●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.49 ●▲■
発行日:2004年 10月29日(金)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
発行:喜多産業株式会社 http://www.kitasangyo.com
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●▲■(前編)「ガス入りお酒」
3つのレンマとガス入り清酒試作 ●▲■
●▲■レンマ1:怪態(けたい)なる味のお酒がベース
●▲■レンマ2:酸味(特にクエン酸やりんご酸)、それに甘み
●▲■レンマ3:10℃くらいで飲むのは、ガス少なめ
ご紹介アイテム●1▲(参考資料)ワインを「健全果で仕込む」
ご紹介アイテム●2▲「DIEMMEの選果除梗破砕システム」
ご紹介アイテム●3▲ガス飲料の試作に「パイロットプラント」
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(本稿は、小社発行「酒うつわ研究」誌連載の「ガス入りのお酒」の
9月号掲載分を再編集して2回に分けて紹介するもので、
米国シアトル在住のゲリー・メリウォルの文章です。)
●▲■ 水の「ガス入り」と「ガスなし」
ミネラルウォーターには「ガス入り」と「ガスなし」があります。
ここシアトルではガス入り水のファンが増えているような気がしますね。
「水はガス入りしか飲まない、ずっとサンペレグリノ
(イタリア製ガス入りミネラルW)だけ」という知人夫婦や、
昼食には必ずペリエ(フランスのガス入りミネラルW)を
オーダーする同僚の女性がすぐ思い浮かびます。
ところで、「ガスが抜けたガス入りミネラルウォーター」
を飲んだことがありますか? これを飲むと、、、
う〜ん、希代(けったい)というか怪態(けたい)なる味。
硬さ(ミネラル味?)だけ感じる水、
ドイツの水道水、っていう感じです(ドイツ人の方、失礼)。
お酒と違ってエステルなどの揮発分はないので単に炭酸が抜けただけ。
世界に冠たるサンペレグリノやペリエが、
いかに「炭酸とのバランスで成り立っている水」かがわかります。
しかも結構沢山ガスが入った状態でのみバランスしている。
少しでも炭酸が抜けはじめると、とたんに不味(まず)くなる。
市販のガス入りミネラルウォーターはどれもミネラル分が多い。
ミネラルの少ないガス入り天然湧出水もあるのかもしれないけれど、
商品としてはあまり聞かない。
人間の味覚DNAは、ガス入り水のミネラルバランスに対して
ある種のスタンダードを持っているように思います。
●▲■ お酒の「ガス入り」と「ガスなし」、ガス飲料の「レンマ1」
アルコール飲料の「ガス入り」と「ガスなし」も同じ。
ガスが抜けたビールやシャンパンはトテモ飲メナイ、のはご存知のとおり。
少しガスボリュームが下がっただけでも不味くなる。
一方、本来ガスなしの清酒や焼酎、ワインやウィスキーにガスを入れると、
これはまあ、なんとなく飲めなくもないものが出来る場合があるが、
やはりおいしくはない。怪態なる味。
これをガス飲料の「第一のレンマ(lemma、定理)」としましょう。
数式化すると次式(「レンマ1」)になります。
(美味しいガス入りの水やお酒)−(炭酸ガス)
=(怪態(ケッタイ)なる味の水やお酒)
これを還元的に(?)解釈すると次式「レンマ1'」がえられます。
(怪態なる味のお酒)+(炭酸ガス)=(美味しいガス入りのお酒)
●▲■ ガス飲料の「レンマ2」
次に「第二のレンマ」。
ガス入りミネラルWの決め手が「ミネラル」であるように、
ガス入りのお酒の決め手は「酸味」と「甘み」であること。
試みに、コンビニで入手したガス入りのお酒の酸度と比重を測定しました。
チューハイ4種、ガス入り清酒2種、梅酒サワーの計7種類。
(データ省略、「酒うつわ研究」誌に掲載)
測定誤差もあると思いますのでデータは目安ですが、
まずは酸味、そして甘さが重要であることが読み取れます。
酸にもいろいろある。当たり前ですがガス入りのお酒は冷やして飲む、
