、合成清酒=1,500石)
中国やブラジルでは、日本の清酒とは大きく異なる方法で製造される
「フェイク・サケ」というべきSakeが製造・販売されているが、
日本に合成清酒があるなかでは、フェイク・サケとは指弾できない。
英語表現では、国税は「sake compound」、
財務相貿易統計では「Synthetic Sake」としているが、
輸出されたら単にMade in Japanの「Sake」として売られることが多いのではないか。
まったく、COOLではない。
詳しく書かないが、他にも、、、
▲清酒の「普通酒」のアルコール添加率が、きわめて高いこと
それが、紙パック経済酒を支えていること
▲アメリカで日本の焼酎を「Soju(韓国焼酎)」表記で販売していたこと
(2022-23年からShochu表記が認められ、今は改善したが)
▲ビールに、「発泡酒」、「第三のビール」があるのも日本独特
「Low Malt Beer」(発泡酒)はまだよいとしても、
「No Malt Beer」(第三の一部)というのは、合成清酒に通じる気がする
見方によっては、「Synthetic Beer」ともいえる
などなど、
日本産酒類には、
日本人視点では、慣れてしまって問題意識を持ちにくいが、
世界視点で見ると、「COOL JAPAN」と言い難い要素が多々ある。
日本酒以外も含めて、世界から見れば、日本のお酒である。
COOLではない日本製のお酒があることは、日本酒にとっても潜在リスクである。
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2回にわたって、素人の視点で潜在リスクを書きました。
誤った指摘や、不十分な分析もあったかもしれませんが、
日本酒と日本産酒類のグローバル化のための参考になれば幸いです。
text = 喜多常夫
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●▲■ きた産業110周年・創業記念日のご挨拶 ●▲■
きた産業は1916年5月15日創業。本日、110周年となりました。
110年のご愛顧に心から感謝いたします。
▲■ 20年前の「90周年(2006年)」に書いたメッセージ:
会社を大きく飛躍させたいという気持ちはもちろんあるが、むしろ、
多くの皆さんから少しずつのご愛顧をいただいて、
長く継続的に仕事を続けられることこそ、事業者として幸せなこと。
「少し愛して、長~く愛して」 @90周年
▲■ 10年前の「100周年(2016年)」に書いたメッセージ:
「長く継続的に事業を続けることは価値高いこと」、と100年の節目に改めて思います。
次の10年、50年、100年、きた産業が生き抜けるかどうか。
利益を出すこと、品質を向上させること、新製品を出すこと、人を育てること、
など様々な必要条件があります。
しかし、会社が長く存続する要(かなめ)は、
「業界・社会が必要とする企業であるか否か」、だと思います。 @100周年
▲■ 110周年に当たって:
社会環境や経営環境はずいぶん変わりましたが、
110周年も、90周年・100周年と同じ気持ちです。
90周年以降、「継続取引を増やす」、「多くのお客様と取引する」ことに特に重点を置いてきました。
100周年で書いた「業界・社会が必要とする企業」を目指す事は、今や「潜在意識」となっています。
110周年を機に経営を次世代に引き継ぎます。
当社はファミリーカンパニーで、次は創業者から数えて第4世代となります。
すでに昨年、ルーツ機械研究所(機械・エンジニアリング部門)を引き継いでいます。
元来、「きりが良い」のが好きな性格で、
私の40歳の誕生日にルーツ機械研究所を設立しました。
昨年、2025年9月14日(私の70歳の誕生日)に設立30周年となったので、
その日に、ルーツ機械研究所の社長を喜多隆海(たかうみ)に引き継いでいます。
5月15日(実は、先代、私の父の喜多義夫の誕生日)に設立110周年となるので、
社長を喜多郁森(ふみもり)に引き継ぎます。
私はきた産業の75周年(35歳)から35年間社長を務めました。
それも「きりの良い」年数だと思っています。
社長を引き継いだ後も、会長職として、
「多くの取引先から長く愛される会社」
「酒類業界でお役に立つ企業」
「業界・社会が必要とする企業」
を目指す意識が引き継がれるようつとめてまいります。
これからもよろしくお願いします。
代表取締役会長 喜多常夫
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●▲■ NEW! ビデオ 「お酒のキャップは、きた産業」(1分30秒)●▲■
https://youtu.be/xs30tgGGPu8
新社長の企画による、当社紹介ビデオです。
ヒップホップの「韻シスト(インシスト)」作詞・作曲のオリジナルBGMつき。
お楽しみください。
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●▲■バックナンバー閲覧可能!「メルマガ・クロニクル」
https://kitasangyo.com/Archive/mlmg/BN_top.html
2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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2006年4月以来、きた産業のトピックスを写真で収録。
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