●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.81 ●▲■
    発行日:2006年 6月21日(水)
 ■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
発行:喜多産業株式会社 http://www.kitasangyo.com

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「日本酒の大敵」
●▲■白濁現象:火落(ひおち)菌対策の歴史
●▲■異常着色:日光着色、温度着色、鉄着色
                 (text:入江経明)

みどころ紹介●1▲きた産業のトピックス「スローなブログ」
ご紹介アイテム●2▲ビールのための「ラボ用製麦設備」
e-アカデミー資料●3▲ガス飲料製造の参考に、
           パイロットプラントのマニュアル

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日本酒の大敵と云いましょうか、
もしも出荷後に発生したらクレームが必須なのは
白濁現象と異常着色の二つです。
目に見えますから覆い隠せません。


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白濁現象は、
火落(ひおち)菌という細菌が繁殖して起こる場合がほとんどです。
これを火落ちと言います。

お酒を加熱して火落菌を殺菌する事を火入れと言いますが
火入れの失敗が火落ちという事でしょうか。
大変わかり易いです。

他に麹由来の酵素蛋白が凝集して白濁する事がありましたが
今は出荷前に柿渋を用いて凝集性蛋白を除去しています。
が、極々まれに生酒において
凝集性蛋白が完全に除去しきれない場合があるので注意が必要です。

火落菌は65℃前後と比較的低温で死滅します。
日本酒の火入れが行われ始めたのは古く室町時代で
フランスの細菌学者パスツールが考案したぶどう酒の低温殺菌法に先立つ
およそ300年前でした。

温度計は人差し指、
熱いお酒に指を入れて「の」の字をゆっくりと書きます。
書き終わった時点で熱さに耐えられない温度が
丁度殺菌温度の65℃前後となります。


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銅が混入しても白濁しますがこれは一過性のトラブルでした。

実は火落ちを防ぐため昭和40年中頃まで
お酒にはサリチル酸という防腐剤が入れられていました。

酒税は貴重な国家財源です。
むざむざと腐らせるわけにはいきません。
国の指導で奨励されていました。

それが世の中、食品添加物に対する安全性が問題化された時に
簡単に使用を取り止めました。

使用を止めて先ず取り掛かったのが機器の消毒殺菌の徹底です。
せっせと過酸化水素などの殺菌剤を用いて洗浄しました。
ところが当時はまだ砲金(銅と錫の合金)製の機器が多く残っていて
殺菌剤のため銅が溶け出してお酒が白く濁ったのです。

当初は原因が良く判らずてっきり火落ちと思い込み
益々入念に殺菌して益々白く濁らせました。

サリチル酸に代わるものとして
卵白から抽出するリゾチウムが検討されました。
溶菌作用を持ち今も喉の薬として使用されています。

火落菌に対してもそれなりの効果が認められたのですが
結局認可されませんでした。
漏れ伝え聞くところによると卵白アレルギーが問題になったようです。

火落菌の研究が進み火落菌は63℃30秒の加熱で完全に死滅する事、
一般家庭には火落菌は生育していない事などが判り
充填時の温度管理を徹底する事で市販酒の火落ちは激減しました。


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異常着色の原因は日光着色、温度着色、鉄着色の三つです。

直射日光の紫外線による着色スピードは大げさに言えば感光紙の如くです。
時間単位で着色します。
1.8L瓶は着色されて紫外線を通しませんが
小瓶類は透明瓶が多いので注意が必要です。

ダンボールケースに入ったものは良いのですが
通いのプラスチックケースに入ったものはケースにフタが必要です。
それからショーケースの中で蛍光灯に長くさらされてもいけません。


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温度着色は長い間置かれるとか高温にさらされて起こります。
お酒の中の糖とかアミノ酸などが複雑に絡み合って起こる化学反応で
傾向としてアミノ酸の多いお酒は着色しやすいようです。