したがって「冷たさとマッチする酸」であることがポイント。
「乳酸、タンニン、琥珀酸」(=常温域で旨い有機酸)が多い酒だと
ガスを入れてもおいしくなりません。
ワインを例に取ると、
乳酸、タンニンの多いカベルネ・Sにガスを入れて冷やしても
非道(ひど)い味、すなわち本来の「道ニ非ズ」。
清酒の場合は、通常もっとも多いのが琥珀酸であることがネック。
逆に「りんご酸やクエン酸」(=低温域で旨い有機酸)が多い
リースリングやミュスカデは冷やしてこそうまいし、
ガスを入れても結構イケル。甘いこともガス入りに向く要因です。
以上をまとめると「レンマ2」は次式となります。
(怪態なる味のお酒の成分)⊃(酸味、特にクエン酸やりんご酸)
(怪態なる味のお酒の成分)⊃(甘み)
注:「X⊃Y」とはYがXの「真部分集合」の意。第二式は傾向。
(余談:なぜ「citric acid」が「クエン酸」なのか?博識某氏に
「クエンは漢字。レモンはクエンと呼ばれていた」と教えられました。)
●▲■ ガス飲料の「レンマ3」
そして「第三のレンマ」は、
「ガスボリューム(GV)の高いものは5℃前後に冷やして飲む、
GVの低いものは10℃前後で飲むことが一般的」であること。
ビールを例に取ると、GVが低いギネス・スタウトや
イングリッシュ・エールは10℃前後が飲み頃。
これをラガーのように5℃にしてしまうと持ち味が失われる。
これは成分とガス量の両方の影響がありそうですが、とにかく、
ガスが少なめ(GV2くらい)のお酒をつくる場合のポイントです。
この「レンマ3」は、次の近似式で表しておきましょう。
(きりりと冷やすガス入り酒)≒(たくさん炭酸が入っている)
(10℃くらいで飲むガス入り酒)≒(炭酸が少ない目である)
個人的には極端に冷やさず、10〜15℃で楽しむお酒は好きなタイプです。
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以上3つのレンマを元に美味いガス入りのお酒を創るコツを規定すると、
「まず、酸味や甘味のある怪態なる味のお酒ベースをつくる、
それに設計飲酒温度域を考慮した炭酸ガスを入れる」
ということになります。ちょっと乱暴ですが。
さらに第4のレンマとしては「柑橘系などのフレーバーを添加」
になるかもしれませんが、とりあえず3つのレンマを押さえましょう。
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本稿(「お酒テクニカルコラム」)を締めくくるにあたって、
レンマを実践してガス入り清酒を試作しよう、ということになりました。
ツネオ(きた社長)とガス入り清酒を試作するのはこれが2度目。
2000年5月にもパイロットプラントで試作した経験があるのですが、
そのときは市販のお酒をミックスしてガス添加しただけ。
清酒ベースにこだわりすぎた。
その反省を踏まえ、今回は「清酒の味にこだわらず、
怪態な味のお酒をつくり、それにガスを入れる」、という手はずです。
(注:「パイロットプラント」:ラボで使うガス飲料試作装置。)
場所は大阪の喜多産業の実験室。用意した材料は、お酒6種、水2種、
食添グレードのりんご酸、クエン酸、乳酸。それに白砂糖とグラニュー糖。
お酒をミックス・割り水した後、
酸と砂糖で「怪態な味」にしてからガスを入れようという計画。
実生産では特定の酸を多く産出する醗酵法や
甘みを残す醸造法を考えなければならないのでしょうが、
「とりあえず添加してみよう」、という試みです。
何度か混合比率を変えた上で最終的に壜詰めにしたレシピは次のとおり。
■吟醸酒ベース(福島と石川の吟醸酒2銘柄を混合、アルコール14度)、
りんご酸・クエン酸・砂糖を添加、低ガス(1.9GV):10℃前後で飲む酒
■濁り酒ベース(新潟の濁り酒2銘柄を混合、割り水でアルコール15度)、
クエン酸・乳酸を添加、中ガス(2.3GV):10℃前後で飲む酒
■甘口低アル(灘の本醸造と純米を混合、割り水でアルコール10度)、
クエン酸・りんご酸・乳酸・砂糖、高ガス(3.0GV):5℃前後で飲む酒
最初は添加する酸や砂糖の量をキチンと測っていたのですが、、、
そのうち「もうちょっと入れよう」とか「こりゃだめだ作り直し」とか