勿論香味も変化します。そしてそれらの変化速度は凡そ
保管温度が5℃高いと2倍、10℃高いと4倍になります。
お酒の賞味期限は通常20℃の常温で1年ですが、
夏場の30℃では3ヶ月しか持ちません。

夏場、冷房のない倉庫はかなり高温になります。
特に屋根裏に近いところは40℃以上になることもあります。
そのような場所に1週間も置かれるともういけません。

料飲店の酒燗器も要注意です。
家庭でも暖房器の近くに長期間置かれるといけません。


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お酒は0.1ppmと極微量の鉄分で着色します。
麹由来の環状ペプタイドと結びついて発色するのです。

昔から灘、伏見などの銘酒の産地は名水の産地でもありましたが
その共通項は鉄分が非常に少ないという事です。

酒造用白米は精米して周りを1/4以上削り取ります。
香味に影響する蛋白質、脂肪、ミネラル等を除去するのが目的ですが
他に鉄分の除去も重要な目的の一つになっています。

製造工程中も鉄に汚染されないように最大限注意が払われています。
今はポンプ、ろ過機等の醸造機器はほとんどがステンレス製ですが
まだタンク類は鉄に琺瑯(ほうろう)引き等をしたものが多く残っています。
お酒を入れる前にひび割れ等がないか入念に検査しますが
貯蔵中もお酒を時々抜き取って香味の変化をみると共に
火落菌検査、鉄分定量も欠かせません。


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出荷後の製品が白濁或いは異常着色でクレームになった場合
その原因はお酒を分析すれば比較的簡単に判ります。

白濁、鉄着色はメーカー責任で謝る外ありません。
しかし日光着色、貯蔵着色はどの地点で発生したのか、
メーカーか、流通か、消費者かを特定する事ははなはだ難しく
多くは責任の所在があいまいとなり原因調査表は玉虫色にならざるを得ません。

願わくば、出荷後のお酒は開栓しようがしまいが冷温所に保管して
出来るだけ早く飲みきって欲しいのが本音です。


text:入江経明 (大手酒造メーカーの技術担当部長を経て、
現在は清酒製造の指導やコンサルティングをおこなう。)

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さて、ホームページ情報と商品などのご紹介です。


●1▲ みどころ紹介
   きた産業のトピックス「スローなブログ」をオープン
http://blog.goo.ne.jp/kita-slow_blog/

世の中、ブログが大流行。

企業情報のほか、子育て日記、お弁当の記録、有名人ブログ、
猫専門ブログ、旅行の記録、飲んだお酒のブログ、、、実にさまざま。
日本国中で何百万ものブログが出回っている模様。

そこで当社も、ブログでトピックスをご紹介、という次第。

今後も、各部門のスタッフが持ち回りで書きますので、
時々覗いてみてください。


●2▲ ご紹介アイテム:ROOTSディビジョン ●▲■
ビールのための「ラボ用製麦設備」
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/brewing/Phoenix_seibaku.pdf

フィニックス・バイオシステム社(オーストラリア)の
「マイクロモルティング・システム」は、
世界でもっとも実績のあるラボ用製麦設備。

日本でも、大手ビールメーカー、大学、麦芽メーカー、農業試験場などで
10台以上ご採用いただいています。

ビール関係の皆様、研究所の皆様、ご検討ください。

●3▲ e-アカデミー情報 ●▲■
ガス飲料試作用「パイロットプラント」のマニュアル
http://www.kitasangyo.com/Archive/Gas/pilot_plant_manual.pdf

ガス飲料の製造や試作に関するお問い合わせを多くいただきます。

「パイロットプラント」は、
タンク内カーボネーションのミニチュア機。

炭酸ガス溶解のメカニズムを理解いただく上で、
このマニュアルは好適です。
ガス飲料製造の参考にしてください。


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●▲■バックナンバー閲覧可能!「メルマガ・クロニクル」

http://www.kitasangyo.com/Archive/mlmg/BN_top.html

2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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紹介商品に関するお問い合わせは、営業部まで。
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