「いっそコレとアレを混ぜよう」とか、ツネオと試作をしているうち
結局二人とも酔っ払い状態で、わからなくなってしまいました。
でも、出来あがったお酒は結構自信作。
日を改めて試飲しようということになって、
3種類をシャンパン壜に詰めて、シャンパンコルクを打栓し、
ワイヤーフード(金具)をつけて冷蔵庫に寝かせたのが2003年12月。
そして私はアメリカに帰国しました。 (以下次号)
(text:Gerry Meliwol)
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さて、参考情報と当社商品のご紹介です。
前回ご紹介したワインの「かもし醗酵」の参考資料は、
結構な反響をいただきました。今回も引き続きワイン関係参考資料。
●▲■ ご紹介アイテムその1:<参考情報> ●▲■
(参考資料)ワインを「健全果で仕込む」
http://www.kitasangyo.com/Archive/Data/selecting.htm
従来、収穫後のブドウはすべて機械に一括投入し、つぶしていました。
しかし、、、いかに丹精込めて育てたブドウでさえも、
房の中には未熟果や病気にやられた粒もある。梗が混じることもある。
そこで、房をばらして選果する動きが世界的に急速に広まっています。
資料は、その動きを伝える最近の学会誌や専門誌の記事です。
(写真は日本ブドウ・ワイン学会(ASEV Japan)、WANDS(ウォンズ)、
Vinoteque(ヴィノテーク)のご好意による。ありがとうございました。)
で、我田引水で恐縮ですが、最新の選果システムをご提案いたします。
●▲■ ご紹介アイテムその2:ROOTSディビジョン ●▲■
「DIEMMEの選果除梗破砕システム」
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/brewing/selectsystem.htm
写真は当社で納入させていただいた選果コンベアシステム。
ワイナリーの皆さん、日本ワインの品質向上のため、ぜひご検討ください。
さまざまなパターンの選果システムをご提案出来ます。
因みに、もうすぐボジョレーヌーボー解禁。
ちょうど手元に届いた某大手のヌーボーのDM広告にも
「ボジョレーの帝王、ジョルジュ・デユブュフ社では
手摘みしたブドウを選果コンベアで完熟したものだけを選別」
という写真入りの紹介がありました。
清酒、焼酎、ビールの読者には出来の悪い粒を取り除くなんて
当たり前すぎて不思議に見えるかもしれませんが、
これでワインのレベルがいっそう向上します。
(お米や麦もひと粒ひと粒選別したら品質は上がるものでしょうか?)
(なお、人間による不良果の除去作業を、
画像処理と自動排出にすることも技術的には可能でしょう。
処理量が極端に多いので相当なコストと実験が必要ですが、
ご興味がおありの方はご照会ください。
きた産業は、キャップの生産メーカーなので
コンベア上の大量製品の画像処理検査のノウハウがあります。)
●▲■ ご紹介アイテムその3:ROOTSディビジョン ●▲■
ガス飲料の試作に「Zahm&Nagelのパイロットプラント」
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/gas/PilotPlant.html
メルマガ本文に登場した「パイロットプラント」。
多くの酒造メーカーや研究所で試作用にご採用いただいています。
貸出機も準備しています。ご照会ください。
(商品紹介部分のtext:Tsuneo Kita)
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●▲■バックナンバー閲覧可能!「メルマガ・クロニクル」
http://www.kitasangyo.com/Archive/mlmg/BN_top.html
2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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